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  • 2014⁄04⁄30(Wed)
  • 22:47

探偵学園

そ今年の夏休み、キュウ、リュウ、メグ、キンタ、カズマのいつものメンバーは、海水浴を楽しもうと2泊3日の旅行を計画していた。
 そこで問題になったのが、キュウが究極のカナヅチであるということだった。幸いこのことはキンタしか知らないことだったが、あまり人目を気にしないキュウも、キンタから
「泳げないんじゃかっこわるいぜ」
 と言われてしまい、他の3人から笑われている状況を想像したキュウは、
「泳げるように特訓しよう!」
 と奮い立つのだった。
 そんな折り、キュウの母親の知り合いが、海のすぐ近くで旅館を経営していることから、キュウはそこで泳ぎの特訓をすることにしたのである。

「よーし、泳ぐぞー」
 天気は雲一つない快晴。
 目の前の海もエメラルドグリーンに近い青が眩しく照り返し、キュウのやる気を駆り立てた。白い砂浜から発せられる熱が足に痛い。泳ぐにはすばらしい環境だったが、その割には人も少なく、ここは相当な穴場の場所であるらしかった。
 波打ち際に駆け寄ると、冷たい水の感触が火照った足に心地好い。キュウはバシャバシャと水音を立てながら海の中へと入っていくと、前方に飛び込んで、いきなり泳ぎ始めた。
 バチャ バチャ バチャ
 キュウはクロールをしているつもりらしかったが、でたらめに動く腕は溺れているようにしか見えなかった。程なくして、ブクブクとキュウの身体が海の底へと沈んでいこうとする・・・
「わっぷ・・・た、助けて!」
 キュウの悲鳴にいち早く駆けつける少年の姿があった。その少年は背後からキュウの身体を羽交い絞めにすると、そのまま後退して砂浜までキュウの身体を引きずっていった。
「大丈夫?」
 覗き込む少年の姿にキュウはパッと起き上がった。
「う、うん、ありがとう。えっと・・・」
「ボク、あそこの旅館に住んでる葉山孝太って言います。実はお兄ちゃんが、泳ぎが下手だから見てあげてって言われてたんです」
「はは、そうなんだ。オレはキュウ! 中3だよ。よろしくね」
「ボクは小6です。お兄ちゃん、中3なんだ。へへ、ボクと同じくらいかと思っちゃった」
(ガクッ・・・)
 背が低く童顔のキュウは、しばしば小学生と間違われることもあったが、本人はたいして気にもしていないようである。
 孝太は薄地の競泳用パンツを着用していた。キュウの目の前に微かに膨らんだ孝太の股間が目に入り、何故かキュウはどぎまぎした。
(オレも競泳用にすればよかったかな・・・)
 キュウは学校で使っているスクール水着を着てきたことを少し後悔した。
「じゃ、泳ぎはボクが教えてあげるね!」
 孝太がにこっとしてキュウのお尻をポンと叩く。
「本当? 助かるよ!」
 キュウはこれで泳げるようになるかな? と、淡い期待を抱いた。
西日が山の端をかすめ、辺りをオレンジ色に染め上げていく。キュウと孝太の二人は練習を切り上げ、旅館に引き上げようとしていた。
「・・・ここまで覚えが悪いのも初めて・・・」
「ご、ごめん・・・」
 ・・・どうやら、練習の成果は言わずもがなのようである。
「あれ?」
 何だか旅館の方が騒がしい。見るとパトカーが何台か止まっていた。
「何があったんだろ?」
 不安がる孝太に、孝太の母親が駆け寄ってきた。
「孝太!」
「あ、お母さん」
「大変だよ! 泊まっていたお客さんが殺されちゃって・・・」
「えーーーーー!?」
 孝太とキュウがそろって声をあげる。それを聞いたキュウは慌てて旅館の中へ駆け込んでいった。

 探偵学園の生徒であることをむやみに明かしてはいけないと、団先生から忠告を受けているキュウは、それでもできうる限りの情報を集めていった。

 殺されたのは橋本照夫。31歳。金融関係の会社に勤めていたらしい。死因は鈍器のようなもので頭部を殴られたことによる脳挫傷だった。キュウが泊まっている旅館の201号室に滞在していた。

 容疑者はすぐに絞られた。
 橋本の金融会社から借金のある者が、この旅館に3人滞在していたのである。これが単なる偶然なのか、必然なのかは、警察の調査次第だが、3人とも借金の返済に困っているようだった。
 事件当時の3人の状況は次の通りである。
【不成誠(ふなりまこと)】
 化粧品通販会社に勤める29歳。橋本が殺されたとされる時間は、部屋で音楽を聴いていたためアリバイはなし。

【香坂友彦(こうさかともひこ)】
 証券会社に勤める26歳。朝から外出をしていたらしいが、確固たるアリバイはない。

【九条由理(くじょうゆり)】
 有名デパートに勤める30歳。今日は気分が悪く部屋で眠りがちであったという。アリバイはない。

 凶器はどうやら各部屋に置いてあるガラス製の灰皿が使用されたらしい。
(衝動的な殺人だったのかな?)
 キュウの脳裏にそんな考えが浮かぶ。続いてキュウは、第一発見者の旅館の従業員、田中に話を聞いてみることにした。
「え、ええ・・・少し前にコーヒーを橋本様から頼まれていたので・・・201号室の扉が開いていたんで、あれ? って思って中を覗いてみたんです。そしたら、お客様が将棋盤のそばで倒れていて・・・」
「将棋盤?」
「え、ええ・・・橋本様はご友人の方と一緒に来られてたみたいで、その方と将棋を指していたみたいなんです」
「ふんふん」
「私が見た時はもちろん誰もいませんでしたが・・・。駆け寄ってみたら頭から血を流していて、もう驚いちゃって、気づかないうちに何度も悲鳴をあげてました」
 田中はその時の状況を思い浮かべたのか、青ざめた表情になった。
「他に何か気づいたことはありませんか?」
 キュウの言葉に田中は少し考えた風だったが、
「いえ・・・悲鳴をあげてからは、お客様や他の従業員が駆けつけてきて・・・あとは特には・・・」
「そうですか。えーと、その橋本さんの友人ってどなたかわかりますか?」
「あ、はい。・・・確かあの人ですね」
 田中は、警察関係者と話している背の高い男を指差した。
「ありがとう」
 キュウは話が終わるのを待ってその男に話を聞くことにした。

「ん? ああ、そうだな・・・」
 突然の友人の訃報にショックを隠しきれないその男は、工藤と言った。橋本とは大学時代からの友人だったらしい。
「橋本と将棋を指してたところに、旅館の方に俺宛に電話がかかってきて、俺は電話を取りに1階に行ってたんだ。そうしたらこんなことに・・・」
 工藤は右手で額を覆い、湧き上がる悲しみを堪えようとした。
「電話は誰からだったんですか?」
「俺の母親からだよ。泊まり先の番号は教えていたから」
「どのくらいの間話されてましたか?」
「1分か2分くらいかな・・・。というか、電話中に悲鳴が聞こえて、慌てて戻ったから・・・」
「そうですか・・・」
(そんな短い間に犯行が行われたのか・・・)
「えーと、他に何か気づいたことはありませんか?」
 キュウの言葉に工藤は首をかしげながら言った。
「ああ・・・警察にも言ったんだけど、将棋の駒が何かおかしいんだよな」
「将棋の駒?」
「ああ。“歩”が成ってないんだよな」
「歩?」
「・・・将棋は知ってる?」
「えーと、ルールくらいは」
「うん。だったらわかるかな。歩は敵陣の3段目に入ったら“と金”になるだろ?」
「あ、そうですね」
 将棋では一番弱い駒とされる“歩”だが、敵陣に入ると“金”と同じ働きができるようになる。その際、駒を裏返して“と金”になるのである。(駒の裏側には“と”と書かれているため、こう呼ばれる)成る、成らないは指し手の自由だが、よほどの理由がない限りは、ほぼ100%、“歩”は“と金”になるのが一般的である。
「橋本の番の時に電話が来たから・・・俺も次には歩が成って来るだろうなと思ってたんだけど、何故か成らないで歩が一歩前進してた形なんだよな」
(どういうことだろうか?)
「まあ、別にどうでもいいことだけどな・・・もういいだろ?」
「あ、はい。すいません」
 工藤は暗く落ちこんだ様子を隠しもせず去っていく。
「うーん、やっぱり現場が見てみたいな・・・」
 キュウの呟きに
「じゃ、ボクが何とかしようか?」
 と、いきなり横から声が降ってきた。
「コウタ!」
「お兄ちゃん、事件のこと調べてるんでしょ?」
「う、うん、まあね」
「何かすごいねー。探偵みたい」
「はは」
 そう言われると少し照れてしまう。
「お茶を運ぶついでにちょっと覗いてみようよ」
「大丈夫かな?」
「大丈夫、大丈夫。じゃ、用意してくるから、ちょっと待っててね。あと、その格好じゃ恥ずかしいでしょ。これ着てよ」
 そう言って、孝太はキュウにTシャツを手渡した。考えてみれば、キュウは水着の格好のままうろうろしていたのである。孝太の心遣いにキュウは嬉しくなった。
「失礼しまーす。よかったらお茶飲んでくださーい」
 小学生の申し出に、警察関係者の緊張もホッと緩んだようだった。
「おっ 気が利くねー」
「ありがたく頂こうか」
 結構すんなりと、殺人現場である201号室に入ることができたキュウと孝太。死体はすでに運び込まれ、テレビで良く見る人型の白い線が目に映る。
 将棋盤はそのままの状態で残っていた。確かに飛車先の歩が3段目にありながら、裏返ることなくそこに存在している。少し斜めに傾いているせいか、妙な違和感をキュウに与えた。
(・・・もしかするとダイイングメッセージなんじゃ・・・)
「あれ?」
 その時、孝太が疑問の声を発した。
「どうしたの?」
 孝太は凶器である灰皿を指差した。透明な袋に入れられているが、遠目にも赤い血がついていることがわかる。
「あの灰皿、この部屋のじゃないんじゃないかな」
「え? どういうこと?」
「うちってお母さんがすごいきっちりしてて、部屋の備品なんかも、その部屋ごとにきっちり割り振ってるんだよね」
「えーと、つまり他の部屋とは使いまわししてないってこと?」
「うん。それでね、その部屋の物だってことがわかるように番号をいれてるんだ」
 孝太はお茶を飲んでいる警察の目を盗んで、そっと凶器となった灰皿の裏に目をやった。そこには6番の数字の入ったシールが貼ってあった。
「コ、コウタ・・・!」
 思わずささやき声になるキュウに孝太が言った。
「やっぱりね。これは206号室の灰皿だよ」
「え・・・?」
「あ、こら! 勝手に触っちゃ駄目だ!」
 警察の人に怒られ
「ごめんなさーい」
 と、二人は慌てて部屋を後にした。
「そうか、もしかすると・・・」
 その時キュウに閃くものがあったらしい。キュウは再び旅館の店員田中に、今度はどの部屋にどの人物が泊まっていたのかを尋ねた。
「オレは203号室だけど、他の人はどうなってますか?」
「えーと・・・201号室が橋本さん、202号室が工藤さん、204号室が九条さん、205号室が不成さん、206号室が香坂さんですね」
「部屋はそれで全部ですか?」
「ええ、これで全部です」
「あと、田中さんが、201号室に向かう時に、途中で誰かに会ったりしましたか?」
「いいえ、誰にも会ってないですよ」
「わかりました。ありがとうございます」
 田中が去った後、キュウは孝太に声をかけた。
「コウタ、205号室と206号室の灰皿のシールが何番か見たいんだ」
「あ、うん」
「もし、部屋にいたら、うまいこと呼び出してほしいんだけど・・・」
「確か、まだ警察のじじょーちょーしゅってやつを受けてたはずだから、いないんじゃないかな?」
「そっか」
 はじめに206号室に行き、ノックをする孝太。
「・・・いないみたい」
「開くかな?」
 孝太がゆっくりとドアノブをまわすと、簡単にドアは開いた。
「鍵かかってないね」
 コクリと頷いて、キュウは部屋の中に入っていく。テーブルの上に置かれた灰皿を手に取り、裏を覗き見る。
「5番だ」
「5番だと、205号室だね。何で入れ替わってるんだろ?」
「・・・今度は205号室、いいかな?」
「うん」
 205号室も、本人は不在だった。鍵もかかっていなかったため、キュウは簡単に灰皿の番号を調べることができた。
「これは・・・」
「お兄ちゃん?」
 キュッと口元を堅く結び、真剣な面持ちのキュウに、孝太が心配そうに声をかけた。
「わかったよ」
「え、お兄ちゃん、何かわかったの?」
「うん」
「じゃあ、もしかして犯人も?」
 孝太が興味津々な様子でキュウを見る。
「うん。バッチリね」
「本当? すごいね!」
「ヒントは2つ!」
 キュウは右手でVサインをした。
「1つめは3段目にあった歩の駒。2つめは凶器の灰皿」
 キュウは犯行現場の201号室を見据えて宣言した。
「答えはひとつだ!」
関係者全員が犯行現場である201号室に集まっていた。
「いや・・・それにしても君があのDDSのしかもQクラスの生徒だったとはね・・・」
 責任者である中島警部が驚いた表情を見せる。
 キュウは自分の推理に間違いがないか、今一度確認すると、静かに話し始めた。
「それでは、今回の殺人事件の真相についてお話したいと思います」
 キュウの言葉にその場の全員がハッとした表情を見せた。
「それは、犯人がわかったってこと?」
 容疑者の一人、九条が言う。
「はい。順を追って説明したいと思います。まず、この事件は借金がらみの犯行であることが、警察の方から説明があったと思います。犯行直前まで被害者の橋本さんは友人の工藤さんと将棋を指していました。そうですね?」
 キュウが工藤に同意を求める。工藤は黙って頷いた。
「その途中で工藤さん宛に電話がありました。それで、工藤さんは1階に降りていった」
 キュウは再び工藤を見ると、今度は田中に視線を移した。
「そのすぐ後、田中さんがコーヒーを運びに橋本さんのところに行ったんですね?」
「あ、はい」
 緊張した面持ちで田中が答える。
「工藤さんが階下に降りていってから、田中さんが橋本さんを発見するまでの1分か2分か、ほんのわずかな時間の間に犯行は行われました」
 キュウは一旦間を置いて、少し視線を泳がせてみた。真剣な面持ちでキュウの話に耳を傾けている者、下を向いてじっと畳を見つめている者、ふてくされたような顔をしている者、さまざまな表情があった。
(この中に犯人がいる・・・)
 キュウは再び話し始める。
「凶器にこの旅館の灰皿が使われたことからも、衝動的に近い犯行であったことがわかりますが、犯人はじっと犯行のチャンスを狙っていたのでしょう。橋本さんが一人になった瞬間、犯行に及んだと思われます」
「で、結局犯人は誰なんだ?」
 しびれを切らした香坂が少しイライラした様子で口を開いた。
「はい。それは、この将棋盤が答えを教えてくれています」
「将棋盤が?」
 不成が素っ頓狂な声を出した。それと共に全員の視線が将棋盤に注がれていく。
「工藤さんの証言から、工藤さんが電話を取りに行く前、この“歩”は・・・」
 キュウは3段目にあった歩を一歩引かせて4段目に置いた。
「ここにありました。そうですね、工藤さん?」
「ああ、間違いないよ」
「ところが、犯行後、歩は3段目に成らない状態で置いてありました」
「それが何かおかしいのか?」
 中島が尋ねる。
「将棋を知っている方ならわかると思いますが、敵陣に入った歩はまず間違いなく裏返って金になるんです。このようにね」
 キュウは歩を裏返して3段目に置いた。“と”の文字が駒に刻まれている。
「つまり、この歩は通常の指し手で指されたものではないということです」
「うん? どういうことだ?」
 中島がわけがわからないという表情を見せた。
「オレは、これが橋本さんが残したダイイングメッセージだと考えます」
「何だって?」
 その瞬間、緊迫した空気が辺りを包んだ。と、同時に、その場の全員がこの歩の意味を読み出そうと試みる。
「橋本さんは即死だったんですか?」
「いや・・・多少の間は息があっただろうという報告を受けている」
「・・・橋本さんは、犯人に殴られると同時に自分はもう助からないということを悟ったんだと思います。何とかして犯人の手がかりを残したい。そこで思いついたのがその“歩”だったんです」
「もう、わからないわ! 一体どういう意味なの?」
 九条がヒステリック気味にキュウに突っかかる。キュウはスッと息を整えると、ゆっくり話し始めた。
「“歩”自体には意味はないんです。“成っていないこと”に意味があるんです」
「? いや、わからんな・・・」
 中島が首をかしげる。
「テレビ将棋なんか見てると、読み上げの人が例えば『5二銀成らず』って言ったりしますよね。成らない場合は“成らず”って言うんです」
 中島はだから何だ? という風にキュウを見る。他の人も同様の表情を浮かべている。
 ・・・キュウは用意していた紙になにやら書き始めた。
「“成らず”を漢字2文字で書くとこうなります」
 キュウは紙を広げて見せた。

 不成

「なっ・・・!」
「そ、それじゃあ・・・」
「そう・・・橋本さんを殺した犯人は・・・」
 キュウは犯人をキッと指差した。
「不成誠さん! あなたですね!」
 その瞬間、場が凍りついたような感覚をキュウは覚えた。不成は一瞬、キュウに対して憎悪のような表情を浮かべたが、すぐにおどけたような表情に戻ってこう言った。
「おいおい、冗談はよしてくれよ。歩が成っていないだけで犯人呼ばわりか? そんなのただのこじつけじゃないか。そうだろ?」
 不成は同意を求めるかのように周りを見渡した。だが、それに同調する者は誰一人としていなかった。
「ふざけんな! だったら俺がやったっていう証拠はあるのかよ? DDSだかなんだか知らねえけど、お前みたいなガキに何がわかるってんだ?」
 湧き上がる感情を抑えきれないかのように、不成がまくし立てる。キュウは冷静に、
「証拠ならありますよ」
 と、しっかりと不成を見据えて言った。
「・・・何?」
 明らかに不成に動揺の色が浮かぶ。
「本当か?」
 中島も驚いたように尋ねる。
「それについては、凶器の灰皿が教えてくれます。中島警部、凶器の灰皿を見せて頂けますか?」
「あ、ああ。・・・おい!」
 中島が部下に視線を送ると、程なくして、ビニールに包まれた灰皿がキュウの手に渡った。
「ここの旅館では、部屋ごとに備品をきっちり管理しているそうです。そうですね?」
 ここの女将さんである孝太の母親に視線を送る。
「え、ええ。私がきっちりした性格なもので、確かに部屋ごとに管理しています」
「つまり、ここ201号室の備品が他の部屋で使用されることはないということです」
 そう言って、キュウは灰皿を裏返して、周りの人間に見えるようにした。
「ここに6番のシールが貼ってあります」
「む、確かに」
「これは206号室の備品になるんです」
「何? それは本当ですか?」
 中島が女将さんに尋ねる。
はい。6番のシールは206号室の物になります。201号室ですと、1番のシールが貼ってあるはずなのですが・・・」
「取り違えたといったようなことはありませんか?」
「いえ・・・毎朝備品のチェックをしておりますので・・・」
「206号室というと、香坂さん、あなたの部屋になりますね?」
 その言葉に香坂がギクッとする。
「ま、まあそうだけど・・・?」
「とりあえず、206号室に行ってみましょう」
 キュウの言葉にぞろぞろと連れ立って、全員が206号室に入室する。キュウは全員が揃ったのを確認してから、テーブルの上に置いてある灰皿を手に取り、裏返して見せた。
「・・・5番?」
「ええ。ここには1番ではなく5番の灰皿が置いてあるんです」
「じゃあ、1番はどこにあるんだ?」
「・・・不成さんの部屋に行ってみましょうか」
 今度は隣の205号室に入室する。ここにある灰皿が、頑として否定する不成の牙城を崩す決定的な要因となるはずだった。
 キュウはゆっくりとテーブルに近づくと、その上の灰皿を手に取り裏返してみた。改めてそれを確認したキュウは心の中で満足げに頷くと、周りに見えるように差し出した。
「1番だ!」
 孝太が何か宝物でも見つかったかのように嬉しそうな声で叫んだ。
「これは、どういうことなんだ?」
「はい。事の筋書きはこうです。橋本さんを殺すチャンスを窺っていた不成さんは、最初は自分の部屋の灰皿を使おうと思っていたかもしれませんが、やはり自分の部屋の灰皿を使うことには抵抗があったんだと思います。そこで、他の部屋の灰皿を使えないかどうか考えたわけです。ちょうど香坂さんが出かけていて、しかも鍵をかけ忘れていたことを知った不成さんは、まず、香坂さんのところから灰皿を持ち出し、橋本さんが一人になったところで、その灰皿で橋本さんを殺害しました」
キュウがチラッと不成を見る。不成は少々青ざめているように見えた。
「いつ、工藤さんが帰ってくるかわからない状況で、不成さんは急いで201号室の灰皿を持ち出すと206号室にそれを置いてこようとしました」
「ふむ。つまりは、最初から201号室の灰皿を使おうとすると、相手に気づかれてしまう可能性が高い。だから、他のところから灰皿を持ってきてそれを凶器に使い、事が終わった後は凶器はそこに置いて、入れ替えてしまおうということか」
「はい。ところが、206号室に灰皿を戻そうとした時、不成さんは田中さんがコーヒーを持って2階に上がってきていることに気づいた。206号室は階段のすぐ近くにあるので、位置関係から無理に206号室に入ろうとすれば、田中さんに見つかる可能性が高い。しかたなく不成さんは自分の部屋の205号室に入りました。それから、田中さんが橋本さんを見つけて、大騒ぎになるわけです。その後、不成さんは隙を見つけて206号室に灰皿を戻したと思われますが、その時に誤って205号室に元々置いてあった灰皿を持っていってしまったんです。見た目には同じものですし、まさか裏にシールが貼ってあって、部屋ごとに管理しているとは思わないでしょうからね」
「なるほど・・・それで3つの部屋で灰皿が入れ替わっていたわけか・・・」
 納得といった表情で中島が呟く。
「・・・不成さん、あなたの部屋に何故201号室の灰皿があるのか説明できますか?」
 キュウは真っ青になっている不成に静かに言い放った。
「く・・・」
 反論できない不成は、がっくりと膝を突いて崩れ落ちる。
「あいつが悪いんだ、あいつが・・・」
 呪文のようにぶつぶつと呟く不成に警官が近づいていく。無事、事件が解決することができたキュウは、ホッと安堵の息を漏らした。
「いやはや助かりました」
 中島が礼を言って、不成を乗せたパトカーが静かに走り去っていく。事件を解決して緊張の糸が切れたキュウは、どっと疲れを感じた。
(温泉にでも入ろうかな・・・)
 そう思って、キュウは更衣室に向かった。
 幸いなことに温泉には誰もいないようだった。更衣室もガランとしている。キュウは早速裸になろうとTシャツを脱いで、水着に手をかけようとした。
「お兄ちゃんも温泉?」
 瞬間、突然横から声が割り込んできて、キュウは少しびっくりした。
「コウタ!」
「お兄ちゃん、さっきの推理すごかったね! ボク尊敬しちゃうなー」
 孝太はキラキラと目を輝かせている。
「いや・・・そんなことないよ・・・」
 少し照れてしまうキュウであった。
「ううん、本当すごいよね。ボクの兄ちゃん達とは全然違うな」
 孝太の目の輝きが一層際立ってくる。
(コウタの兄弟か・・・そう言えば、中学生くらいの子が2人いたな・・・)
 キュウは推理の時にそれ位の年齢の子がいたのを思い出した。
 ふと気づくと、孝太が少しとろんとした目でキュウを見つめている。キュウは思いがけない視線にどぎまぎすると、慌てて視線をそらした。
「えっと・・・オレの顔に何かついてる?」
「・・・ううん。あのね、実はお兄ちゃんに聞きたいことがあるんだけど・・・」
 孝太は少し上目遣いにキュウを見ると、もじもじし始めた。
「オレで答えられることだったら、じゃんじゃん聞いてよ!」
「本当?」
「うん」
(やっぱ小学生だなー。かわいいとこあるよ)
 キュウは孝太のはにかんでいる様子に好感を持ったが、次の孝太の予想もしない言葉に耳を疑った。
「・・・オナニーって何?」
「・・・へ?」
キュウの頭の中が一瞬空っぽになる。
「友達がオナニー気持ちいいって言うんだけど・・・」
「お、おなにー?」
 キュウは思わず卑猥な言葉を口してしまい、一気に恥ずかしさを覚えた。
「お兄ちゃんなら知ってるよね? 教えてよー」
 孝太が胸の前で手をあわせて、お祈りするかのようにキュウに懇願する。思いもよらない展開にキュウは困り果てた。
「え、えっと・・・オレ、ちょっとわかんない・・・」
 と、とぼけるキュウ。
「えー嘘だよー。中学生なら絶対知ってるって友達が言ってたもん! ねえ、教えてよー」
「え・・・」
(うーどうしよ・・・)
 しかし、孝太の様子を見ると、もはやごまかして事が済むような様子ではなかった。
(い、いいのかな・・・)
 キュウはチラッと孝太の水着に目をやった。そこに確認できるほのかな膨らみが、キュウに新たな感情を芽生えさせようとしていた。
「え、えーとね」
 キュウは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら話し始める。
「うん!」
 一方、孝太は目をキラキラとさせていた。
「その・・・」
「わくわく」
「えーとね・・・おちんちんを・・・」
「おちんちん?」
「うん・・・いじってみて」
「ちんちんをいじるの?」
「う、うん」
「こんな感じ?」
 そう言って、孝太は右手を自らの股間に持っていくと、小さな手のひらで激しくこね回していった。キュウの目の前で、孝太のペニスが水着の中で激しく動き回っているのが見て取れる。キュウは自分でも気づかないうちにゴクリと唾を飲み込んでいた。
「お兄ちゃん、これでいいの?」
「・・・え? あ、う、うん」
「これがオナニーなんだ・・・何か気持ちいい・・・」
 孝太が恍惚とした表情でさらに揉みこんでいくと、そのペニスに変化が表れ始めた。
「んっ・・・な、何だか固くなってきたよ・・・」
 孝太が手を離すと、勃起したペニスが薄い水着の中でくっきりとその姿を主張していた。若々しいペニスが、水着の中でピクピクとしているのがキュウの目に飛び込んでくる。
「そ、それじゃ、水着脱いでみようか」
「うん」
 キュウの申し出に、孝太は何のためらいもなく水着に手をかけてグッと引き下ろした。一度水着に引っかかったペニスが束縛から放たれ、パチンと音を立てて孝太の下腹に当たる。白く透き通ったような孝太のペニスは、立派に天を向いて、その存在を誇らしげに主張していた。包皮に隠れながらも、真っ赤な亀頭が少し顔を覗かせている。「す、すごい・・・」
 キュウは初めて見る他人の勃起したペニスに興奮を隠せなかった。
「このあと、どうしたらいい?」
「今度はしごいてみてよ」
「う、うん・・・こう?」
 孝太は言われた通りに、固く勃起したペニスを握ると、ゆっくりと上下にしごき始めた。
「ふあっ・・・!」
「気持ちいい?」
「う、うん・・・あっ・・・すごい・・・」
 孝太は奥底から駆け上ってくる快感に我慢が利かなくなっていった。ペニスを握る手の動きがどんどん速くなっていく。
「はぁ・・・はぁ・・・あはぁ・・・んぁ・・・」
 孝太の喘ぎ声がだんだん大きくなり、キュウの目にも絶頂が近いことがわかった。
(しゃ、射精しちゃうのかな・・・?)
 そんな期待を胸に抱きながら、キュウはその瞬間を見逃すまいと、見え隠れする孝太のペニスの先端をじっと見つめた。
「ん・・・はぁ・・・いい・・・あ・・・んはぁ・・・で、出ちゃう・・・」
 孝太が切羽詰った声を上げる。
「いいよ、そのまま続けて」
 キュウは孝太がオナニーをやめることのないようアドバイスした。
「う、うん・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・あー出ちゃう! 出ちゃうよ!」
 孝太の身体の動きにあわせて揺れていた睾丸が、キュッと上に持ち上がった。
「ふ・・・あっ・・・!」
 その瞬間、孝太のペニスから白い塊がピュッ ピュッと飛び出して、フローリングの床にぴちゃぴちゃと飛び散った。
「ひあっ・・・」
 気持ちよさそうに2度、3度、4度と精液を噴き出す孝太の姿に、キュウは目を見張った。自分の目の前で射精を繰り広げる少年の姿に、キュウの思考もどこかおかしくなり始めていた。
「はぁ・・・」
「え、えーと、気持ちよかった?」
「う、うん・・・すごかった・・・」
 にっこり微笑む孝太にドキッとするキュウ。そこへ、孝太が思いがけない言葉を投げかけてきた。
「あ・・・お兄ちゃんもちんちん勃ってるよ?」
「え・・・」
孝太の言葉に慌てて下を見たキュウは、股間がもっこりと膨らんでいることに気づいた。
(え・・・な、何で・・・?)
「へへ。お兄ちゃんも興奮しちゃったの?」
 思いがけない身体の反応にあせるキュウに、孝太はいたずらっぽく微笑んだ。
「じゃあ、今度はボクが気持ちよくしてあげる」
 そう言って、孝太はキュウの膨らんだペニスを水着越しにやんわりと握った。
「わっ・・・」
 ビクッとして腰を引くキュウに、孝太は責めるように言い放つ。
「ダメだよ、逃げたりしちゃ」
「オ、オレはいいよ・・・」
 逃げ腰のキュウに、孝太は少し怒った風になった。
「我慢は身体に毒だって友達が言ってたよ?」
「そ、そうなの?」
「うん。我慢してたら、重い病気になるって」
「え・・・」
 孝太の言葉に急に不安になるキュウ。・・・どうやら、無知なのは孝太ではなくキュウのようでもある・・・
「だから、いいよね?」
「う、うん・・・」
 言われるがまま、こっくりとキュウは頷いた。とは言え、痛いような気持ちいいような感覚が、ジンジンと股間から伝わってきていて、この疼きはこのままでは鎮められそうにもなかった。
「じゃ、脱がすね」
 孝太はキュウのスクール水着に手をかけると、紐をほどいてゆっくりと水着を下ろしにかかった。相変わらず勃起を続けているペニスを避けるようにして、太ももの辺りまでゆっくりと引き下ろす。孝太の目の前に、見事に反り返ったキュウのペニスが露わになった。
「すごーい・・・」
 感嘆する孝太に、初めて勃起したペニスを人の目にさらしたキュウは恥ずかしさで一杯だった。
「ボクより大きいね。でも、お兄ちゃん、全然生えてないんだ」
「う、うん。やっぱり変かな」
「よくわからないけど・・・ボクの兄ちゃんたちは生えてるよ」
 孝太はキュウのペニスに手をかけると、ゆっくりしごき始めた。孝太の右手が上下する度に、包皮がめくれ、真っ赤になった亀頭が露わになる。
「お兄ちゃん、気持ちいい?」
「う、うん・・・」
 初めて他人の手で触れられる快感は、オナニーの比ではなかった。キュウはさらなる快感を得ようと、孝太の手の動きにあわせて軽く腰を動かしてみる。急激
に、奥底から上ってくるようなあの感覚が、キュウの身体を支配しようとしていた。
「ん・・・あ・・・」
「お兄ちゃん、すごく固くなってる」
 目の前のキュウのペニスをまじまじとみつめながらしごいていた孝太だったが、ここで新たな考えが浮かんでいた。手の動きを止め、急に話しかける。
「(ここでイカせちゃうのもつまらないもんね)ね、お兄ちゃん、今度は別のことしようよ」
 もうすぐ快感が頂点に達しようとしていたキュウにとっては、少々物足りないところであった。
「別のこと?」
うん。もっと気持ちいいことだよ?」
 にこっと笑う孝太に、理性がなくなりつつあるキュウにとっては、もはや従うしかなかった。
「う、うん。どうするの?」
「えーとね。じゃ、寝そべってくれる?」
「ここに寝ればいいんだね」
 フローリングの床に腰をついて、
「仰向けに?」
「うん」
 言われたとおり、キュウは仰向けに寝そべった。固く勃起したペニスはもはや治まりそうもなく、下腹にペタッと張り付いている。キュウはさすがに恥ずかしくなり、両手でその勃起を隠した。
「ダメだよ、隠したら」
 孝太はそう言いながら、寝そべるキュウの身体を跨いで、キュウと向かい合う形で立った。先ほど射精したばかりの孝太のペニスは、キュウの痴態を見せつけられたためか、既にピンと屹立している。下から見上げるキュウの目に、ゆらゆら揺れる睾丸と、皮がめくれ裏筋がくっきりと浮かび上がったペニスが飛び込んできて、キュウは少し圧倒された。
「じゃ、入れるよ?」
 孝太はにこっと笑い腰を下ろすと、キュウのペニスを自分のお尻へとあてがおうとした。
「え、え?」
 思わぬ行動を取る孝太にキュウはあせった。
「男同士はね、ここに入れてセックスするんだよ?」
「せ、せっくす?」
「うん・・・」
 キュウの戸惑いをよそに、孝太はキュウのペニスの先端を自らのアナルへとあてがい、グッと押し入れようとした。
「ひっ・・・」
「う・・・ん・・・」
 初めはなかなか入らなかったが、孝太がスッと力を抜くことで、その先端がズブッと孝太の中に飲み込まれていく。
「んんっ!」
「んは・・・もっと・・・入れるよ・・・」
 ゆっくりと腰を沈める孝太の中に、キュウのペニスがズブズブと飲み込まれていく。程なくして、キュウの太ももの付け根辺りに孝太のお尻が触れ、キュウは自分のペニスが根元まで孝太の中に入ったことを知った。
「コ、コウタ・・・」
 ペニス全体にからみつく感触にキュウは震撼した。さらに孝太が腰を動かして、キュウのペニスに致命的な快感を与えようとする。全身を貫くような感覚にキュウの余裕はどんどんなくなっていった。
「コウタ・・・! ダ、ダメだよ・・・」「何が・・・ダメ・・・なの?」
 孝太は相変わらずキュウの上で腰を振りながら、お腹の中を突き上げてくる痺れたような快感を楽しんでいた。
「はぁ・・・お兄ちゃんのちんちん、すごい気持ちいい・・・」
「へー、俺達にも楽しませて欲しいな」
「え?」
「な、何?」
 孝太とキュウは、驚いて声のした方を見やった。更衣室の入り口に二人の少年がにやにやしながら立っている。
「に、兄ちゃん!」
「え・・・」
 長男の遼太と次男の健太は、共に地元の中学校に通っている。遼太はキュウと同じ中3、健太は中1だった。色白のキュウや孝太と違い、二人とも真っ黒に日焼けしていて、健康的な雰囲気を醸し出していた。
「俺たちが楽しもうと思ってたのになー」
 遼太が残念そうに言うと、孝太が
「へへ、残念でした」
 と、得意気に言う。
(? どういうこと?)
 そもそもオナニーも知らないはずの孝太に、なぜこれ程の知識があるのかも、キュウにとっては疑問だった。
「兄ちゃんたちも一緒にやる?」
 孝太がとんでもないことを言い始める。
「言われなくてもやるって。な」
 遼太が健太に声をかけると、
「へへ」
 と、健太も嬉しそうに笑った。
(え? え? え?)
 一人混乱するキュウに、
「キュウお兄ちゃん、じゃ、4人で楽しもうね」
 と、孝太が事もなげに言った。
「じゃ、俺はこっちな」
 遼太はそう言って、孝太の背後に回って、キュウの両足を持ち上げた。まだ孝太はキュウの腰の上に乗ったままだったので、その接合部が遼太の目に丸見えになる。
「つながってるとこ、丸見えだぞ」
「へへ、うらやましいでしょ?」
「と言っても、俺は入れる方専門だからな」
 遼太は自らの下半身をキュウのお尻の辺りへ導くと、片手でズボンのチャックを下ろし、器用にズボンとトランクスを下ろして、既に怒張したペニスを露わにさせた。孝太が邪魔になってキュウの目には見えないが、明らかにキュウのモノより大きい立派なペニスだった。
「遼兄ちゃんの大きいから優しくしてあげてよ?」
 孝太が首をひねって話しかけると、
「わかってるって。ちゃんとローション持ってるから」
 と言って、遼太はどこから持ってきたのか、ローションの入った瓶を自らのペニスに塗りたくった。
「じゃ、入れるぞ」
「あ、あの・・・」
 不安がるキュウに孝太が優しく諭す。
「大丈夫だよ。最初は痛いかもしれないけど、絶対気持ちいいから」
言い終わる間もなく、キュウのアナルに遼太のペニスが触れた。遼太は両手でキュウのアナルを押し広げながら、ぐいぐいと腰を突き出して、その肉棒を埋め込もうとする。
「うあっ・・・!」
 少しずつ遼太の肉棒がキュウの中に飲み込まれ、キュウはお尻からじわじわと侵入してくる感覚に悲鳴をあげた。
「すげ・・・しまる・・・」
 それでも、容赦なく遼太はギンギンにたぎった肉棒をズブズブと押し入れていく。ローションの滑りも手伝ってか、特に抵抗なく遼太はキュウの中へと侵入を果たした。
「全部・・・入った」
「・・・キュウ兄ちゃん、どう? 気持ちいい?」
「・・・い、痛いよ・・・」
 孝太の声にキュウは力なく首を振った。
「でも、そのうち気持ちよくなるよ」
「よし。それじゃ動くぞ」
 遼太は両手を床について、少し腰を突き出した格好で、ゆっくりとピストン運動を始めた。
「く・・・すげえ・・・」
「そんなにいいの?」
「ああ。お前より全然いい」
「えー、ひどいよー」
(え・・・? どういうこと・・・?)
 お尻から伝わってくる痛いような気持ちいいような感覚を受け入れながら、キュウは孝太の言葉にわけがわからなくなる。
(普段からこんなことしてるのかな・・・)
「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」
 遼太の腰が動く度、遼太の口から荒い息が漏れる。少しずつ慣れてきたキュウにとっても、遼太に突き上げられる度、痺れたような感覚が脳を切り裂き、快感としてキュウの中にインプットされていった。
「う・・・あ・・・」
「キュウお兄ちゃん、気持ちいいの?」
 キュウはうつろな目で、こっくりと頷いた。
(オレ、どうかしちゃってる・・・)
「なあ、おれも気持ちよくさせてくれよ」
 今まで成り行きを見守っていた健太が声をかけた。既にズボンとパンツを脱いで、準備万端の状態でいる。
「健兄ちゃんは、口でやってもらえば?」
孝太の申し出に
「よし」
 と頷いて、健太は早速キュウの顔の辺りにビンビンになっているペニスを持っていった。
「キュウお兄ちゃん、ちんちんを口に入れて気持ちよくさせてあげてよ」
「うん・・・」
 既に感覚が麻痺しているキュウは、孝太の言葉もすんなり受け入れた。健太は横を向くキュウの顔にペニスを近づけ、その小さな口の中へ入れていった。
「うっ・・・」
 なめらかな感触に、健太が思わず声をあげる。健太はそのまま腰を前後に動かして、キュウの口を陵辱していった。
「うあ・・・な、なあ・・・舌も・・・使ってくれよ・・・」
(・・・え?)
「キュウお兄ちゃん、舌でぺロペロ舐めてみて」
 キュウは言われた通り、口を開けたまま、何度も喉の奥へと押し込まれてくるペニスの先端を、舌で舐めるように刺激した。
「く・・・すげ・・・」
「じゃあ、ボクも動くね」
 遼太と健太の準備が整ったことで、今まで動きを止めていた孝太も、再び腰を振り始めた。
「ふっ・・・ふっ・・・」
「く・・・あ・・・」
「んあ・・・」
 3兄弟の喘ぎ声が更衣室の中を妖艶にこだまする。遼太がキュウのアナルを、健太がキュウの口を、孝太がキュウのペニスをそれぞれ犯していく。3箇所を同時に攻められたキュウは、今までに味わったことのない気が遠くなるような快感に、ただ身を任せるしかなかった。
「うあ・・・お、おれ、もう・・・出そう・・・」
 一番最後に挿入した健太が、早くも切羽詰った声をあげた。
「もうかよ?」
「健兄ちゃんはいつも早いもんね」
「う、うるせー」
 遼太と孝太にたしなめられながらも、健太の限界はすぐそこまで来ていて、もう我慢できそうになかった。
「ダメだ・・・もう・・・出る・・・うあっ・・・で、出る・・・出る!」
 ギリギリまで射精をこらえていた健太は、その刹那、キュウの口からペニスを引き抜いた。健太の真っ赤になったペニスから、ビュッ ビュッと勢いよく精液が噴きだし、キュウの顔へと降りかかっていく。
「ひゃ・・・」
(あ、熱い・・・・)
「く・・・あ・・・」
 何度も何度も噴出した精液がキュウの顔をべっとりと汚していく。健太は自らのペニスをしごいて、最後の一滴まで搾り取るように、キュウの顔に精液を撒き散らしていった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「健兄ちゃん、一杯でたね」
「あ、ああ・・・」
「キュウお兄ちゃん、大丈夫?」
「う、うん・・・」
(オ、オレ・・・)
 いきなり精液を顔に受けたことで、キュウは絶頂へと向かっている自分がいることに気づいた。
(もう、イキそう・・・)
「な、なあ・・・俺も・・・そろそろ出すぞ」
 キュウに限界が近づこうとしたその時、遼太も自らの限界が近いことを知らせた。
「あ、ま、待って! ボクも一緒にイクから・・・・」
 そう言って、孝太は腰を振りながら、自分のペニスを右手でしごき始めた。
「んは・・・キュウ・・・お兄ちゃんは・・・? もう、イキそう?」
「う、うん・・・もう・・・」
「じゃ・・・3人で・・・一緒に・・・」
「よし」
 遼太はそれを合図に、腰の動きをさらに早めていく。ズンズンとお尻を突き上げて来る感覚。そこから駆け上ってくるキュンとした射精感。押し寄せる快感の波に、キュウは今まさに飲み込まれようとしていた。
「ダ、ダメ・・・もう・・・イッちゃう・・・」
「ボ、ボクも・・・もうすぐ・・・」
「く・・・お、俺も・・・」
 射精を我慢するキュウが、力を入れたことで、そのアナルが急激に締まり、遼太に致命的な快感を与えた。
「うあ・・・!」
 もう少し引き伸ばそうとした遼太だったが、もはや限界だった。
「く・・・で、出る・・・!」
キュウのアナルにペニスを挿入したまま、ピンと背筋を伸ばした遼太は、ドピュッ ドピュッと大量の精液をキュウの中へと放出した。
「ひ・・・あ・・・」
 お腹の中に飛び込んで来る熱い液体に、キュウが悲鳴をあげる。と、同時に射精をこらえていたキュウの最後のタガが外れた。
「あ・・・イ、イク・・・イッちゃう・・・」
 ギュッと目を閉じて、懸命に射精をこらえるキュウだったが、ペニスめがけて駆け上ってくる感覚を止めることはできなかった。
「・・・ひあ・・・あっ・・・!」
 限界まで膨れ上がったペニスが爆発する。キュウはついに、ドクッ ドクッと大量の精液を孝太の中に射出した。
「ひゃ・・・すごい・・・」
 キュウの上で激しく腰を動かしながら、自らのペニスをしごいていた孝太が嬉しそうに声をあげる。そして、最後に残った孝太も、射精に向かって最後の階段を駆け上がっていった。
「んあ・・・いい・・・ボクも・・・イッちゃう・・・!」
 孝太の腰の動きと手の動きが一段と速くなる。
「うあ・・・イク・・・イッちゃう・・・イクッ・・・! イクッ・・・!」
 一瞬の硬直の後、孝太のペニスからピュッ ピュッと白い液体が飛び出した。高々と噴き上がった精液は、大きな弧を描いてキュウの胸やお腹の辺りへと落下していく。射精後の脱力感を感じつつ、孝太の精液を身体で感じながら、キュウはこの上ない快感を味わっていた。
「はぁ・・・気持ちよかった・・・」
 孝太がようやくキュウの腰の上から離れると、遼太もキュウのお尻からペニスを引き抜いた。
「はぁ・・・」
 何となくため息をつくキュウ。
 しばらくの間、4人は放心したような状態でその場に佇んでいた。「お兄ちゃん、また来てね!」
 駅のホームにまで見送りに来てくれた孝太が、快活な表情でキュウに言った。
「う、うん・・・」
 泳ぎを上達させるはずが、とんでもない経験をしてしまったキュウ。それでも、嫌な気分にはならなかった。
『白線の内側までおさがり下さい』
 駅のアナウンスが流れると共に、電車がゆっくりとホームに滑り込んでくる。
「絶対だよ?」
 もう一度、孝太がキュウに念を押した。キュウは、そんな孝太の様子ににっこり微笑むと、
「わかった、必ず来るよ」
 と言って、開いた電車へと乗り込もうとした。
「待って!」
「え?」
 振り向くキュウのほっぺに、孝太がそっとキスをする。
「じゃね!」
 キュウが呆然とする間に、孝太は駆け足で走り去っていった。
 ドアが閉まり、ゆっくりと電車が動き出す。
 キュウの頬に孝太の唇の感触がまだ残っている。キュウは自分でも気づかないうちに、その感触が消えないようにと、右手をそっと頬にあてがっていた。
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