- 2015⁄08⁄20(Thu)
- 02:43
シゲサトと…
新しい街にやって来たサトシ達一行。
ポケモンセンターで休息をとるタケシ達とは行動を別にして
サトシはピカチュウと近くの広場で特訓を積んでいた。
「ピカチュウっ“アイアンテール”」
サトシの声を受けてピカチュウのアイアンテールが岩に直撃した。
「よおし“十万ボルト”だ」
「ピィカ―」
まばゆい電気がピカチュウの体を包む。
「ヂュウウウウウ!!」
大きな電気の柱に周囲から「おおっ」と感嘆の声が上がった。
「いいぞ!ピカチュウ」
ピカチュウのアイアンテールをくらった岩は完全に崩れ落ちている。
サトシはピカチュウを抱き上げると嬉しそうに笑った。
その時
「やるな、サトシ」
突然名前を呼ばれ驚いて振り向くと…
「シゲル!」
そこには久しく会っていない、幼なじみの姿があった。
「久しぶり!元気にしてたか」
「ああ」
そう言って笑ってから
「この街の研究所に用があってね」
サトシに会うとは思わなかった、と言葉を繋ごうとしたシゲルを
「研究所?」
好奇心を滲ませた声が遮った。(相変わらずだな)わずかに苦笑してから「サトシも来るか?」
と誘えば、案の定嬉々としてサトシは同行を申し出たのだった。
「で、研究所はどこなんだ?」
シゲルの後について歩き出したサトシの頭の上で
ピカチュウが耳をピクッと立てた。
「ピカ?」
バサッ…羽音と共に黒いものがサトシ達の頭上に飛来する。
「ヤミカラスだ」
シゲルも気付いて立ち止まると、少し目を細めて顔を上げた。
「俺達に用があるのかな」
「用?…」
サトシが言い終わらないうちに遠くから猛然と走ってくる何かに3人は気付いた。
あれは―サトシがハッとするより早く
「キャーーー!!」
サトシからガバッとピカチュウを引き剥がすと
「ピカチュウちゃん久しぶりー!」
この毛並み!相変わらずだわ~などと言いながらピカチュウに頬ずりを始めたこの人は…
「リリーさん?」
やっとピカチュウから顔を離すと
「久しぶりね、サトシ君」
サトシに向き直り、ポケモン魔法の研究者・リリーはにっこりと微笑んだ。
ポケモンセンターで休息をとるタケシ達とは行動を別にして
サトシはピカチュウと近くの広場で特訓を積んでいた。
「ピカチュウっ“アイアンテール”」
サトシの声を受けてピカチュウのアイアンテールが岩に直撃した。
「よおし“十万ボルト”だ」
「ピィカ―」
まばゆい電気がピカチュウの体を包む。
「ヂュウウウウウ!!」
大きな電気の柱に周囲から「おおっ」と感嘆の声が上がった。
「いいぞ!ピカチュウ」
ピカチュウのアイアンテールをくらった岩は完全に崩れ落ちている。
サトシはピカチュウを抱き上げると嬉しそうに笑った。
その時
「やるな、サトシ」
突然名前を呼ばれ驚いて振り向くと…
「シゲル!」
そこには久しく会っていない、幼なじみの姿があった。
「久しぶり!元気にしてたか」
「ああ」
そう言って笑ってから
「この街の研究所に用があってね」
サトシに会うとは思わなかった、と言葉を繋ごうとしたシゲルを
「研究所?」
好奇心を滲ませた声が遮った。(相変わらずだな)わずかに苦笑してから「サトシも来るか?」
と誘えば、案の定嬉々としてサトシは同行を申し出たのだった。
「で、研究所はどこなんだ?」
シゲルの後について歩き出したサトシの頭の上で
ピカチュウが耳をピクッと立てた。
「ピカ?」
バサッ…羽音と共に黒いものがサトシ達の頭上に飛来する。
「ヤミカラスだ」
シゲルも気付いて立ち止まると、少し目を細めて顔を上げた。
「俺達に用があるのかな」
「用?…」
サトシが言い終わらないうちに遠くから猛然と走ってくる何かに3人は気付いた。
あれは―サトシがハッとするより早く
「キャーーー!!」
サトシからガバッとピカチュウを引き剥がすと
「ピカチュウちゃん久しぶりー!」
この毛並み!相変わらずだわ~などと言いながらピカチュウに頬ずりを始めたこの人は…
「リリーさん?」
やっとピカチュウから顔を離すと
「久しぶりね、サトシ君」
サトシに向き直り、ポケモン魔法の研究者・リリーはにっこりと微笑んだ。
「今新しい魔法に挑戦してるの」
3人は手近な石に腰をおろしてリリーの話を聞いていた。
「その名もズバリ!『ポケモンが喋れるようになる魔法』よ」
「「『ポケモンが喋れるようになる魔法』?」」
以前は…サトシは記憶を辿った。
『ポケモンの気持ちが分かる魔法』それを完成させるにはピカチュウの“十万ボルト”が必要だと聞き
サトシ達はリリーに力を貸したのだった。そして
「俺がピカチュウになったんだっけ」
「はぁ?」
サトシの呟きにシゲルが妙な声を出す。
「前にね」
リリーが説明役を買って出る。
「サトシ君に『ポケモンの気持ちが分かる魔法』をかけさせてもらった事があるの。でも魔法が不完全で…
サトシ君がピカチュウになっちやったの」
「でもすぐ元に戻れたし、俺は楽しかったぜ」
「へぇ…」
本当なのだろう。目を輝かせて語るサトシにシゲルは密かに(見たかったな)などと考えた。
「それで今度の魔法は?」
「そう、それなのよ」
リリーは改めてサトシを見た。
「今度の魔法『ポケモンが喋れるようになる魔法』にもピカチュウちゃんが必要なの」
ガバッとサトシの手をにぎる。
「お願い!ちょっとだけサトシ君のピカチュウちゃん貸してくれないかな?」
リリーの勢いに気圧されながらサトシは傍らへ視線を下ろした。
「俺はいいけど…ピカチュウ、お前は?」
「ピカッチュ」
OKとばかりにピカチュウが返事をした。
「ありがとう!」
リリーの顔が輝く。
「それじゃあ早速借りてくわね」
そう言ってピカチュウを抱き上げたと思うと、来た時と同様あっという間にどこかへ行ってしまった。
まるで嵐が過ぎ去ったようだった。サトシとシゲルはしばしポカンとした後
「じゃあ…研究所へ行こうか」
当初の目的地へと改めて向かう事にしたのだった。研究所はサトシが考えていたよりずっと大きなものだった。
物珍しそうにキョロキョロしているサトシを振り返ってシゲルが説明を始めた。
「ここではポケモンの繁殖について研究しているんだ」
そう言って大きなガラス越しに研究室に目をやった。
「ポケモンの生態については未だに分からないことが多い。ポケモンが卵を産むところさえまだ誰も見たことがないんだ」
そう言ってサトシに視線を戻した。
「稀少なポケモンをどうすれば守る事ができるのか、それを調べるためにここへ来たんだ」
サトシは改めて感心した。シゲルは自分の知らない事をいろいろ知っている。とても自分と同い年とは思えないくらいに…
「シゲル」
サトシに呼ばれてシゲルは立ち止まった。
「何だ?」
「俺も手伝えること無いかな」
多少シゲルと張り合う気持ちもあったかもしれない。
ありがとうと返しつつ、シゲルはからかうような表情になると
「…でもサトシに何が出来るんだ?」
と皮肉を言った。
サトシはムッとして
「俺だってやろうと思えば―」
「例えば?」
グッとサトシが詰まる。と、ここでいつもなら更にムキになったサトシをシゲルが適当にあしらって終わりなのだが
「じゃあ」
シゲルが悪戯な表情を浮かべた。
「僕の実験を手伝ってもらおうかな。それくらい出来るだろ?」
それくらい…いちいち頭にくる言い方だ。
「ああ」
キッとシゲルを睨む。
「何だって手伝ってやるさ!」
サトシの言葉にシゲルは不思議な表情を浮かべた。が、すぐにまたからかうような表情になると
「それじゃあ僕の部屋へ行こうか」
サトシを促したのだった。研究所の一室をシゲルは研究と宿泊を兼ねて借りていた。
「で、何を手伝えばいいんだ?」
相変わらずムスッとしたままのサトシに構わずシゲルが話し始めた。
「さっきも言ったが、ここではポケモンの繁殖について研究している」
シゲルは屈むと自分のカバンから小さな入れ物を取り出した。
「これはさっきここの研究員にもらった物だ」
ついさっき―2人が研究所に着いてすぐの事だ。シゲルは研究所の人間に呼び止められて、
何やら難しい話をしていた。もちろんサトシにはさっぱり理解できなかったのだが…
「これはポケモンの繁殖を促す目的でつくられた薬なんだ」
そう言うと意味深に微笑んだ。
「これをサトシに試してもらいたい」
「えっ!?」
サトシはギョッとすると
「でもそれ…ポケモンのハンショクのためにつくられた薬なんだろ?俺は人―」
「大丈夫」
シゲルが遮る。
「ポケモンに害の無い自然の成分で作られている。もちろん人間でも大丈夫だ」
そしてまた皮肉っぽく笑むと
「やっぱりサートシ君には無理かな?」
と挑発するのだった。そう言われては後には退けない。
「何でもやるって言っただろ」
サトシはムスッと返事をしたのだった。
で、どうするんだ?と言うサトシにシゲルはベッドの隅に寄りかかるよう指示した。
ベッドは木製でしっかりした造りだった。サトシは渋々ベッドの傍らに腰をおろすと隅に寄りかかった。
「手を後ろへ」
言われたとおり両手を背後にまわす。
シュルッという音が聞こえたと思うと片方の手―利き手の自由が唐突に奪われた。
「えっ」
慌てて手を退こうとしたが紐のようなものでしっかりと固定されてしまっていた。
「何を―」
「実験さ」
シゲルが言い放つ。ここにきてやっと多少の後悔を感じるも、サトシは強気に言い返そうとした。「どんな実験か知らないけど、これじゃ手伝えないだろ」
サトシの言葉を一向に気にする様子もなく、シゲルはサトシの前にまわるとゆっくり膝をつき、目を合わせてまたあの
悪戯な笑みを浮かべた。
「手伝えるさ。十分にね」
シゲルが手をのばす。反射的に体をずらそうとしたが、片手とはいえ後ろ手に縛られているためほとんど動けない。
手がスッと下がり、サトシのズボンにかかる。何をする気なのか…
シゲルの手がズボンのボタンをはずした。そのままファスナーもおろされる。
「お、おい」
片手での抵抗は意味をなさなかった。下着ごと脱がされる。
「何考えて―」
「言っただろ。薬を試すんだ」
あの小さな入れ物をひねって蓋が開けられた。中にはクリーム…
「もともとは粉末状だがこれはクリームに加工してある。通常は飲ませるんだが…」
ニヤリと笑った。
「塗っても効果がある」
指に塗り付けるとおもむろにサトシの脚を開いた。
「あっ」
裸の下半身が晒される。羞恥に抵抗する間もなく、思いも寄らない部分にその指があてられた。
「なっ!?」
信じられない思いから目を外すことができなかった。シゲルの指がゆっくりとサトシの後孔を犯してゆく。
「やめろ!」
初めて本気で抵抗するが難なくシゲルに抑え込まれた。
指は容赦なく奥まで挿れられた。と思うと突然抜かれる。だかすぐに再びクリームをのせると後孔に挿入された。
はあ…とサトシは息を吐き出す。次第に中の方で痒みに似た熱を感じ始めた。
(何だ…?)
感覚をやり過ごそうと腰が揺れる。
「おや」
シゲルの揶揄するような声。
「反応が早いな」
シゲルの眼前に首をもたげた自身が晒されている。
「やめろ…」
構うこと無くシゲルの行為は続けられた。やっとシゲルの手が止められた時には、たっぷりクリームを塗り込められたそこはひくついて熱を持っていた。
まるでシゲルの指を待っているようで恥ずかしい…しかしサトシの体の反応を確かめるとシゲルの手は止められてしまった。
「あ…」
治まらない感覚にシゲルの目を見る。相変わらずの悪戯な光を湛えた瞳。
「…どうして欲しいか言ってみろ」
サトシは力無く首を振った。
「そうか。じゃあ―」
シゲルの目が細められた。
「どうすればいいか教えてやる。楽になりたいだろ?」
サトシの顔が上がった。シゲルは顔を寄せるとサトシの耳に囁いた。
しばらくポカンとした後、サトシの顔が凍りついた。
「な―」
「方法はそれしか無い。放っておけば一週間はそのままだ」
驚愕のあまりシゲルが体から離れた事にも気付かなかった。
熱を持ったまま放置される苦しさ。サトシの頭をシゲルの言葉が反すうする。
(薬を中和…無効化させるには を使うんだ)
すぐには意味が分からなかった。が、まだ10才のサトシには当然の事だった。
(無効化するのに…)
実は今もはっきりと理解できた訳ではない。
サトシは無意識に自身…薬の影響を受けて震えている中心へ手を伸ばした。そしてそのまま握り締め
「は…あ」
夢中で手を上下させた。利き手ではないので思うように動かせないのがもどかしい。
シゲルの目線が鋭くなるがそれに気付く余裕はない。
「あ…ああっ」
下腹部が痙攣する。サトシは初めて自らの手で絶頂を迎えた。胸を上下させ荒く呼吸を繰り返す。
「うっ…」
当然これで薬の効果が消えることはなかった。
(無効化させるには を使う―)
シゲルの言葉が脳裏をよぎった。霞む目で自分の放ったものに濡れた手を見つめる。そして…夢中で自らの後孔に触れていた。
ゆっくりと自分の中に指が入っていく。さっきまで執拗にシゲルの指によって攻められていた場所を探った。
「あっ…はぁ…」
夢中で指先に力をこめると自らの放ったものを塗りつけた。
「…なるほどね」
息を詰めたように見つめていたシゲルから感嘆の声がもれた。
「自分のを使うとは思わなかったよ」
…ニヤリと笑う気配がした。
「でもその程度の量を間接的に塗ったくらいじゃ中和できないよ」
残念だったね…シゲルの言葉にサトシはうなだれた。
全部無駄だった。こんな恥ずかしい思いまでして…
「さて、もう一度聞くが…どうして欲しい?」
シゲルの楽しそうな声に言い返す気力もない。
「サートシ?」
でも…
「……む…」
サトシの弱々しい声。だがシゲルは聞こえないと言うように首を振った。
「……頼む…シゲル」
しばしの沈黙の後、自分に近寄る気配を感じた。「くぅ…っ…」
指とは違う圧倒的な質感に息が詰まる。それでもこれまでの行為によって慣らされたそこはシゲルのものを飲み込んで行く。
「…動くぞ」
シゲルの切羽詰まった声。追い詰められていたのは自分だけではないと気付く間もなく、律動が始まる。
「あっ…あっ……」
服の裾から入れられた手が胸を探り突起を指先で弄んだ。
「…!?」
突然唇に何かが触れ、驚いて目を開ける。至近距離にシゲルの顔…気付くより早く再び口付けられる。
「…ん…っ」
歯列を割り、舌が口腔を犯す。
やっと解放されるも、激しさを増した律動に息をつなぐ間も与えられない。
「あ……」
体が震え、絶頂の波に呑まれる。同時に体の中に一際熱いものを感じながらサトシは意識を手放した。
全く…
サトシは重い体をひきずるように歩いていた。
シゲルの言葉に簡単にのせられてしまう自分も悪いのだが…
「何でも手伝うって言っただろ?」
悪びれた様子も無くシゲルにそう言われ、言い返す気力も無かった。
もうポケモンセンターへ戻って休もう…
「あ、サトシ君」
今の自分とは正反対の明るい声。リリーだった。
「リリーさん」
「サトシ君どうかしたの?」
いえ…と返しつつ
「魔法はどうでしたか?ピカチュウは…」
えーと、それがね…言葉を濁すリリーの後ろに誰か立っているのに気が付いた。リリーの背後からおずおずと姿をあらわす。
サトシと同い年くらいの金髪の少年だった。サトシの様子をうかがうようにしながら、どこか困ったような表情をしている。
「あのね、魔法を試してみたんだけど…」
リリーの言葉を聞きながらサトシはまじまじと少年を見つめた。
明るい金髪…黄色と言ってもいいような色だ。2ヵ所ほどピョンと髪のはねている所がまるで耳のようで―「…ピカチュウ?」
「そう!」
さすが!というようにリリーが飛び跳ねる。
どうやら今回も魔法は失敗らしい。しかし
「人間になったって事は、喋れるようになったんですか?」
「それが…」
ピカチュウ?とサトシが目を向けると少年はおもむろに目を潤ませ、ガバッとサトシに抱きつくと
「ぴかぴ~」
情けない声を上げたのだった。
リリーによれば、今回の魔法もしばらくすれば自然にとけるとの事だった。
それはともかく
「これじゃしばらくバトルは出来ないな」
「そういう問題じゃ無いと思う…」
ヒカリが突っ込む。タケシはと言うと
「リリーさん…自分もお会いしたかったです…」
サトシについていかなかった事を全力で後悔している最中だ。
リリーと別れたあと、サトシは少年―ピカチュウをつれてポケモンセンターに戻ってきた。事情をタケシ達に伝えて今に至るのだが…
「それにしても」
ヒカリがピカチュウを見る。
「片時もサトシから離れないのね」
ピカチュウがサトシと常に一緒なのはいつもの事だ。しかし少年の姿でずっと寄り添っていると、やはり何か違和感があるのだった。
「ぴか…」
「気にするなピカチュウ。お前はいつも通りにしてればいいんだぜ」
「そうそう」
ヒカリも慌ててフォローを入れる。
「しばらくすれば魔法もとけるんでしょ?だったらそれまで楽しまなくっちゃ!」
「そうだな」
いつの間にか復活したタケシも傍らでうなずいていた。
「よし!そうと決まれば今日はもう休むぞ」
「ああ。俺も疲れたし…」
「休憩もとらないで特訓なんかするからよ」
ヒカリの言葉に何故か口ごもるサトシに他の面々が気付くことも無く、4人は寝室へと向かったのだった。ベッドは3人分しか無いのだが、ピカチュウは先ほどの事を気にしているのか躊躇っているようだった。
「ピカチュウ来いよ」
サトシはポンポンと自分の横をたたいて見せた。まだ少し躊躇した後、ピカチュウはそっとサトシの隣りに来た。
「ぴかぁ…?」
「大丈夫だって。このベッド大きいし」
それからフッと笑った。
「ポケモンが喋れるようになる魔法か。よく考えたら俺たちには必要なかったかもな」
そしていつものように「おやすみ」と言うと目をつぶってすぐに寝息を立て始めた。
ピカチュウはすぐには眠れず、しばらくサトシの言った事を考えていた。
確かに自分には喋る魔法は必要なかったかもしれない。言葉が無くてもサトシならいつだって自分の言いたい事を分かってくれる。
(でも)
もし話せたら一度だけ…
(サトシ、って呼んでみたかった)
そんな事を考えながらゆっくり眠りへと落ちていった。
翌朝4人が出掛ける支度をしていると扉がスッと開き
「あなたたち、お客さんよ」
「ジョーイさああん!」
一瞬にしてテンションの上がったタケシを朝一番グレッグルが見事に仕留めた話は省略して―
ロビーに出た4人を待っていたのはシゲルだった。
昨日の今日でサトシは思わず警戒態勢に入るが
「あっ、川柳の人のお孫さん!」
お約束のヒカリの反応に体の力が抜ける。
「シゲルもこの街へ来てたのか」
「ああ、昨日着いたんだ」
な?とサトシに目をやった。
「ああ…」
無愛想に言葉を返すサトシに、話を聞かされていなかったタケシは「知ってたのか?」と訝った。
「何の用だ」
「良かったらサトシ達に研究所を案内しようと思ってね」
“達”という言葉にサトシは少しホッとする。
「研究所か」
「行ってみたい!」
サトシは既に昨日案内されていたのだが、2人の反応に仕方なく付き合うことにした。
と、ふとシゲルの目が自分の隣りに向いているのに気付いた。
「サトシ、その…」
「あ―」
と突然ヒカリが話に割り込んできた。
「えと、サトシの友達でピ…ヒカルっていうの」
「ね?」と強引に話を通してしまった。
研究所に向かう途中「何で隠したんだ?」と訊いたタケシに
「だって研究所でしょ」
ばれたら実験材料にされちゃうかもしれないじゃない!真顔で言うヒカリにタケシは(うーん…)と微妙な反応を返した。一通り昨日と同じ所を案内された後、今度は実際に実験を行っている部屋に通された。
「うわあ!」
実験で産まれた小さなポケモン達が巣のようなケースから身を乗り出している。
「可愛い~!」
「さわってもいいよ」
巣から落っこちそうになったサンドを抱き上げながらシゲルが言った。
嬉しそうにヒカリがポケモンを腕に抱く。タケシも…そしてサトシに至っては既にポケモンに夢中で昨日の事などすっかり忘れてしまったようだ。
ところで先ほどから静かなピ…ヒカルだが
「彼は風邪をひいてて声が出ないの」
というヒカリの言葉に従ってサトシの側で大人しくしているのだった。
「さて」
シゲルが皆を見た。
「あちこち連れまわされて疲れたんじゃないかい?」
「いや。色々と珍しいものを見せてもらって楽しませてもらってるよ」
「それは良かった」
タケシの言葉に頷く。
「でもそろそろ休憩しよう。食堂で飲み物でも出すよ」
そう言うと4人を連れて実験ルームを後にした。
途中、大勢の研究員の団体にぶつかった。
5人は隅に寄ってやり過ごそうとしたが、研究員の1人がシゲルに気付いて声をかけてきた。そしてそのままサトシ達には分からない難しい話を始める。
「すごいわね…」
とても10才に見えない…4人は邪魔にならないよう道をあけながらシゲルを待った。
「…すまない」
行こうか、とシゲルが再びサトシ達を促して歩き出した。
じきに食堂が見えてくる。と
「あら?」
ヒカリの声に全員が足を止めた。
「どうした?」
「ヒカルがいないわ」
皆の目がサトシの隣に向く。
「本当だ」
ずっと黙ってサトシに寄り添うようにしていたのに、辺りを見回してもどこにも見当たらない。
「きっとさっきの所ではぐれたんだ」
さっき…研究員達とすれ違った所だ。4人は急いで先ほどの場所へ行ってみたが、ヒカルの姿はどこにも見あたらなかった。
「どこに行ったのかしら…」
「きっと研究所の人たちに紛れてしまったんだ。シゲル、研究所内にアナウンスを流せないか?」
「頼んでみる」
シゲルが頷く。
「俺たちも手分けして探そう」
4人は別れてそれぞれヒカルを探すことにした。「おーい」
ピカチューと続けたいが「ヒ・カ・ルよ」いい?とヒカリにしっかり念を押されてしまったのでそうもいかない。
「ヒカリとかヒカルだとか…ややこしいんだよな」
そう零しつつ心当たりを探して歩いた。と言っても昨日今日とシゲルに案内された所くらいしか分からないのだが…
グルグル歩くうちに結局同じ場所に出てしまった所でばったりシゲルに会った。
「サトシ、見つかったか?」
「いや」
首を振る。
「こっちもだ。今放送で呼んでもらってるが…」
とここで突然シゲルが話題を変えた。
「ところで彼…ヒカルとはいつ出会ったんだ?」
「あー…」
ヒカリに釘を差されたことを思い出す。しかし考えてみればシゲルには隠す必要が無いように思えた。
「実はヒカルは」
サトシは話しておくことにした。と
「ピカチュウなんだろ?」
驚いてシゲルの顔を見る。
「知ってたのか?」
「ああ、確証はなかったけどね」
そういえば昨日シゲルもリリーに会っている。サトシがピカチュウになった話もリリーから聞いていた。
「だからもしかしてと思ってたんだ」
さすがはシゲルだ。
「ごめん、隠すつもりじゃなかったんだ。『実験材料にされちゃうんじゃないか』ってヒカリが」
シゲルが苦笑する。
「そういう生物実験はしないよ。ポケモンを保護するのが目的だからね」
そう言うと何かを差し出した。
「食堂から持ってきた。少し飲んで休憩しないか?」
ペットボトルのジュースだった。
「ありがとう」
受け取ったサトシは口をつけようとして、ふと止まった。
またゾロゾロと研究員達が歩いてくる。
「あ…」
「シゲル君ちょうど良かった」
所長が探していたよ、と言うと何故か一瞬シゲルは渋い顔をしたあと
「わかりました。…サトシ悪いけどちょっとここで待っててくれないか」
そう言って急ぎ足で去っていった。
ここで待ってろって言っても…手元のジュースをチラッと見たあと、
「…やっぱりピカチュウを探さなくちゃ」
サトシは再び歩き出した。
さて当のピカチュウはというと、案の定研究員達に紛れすっかりサトシ達からはぐれていた。
「ぴかぴ…」
心もとない様子でキョロキョロしていると
「きみ!」
突然声をかけられた。
ツカツカと研究員が近寄ってくると
「見かけない顔だな…どこから入った?」
疑わしげにジロジロと視線を投げ掛けてきた。
説明しようにもピカチュウの言葉では通じない。ふとヒカリの言葉が頭をよぎる。
“実験材料に―”
ぞわっと背筋を冷たいものが走った。
「あ、おい―」
気付くと走り出していた。背後から制止の声が聞こえたような気がしたが、ピカチュウの頭は逃げる事でいっぱいだった。
「あの、すいません」
「はい?」
書類を片手に女性研究員が振り向く。
「金髪の…こういう髪型の男の子見ませんでしたか?」
身振り手振りサトシが質問する。
「さっき放送で言ってた子ね。ごめんなさい…私は見てないわ」
「そうですか」
ありがとうございますと言って去ろうとした時、男性の研究員が歩いてきた。
「あら、どこに行ってたの?」
「ああ、今…」と目つきの鋭い研究員は
「そこで妙な少年に会ったんだ」
声を掛けたら逃げられてしまって、とそこまで言ってサトシ達の視線に気付く。
「なんだ?」
「あの…その子、金髪でこういう髪型じゃないですか?」
サトシのジェスチャーに「ああ、そうそう」と頷く。サトシは女性研究員と顔を合わせると
「すいません!そいつどっちへ行きました?」
男性から方角を聞いて急いで向かった。
背後から「あなたちゃんと放送聞いてないの?」と男性が注意されている声が聞こえてきた。
「あっちへ走っていったよ」研究員の言った方向には薄暗い廊下が続いていた。
「ピカチュウどこだー?」
ひと気が無いので遠慮なく名前を呼ぶ。と、
“ガチャンッ”
部屋の一つから物音がした。
サトシはその部屋…上に倉庫と書かれていた…の前に立つとそっと扉を開いた。
「…ピカチュウ」
中で怯えたように頭を抱えて座り込んでいるヒカルがいた。
サトシが近付くとゆっくり顔を上げ
「……ぴかぴっ!」
立ち上がって思いきりサトシに抱きついた。
支えきれずサトシがよろめく。そして2人仲良くひっくり返ってしまった。
「いてて…」
あわててサトシの上からどいたヒカルは心配そうに覗き込んだ。
「ぴぃかちゅう?」
人間になってポケモンだった時との感覚の違いにまだ慣れられずにいるようだ。
「大丈夫大丈夫」
ヒカルを安心させようとサトシは笑って見せた。
「良かった、こんな所にいたのか。さっきはなんで逃げたんだ?」
サトシの質問にヒカルは身振り手振り、得意の形態模写も交えて経緯を説明した。
「なるほどな。でも…」サトシは少し苦笑して
「実はさっきシゲルにお前の事話したんだ。そしたら『実験材料になんかしない』って。この研究所の目的はポケモンを保護することなんだってさ」
そう言ってふとシゲルにもらったジュースのことを思い出した。
「そう言えばこれ、さっきシゲルにもらったんだった。お前も一緒に飲むか?」
ぴっか!と嬉しそうな声が返ってくる。サトシはペットボトルの蓋に手をかけた。「ぷはー」
ジュースを飲み終えたサトシが息をついた。ヒカルはもう先に半分飲んで、隣に座っている。
「なんか不思議な味のジュースだったな」
な、ピカチュウ。そう言って横を見ると、ピカチュウ…ヒカルのどこかぼんやりとした目にぶつかった。
「ピカチュウ?」
声を掛けると緩慢な動作で頷いてみせる。
「お前―」
大丈夫か?そう聞こうとしたサトシにも突如変化が訪れた。
体が熱い…そしてその熱さには覚えがあった。昨日の『あの』薬だ。
まさか…ペットボトルを見る。これを渡したのはシゲルだ。という事は
『通常は飲ませるんだが―』
「っ!あいつ…」
あんな状況で…飲ませてどうするつもりだったのか。
「ピカチュウ、大丈夫か?」
熱っぽく潤んだ瞳がサトシを見る。
「多分さっきのジュースに薬が入ってたんだ。ごめん、気が付かなくて…」
唯一の救いはポケモンに害の無い薬だという事くらいだ。
しかしヒカルは次第に呼吸が荒くなり、辛そうに肩を揺らし始めた。もしかしたら…もともとはポケモンの繁殖用の薬だ。
効果がサトシよりも強いのかもしれない。
このままにしておけない。サトシは助けを呼びに立ち上がろうとした。その時
突然強い力で手首をつかまれサトシはよろめいた。
「…っ!」
ドサッと床に倒れる。そのまま自分の上に覆い被さってくる気配。
「な…」
目を開けたサトシは熱い視線が間近にまで迫って来ている事に驚いた。
「どうしたんだ、ピ―」
最後まで言えなかった。口付けられ、口腔を犯される。
胸を手で押し返そうとしたが渾身の力で床へ押さえ込まれてしまった。
「駄目だ!」
しかしヒカルに声は届かなかった。
服の裾から手が差し入れられ胸を這う。足の間に入り込んだヒカルの足がサトシの中心を刺激した。
「あ…っ…」
耐え難い感覚に声を上げてしまう。昨日さんざんシゲルに攻められた場所が疼いた。
サトシもまた薬に翻弄されかかっていた。
霞む目で自分に覆い被さるヒカルを見る。ヒカルの表情はとても辛そうで瞳は熱く潤んでいた。
しばらくサトシは荒い呼吸を繰り返しながら黙っていた。
サトシの反応を引き出そうとヒカルは行為をエスカレートさせようとした。
「…ピカチュウ」
サトシの場違いな程に静かな声がヒカルの動きを止めた。恐る恐る顔を上げサトシを見る。
すっとサトシの手が上がり、ヒカルは思わず首をすくめた。
だが予想に反して手はヒカルの頭に触れると優しく撫で始めた。
「辛いよな」
サトシの優しい声。
「俺だって昨日は本当に…」
昨日?首を傾げるヒカルに慌てて咳払いをする。
「ともかく」
サトシは改めてヒカルを見た。
「もう我慢しなくていいぜ」
俺も正直キツいし、と苦笑する。
「来いよ」
サトシの了承の言葉にホッとしたような表情を浮かべると、ヒカルは再びサトシに覆い被さった。裸の胸をヒカルの手が這う。胸の突起をつまむともう片方へは顔を寄せ、そっと口に含んだ。
「ん…」
声を抑えようとするサトシを攻めるようにきつく吸い上げる。
サトシの裸の下肢がうごめいた。探るようにヒカルの手が下りる。
「あっ」
既に高ぶりを見せる中心に手が添えられ、そのままゆっくり上下する。
サトシが体を震わす。手の動きを速めると、呆気なく吐精した。
恥ずかしいのか目元を隠しているサトシの腕をどけると、ぼんやりと潤む瞳がヒカルを見た。
「俺ばっか…」
「ぴかぴ」
どうしたらいい?ヒカルには分からないのだろう。困惑し、切羽詰まった目が訴える。
正直サトシにもよく分からない。でも…昨日のシゲルとの行為を思い出す。
自分が出来る事―
「ちょっと待っててくれよ」
な?そう言ってサトシはヒカルの頭に触れた。
指を唾液で濡らす。一瞬躊躇した後、その指を自らの後孔にあてがった。
「はあ…」
ゆっくりと指を沈めていく。昨日とは違い利き手なので、気が付くと自分の善い所を探るように夢中で手を動かしていた。
「ぴかぴ…」
息を呑むように見つめていたヒカルの熱っぽい声にハッとする。
「ごめん」
慌てて謝ると、サトシは指を引き抜いた。
そして…恥ずかしさを押し殺しつつヒカルのものに手を触れた。
「っ!?」
「これを」
さっきんとこに…これ以上ないという位赤くなりながらヒカルに伝えた。
そっと足を開く。サトシの両膝裏に手をやりながらヒカルが足の間に入った。そして…
先端をあてがい、ゆっくり埋めて行く。
「あっ…く…」
サトシの苦悶にも似た表情にヒカルがためらう。が
「大丈夫だから…」
サトシの言葉に再び体を進めた。
根元までサトシの中に収まった。2人の荒い息遣いがシンとした部屋に響く。
熱に浮かされたように瞳を交わす。無言のまま律動が始まった。
「あっ…はぁ…っ」
サトシもヒカルも夢中だった。
下腹部が痙攣し一度目の絶頂を迎える。
「くっ…ああぁ!」
内部が収縮しヒカルのものを締め付ける。同時にサトシは中に熱いものが広がるのを感じた。
荒い呼吸と共に上下するサトシの胸をヒカルの手が這う。
まだ先ほどの余韻が消えないうちに二度目の律動が始まった。
「あ……も…っと…ゆっくり…」
しかし抑えきれないと言うように動きは激しさを増した。角度を変え、深く突き上げられる。
サトシは息をするのもままならず喘いだ。
「あ…」
体内で形を感じ取れるほど、硬度の増したものに深く犯される。
瞬間、目の前が真っ白になった。声にならない嬌声―
唇に触れる感触……「サトシ…」と呼ぶ声を聞いた気がした。
「さあ出発するぞ」
一週間ほど滞在して今日は街を出ることになっていた。
シゲルは2日前に出発して街を出る前にサトシ達に挨拶していったのだが
「じゃあ…またな、サトシ」
相変わらず悪びれる様子も無く、意味深な笑顔を残していったのだった。
「さあて、次の街は…っと!?」
目の前をゆく人物にタケシの目の色が変わる。
「リリーさああん!」
一瞬にしてテンションの上がったタケシをグレッグルが―(略)
「あら、サトシ君」
ピカチュウちゃん元にもどったのね、と微笑むリリーにサトシは「はい」と頷いた。
前回のサトシの時と同様、ピカチュウの魔法は暫くして自然にとけたのだった。
「リリーさん、あれから魔法は完成しましたか?」
ううん…と残念そうに首を振る、が
「でも諦めたわけじゃないの。かならず成功させてみせるわ!」
全くめげる様子の無いリリーにサトシ達は「頑張ってください」と応援の言葉をおくった。
リリーが再びサトシを見て微笑む。
「魔法が完成した暁にはぜひ、またサトシ君のピカチュウちゃんにかけさせてね」
リリーの言葉にサトシは「はい…」と少々苦笑したのだった。ピカチュウはというと―
「ピカッチュ」
サトシの肩の上から嬉しそうに手をあげてみせたのであった。
( 終 )
3人は手近な石に腰をおろしてリリーの話を聞いていた。
「その名もズバリ!『ポケモンが喋れるようになる魔法』よ」
「「『ポケモンが喋れるようになる魔法』?」」
以前は…サトシは記憶を辿った。
『ポケモンの気持ちが分かる魔法』それを完成させるにはピカチュウの“十万ボルト”が必要だと聞き
サトシ達はリリーに力を貸したのだった。そして
「俺がピカチュウになったんだっけ」
「はぁ?」
サトシの呟きにシゲルが妙な声を出す。
「前にね」
リリーが説明役を買って出る。
「サトシ君に『ポケモンの気持ちが分かる魔法』をかけさせてもらった事があるの。でも魔法が不完全で…
サトシ君がピカチュウになっちやったの」
「でもすぐ元に戻れたし、俺は楽しかったぜ」
「へぇ…」
本当なのだろう。目を輝かせて語るサトシにシゲルは密かに(見たかったな)などと考えた。
「それで今度の魔法は?」
「そう、それなのよ」
リリーは改めてサトシを見た。
「今度の魔法『ポケモンが喋れるようになる魔法』にもピカチュウちゃんが必要なの」
ガバッとサトシの手をにぎる。
「お願い!ちょっとだけサトシ君のピカチュウちゃん貸してくれないかな?」
リリーの勢いに気圧されながらサトシは傍らへ視線を下ろした。
「俺はいいけど…ピカチュウ、お前は?」
「ピカッチュ」
OKとばかりにピカチュウが返事をした。
「ありがとう!」
リリーの顔が輝く。
「それじゃあ早速借りてくわね」
そう言ってピカチュウを抱き上げたと思うと、来た時と同様あっという間にどこかへ行ってしまった。
まるで嵐が過ぎ去ったようだった。サトシとシゲルはしばしポカンとした後
「じゃあ…研究所へ行こうか」
当初の目的地へと改めて向かう事にしたのだった。研究所はサトシが考えていたよりずっと大きなものだった。
物珍しそうにキョロキョロしているサトシを振り返ってシゲルが説明を始めた。
「ここではポケモンの繁殖について研究しているんだ」
そう言って大きなガラス越しに研究室に目をやった。
「ポケモンの生態については未だに分からないことが多い。ポケモンが卵を産むところさえまだ誰も見たことがないんだ」
そう言ってサトシに視線を戻した。
「稀少なポケモンをどうすれば守る事ができるのか、それを調べるためにここへ来たんだ」
サトシは改めて感心した。シゲルは自分の知らない事をいろいろ知っている。とても自分と同い年とは思えないくらいに…
「シゲル」
サトシに呼ばれてシゲルは立ち止まった。
「何だ?」
「俺も手伝えること無いかな」
多少シゲルと張り合う気持ちもあったかもしれない。
ありがとうと返しつつ、シゲルはからかうような表情になると
「…でもサトシに何が出来るんだ?」
と皮肉を言った。
サトシはムッとして
「俺だってやろうと思えば―」
「例えば?」
グッとサトシが詰まる。と、ここでいつもなら更にムキになったサトシをシゲルが適当にあしらって終わりなのだが
「じゃあ」
シゲルが悪戯な表情を浮かべた。
「僕の実験を手伝ってもらおうかな。それくらい出来るだろ?」
それくらい…いちいち頭にくる言い方だ。
「ああ」
キッとシゲルを睨む。
「何だって手伝ってやるさ!」
サトシの言葉にシゲルは不思議な表情を浮かべた。が、すぐにまたからかうような表情になると
「それじゃあ僕の部屋へ行こうか」
サトシを促したのだった。研究所の一室をシゲルは研究と宿泊を兼ねて借りていた。
「で、何を手伝えばいいんだ?」
相変わらずムスッとしたままのサトシに構わずシゲルが話し始めた。
「さっきも言ったが、ここではポケモンの繁殖について研究している」
シゲルは屈むと自分のカバンから小さな入れ物を取り出した。
「これはさっきここの研究員にもらった物だ」
ついさっき―2人が研究所に着いてすぐの事だ。シゲルは研究所の人間に呼び止められて、
何やら難しい話をしていた。もちろんサトシにはさっぱり理解できなかったのだが…
「これはポケモンの繁殖を促す目的でつくられた薬なんだ」
そう言うと意味深に微笑んだ。
「これをサトシに試してもらいたい」
「えっ!?」
サトシはギョッとすると
「でもそれ…ポケモンのハンショクのためにつくられた薬なんだろ?俺は人―」
「大丈夫」
シゲルが遮る。
「ポケモンに害の無い自然の成分で作られている。もちろん人間でも大丈夫だ」
そしてまた皮肉っぽく笑むと
「やっぱりサートシ君には無理かな?」
と挑発するのだった。そう言われては後には退けない。
「何でもやるって言っただろ」
サトシはムスッと返事をしたのだった。
で、どうするんだ?と言うサトシにシゲルはベッドの隅に寄りかかるよう指示した。
ベッドは木製でしっかりした造りだった。サトシは渋々ベッドの傍らに腰をおろすと隅に寄りかかった。
「手を後ろへ」
言われたとおり両手を背後にまわす。
シュルッという音が聞こえたと思うと片方の手―利き手の自由が唐突に奪われた。
「えっ」
慌てて手を退こうとしたが紐のようなものでしっかりと固定されてしまっていた。
「何を―」
「実験さ」
シゲルが言い放つ。ここにきてやっと多少の後悔を感じるも、サトシは強気に言い返そうとした。「どんな実験か知らないけど、これじゃ手伝えないだろ」
サトシの言葉を一向に気にする様子もなく、シゲルはサトシの前にまわるとゆっくり膝をつき、目を合わせてまたあの
悪戯な笑みを浮かべた。
「手伝えるさ。十分にね」
シゲルが手をのばす。反射的に体をずらそうとしたが、片手とはいえ後ろ手に縛られているためほとんど動けない。
手がスッと下がり、サトシのズボンにかかる。何をする気なのか…
シゲルの手がズボンのボタンをはずした。そのままファスナーもおろされる。
「お、おい」
片手での抵抗は意味をなさなかった。下着ごと脱がされる。
「何考えて―」
「言っただろ。薬を試すんだ」
あの小さな入れ物をひねって蓋が開けられた。中にはクリーム…
「もともとは粉末状だがこれはクリームに加工してある。通常は飲ませるんだが…」
ニヤリと笑った。
「塗っても効果がある」
指に塗り付けるとおもむろにサトシの脚を開いた。
「あっ」
裸の下半身が晒される。羞恥に抵抗する間もなく、思いも寄らない部分にその指があてられた。
「なっ!?」
信じられない思いから目を外すことができなかった。シゲルの指がゆっくりとサトシの後孔を犯してゆく。
「やめろ!」
初めて本気で抵抗するが難なくシゲルに抑え込まれた。
指は容赦なく奥まで挿れられた。と思うと突然抜かれる。だかすぐに再びクリームをのせると後孔に挿入された。
はあ…とサトシは息を吐き出す。次第に中の方で痒みに似た熱を感じ始めた。
(何だ…?)
感覚をやり過ごそうと腰が揺れる。
「おや」
シゲルの揶揄するような声。
「反応が早いな」
シゲルの眼前に首をもたげた自身が晒されている。
「やめろ…」
構うこと無くシゲルの行為は続けられた。やっとシゲルの手が止められた時には、たっぷりクリームを塗り込められたそこはひくついて熱を持っていた。
まるでシゲルの指を待っているようで恥ずかしい…しかしサトシの体の反応を確かめるとシゲルの手は止められてしまった。
「あ…」
治まらない感覚にシゲルの目を見る。相変わらずの悪戯な光を湛えた瞳。
「…どうして欲しいか言ってみろ」
サトシは力無く首を振った。
「そうか。じゃあ―」
シゲルの目が細められた。
「どうすればいいか教えてやる。楽になりたいだろ?」
サトシの顔が上がった。シゲルは顔を寄せるとサトシの耳に囁いた。
しばらくポカンとした後、サトシの顔が凍りついた。
「な―」
「方法はそれしか無い。放っておけば一週間はそのままだ」
驚愕のあまりシゲルが体から離れた事にも気付かなかった。
熱を持ったまま放置される苦しさ。サトシの頭をシゲルの言葉が反すうする。
(薬を中和…無効化させるには を使うんだ)
すぐには意味が分からなかった。が、まだ10才のサトシには当然の事だった。
(無効化するのに…)
実は今もはっきりと理解できた訳ではない。
サトシは無意識に自身…薬の影響を受けて震えている中心へ手を伸ばした。そしてそのまま握り締め
「は…あ」
夢中で手を上下させた。利き手ではないので思うように動かせないのがもどかしい。
シゲルの目線が鋭くなるがそれに気付く余裕はない。
「あ…ああっ」
下腹部が痙攣する。サトシは初めて自らの手で絶頂を迎えた。胸を上下させ荒く呼吸を繰り返す。
「うっ…」
当然これで薬の効果が消えることはなかった。
(無効化させるには を使う―)
シゲルの言葉が脳裏をよぎった。霞む目で自分の放ったものに濡れた手を見つめる。そして…夢中で自らの後孔に触れていた。
ゆっくりと自分の中に指が入っていく。さっきまで執拗にシゲルの指によって攻められていた場所を探った。
「あっ…はぁ…」
夢中で指先に力をこめると自らの放ったものを塗りつけた。
「…なるほどね」
息を詰めたように見つめていたシゲルから感嘆の声がもれた。
「自分のを使うとは思わなかったよ」
…ニヤリと笑う気配がした。
「でもその程度の量を間接的に塗ったくらいじゃ中和できないよ」
残念だったね…シゲルの言葉にサトシはうなだれた。
全部無駄だった。こんな恥ずかしい思いまでして…
「さて、もう一度聞くが…どうして欲しい?」
シゲルの楽しそうな声に言い返す気力もない。
「サートシ?」
でも…
「……む…」
サトシの弱々しい声。だがシゲルは聞こえないと言うように首を振った。
「……頼む…シゲル」
しばしの沈黙の後、自分に近寄る気配を感じた。「くぅ…っ…」
指とは違う圧倒的な質感に息が詰まる。それでもこれまでの行為によって慣らされたそこはシゲルのものを飲み込んで行く。
「…動くぞ」
シゲルの切羽詰まった声。追い詰められていたのは自分だけではないと気付く間もなく、律動が始まる。
「あっ…あっ……」
服の裾から入れられた手が胸を探り突起を指先で弄んだ。
「…!?」
突然唇に何かが触れ、驚いて目を開ける。至近距離にシゲルの顔…気付くより早く再び口付けられる。
「…ん…っ」
歯列を割り、舌が口腔を犯す。
やっと解放されるも、激しさを増した律動に息をつなぐ間も与えられない。
「あ……」
体が震え、絶頂の波に呑まれる。同時に体の中に一際熱いものを感じながらサトシは意識を手放した。
全く…
サトシは重い体をひきずるように歩いていた。
シゲルの言葉に簡単にのせられてしまう自分も悪いのだが…
「何でも手伝うって言っただろ?」
悪びれた様子も無くシゲルにそう言われ、言い返す気力も無かった。
もうポケモンセンターへ戻って休もう…
「あ、サトシ君」
今の自分とは正反対の明るい声。リリーだった。
「リリーさん」
「サトシ君どうかしたの?」
いえ…と返しつつ
「魔法はどうでしたか?ピカチュウは…」
えーと、それがね…言葉を濁すリリーの後ろに誰か立っているのに気が付いた。リリーの背後からおずおずと姿をあらわす。
サトシと同い年くらいの金髪の少年だった。サトシの様子をうかがうようにしながら、どこか困ったような表情をしている。
「あのね、魔法を試してみたんだけど…」
リリーの言葉を聞きながらサトシはまじまじと少年を見つめた。
明るい金髪…黄色と言ってもいいような色だ。2ヵ所ほどピョンと髪のはねている所がまるで耳のようで―「…ピカチュウ?」
「そう!」
さすが!というようにリリーが飛び跳ねる。
どうやら今回も魔法は失敗らしい。しかし
「人間になったって事は、喋れるようになったんですか?」
「それが…」
ピカチュウ?とサトシが目を向けると少年はおもむろに目を潤ませ、ガバッとサトシに抱きつくと
「ぴかぴ~」
情けない声を上げたのだった。
リリーによれば、今回の魔法もしばらくすれば自然にとけるとの事だった。
それはともかく
「これじゃしばらくバトルは出来ないな」
「そういう問題じゃ無いと思う…」
ヒカリが突っ込む。タケシはと言うと
「リリーさん…自分もお会いしたかったです…」
サトシについていかなかった事を全力で後悔している最中だ。
リリーと別れたあと、サトシは少年―ピカチュウをつれてポケモンセンターに戻ってきた。事情をタケシ達に伝えて今に至るのだが…
「それにしても」
ヒカリがピカチュウを見る。
「片時もサトシから離れないのね」
ピカチュウがサトシと常に一緒なのはいつもの事だ。しかし少年の姿でずっと寄り添っていると、やはり何か違和感があるのだった。
「ぴか…」
「気にするなピカチュウ。お前はいつも通りにしてればいいんだぜ」
「そうそう」
ヒカリも慌ててフォローを入れる。
「しばらくすれば魔法もとけるんでしょ?だったらそれまで楽しまなくっちゃ!」
「そうだな」
いつの間にか復活したタケシも傍らでうなずいていた。
「よし!そうと決まれば今日はもう休むぞ」
「ああ。俺も疲れたし…」
「休憩もとらないで特訓なんかするからよ」
ヒカリの言葉に何故か口ごもるサトシに他の面々が気付くことも無く、4人は寝室へと向かったのだった。ベッドは3人分しか無いのだが、ピカチュウは先ほどの事を気にしているのか躊躇っているようだった。
「ピカチュウ来いよ」
サトシはポンポンと自分の横をたたいて見せた。まだ少し躊躇した後、ピカチュウはそっとサトシの隣りに来た。
「ぴかぁ…?」
「大丈夫だって。このベッド大きいし」
それからフッと笑った。
「ポケモンが喋れるようになる魔法か。よく考えたら俺たちには必要なかったかもな」
そしていつものように「おやすみ」と言うと目をつぶってすぐに寝息を立て始めた。
ピカチュウはすぐには眠れず、しばらくサトシの言った事を考えていた。
確かに自分には喋る魔法は必要なかったかもしれない。言葉が無くてもサトシならいつだって自分の言いたい事を分かってくれる。
(でも)
もし話せたら一度だけ…
(サトシ、って呼んでみたかった)
そんな事を考えながらゆっくり眠りへと落ちていった。
翌朝4人が出掛ける支度をしていると扉がスッと開き
「あなたたち、お客さんよ」
「ジョーイさああん!」
一瞬にしてテンションの上がったタケシを朝一番グレッグルが見事に仕留めた話は省略して―
ロビーに出た4人を待っていたのはシゲルだった。
昨日の今日でサトシは思わず警戒態勢に入るが
「あっ、川柳の人のお孫さん!」
お約束のヒカリの反応に体の力が抜ける。
「シゲルもこの街へ来てたのか」
「ああ、昨日着いたんだ」
な?とサトシに目をやった。
「ああ…」
無愛想に言葉を返すサトシに、話を聞かされていなかったタケシは「知ってたのか?」と訝った。
「何の用だ」
「良かったらサトシ達に研究所を案内しようと思ってね」
“達”という言葉にサトシは少しホッとする。
「研究所か」
「行ってみたい!」
サトシは既に昨日案内されていたのだが、2人の反応に仕方なく付き合うことにした。
と、ふとシゲルの目が自分の隣りに向いているのに気付いた。
「サトシ、その…」
「あ―」
と突然ヒカリが話に割り込んできた。
「えと、サトシの友達でピ…ヒカルっていうの」
「ね?」と強引に話を通してしまった。
研究所に向かう途中「何で隠したんだ?」と訊いたタケシに
「だって研究所でしょ」
ばれたら実験材料にされちゃうかもしれないじゃない!真顔で言うヒカリにタケシは(うーん…)と微妙な反応を返した。一通り昨日と同じ所を案内された後、今度は実際に実験を行っている部屋に通された。
「うわあ!」
実験で産まれた小さなポケモン達が巣のようなケースから身を乗り出している。
「可愛い~!」
「さわってもいいよ」
巣から落っこちそうになったサンドを抱き上げながらシゲルが言った。
嬉しそうにヒカリがポケモンを腕に抱く。タケシも…そしてサトシに至っては既にポケモンに夢中で昨日の事などすっかり忘れてしまったようだ。
ところで先ほどから静かなピ…ヒカルだが
「彼は風邪をひいてて声が出ないの」
というヒカリの言葉に従ってサトシの側で大人しくしているのだった。
「さて」
シゲルが皆を見た。
「あちこち連れまわされて疲れたんじゃないかい?」
「いや。色々と珍しいものを見せてもらって楽しませてもらってるよ」
「それは良かった」
タケシの言葉に頷く。
「でもそろそろ休憩しよう。食堂で飲み物でも出すよ」
そう言うと4人を連れて実験ルームを後にした。
途中、大勢の研究員の団体にぶつかった。
5人は隅に寄ってやり過ごそうとしたが、研究員の1人がシゲルに気付いて声をかけてきた。そしてそのままサトシ達には分からない難しい話を始める。
「すごいわね…」
とても10才に見えない…4人は邪魔にならないよう道をあけながらシゲルを待った。
「…すまない」
行こうか、とシゲルが再びサトシ達を促して歩き出した。
じきに食堂が見えてくる。と
「あら?」
ヒカリの声に全員が足を止めた。
「どうした?」
「ヒカルがいないわ」
皆の目がサトシの隣に向く。
「本当だ」
ずっと黙ってサトシに寄り添うようにしていたのに、辺りを見回してもどこにも見当たらない。
「きっとさっきの所ではぐれたんだ」
さっき…研究員達とすれ違った所だ。4人は急いで先ほどの場所へ行ってみたが、ヒカルの姿はどこにも見あたらなかった。
「どこに行ったのかしら…」
「きっと研究所の人たちに紛れてしまったんだ。シゲル、研究所内にアナウンスを流せないか?」
「頼んでみる」
シゲルが頷く。
「俺たちも手分けして探そう」
4人は別れてそれぞれヒカルを探すことにした。「おーい」
ピカチューと続けたいが「ヒ・カ・ルよ」いい?とヒカリにしっかり念を押されてしまったのでそうもいかない。
「ヒカリとかヒカルだとか…ややこしいんだよな」
そう零しつつ心当たりを探して歩いた。と言っても昨日今日とシゲルに案内された所くらいしか分からないのだが…
グルグル歩くうちに結局同じ場所に出てしまった所でばったりシゲルに会った。
「サトシ、見つかったか?」
「いや」
首を振る。
「こっちもだ。今放送で呼んでもらってるが…」
とここで突然シゲルが話題を変えた。
「ところで彼…ヒカルとはいつ出会ったんだ?」
「あー…」
ヒカリに釘を差されたことを思い出す。しかし考えてみればシゲルには隠す必要が無いように思えた。
「実はヒカルは」
サトシは話しておくことにした。と
「ピカチュウなんだろ?」
驚いてシゲルの顔を見る。
「知ってたのか?」
「ああ、確証はなかったけどね」
そういえば昨日シゲルもリリーに会っている。サトシがピカチュウになった話もリリーから聞いていた。
「だからもしかしてと思ってたんだ」
さすがはシゲルだ。
「ごめん、隠すつもりじゃなかったんだ。『実験材料にされちゃうんじゃないか』ってヒカリが」
シゲルが苦笑する。
「そういう生物実験はしないよ。ポケモンを保護するのが目的だからね」
そう言うと何かを差し出した。
「食堂から持ってきた。少し飲んで休憩しないか?」
ペットボトルのジュースだった。
「ありがとう」
受け取ったサトシは口をつけようとして、ふと止まった。
またゾロゾロと研究員達が歩いてくる。
「あ…」
「シゲル君ちょうど良かった」
所長が探していたよ、と言うと何故か一瞬シゲルは渋い顔をしたあと
「わかりました。…サトシ悪いけどちょっとここで待っててくれないか」
そう言って急ぎ足で去っていった。
ここで待ってろって言っても…手元のジュースをチラッと見たあと、
「…やっぱりピカチュウを探さなくちゃ」
サトシは再び歩き出した。
さて当のピカチュウはというと、案の定研究員達に紛れすっかりサトシ達からはぐれていた。
「ぴかぴ…」
心もとない様子でキョロキョロしていると
「きみ!」
突然声をかけられた。
ツカツカと研究員が近寄ってくると
「見かけない顔だな…どこから入った?」
疑わしげにジロジロと視線を投げ掛けてきた。
説明しようにもピカチュウの言葉では通じない。ふとヒカリの言葉が頭をよぎる。
“実験材料に―”
ぞわっと背筋を冷たいものが走った。
「あ、おい―」
気付くと走り出していた。背後から制止の声が聞こえたような気がしたが、ピカチュウの頭は逃げる事でいっぱいだった。
「あの、すいません」
「はい?」
書類を片手に女性研究員が振り向く。
「金髪の…こういう髪型の男の子見ませんでしたか?」
身振り手振りサトシが質問する。
「さっき放送で言ってた子ね。ごめんなさい…私は見てないわ」
「そうですか」
ありがとうございますと言って去ろうとした時、男性の研究員が歩いてきた。
「あら、どこに行ってたの?」
「ああ、今…」と目つきの鋭い研究員は
「そこで妙な少年に会ったんだ」
声を掛けたら逃げられてしまって、とそこまで言ってサトシ達の視線に気付く。
「なんだ?」
「あの…その子、金髪でこういう髪型じゃないですか?」
サトシのジェスチャーに「ああ、そうそう」と頷く。サトシは女性研究員と顔を合わせると
「すいません!そいつどっちへ行きました?」
男性から方角を聞いて急いで向かった。
背後から「あなたちゃんと放送聞いてないの?」と男性が注意されている声が聞こえてきた。
「あっちへ走っていったよ」研究員の言った方向には薄暗い廊下が続いていた。
「ピカチュウどこだー?」
ひと気が無いので遠慮なく名前を呼ぶ。と、
“ガチャンッ”
部屋の一つから物音がした。
サトシはその部屋…上に倉庫と書かれていた…の前に立つとそっと扉を開いた。
「…ピカチュウ」
中で怯えたように頭を抱えて座り込んでいるヒカルがいた。
サトシが近付くとゆっくり顔を上げ
「……ぴかぴっ!」
立ち上がって思いきりサトシに抱きついた。
支えきれずサトシがよろめく。そして2人仲良くひっくり返ってしまった。
「いてて…」
あわててサトシの上からどいたヒカルは心配そうに覗き込んだ。
「ぴぃかちゅう?」
人間になってポケモンだった時との感覚の違いにまだ慣れられずにいるようだ。
「大丈夫大丈夫」
ヒカルを安心させようとサトシは笑って見せた。
「良かった、こんな所にいたのか。さっきはなんで逃げたんだ?」
サトシの質問にヒカルは身振り手振り、得意の形態模写も交えて経緯を説明した。
「なるほどな。でも…」サトシは少し苦笑して
「実はさっきシゲルにお前の事話したんだ。そしたら『実験材料になんかしない』って。この研究所の目的はポケモンを保護することなんだってさ」
そう言ってふとシゲルにもらったジュースのことを思い出した。
「そう言えばこれ、さっきシゲルにもらったんだった。お前も一緒に飲むか?」
ぴっか!と嬉しそうな声が返ってくる。サトシはペットボトルの蓋に手をかけた。「ぷはー」
ジュースを飲み終えたサトシが息をついた。ヒカルはもう先に半分飲んで、隣に座っている。
「なんか不思議な味のジュースだったな」
な、ピカチュウ。そう言って横を見ると、ピカチュウ…ヒカルのどこかぼんやりとした目にぶつかった。
「ピカチュウ?」
声を掛けると緩慢な動作で頷いてみせる。
「お前―」
大丈夫か?そう聞こうとしたサトシにも突如変化が訪れた。
体が熱い…そしてその熱さには覚えがあった。昨日の『あの』薬だ。
まさか…ペットボトルを見る。これを渡したのはシゲルだ。という事は
『通常は飲ませるんだが―』
「っ!あいつ…」
あんな状況で…飲ませてどうするつもりだったのか。
「ピカチュウ、大丈夫か?」
熱っぽく潤んだ瞳がサトシを見る。
「多分さっきのジュースに薬が入ってたんだ。ごめん、気が付かなくて…」
唯一の救いはポケモンに害の無い薬だという事くらいだ。
しかしヒカルは次第に呼吸が荒くなり、辛そうに肩を揺らし始めた。もしかしたら…もともとはポケモンの繁殖用の薬だ。
効果がサトシよりも強いのかもしれない。
このままにしておけない。サトシは助けを呼びに立ち上がろうとした。その時
突然強い力で手首をつかまれサトシはよろめいた。
「…っ!」
ドサッと床に倒れる。そのまま自分の上に覆い被さってくる気配。
「な…」
目を開けたサトシは熱い視線が間近にまで迫って来ている事に驚いた。
「どうしたんだ、ピ―」
最後まで言えなかった。口付けられ、口腔を犯される。
胸を手で押し返そうとしたが渾身の力で床へ押さえ込まれてしまった。
「駄目だ!」
しかしヒカルに声は届かなかった。
服の裾から手が差し入れられ胸を這う。足の間に入り込んだヒカルの足がサトシの中心を刺激した。
「あ…っ…」
耐え難い感覚に声を上げてしまう。昨日さんざんシゲルに攻められた場所が疼いた。
サトシもまた薬に翻弄されかかっていた。
霞む目で自分に覆い被さるヒカルを見る。ヒカルの表情はとても辛そうで瞳は熱く潤んでいた。
しばらくサトシは荒い呼吸を繰り返しながら黙っていた。
サトシの反応を引き出そうとヒカルは行為をエスカレートさせようとした。
「…ピカチュウ」
サトシの場違いな程に静かな声がヒカルの動きを止めた。恐る恐る顔を上げサトシを見る。
すっとサトシの手が上がり、ヒカルは思わず首をすくめた。
だが予想に反して手はヒカルの頭に触れると優しく撫で始めた。
「辛いよな」
サトシの優しい声。
「俺だって昨日は本当に…」
昨日?首を傾げるヒカルに慌てて咳払いをする。
「ともかく」
サトシは改めてヒカルを見た。
「もう我慢しなくていいぜ」
俺も正直キツいし、と苦笑する。
「来いよ」
サトシの了承の言葉にホッとしたような表情を浮かべると、ヒカルは再びサトシに覆い被さった。裸の胸をヒカルの手が這う。胸の突起をつまむともう片方へは顔を寄せ、そっと口に含んだ。
「ん…」
声を抑えようとするサトシを攻めるようにきつく吸い上げる。
サトシの裸の下肢がうごめいた。探るようにヒカルの手が下りる。
「あっ」
既に高ぶりを見せる中心に手が添えられ、そのままゆっくり上下する。
サトシが体を震わす。手の動きを速めると、呆気なく吐精した。
恥ずかしいのか目元を隠しているサトシの腕をどけると、ぼんやりと潤む瞳がヒカルを見た。
「俺ばっか…」
「ぴかぴ」
どうしたらいい?ヒカルには分からないのだろう。困惑し、切羽詰まった目が訴える。
正直サトシにもよく分からない。でも…昨日のシゲルとの行為を思い出す。
自分が出来る事―
「ちょっと待っててくれよ」
な?そう言ってサトシはヒカルの頭に触れた。
指を唾液で濡らす。一瞬躊躇した後、その指を自らの後孔にあてがった。
「はあ…」
ゆっくりと指を沈めていく。昨日とは違い利き手なので、気が付くと自分の善い所を探るように夢中で手を動かしていた。
「ぴかぴ…」
息を呑むように見つめていたヒカルの熱っぽい声にハッとする。
「ごめん」
慌てて謝ると、サトシは指を引き抜いた。
そして…恥ずかしさを押し殺しつつヒカルのものに手を触れた。
「っ!?」
「これを」
さっきんとこに…これ以上ないという位赤くなりながらヒカルに伝えた。
そっと足を開く。サトシの両膝裏に手をやりながらヒカルが足の間に入った。そして…
先端をあてがい、ゆっくり埋めて行く。
「あっ…く…」
サトシの苦悶にも似た表情にヒカルがためらう。が
「大丈夫だから…」
サトシの言葉に再び体を進めた。
根元までサトシの中に収まった。2人の荒い息遣いがシンとした部屋に響く。
熱に浮かされたように瞳を交わす。無言のまま律動が始まった。
「あっ…はぁ…っ」
サトシもヒカルも夢中だった。
下腹部が痙攣し一度目の絶頂を迎える。
「くっ…ああぁ!」
内部が収縮しヒカルのものを締め付ける。同時にサトシは中に熱いものが広がるのを感じた。
荒い呼吸と共に上下するサトシの胸をヒカルの手が這う。
まだ先ほどの余韻が消えないうちに二度目の律動が始まった。
「あ……も…っと…ゆっくり…」
しかし抑えきれないと言うように動きは激しさを増した。角度を変え、深く突き上げられる。
サトシは息をするのもままならず喘いだ。
「あ…」
体内で形を感じ取れるほど、硬度の増したものに深く犯される。
瞬間、目の前が真っ白になった。声にならない嬌声―
唇に触れる感触……「サトシ…」と呼ぶ声を聞いた気がした。
「さあ出発するぞ」
一週間ほど滞在して今日は街を出ることになっていた。
シゲルは2日前に出発して街を出る前にサトシ達に挨拶していったのだが
「じゃあ…またな、サトシ」
相変わらず悪びれる様子も無く、意味深な笑顔を残していったのだった。
「さあて、次の街は…っと!?」
目の前をゆく人物にタケシの目の色が変わる。
「リリーさああん!」
一瞬にしてテンションの上がったタケシをグレッグルが―(略)
「あら、サトシ君」
ピカチュウちゃん元にもどったのね、と微笑むリリーにサトシは「はい」と頷いた。
前回のサトシの時と同様、ピカチュウの魔法は暫くして自然にとけたのだった。
「リリーさん、あれから魔法は完成しましたか?」
ううん…と残念そうに首を振る、が
「でも諦めたわけじゃないの。かならず成功させてみせるわ!」
全くめげる様子の無いリリーにサトシ達は「頑張ってください」と応援の言葉をおくった。
リリーが再びサトシを見て微笑む。
「魔法が完成した暁にはぜひ、またサトシ君のピカチュウちゃんにかけさせてね」
リリーの言葉にサトシは「はい…」と少々苦笑したのだった。ピカチュウはというと―
「ピカッチュ」
サトシの肩の上から嬉しそうに手をあげてみせたのであった。
( 終 )
- 関連記事
-
- 奪われたエネルギー ひろ (2013/02/27)
- 着せ替えvウッソたん (2013/03/11)
- 海賊からのお仕置き (2013/04/18)
- 悪魔の宴 (2015/10/21)
- 小金井薫物語 (2013/09/08)
- 悪魔の美酒 (2015/10/21)
- 練習が終わって (2013/02/08)
- カテジナ狩りの森 (2015/01/05)
- 輪姦合宿編 (2013/02/09)
- サトシ達は次の目的地へ (2010/12/23)
- 元日の午前2時 (2013/04/12)
- ハプニング喫茶 (2010/11/21)
- シゲサト4 (2015/08/20)
- 黒幕登場完結編 (2013/03/22)
- Jack-In-The-Box (2015/08/20)
- category
- 版権