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  • 2013⁄02⁄08(Fri)
  • 03:29

練習が終わって


「翼、きょう、うちに来いよ」
 練習が終わってから、石崎が声をかけた。いつもながらぶっきらぼうだったが、付き合いが長いせいか、わくわく感を押し殺しているのが伝わる。
「また、ドッキリを仕掛けるつもりかな……」
 ちょうど一ヵ月前、「貸切だぞ」と言われていそいそと石の湯へ出かけ、誰もいない男湯へ素っ裸で入っていった翼は、嬌声とともにあねごたちスク水姿の女子に取り囲まれて、えらい目にあった。
 募る不審感と洗面器を片手に石の湯ののれんをくぐる。番台でおばさんが「いらっしゃい」と気さくに声をかけ、脱衣所では老いも若きもたむろする、至って普通の銭湯風景だった。翼は胸をなでおろし、服を脱いだ。
「おっ、来た来た」
 男湯に入ると、石崎がにまにましながらやってきた。今日は学たち、南葛小のチームメイトも何人かいた。
「高杉くんも来てたの?」
 翼が声を上げる。
「こいつ、体はでかいのに家の風呂が小さいからな。うちの常連だ」
石崎の返事に、高杉がかすかに顔を赤らめた。
「それに、毛もボーボーなんだよ」
 学がいたずらっぽく笑う。石崎が「うちのお得意様に失礼だろ」と頭にげんこつを見舞ったとたん、学の眼鏡が曇り、みんなが大笑いした。
「これを見せたかったんだよな」
 石崎が得意げに指差した先は、湯船の表面が波打っていた。当時の銭湯では珍しいジェット噴射の装置で、ついに石の湯でも導入したのだ。
「肩こりや筋肉痛なんて吹っ飛ぶぜ。もちろん、きつい練習のあとの疲労回復にもばっちりだ」
「すごいね」
 さっそく翼は湯船に入り、膝立ちで逆三角形に三つ配置された噴射孔と向き合った。
「うわっ、わっ、わっ」
思わず口から洩れる声は、好奇心旺盛な屈託のないものから、次第にうわずったものに変化した。
「あーっ、翼が勃起してる!」
 学が翼の股間をのぞきこんで叫んだ。
「いやっ、見ないでよう」
 あわてて翼が両手で前を隠した。すると、高杉が翼を抱えあげ、立ち上がってみんなの方に向かせた。翼の性器は開花直前の朝顔の蕾のようにめいっぱい膨らんでいた。
「おおっ」
 どよめきが男湯の中に響く。さらし者にされる翼の生白い尻を、高杉の黒い茂みがくすぐった。おまけに勃起した高杉のそれが翼の尻の割れ目をまさぐる。
「もう、いやだぁ……」
 半ば意識がもうろうとして、翼はうわごとのようにつぶやいた。
「お客さん、勘弁してくださいよー」
石崎は意地悪くほくそ笑みながら、眉をひそめて見せた。
 まだ南葛市に引っ越す前、4年生の翼のクラスではクリスマスお楽しみ会の内容を決めていた。
翼が提案する。
「リフティング大会にしようよ」
「却下!」
「じゃあ、PK対決は」
「却下!」
「フットサルは」
「却下!」
 さすがに学級委員もキレ気味である。翼はぷーっとほおを膨らませ、机の上に置いたボールにあごを乗せた。結局、女子の発案で男女対抗ドッジボール大会になった。
 翼のクラスの女子は獰猛だ。おまけに体もでかい。寒風吹きつけるグランドで、半袖短パンの体操服姿の女子たちがコートを縦横に走り回る。きびきびしたパス回しや迫力ある攻撃に、男子たちは圧倒されていた。翼はどんなに狙われても、器用に弾道をよける。でも、キャッチして反撃に転じるまでには至らず、とうとう一人になってしまった。
「やっちまえ!」
「チビ、くたばれ!」
「ぶっ殺せ!」
 小動物をいたぶるように、女子たちの目の色が変わった。これはもうリンチである。
「逃げてばかりいずに、さっさと球を受けろよ、翼!」
「早くボールを回せよ!」
 外野の男子からも口々に攻撃された。カッとなった翼は、一瞬ドッジボールであることを忘れて、強いボールをそのままボレーで打ち返した。
 翼の蹴ったボールは女子のリーダー、マサミの顔面を直撃した。
「あがっ、あがっ」
 いつもは気の強いマサミが、鼻を押さえてしゃがみこんだ。親友のリエが心配そうにそばに寄る。
「はい、翼君アウト。女子チームの勝ち」
 不穏な空気を察知した担任の若い女性教師は、さっさとゲームの幕を引いた。でも、マサミの怨嗟はたちまち女子たちに広がった。
「翼、来いよ」
 放課後、リエが翼を呼び止めた。男子たちは不穏な空気から逃がれるように次々と教室から姿を消し、翼とマサミの取り巻きだけが残っていた。
「この落とし前、きっちりつけてもらうからね!」
 マサミの鼻には、大きく不格好な絆創膏が貼ってあった。リエが翼のサッカーボールを横取りした。
「あっ」
 翼は泣きそうな顔になった。アズサとミホが翼の両腕を逃げられないように掴み、女子トイレに連行した。掃除が終わったばかりで、タイルの床はまだ濡れていて冷え冷えとしていた。
「ここで脱いで」
 マサミが言った。
「えっ?」
 きょとんとした翼にリエが怒鳴った。
「脱げって言ってんだよ!」
「裸になって、土下座して謝ってもらう」
 冷酷な声でマサミが言い放つ。
「いやだよう」
「それとも、私たちがカイボウしてやろうか」
 アズサが翼の長袖シャツを掴んで乱暴に引っぱった。
「わかったよう、脱ぐよう……」
 翼は半べそをかいて、シャツの裾に手をかけた。短いサカパンと上靴、ソックスを脱ぎ、翼は白ブリーフ一枚になった。たちまち全身に鳥肌が立った。
「全部脱ぐんだよ!」
 リエが怒鳴り、マサミが翼の頭を小突いた。翼は叱られた子犬のような表情で、のろのろとパンツを足から抜いた。
「うわっ、こいつ、汚ねえ! しょんべんのシミが付いてる~」
 翼の手からひったくったパンツを広げ、リエががさつな声を上げた。アズサとミホがわざとらしく覗きこむ。
「うんこのシミも付いているかも」
「やめてよう、見ないでよう」
 翼は左手で性器を押さえ、パンツを取り戻そうと右手を伸ばした。
「うるさい!」
 リエが膝を翼の腹にめりこませた。
「ふぐっ!」
 ミホが翼の手首を引っぱり、前傾した翼の背中をアズサが肘で打った。
「太鼓の乱れ打ちだ!」
 マサミも加わり、ふたりがかりで両側から翼の背中を連打した。翼は濡れたトイレの床に崩れ落ち、べそをかいた。
「私たちに土下座して謝りな」
 リエが翼の髪を掴んで、乱暴に顔を上げさせた。
「ご、ごめんなさい……」
「聞こえない! もっと大きな声で!」
 マサミがむき出しの翼の肩を爪先で小突いた。
「ごめんなさい!」
「なんで謝るのか、ちゃんと答えな!」
 一瞬きょとんとした翼の顔面に、リエがサッカーボールを叩きつけた。
「ふぎっ!」
 たらたらと鼻血を流す翼のそばで、マサミが冷たくささやいた。
「救いがたいサッカーバカの大空翼は、その汚い足を使ってマサミ様の美しい顔面にドッヂボールをぶつけ、怪我をさせてしまいました、申し訳ありませんでしたと言うんだよ!」
 寒さと恐怖に震える翼は、命じられた通り、つっかえながら言った。何度もやり直しをさせられたうえ、後頭部を踏みにじられ、顔面をトイレの床に擦りつけられた。
 日が陰りだしてきた。
「そろそろ帰ろうか」
「もう許してやろう」
 ぐったりした翼は、それを聞いて両足を投げ出してへたりこんだ。固いタイルの上でずっと土下座の姿勢だったから、足が痺れて限界だった。
「でも、許してほしかったら……」
 マサミが残忍な笑みを浮かべた。
「四つ這いで犬みたいに片足を上げておしっこして」
「そんなの、いやだ」
 翼はべそをかいた。
「じゃあ、家まで裸で帰る?」
 リエがそう言うと、翼の着衣を抱えたミホがトイレの出口に向け後ずさった。
「待って! やるよ、やればいいんだろ」
 翼は右足を上げた。
「もっと足を上げろ!」
「うわっ、翼のお尻の穴が見える♪」
「キンタマの袋も丸見え~」
 マサミたちの嬌声の中、翼はちょろちょろと放尿した。
「友だちにもかけてやれ」
 ふいにリエがボールを翼の股の下に転がした。
「あっ!」
 翼は短い悲鳴を上げたけど、体が冷え切ったせいか、おしっこは止まらない。翼はサッカーボールの傍でへたりこんだ。
「服は返してやるよ」
 マサミたちはトイレから飛び出し、廊下の窓を開けて翼の着衣を次々と放り投げた。2階から人気のない中庭に向け、シャツは地面へ、サカパンと上履きは側溝の中へ、パンツとソックスは植えこみに引っかかった。
「先生にチクッたら、ぶっ殺すからね」
最後にリエが凄み、女子たちはゲラゲラ笑いながらトイレから出て行った。しばらく放心状態だった翼は、声を殺して泣いた。そして、裸足で湿り気を帯びたボールをドリブルしながら、服を拾いに行った。
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