- 2015⁄08⁄20(Thu)
- 03:01
ゲンサト
その日は雨が降っていた。
雨宿りついでに立ち寄ったポケモンセンターで、私は彼に再会した。
「ゲンさん!!??」
雨がひどくなってきて、駆け込むようにポケモンセンターに入ったその時、聞き覚えのある声がそういった。
振り返ると、そこには彼・・・サトシ君がいた。
ジョーイさんからポケモンを受け取っていたところだったらしく、モンスターボールを持って此方に駆け寄ってきた。
「お久しぶりです!!」
きらきらした瞳をこちらに向けて、彼が言った。まぶしい、と思う。
「ああ。元気だったかい?」
「はい!」
「そういえば、友達が居ないね。彼らはどうしたのかな。」
「ヒカリは母さんと電話で話してるんです。タケシはジョーイさんの手伝いをしてます。」
「そうか。」
君は今、一人なんだね。僕と二人きりなんだ。
その事実が無性に嬉しかった。決して口には出さないけれども。
その後、私たちは彼の友人と合流し、食事を共にすることとなった。
話によると、彼らはジム戦のためにキッサキシティへと向かうのだそうだ。
そういえばこの街はキッサキシティからそう遠くはないことを思い出す。
「今日はここに泊まっていくつもりなんです。ゲンさんはどうですか?」
彼の友人である、少女が言った。
「私もそのつもりだよ。」
私が言うと、彼は嬉しそうに笑った。
何がそんなに嬉しいのかと思う一方で、私も嬉しく感じていた。
食事を終えて、ジョーイさんの手伝いをする、と言ってタケシと呼ばれた青年はどこかへと行ってしまい、
それから少しして「ノゾミに電話しなきゃ。」と少女も席を立った。また、二人きりになってしまった。
「ゲンさんはどうしてここに来たんですか?」
彼が言った。
「修行のためだよ。」
「そっかあ・・・ゲンさん強いもんなー・・・」
憧憬を含んだ眼差しをこちらに向ける。
その視線が心地よくて、けれども苦しくてたまらない。
私は君が思うような人間じゃないんだよ、と言いたくなる。
「ゲンさんってすごいですよね。ルカリオも強いし、波導も使えるし」
だめだ、そんなことを言ってはいけないよ。
「どうしたらゲンさんみたいになれるんだろう。」
彼の子供らしい綺麗な感情とは逆に、私の中で薄汚い感情が蠢く。
「じゃあ教えてあげようか。」
私が笑うと、彼も笑う。私の胸のうちなど、彼には予想も出来ないだろう。
「もしよかったら、今晩私の部屋においで」
私が手を差し出すと、彼は笑ってその手を取った。
この手が穢れているとも知らないで。
雨宿りついでに立ち寄ったポケモンセンターで、私は彼に再会した。
「ゲンさん!!??」
雨がひどくなってきて、駆け込むようにポケモンセンターに入ったその時、聞き覚えのある声がそういった。
振り返ると、そこには彼・・・サトシ君がいた。
ジョーイさんからポケモンを受け取っていたところだったらしく、モンスターボールを持って此方に駆け寄ってきた。
「お久しぶりです!!」
きらきらした瞳をこちらに向けて、彼が言った。まぶしい、と思う。
「ああ。元気だったかい?」
「はい!」
「そういえば、友達が居ないね。彼らはどうしたのかな。」
「ヒカリは母さんと電話で話してるんです。タケシはジョーイさんの手伝いをしてます。」
「そうか。」
君は今、一人なんだね。僕と二人きりなんだ。
その事実が無性に嬉しかった。決して口には出さないけれども。
その後、私たちは彼の友人と合流し、食事を共にすることとなった。
話によると、彼らはジム戦のためにキッサキシティへと向かうのだそうだ。
そういえばこの街はキッサキシティからそう遠くはないことを思い出す。
「今日はここに泊まっていくつもりなんです。ゲンさんはどうですか?」
彼の友人である、少女が言った。
「私もそのつもりだよ。」
私が言うと、彼は嬉しそうに笑った。
何がそんなに嬉しいのかと思う一方で、私も嬉しく感じていた。
食事を終えて、ジョーイさんの手伝いをする、と言ってタケシと呼ばれた青年はどこかへと行ってしまい、
それから少しして「ノゾミに電話しなきゃ。」と少女も席を立った。また、二人きりになってしまった。
「ゲンさんはどうしてここに来たんですか?」
彼が言った。
「修行のためだよ。」
「そっかあ・・・ゲンさん強いもんなー・・・」
憧憬を含んだ眼差しをこちらに向ける。
その視線が心地よくて、けれども苦しくてたまらない。
私は君が思うような人間じゃないんだよ、と言いたくなる。
「ゲンさんってすごいですよね。ルカリオも強いし、波導も使えるし」
だめだ、そんなことを言ってはいけないよ。
「どうしたらゲンさんみたいになれるんだろう。」
彼の子供らしい綺麗な感情とは逆に、私の中で薄汚い感情が蠢く。
「じゃあ教えてあげようか。」
私が笑うと、彼も笑う。私の胸のうちなど、彼には予想も出来ないだろう。
「もしよかったら、今晩私の部屋においで」
私が手を差し出すと、彼は笑ってその手を取った。
この手が穢れているとも知らないで。
ゲンさんって不思議な人だと私は思う。
不思議と言うか、掴めないというか。
それをタケシに話したら、タケシはそうか?とさも、私のほうが不思議であるかのように言った。
タケシは、何とも思っていないらしい。
「うん。何ていうか、サトシには優しいって言うか・・・・うん、何か違うの。サトシには。」
さっきの食事中に私はそのことがすごく気になっていた。
ゲンさんのサトシを見る眼差しは、私やタケシに対するものとは明らかに違っていた。
いや、視線だけじゃなくて、口調も、接し方も。何もかも。
だからといって、私たちを雑に扱っていた訳じゃない。とにかく、言葉にするのが難しいけれど、何かが違っていたのだ。
どうしてタケシは気づかないのだろう。きっとジョーイさんのことばかり考えているからだ。(勝手な推測だけど)
「まあ良いじゃないか。ゲンさんは良い人なんだし、ヒカリは気にしすぎだと思うぞ。どうしたんだ?」
わかってる。目の前のゲンさんは”とても良い人”そのものなのだ。
でも、どうしても拭いきれない違和感がある。具体的に何が、かはわからないけれど。
「どうもしてない。・・・・私、疲れてるのかな。」
「そうだなあ。コンテストもあったしな。今日はゆっくり休んだほうがいい。」
「そうね。じゃあ、私、お風呂に入ってくる。」
そう言って、私はその場を後にした。
お風呂の支度を終えて、浴場へと行く途中、廊下でサトシがゲンさんと話しているのを見かけた。
二人があまりに楽しそうだったので、邪魔をするのは悪いと思い、話しかけずに居たら、よそ見していたせいか誰かとぶつかった。
「あ、ごめんなさい!」
通りすがりにチッ、と舌打ちをする音が聞こえた。謝ったのに失礼な人、と思って振り返ると、そこには見覚えのある人影があった。
「・・・シンジ!!??」
私がぶつかった張本人はシンジだった。いつもどおり不機嫌そうな顔をしている。
「ちょっと、謝ったのに舌打ちするなんてひどいじゃない!」
そう言っても、シンジは反省する素振りどころか私のほうを見ようともしなかった。
「聞いてるの!」
「おい。」
シンジが言った。私の言うことなんて全然聞いていない。
「何よ」
「あの、帽子の男は誰だ?」
シンジがゲンさんを指差した。
「ゲンさんよ。はがねタイプ専門のトレーナー。」
「・・・・フン」
「ゲンさんがどうかしたの?」
「・・・・」
返事もせずに、シンジはその場から去ってしまった。
「(もー何なのよ!相変わらず不機嫌なんだから。)」
私もパジャマとタオルを抱えて、浴場へ向かうことにした。あの少女は勘付いている。
食事中も、どこか私の出方を窺っているように感じられた。
私の、サトシ君への思いに気づいていると言うよりは、サトシ君に対する接し方と自分たちへのそれの違いに何らかの違和感を抱いているようだった。
子供なんてと思っていたわけじゃない。決して彼らが嫌いなわけではない。
けれど、私はどうしても彼――――サトシ君に惹かれてしまっているのだ。そういう感情が彼らを差別してしまうのだった。
そして、気になることがもう一つ。
食事を終えて、サトシ君と話をしていた時だった。
見知らぬ少年が、眉間にしわを寄せてこちらを見ていたのだった。
誰かは分からないけれど、彼の表情からは何故か憎しみに近い感情が窺えた。
薄紫の髪をした、目つきの鋭い少年だった。
彼はその後、前述した少女となにやら口論をしていた。
あの少女と知り合いであるならば、もしかしたらサトシ君とも顔見知りであるのかもしれない。
「ゲンさん?」
サトシ君が私の顔を覗き込む。
「え?ああすまないね。」
「何時くらいにそっちの部屋に行けばいいですか?」
「そうだな…。11時じゃ遅すぎるかな?」
「大丈夫です!じゃあ、11時に。…そろそろ風呂に入らなきゃ」
そう言って、彼は自室へと向かった。
淡い期待と罪悪感が胸に込み上げた。
――――いい年した大人が子供を誑かすのか。
サトシと話すゲンを見てシンジは思った。
これじゃあ兄と一緒だ。
兄はサトシとの修行を嬉々として話していた。
あの時の兄の表情とゲンの表情はそっくりだった。
兄はおそらくサトシのことが好きだった。好き、と言うよりは特別な感情を抱いていたように思う。
おそらくゲンもそうだ。
言葉に出来ない厭な感情が胸に渦巻く。
気づかない振りをしているけれど、心の奥底ではわかっている。
これは妬みだ。嫉みだ。
自分と同じ感情を共有している人間が、そしてそれをちゃんと態度に表わせることの出来る人間が、憎いのだ。
素直になれない自分が厭だ。
それでもサトシへの想いをどうしても認められない自分が居る。
サトシが誰かのものになるのは厭なのに、気持ちを伝えられない。
ぐるぐると汚い感情が蠢いている。
サトシ。レイジ。ゲン。
「(何を考えているんだ、俺は・・・)」
ふと気づくと、ポケモンセンターは消灯の時刻だった。
周囲の明かりと、人がいつのまにか消えていた。
「下らない。」
シンジは声に出してそう言うと、寝室へと戻っていった。消灯の時間をとうに過ぎ、暗くなった廊下で一人、サトシはゲンに言われた部屋へと急いでいた。
「(えーっと2階の一人部屋だから・・・・)」
誰も居ない廊下。昼間とはまるで違う光景に、薄ら寒い気持ちになる。
「(うわー・・・ゲンガーとか出てきたらやだなあ)」
薄暗い中に出来るもっと暗い影が、幽霊の形を思わせる。
「おい。」
背後から声がした。サトシは全身の毛が粟立つような気分になった。
「うわっ!!って、あ、シンジ!!??」
想いも寄らない人物との遭遇にサトシが驚く。
「フン・・・ビビってんのか?」
「なっ・・・何言ってんだよ!!誰も居ないと思ったから驚いただけだ!!」
「お前、こんな時間に何してんだ?」
怪訝な顔をしてシンジが言った。
「すごいトレーナーの人に、色々・・・多分ポケモンのことを教えてもらいにいくんだ。」
「・・・すごいトレーナー・・・もしかして、あの帽子の男か?」
「え?シンジ、ゲンさんのこと知ってんの?そうだよ。ゲンさんのところに行くんだ。」
シンジの背中に嫌な汗が流れた。
「・・・やめておけ。」
「へ?何で?」
「いいからやめておけ。」
不機嫌なのは変わらずだが、先ほどとは迫力の違うシンジに、サトシは少し圧倒された。
「何でだよーあ、わかった。お前もゲンさんに教えてほしいんだ。」
「違う!」
「じゃあ何でだよ。」
「それはっ・・・」
あの男からサトシへの劣情を感じるから。
そんな根拠も無い妄想を言えるわけがない。
「っ・・・なら勝手にしろ!!」
「ああ、勝手にするよ。」
シンジの本意を受け取らないまま、サトシは暗い廊下の向こうへと消えてしまった。
「馬鹿が・・・・」
シンジの呟きは、サトシに届くこともなく、夜の闇へと溶け込んだ。
コンコン、と二回ノックをすると、扉の向こうからゲンの声がした。
「サトシです。」
「どうぞ。」
扉を開けると、ゲンは昼間と変わらず、きっちりとしたスーツ姿でソファに腰掛けていた。
「ソファが一つしかないんだ。ベッドに座ってもらってもいいかな?」
「はい。」
挨拶もそこそこに、サトシが話の主題を切り出すと、ゲンは笑顔でそれに応じてくれた。
「つまり、サトシ君は僕と修行がしたいんだね?」
「はい!俺も強くなりたいんです!」
「そうか・・・私が君を誘ったのはそういう意味じゃないんだけどな。」
「どういうことですか。」
「・・・僕は君の思うような人じゃないってことだよ。」
「え・・・?」
ゲンが立ち上がり、サトシの上に覆いかぶさった。
「ごめんね。」
ゲンが腕にこめた力を強くする。
「ゲンさん、どうしたんですか・・・?」
さっきまでとはまるで違うゲンの態度に、サトシは少し恐怖をおぼえた。
「まだ気がつかないのか・・・・」
「何が・・・んんっ!!」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
自分がゲンに唇を奪われている、と分かったのは少したってからだった。
「んっ・・・ん・・・」
逃げても逃げても、ゲンの舌が追ってくる。
漸くゲンが唇を離すと、サトシは恥ずかしいやら信じられないやらで言葉が出なかった。
「良い表情をするね・・・君は。」
ゲンが耳もとで囁いた。
鳥肌が立ちそうだった。少し低いゲンの声が、吐息が、妙に心地よかった。
「もっと、悪いことを教えてあげようか。」
「悪いこと・・・・」
サトシが言葉を繰り返す。
悪いことといわれても、例えばJとか、ロケット団とか、そういったものしかサトシには思い浮かばなかった。
悪いことは今のキスと関係があるのだろうか。
それなら、ゲンさんは「悪い人」なのだろうか。Jやロケット団と同類なのか?それは違う。絶対に違う。
サトシの中で色々な想いが頭を巡る。
「・・・ごめんね・・・・」
ゲンが呟いた。
何がごめん、なのだろう。今のキスのことなのか。
それとも、これからまた何かが始まるということなのか。
「・・・あの・・・どうしてこんなことをするんですか。」
漸く言葉が紡ぐことが出来た。言いたいことはまだたくさんあるけれど。
「わからない・・・か。」
サトシが頷くと、ゲンは少し笑って言った。
「好きだから。君のことが気になるから。」
「好きって・・・・」
「君はまだ幼いから、わからないかもしれないけど・・・・」
好き・・・好きってどういうことなんだろう。
自分はゲンが好きなのだろうか。
決して嫌いではないけれど、キスされて厭だとは思わなかったけれど・・・
「あの・・・俺、多分そういうのよくわからなくて・・・」
「そうだね。」
「だから・・・・」
「私が教えてあげようか?」
「そ、そういう意味じゃなくて・・・」
「じゃあどういうことなのかな。」
ゲンが怖い、と思う。
笑顔なのに、なんとも形容しがたい威圧感を感じる。
なぜ、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
シンジの言葉が脳内で反芻する。
――――やめておけ
シンジにはこうなることがわかっていたのだろうか。
「・・・サトシ君」
ゲンの手が伸びる。彼の指が頬に触れる。
「君は人を惹きつける人間だと思う。」
「え?」
「きっと、君の周りに僕と同じ感情を抱いている人はたくさんいるんじゃないかな。」
「・・・つまり、好きってことですか。」
ゲンが頷いた。
「君、さっき薄紫の髪の少年と話をしていただろう。」
「何でわかるんですか?」
「夜のポケモンセンターは静かだからね。ここに来るのを止められただろう。」
「はい・・・とめられました。やめておけって・・・」
「それは、君のことが好きだからだよ。私に君を取られたくないのさ。」
シンジが?まさか。サトシには信じられなかった。
「そんなわけないです!あいつはいつも俺に厭なことばっかり言ってくるし・・・」
「素直じゃないだけだよ。きっと私が君に対して自分と同じ感情を抱いていることがわかったんだろうね。」
「そんな・・・まさか・・・・」
「・・・・でも、私だってこの機会を逃したくは無いんだ・・・・・!!」
ゲンがサトシを抱きしめる。ゲンの体温が低い。触れた体は冷たかった。
「大人気ないね・・・ごめんね・・・・」
腕にこめた力が強くなる。
「私は君が好きなんだ・・・・どうしても、ほしいんだ。」サトシの体はとても温かい。子供の体温だとゲンは思う。
こんな年端もいかない少年に、自分は何を言っているのだろう。
「ごめんね。」
汚い大人で。
君を好きになって。
こんなことをしてしまって。
でも、もう戻れないんだ。
――――
「あ、んんっ・・・」
背後から覆いかぶさるように、熱に触れられて、サトシの体が過敏に反応する。
ゲンの指がズボンに入り、直にそれを弄った。
大きな手。長い指。
「あ、っん・・・何か、変っ・・・」
今までこんな感覚、味わったことが無い。
「変じゃないよ・・・・」
ゲンが耳元で囁くと、彼の吐息にまで反応してしまう。
おかしい。こわい。これからどうなってしまうのだろう。
「や、あの、出ちゃ・・・」
わけが分からないうちに、サトシは白濁でゲンの手を汚してしまった。
「あ・・・・」
あまりの恥ずかしさに、サトシは顔を手で覆った。
「俺、今、とんでもないこと・・・」
「おかしくないから。大丈夫だから。」
ゲンは気にしてはいないようだった。自分だけが慌てふためいていて、余計に恥ずかしくなった。
「じゃあ、ちょっと力を抜いてくれるかな・・・」
ゲンの指が後ろに触れる。サトシが驚く。
「な、何してるんですか、そんなとこ・・・・」
ゲンは何も言わずにそこに濡れた指をうずめた。
ぐるぐると指が円を描くように動いている。なんとも言いがたい、奇妙な感覚だった。
「や、やだ、ゲンさんっ・・・」
少しして、慣れるとまた指が今度は二本に増えた。
気持ちが悪い。どうしていいのかわからない。ゲンが怖い。逆らえない。
どうしてゲンはこんなことをしているのだろう。「ほしい」って、つまりはこういうことがしたかったのだろうか。
「・・・気持ち良い・・?」
ゲンが言った。サトシは首を振る。
ここからはゲンの表情は見えない。
笑っているのか、怒っているのか、呆れているのか。
「・・・でも、もう3本も入ったよ・・・・?」
そんなこと言わなくてもいいのに。サトシは思う。
3本の指が意思を持ったように中で蠢く。指がある一点を突くと、サトシが声をあげた。嬌声だった。
「ひっ、あ、あっ・・・・」
「ここがいいのか・・・・」
玩ぶようにゲンが指を動かす。面白いようにサトシが反応する。
暫し指を動かすと、今度は突然指を引き抜いた。
何で抜いちゃうの?と思う自分が居る。サトシはそれを恥ずかしく思った。
ゲンはそこに自らの男根を押し当てた。
背後に何かを感じ、サトシの体が少し震える。
「力、抜いてね・・・」
指とは全く異なる質量の何かが中に入ろうとしている。
恐怖と、小さな期待がサトシの胸に渦巻いた。
「んっ、あ、あ、」
ゲンは出来るだけ無理をさせないように、慎重に挿入を始めた。
あまり時間をかけすぎないよう、焦らないよう、ゆっくりと。
「あ、ああっ・・・」
痛い、と言葉にするほどの痛みは無いけれど、体が疼いているような、それでも痛みに近い感覚があった。
「ああっ!」
ゲンがサトシの陰部に触れた。思わず声を上げてしまった。
恥ずかしい声だ。サトシは慌てて口を手で塞いだ。
「塞がなくていいよ・・・」
空いているほうの手で、ゲンがサトシの手を解き、自らの指をサトシに銜えさせた。
「は、ふっ・・・あ、あっ・・・」
「気持ち良い」感覚がどんどん高まっていく。前の愛撫から、そして、後ろの感覚も快楽だと捉えるようになった。
ゲンが進む度に、サトシの身体が悦び、快楽に打ち震える。
「あ・・んっ・・あっ」
「入ったよ・・・」
耳の後ろからゲンの声がした。
「動くよ・・・・」
ゲンが腰を動かした。粘膜にあったものが去っては入り、最初よりも性急に挿入される。
「あ、っ・・あんんっ、やっ・・・」
前から後ろから快楽を与えられ、身体がどうにかなってしまいそうだった。
快楽に溺れるサトシ。さっきまで、何も知らない無垢な少年だったのに。
自分はなんて卑しい、汚い大人なのだろうと思いながらも、衝動を抑えることが出来なかった。
悔やんでいるわけではないけれど、自責の念に駆られないわけでもない。
「そろそろ・・・かな・・・・」
言うと、ゲンは小さな体に、白い欲望を放ち、サトシはそこで、意識を手放した。同室のタケシよりも早く目が覚めた。
二度寝する気も起きないので散歩でもしようかと思い、ポケモンセンターの外に出ると、そこにはゲンがいた。
「サトシ君、おはよう・・・大丈夫かい?」
ゲンが言った。
「痛い・・・って言うか少しだるいです・・・でも大丈夫。」
「そうか・・・」
あの後、後処理をして、すぐにサトシは自分の寝室へ向かった。
ドキドキしたけど、色々頭を巡ることはあったけれど、ベッドに入ると直ぐにまぶたが重くなった。
こうしてみると昨日のことは嘘みたいだとサトシは思う。
「・・・昨日は無理をさせてしまったね。」
「え・・あ、そんなこと・・・」
ないです、とは言えなかった。
「素直だね、君は。」
ゲンが笑った。柔和で、優しい笑顔だった。
「君のそういうところが、私は好きだよ。」
好き、なんて正面きって言われたのは初めてだった。サトシの頬が染まる。
「サトシ君」
「はい?」
「・・・私はそろそろ出発するよ。」
「え?もう、ですか??」
「うん。」
ゲンが笑った。
「じゃあ、今度は、バトルを教えてくださいね。」
「ああ。もちろん。」
振り返ることも無く、ゲンは立ち去った。
見えなくなるまで見届けると、サトシはポケモンセンターへと戻った。
その二人の様子を、少し離れた場所からシンジは見ていた。
早くに目が覚めて、ポケモンセンターの近くを散歩していたら、たまたまあの二人に出くわしたのだ。
とっとと帰ればよかった。自分は何をしていたのだろうとシンジは思う。
あの二人の会話をたまたま目にしたからって、そこにいる必要なんて無いのに。
それでも、どうしても気になった。
あの後・・・昨日の夜、二人がどうなったのか、知りたくないのに、知りたかった。
あの様子だときっと二人は身体を重ねてしまったのだろう。
胸の奥底から黒い感情が湧きあがる気がした。
悔しくて、辛くて、胸が何かに刺されたように痛んだ。
兄が聞いたら、あの温厚な兄はどうするのだろうとも思った。
喩えようの無い喪失感でいっぱいになった。
影が縫いつけられたように、その場から動けなくなった。
くだらない。ばかげてる。あいつのことなんて。
それでもサトシのことを考えると苦しい。
サトシがゲンに抱かれたと考えると胸が詰まる。
言葉に出来ない感情を持て余しながらシンジはその場を去った。
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