- 2013⁄03⁄22(Fri)
- 01:48
惨劇のバタフライ
「やめて、やめてよう」
教室の後ろで学の情けない声が上がった。
弁当を食べ終わった翼は舌打ちした。南葛中1年G組の教室だ。
中学に進学したとき南葛小出身者で同じクラスになったのは、
よりによって小学校からずっとチームのおみそだった学だけだ。
石崎もあねごもよそのクラス。修哲中に進まず南葛中に来た井沢や来生たちとも別のクラスになった。
しかも、翼の技量は明らかに上級生より上なのに、顧問は試合にフル出場させてくれない。
フィールドの翼は牛若丸ばりに鋭くかつ柔軟に敵陣に斬りこむが、体格の差は技術では埋めがたかった。
三学期の身体測定では、翼の身長は150㎝に満たず、体重も筋肉質とはいえ38㎏しかなかった。
現に三学期が始まってすぐの試合では相手チームのDFに吹っ飛ばされ、左手首をくじいたばかりだ。
あのときは惜しくもハットトリックを逃しただけでなく、交代を命じられた。
「サッカーは曲芸じゃないんだ。中学生をなめるな」
顧問の叱責に翼は唇を噛んだ。
翼はくさっていた。練習はきつくて単調なランニングや筋力トレーニングばかりだし、
クラスでは一部の男子が授業を掻き回し、程度の低いいじめに興じている。
(あと、2ヵ月かぁ)
春になればクラス替えがあるし、後輩が入学してきて翼のサッカー部での地位も向上する。
翼が自分の席でため息をついていると、ズボンを脱がされパンツを押さえた学がそばで倒れこんだ。
いじめグループが狩猟のように学を追いかけてきた。
「おまえら、いいかげんにくだらないこと、やめろよ!」
思わず翼は、椅子から立ち上がって怒鳴っていた。
いつもなら、こんな程度の低い連中は相手にしないが、その日はいらだちが抑え切れなかった。
「なんだとチビ!」
翼は気色ばむワル達を無視して、翼はトイレに行くため席を立った。
「待て、クソチビが!」
怒号がした直後、廊下を歩く翼は背中に飛び蹴りを食らった。翼の体が冷たい床に激突して滑った。
地獄の始まりだった。
教室の後ろで学の情けない声が上がった。
弁当を食べ終わった翼は舌打ちした。南葛中1年G組の教室だ。
中学に進学したとき南葛小出身者で同じクラスになったのは、
よりによって小学校からずっとチームのおみそだった学だけだ。
石崎もあねごもよそのクラス。修哲中に進まず南葛中に来た井沢や来生たちとも別のクラスになった。
しかも、翼の技量は明らかに上級生より上なのに、顧問は試合にフル出場させてくれない。
フィールドの翼は牛若丸ばりに鋭くかつ柔軟に敵陣に斬りこむが、体格の差は技術では埋めがたかった。
三学期の身体測定では、翼の身長は150㎝に満たず、体重も筋肉質とはいえ38㎏しかなかった。
現に三学期が始まってすぐの試合では相手チームのDFに吹っ飛ばされ、左手首をくじいたばかりだ。
あのときは惜しくもハットトリックを逃しただけでなく、交代を命じられた。
「サッカーは曲芸じゃないんだ。中学生をなめるな」
顧問の叱責に翼は唇を噛んだ。
翼はくさっていた。練習はきつくて単調なランニングや筋力トレーニングばかりだし、
クラスでは一部の男子が授業を掻き回し、程度の低いいじめに興じている。
(あと、2ヵ月かぁ)
春になればクラス替えがあるし、後輩が入学してきて翼のサッカー部での地位も向上する。
翼が自分の席でため息をついていると、ズボンを脱がされパンツを押さえた学がそばで倒れこんだ。
いじめグループが狩猟のように学を追いかけてきた。
「おまえら、いいかげんにくだらないこと、やめろよ!」
思わず翼は、椅子から立ち上がって怒鳴っていた。
いつもなら、こんな程度の低い連中は相手にしないが、その日はいらだちが抑え切れなかった。
「なんだとチビ!」
翼は気色ばむワル達を無視して、翼はトイレに行くため席を立った。
「待て、クソチビが!」
怒号がした直後、廊下を歩く翼は背中に飛び蹴りを食らった。翼の体が冷たい床に激突して滑った。
地獄の始まりだった。
うつ伏せに倒れた翼は、いじめグループに取り囲まれた。
いくつもの上履きが翼の体を小突き、踏みにじっていく。
翼は自分に繰り出される足を懸命に払い、起き上がろうとした。
すかさず脇腹に蹴りが入り、翼は「ぐぼっ」と呻いて再び床に沈んだ。
戦意を削ぐため翼は廊下で無理やり立たされ、羽交い絞めにされ腹に殴打や膝蹴りを浴びた。
ぐったりした翼は、髪を鷲掴みにされ教室に連れ戻された。
「こいつを学の身代わりにしようぜ!」
「大空翼をカイボウだ!」
まだ半分以上の生徒が教室にいた。すでにズボンを履いた学は自席で身を固くしていた。
先生たちは荒れた三年生をどうするかで、緊急職員会議の真っ最中だった。
羽交い絞めをしていたワルが翼を壁に叩きつけた。
崩れ落ちる翼にワル達の手が伸び、手際よく学生服のボタンやベルトを外していく。
数人がかりで四肢の自由を奪われ、ズボンは下着ごと両足から抜き取られた。
「うおおっ、ちいせえ!」
「こいつ、まだ生えてねえぜ」
翼の性器をからかう声に、級友が集まり身を乗り出して観察する。
「見ろよ、こいつ、しょんべんちびってやがる」
蹴り倒された拍子に洩れたのだろう。白いブリーフに付いた真新しい染みを暴露され、翼は頬を高潮させた。
チビのくせにふだんから鼻につく翼がどう料理されるのか、教室は期待と興奮のるつぼと化した。
言葉には出さずとも、翼からいつも見下されていたワル達の眼差しに、残忍な光が宿った。
その中には、サッカー部に入ったものの練習のきつさに音を上げ、夏休み前に退部した者も数名いた。
「やめろよぅ」
哀願交じりの翼の声は、女子の嬌声にかき消された。
カッターシャツも引きちぎるように剥ぎ取られ、3分もしないうちに翼は生まれたままの姿を晒した。
誰も止めようとしないばかりか、目を輝かす女子やショーの始まりに級友を教室に呼び戻すやつさえいた。
翼は大柄な男子に羽交い絞めにされ、引廻しのように教室の中を練り歩かされた。
「翼君、泣いてますね~」
「ちっちゃいチンチンがふるふる揺れてます」
ギャラリーが囃したて、机の角に足をぶつけながら翼は唇を噛んだ。涙で床のマス目がにじんだ。
さっきの暴行でできた真新しい痣が、花を散りばめるように翼の六つに割れた腹筋に付いていた。
「ちょうちょの刑、やろうぜ」
すかさずみんなが机を下げ、教室の前を特設ステージに変える。
大柄な生徒がうつ伏せに倒された翼の手足を四方からがしっと掴んだ。
「ちょうちょ、ちょうちょ、翼はもげろ♪」
大の字になった翼の体が床から浮いた。みんなの唱和とともに、翼の胴体が激しく上下した。
内臓がのたうち、せり上がる胃液が翼の喉を焼いた。手足の関節はちぎれそうに痛んだ。
必死で嘔吐に耐える翼は、そのまま腹這いで教卓に乗せられた。
「縄跳び、貸せ!」
誰かが投げた体育で使うロープをワルのひとりがキャッチして、翼の両手を背中に回して手早く縛った。
翼のふくらはぎは、動きを封じるように両側から抱えこまれた。尻をみんなに向けた姿勢で翼は足を人の形に広げた。
小柄なワルが教卓の上に飛び乗り、翼の恥丘を思いっきり割った。
「発表します! これが大空翼の肛門でーす!」
「うげっ、気持ちわりー」
「汚ねえもの、見せんな!」
悪罵とは裏腹に、みんなは食い入るように翼の秘孔に目を凝らした。
「翼君は毎日ここから、臭い臭いウンコを出しま~す!」
馬鹿笑いの渦の中、翼はうつむいて恥辱に耐えた。終わらない試合なんてない。チャイムが鳴ったらゲームセットだ。
そんな淡い希望を裏切るように、別のワルが黒板から白の真新しいチョークを手に翼の後ろへ回った。
翼は肛門にチョークを突き刺された。
「ぐっ!」
脳天まで貫く激痛に翼は呻いた。ワルは肛門から半分出たチョークをレバーのようにぐりぐりと回した。
腸の中をまさぐられ、翼は勃起した。性器を硬くした自分の姿など、絶対誰にも知られたくなかった。
「ボールはともだち、チョークもともだち♪」
別のワルが黒板消しで翼の顔をはたいた。舞い上がるチョークの粉で翼が窒息しかけても手加減などしない。
顔面を真っ白にして、翼は激しく噎せた。翼の肛門からチョークが抜かれ、みんなの前に突き出された。
真ん中から先に血と茶色い軟便が付着し、白い湯気をたてていた。
「くせぇ、このチビ、ウンコ洩らしやがった!」
まだ噎せ続ける翼は髪を掴まれ顔を起こされた。頬を強い力で挟まれ、開いた口にチョークが押しこまれた。
思わず吐き出そうとしたが、手のひらで顎を突かれた拍子に翼は前歯でチョークを半分に折ってしまった。
再び口を開けたとき、タオルできつく猿轡された。血と汚物の付いたチョークの欠片が翼の口の中に残った。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。5分後に午後の授業が始まる。
「こいつ、どうする?」
「隣にでも閉じこめちゃえば?」
翼は教卓から叩き落された。そのとき、翼の股間を目にした女子が嬌声をあげた。
「こいつ、チンポ、立ててるぞ!」
「チビのくせに生意気だ!」
後ろ手に縛られた翼は陰部を隠すことができない。ワルが翼の急所を蹴りあげた。
床の上をのた打ち回る翼を、学以外の生徒達がにやつきながら見下ろす。
翼は両足首も縛られ、廊下を引きずられて全裸のまま校舎のはずれの空き教室に投げこまれた。
ワルたちは窓を開け、翼をベランダに放り出した。横たわると外からは死角だ。
「先生には、気分が悪くなって保健室で寝てると言っといてやるよ」
寒風に晒され、翼はひとり、しゃくりあげた。教室では数学の授業中だ。
チョークにまみれた頬の上を涙が伝い川を描いた。尿意に耐えられず、体を折り曲げたまま小便をした。
おしっこが水溜りを作ったあと、腰から脚を伝って流れる。
自分の排泄物の温かさが、翼をよけいみじめにした。
翼の地獄は、いま幕を開けたばかりだ。
放課後になった。
薄曇でベランダにはほとんど陽が射さず、裸で横たわる翼は全身をわななかせて寒さに耐えていた。
どんなにもがいても手首と足首を縛める縄は解けなかったし、
犬のように首とベランダの鉄柵を縄で繋がれ、上体を起こすこともままならなかった。
たれ流した生乾きの小便は、冷え切ったコンクリートとともに翼の体温を容赦なく奪っていった。
グラウンドからの部活に勤しむ生徒達の声が微かに届く。
自分の汚物が付着した長さ3センチほどのチョークの欠片は、舌の裏に押しやっていた。
でも、誤って喉に入り気道を塞ぐのを恐れ、しかたなく奥歯で噛み砕いて飲みこんだ。
雲の裏側で太陽が西の山並みに向かい、急激に気温が下がる。全裸ですでに4時間近くが経っていた。
翼の脳裏を凍死の二文字がかすめ恐怖におののいたとき、ガラス戸が開いた。
体操服姿の学だった。サッカー部の練習が終わったのだろう。
「先輩達、怒ってた。部活を無断でサボって、ナニ様のつもりだって」
学は翼の身を案じることなく、業務連絡のようにそっけなく言った。
猿轡で声を出せない翼は、無言で学を睨みつけた。
(誰のせいでこうなったと思ってんだよ!)
「明日の朝練で、ヤキを入れるって」
迷惑そうな口ぶりで学は鉄柵の縄に手を掛けたが、不器用なためなかなか解けない。
「なに勝手なことをしてんだ、学」
学がびくっとして縄から手を離した。クラスのワル達5人が現れたのだ。
いきなりビンタを食らい、眼鏡を吹っ飛ばされた学はぺたんと尻もちをついた。
ワル達が学に襲い掛かり、慣れた手つきで体操服とパンツを剥ぎ取った。
「これぞ裸の付き合い、麗しきチームメートだな」
ワルが学の着衣をベランダの外に放り投げた。体操服やパンツが、はらはらと地面に落下した。
「あっ」
情けない声をあげたあと、学は靴下と上履きだけの姿でのろのろと立ち上がった。
「拾いに行けよ」
「それとも、その格好で帰るか?」
学は眼鏡をかけると、片手で性器を押さえてベランダから走っていった。
「90秒以内に戻ってこい。1秒でも遅れたら、翼を処刑する」
「パンツははくなよ。マッパで戻って来るんだぞ!」
ワル達は学の背中に罵声をぶつけた。別のワルが翼のそばでしゃがんだ。
「あいつ、おまえを見殺しにして、さっさと家に帰るかもな」
ねちねちともてあそぶようにワルが言った。翼は思わず反抗的な眼差しを向けた。
「なんだ、その目は!」
ワルの爪先が翼のみぞおちにめりこんだ。翼は体をくの字に曲げた。
立て続けに腹部を4発蹴りつけたあと、苦悶する翼の太腿を踵で5発踏みつけた。
もがくと縄で首が絞まる。翼は目を固く瞑り激痛に耐えた。
「おっ、学君、いま体操服を拾い集めました。ちんちんまる出しで、みっともない姿です」
ベランダの外を覗き込んだワルが、おもしろおかしく実況中継する。
「86、87、88、89!」
教室に向けてカウントダウンが始まった。体操服を抱えた学がベランダに駆けこんだ。
「90、91、92……。残念、ゲームオーバー!」
「大空翼の処刑、決定!」
コンクリートの上で膝を着く学を、翼が悲しそうに見た。
「連帯責任だ。罰としてこれは没収な」
ワルが学から体操服を取り上げた。
「返して!」
手を伸ばす学の肩を、ワルは無情に蹴りつけた。
「返して欲しけりゃ、翼の顔をきれいにしてやれ」
自分も処刑されると怯える学は、不意に出された交換条件を一瞬理解できなかった。
一面に白いチョークの粉がこびりついた翼の顔を洗おうにも、ここには水道がない。
「こうやるんだよ!」
ワルが猿轡のタオルを解き、頬を踏みにじった。
「いぎぎぎっ」
ひしゃげた口から翼が呻き声を漏らす。
「上履きの底でこすり落としてやるんだよ」
学は後退りした。すぐさまワルが後ろに回り、逃げられないように羽交い絞めにした。
ワルが学の体を翼のそばに運ぶと、翼は低い声で言った。
「踏めよ、学」
学は一瞬目を見開いたあと、まぶたを閉じて翼の顔面に右足を乗せた。
さっき上履きのまま外に出たため、学の靴底には泥がついていた。ワルが怒鳴った。
「もっと強く!」
学が足にゆっくりと体重をかけ薄目を開けて見下ろすと、ゆがんだ顔で翼は声を殺して泣いていた。
心の奥でなにかが弾け、学は翼の顔を思いっきり踏みにじった。
「ぎいいーっ」
口の中を切った翼は呻き声とともに血の混じったよだれを漏らし、コンクリートに赤い染みを作った。
翼の顔面は満遍なく靴底で擦りあげられ、血とよだれとチョークの粉でまだら模様になった。
「やっぱり、擦っただけじゃきれいにならないな」
「小便で翼の顔を洗ってやれ」
学は一瞬息を飲んだ。でも、人前で排尿する恥辱より翼を自分の小便で辱める快感が勝った。
(翼はいつもぼくをバカにしていた。足が遅い、ボールの扱いがヘタ、スタミナ不足……)
学は硬くなった性器に手を添え、翼の顔面めがけて放尿した。ほとばしる金色のしずくが翼の目や鼻を濡らす。
歯を食いしばっても口の中に学の小便が入り、翼は吐きそうになった。
「顔を洗ってもらい、ありがとございました、マナブ様と言え」
学の長い小便がようやく終わり、ワルが翼に言った。翼がくぐもった声を出す。
「聞こえないぞ!」
ワルの叱責が飛ぶ。
「顔を洗ってもらい、ありがとうございました、マナブ様!」
口が床にくっつくほどの姿勢で叫んでいると、後頭部を踏みつけられた。
その間、学はそそくさと体操服を身に付けた。
「いよいよ翼の処刑だな」
「ほんとはおまえにやるはずだったんだけどな」
ワルがポケットからイチヂク浣腸を取り出して学に渡した。
「こいつ、小便まみれで触るの嫌だから、おまえにやらせてやるよ」
「いやだ、やめろ……」
翼が顔を上げ、弱々しく学に訴えた。学の眼鏡の奥に残忍な光が宿った。
学は翼の両足首を縄で鉄柵の上部に繋いだ。L字姿勢になった翼の尻を片手で広げた。
チョークで刺されて赤くただれた肛門がむき出しになった。学は浣腸を突き入れると一気に薬液を注入した。
「うっ、あっ、うわああっ」
しばらくすると、翼の腹がぎゅるぎゅると鳴る音が周りにも聴こえた。
エビがピチピチ跳ねるように、翼は鉄柵に繋がれたまま何度ものた打った。
ワル達に交じって、学もひくひくとせわしなく動く翼の秘孔に目を凝らした。
ふいに翼の動きが止まった。あわててみんなが飛び退く。
翼はぶるんと大きく全身を震わすと、けたたましい破裂音とともに大便を噴出させた。
「いやだぁ、いやだぁ」
かつて全国制覇を果たした天才少年は、あられもなく泣きじゃくった。
「あーあ、もらしやがった」
「くせーっ」
「チビのくせに、さすが翼君、ウンコもりもり出してます」
号泣しながら脱糞を続ける翼を見下ろす学の性器は、また勃起していた。
ワル達は、大便が飛び散った場所に翼の教科書やノートを引き裂いて次々と落としていった。
すすり泣く翼と学を残し、ワル達がベランダから引きあげた。
学は教室からハサミを持ってきた。手足の縄を切ってもらった翼は、へたりこんで泣き続けた。
(まあ、あとは自分でなんとかするだろう、元キャプテンなんだしさ)
学は腹を立てていた。帰りが遅くなった。日が落ちたベランダは寒く、翼の大便が悪臭を放っていた。
それになにより、自分がいじめられていたとき、翼がろくに助けてくれなかったのを思い出していた。
(明日の朝練が楽しみだ)
帰宅後、机の前で学は密かにどす黒い笑みを浮かべた。
いくつもの上履きが翼の体を小突き、踏みにじっていく。
翼は自分に繰り出される足を懸命に払い、起き上がろうとした。
すかさず脇腹に蹴りが入り、翼は「ぐぼっ」と呻いて再び床に沈んだ。
戦意を削ぐため翼は廊下で無理やり立たされ、羽交い絞めにされ腹に殴打や膝蹴りを浴びた。
ぐったりした翼は、髪を鷲掴みにされ教室に連れ戻された。
「こいつを学の身代わりにしようぜ!」
「大空翼をカイボウだ!」
まだ半分以上の生徒が教室にいた。すでにズボンを履いた学は自席で身を固くしていた。
先生たちは荒れた三年生をどうするかで、緊急職員会議の真っ最中だった。
羽交い絞めをしていたワルが翼を壁に叩きつけた。
崩れ落ちる翼にワル達の手が伸び、手際よく学生服のボタンやベルトを外していく。
数人がかりで四肢の自由を奪われ、ズボンは下着ごと両足から抜き取られた。
「うおおっ、ちいせえ!」
「こいつ、まだ生えてねえぜ」
翼の性器をからかう声に、級友が集まり身を乗り出して観察する。
「見ろよ、こいつ、しょんべんちびってやがる」
蹴り倒された拍子に洩れたのだろう。白いブリーフに付いた真新しい染みを暴露され、翼は頬を高潮させた。
チビのくせにふだんから鼻につく翼がどう料理されるのか、教室は期待と興奮のるつぼと化した。
言葉には出さずとも、翼からいつも見下されていたワル達の眼差しに、残忍な光が宿った。
その中には、サッカー部に入ったものの練習のきつさに音を上げ、夏休み前に退部した者も数名いた。
「やめろよぅ」
哀願交じりの翼の声は、女子の嬌声にかき消された。
カッターシャツも引きちぎるように剥ぎ取られ、3分もしないうちに翼は生まれたままの姿を晒した。
誰も止めようとしないばかりか、目を輝かす女子やショーの始まりに級友を教室に呼び戻すやつさえいた。
翼は大柄な男子に羽交い絞めにされ、引廻しのように教室の中を練り歩かされた。
「翼君、泣いてますね~」
「ちっちゃいチンチンがふるふる揺れてます」
ギャラリーが囃したて、机の角に足をぶつけながら翼は唇を噛んだ。涙で床のマス目がにじんだ。
さっきの暴行でできた真新しい痣が、花を散りばめるように翼の六つに割れた腹筋に付いていた。
「ちょうちょの刑、やろうぜ」
すかさずみんなが机を下げ、教室の前を特設ステージに変える。
大柄な生徒がうつ伏せに倒された翼の手足を四方からがしっと掴んだ。
「ちょうちょ、ちょうちょ、翼はもげろ♪」
大の字になった翼の体が床から浮いた。みんなの唱和とともに、翼の胴体が激しく上下した。
内臓がのたうち、せり上がる胃液が翼の喉を焼いた。手足の関節はちぎれそうに痛んだ。
必死で嘔吐に耐える翼は、そのまま腹這いで教卓に乗せられた。
「縄跳び、貸せ!」
誰かが投げた体育で使うロープをワルのひとりがキャッチして、翼の両手を背中に回して手早く縛った。
翼のふくらはぎは、動きを封じるように両側から抱えこまれた。尻をみんなに向けた姿勢で翼は足を人の形に広げた。
小柄なワルが教卓の上に飛び乗り、翼の恥丘を思いっきり割った。
「発表します! これが大空翼の肛門でーす!」
「うげっ、気持ちわりー」
「汚ねえもの、見せんな!」
悪罵とは裏腹に、みんなは食い入るように翼の秘孔に目を凝らした。
「翼君は毎日ここから、臭い臭いウンコを出しま~す!」
馬鹿笑いの渦の中、翼はうつむいて恥辱に耐えた。終わらない試合なんてない。チャイムが鳴ったらゲームセットだ。
そんな淡い希望を裏切るように、別のワルが黒板から白の真新しいチョークを手に翼の後ろへ回った。
翼は肛門にチョークを突き刺された。
「ぐっ!」
脳天まで貫く激痛に翼は呻いた。ワルは肛門から半分出たチョークをレバーのようにぐりぐりと回した。
腸の中をまさぐられ、翼は勃起した。性器を硬くした自分の姿など、絶対誰にも知られたくなかった。
「ボールはともだち、チョークもともだち♪」
別のワルが黒板消しで翼の顔をはたいた。舞い上がるチョークの粉で翼が窒息しかけても手加減などしない。
顔面を真っ白にして、翼は激しく噎せた。翼の肛門からチョークが抜かれ、みんなの前に突き出された。
真ん中から先に血と茶色い軟便が付着し、白い湯気をたてていた。
「くせぇ、このチビ、ウンコ洩らしやがった!」
まだ噎せ続ける翼は髪を掴まれ顔を起こされた。頬を強い力で挟まれ、開いた口にチョークが押しこまれた。
思わず吐き出そうとしたが、手のひらで顎を突かれた拍子に翼は前歯でチョークを半分に折ってしまった。
再び口を開けたとき、タオルできつく猿轡された。血と汚物の付いたチョークの欠片が翼の口の中に残った。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。5分後に午後の授業が始まる。
「こいつ、どうする?」
「隣にでも閉じこめちゃえば?」
翼は教卓から叩き落された。そのとき、翼の股間を目にした女子が嬌声をあげた。
「こいつ、チンポ、立ててるぞ!」
「チビのくせに生意気だ!」
後ろ手に縛られた翼は陰部を隠すことができない。ワルが翼の急所を蹴りあげた。
床の上をのた打ち回る翼を、学以外の生徒達がにやつきながら見下ろす。
翼は両足首も縛られ、廊下を引きずられて全裸のまま校舎のはずれの空き教室に投げこまれた。
ワルたちは窓を開け、翼をベランダに放り出した。横たわると外からは死角だ。
「先生には、気分が悪くなって保健室で寝てると言っといてやるよ」
寒風に晒され、翼はひとり、しゃくりあげた。教室では数学の授業中だ。
チョークにまみれた頬の上を涙が伝い川を描いた。尿意に耐えられず、体を折り曲げたまま小便をした。
おしっこが水溜りを作ったあと、腰から脚を伝って流れる。
自分の排泄物の温かさが、翼をよけいみじめにした。
翼の地獄は、いま幕を開けたばかりだ。
放課後になった。
薄曇でベランダにはほとんど陽が射さず、裸で横たわる翼は全身をわななかせて寒さに耐えていた。
どんなにもがいても手首と足首を縛める縄は解けなかったし、
犬のように首とベランダの鉄柵を縄で繋がれ、上体を起こすこともままならなかった。
たれ流した生乾きの小便は、冷え切ったコンクリートとともに翼の体温を容赦なく奪っていった。
グラウンドからの部活に勤しむ生徒達の声が微かに届く。
自分の汚物が付着した長さ3センチほどのチョークの欠片は、舌の裏に押しやっていた。
でも、誤って喉に入り気道を塞ぐのを恐れ、しかたなく奥歯で噛み砕いて飲みこんだ。
雲の裏側で太陽が西の山並みに向かい、急激に気温が下がる。全裸ですでに4時間近くが経っていた。
翼の脳裏を凍死の二文字がかすめ恐怖におののいたとき、ガラス戸が開いた。
体操服姿の学だった。サッカー部の練習が終わったのだろう。
「先輩達、怒ってた。部活を無断でサボって、ナニ様のつもりだって」
学は翼の身を案じることなく、業務連絡のようにそっけなく言った。
猿轡で声を出せない翼は、無言で学を睨みつけた。
(誰のせいでこうなったと思ってんだよ!)
「明日の朝練で、ヤキを入れるって」
迷惑そうな口ぶりで学は鉄柵の縄に手を掛けたが、不器用なためなかなか解けない。
「なに勝手なことをしてんだ、学」
学がびくっとして縄から手を離した。クラスのワル達5人が現れたのだ。
いきなりビンタを食らい、眼鏡を吹っ飛ばされた学はぺたんと尻もちをついた。
ワル達が学に襲い掛かり、慣れた手つきで体操服とパンツを剥ぎ取った。
「これぞ裸の付き合い、麗しきチームメートだな」
ワルが学の着衣をベランダの外に放り投げた。体操服やパンツが、はらはらと地面に落下した。
「あっ」
情けない声をあげたあと、学は靴下と上履きだけの姿でのろのろと立ち上がった。
「拾いに行けよ」
「それとも、その格好で帰るか?」
学は眼鏡をかけると、片手で性器を押さえてベランダから走っていった。
「90秒以内に戻ってこい。1秒でも遅れたら、翼を処刑する」
「パンツははくなよ。マッパで戻って来るんだぞ!」
ワル達は学の背中に罵声をぶつけた。別のワルが翼のそばでしゃがんだ。
「あいつ、おまえを見殺しにして、さっさと家に帰るかもな」
ねちねちともてあそぶようにワルが言った。翼は思わず反抗的な眼差しを向けた。
「なんだ、その目は!」
ワルの爪先が翼のみぞおちにめりこんだ。翼は体をくの字に曲げた。
立て続けに腹部を4発蹴りつけたあと、苦悶する翼の太腿を踵で5発踏みつけた。
もがくと縄で首が絞まる。翼は目を固く瞑り激痛に耐えた。
「おっ、学君、いま体操服を拾い集めました。ちんちんまる出しで、みっともない姿です」
ベランダの外を覗き込んだワルが、おもしろおかしく実況中継する。
「86、87、88、89!」
教室に向けてカウントダウンが始まった。体操服を抱えた学がベランダに駆けこんだ。
「90、91、92……。残念、ゲームオーバー!」
「大空翼の処刑、決定!」
コンクリートの上で膝を着く学を、翼が悲しそうに見た。
「連帯責任だ。罰としてこれは没収な」
ワルが学から体操服を取り上げた。
「返して!」
手を伸ばす学の肩を、ワルは無情に蹴りつけた。
「返して欲しけりゃ、翼の顔をきれいにしてやれ」
自分も処刑されると怯える学は、不意に出された交換条件を一瞬理解できなかった。
一面に白いチョークの粉がこびりついた翼の顔を洗おうにも、ここには水道がない。
「こうやるんだよ!」
ワルが猿轡のタオルを解き、頬を踏みにじった。
「いぎぎぎっ」
ひしゃげた口から翼が呻き声を漏らす。
「上履きの底でこすり落としてやるんだよ」
学は後退りした。すぐさまワルが後ろに回り、逃げられないように羽交い絞めにした。
ワルが学の体を翼のそばに運ぶと、翼は低い声で言った。
「踏めよ、学」
学は一瞬目を見開いたあと、まぶたを閉じて翼の顔面に右足を乗せた。
さっき上履きのまま外に出たため、学の靴底には泥がついていた。ワルが怒鳴った。
「もっと強く!」
学が足にゆっくりと体重をかけ薄目を開けて見下ろすと、ゆがんだ顔で翼は声を殺して泣いていた。
心の奥でなにかが弾け、学は翼の顔を思いっきり踏みにじった。
「ぎいいーっ」
口の中を切った翼は呻き声とともに血の混じったよだれを漏らし、コンクリートに赤い染みを作った。
翼の顔面は満遍なく靴底で擦りあげられ、血とよだれとチョークの粉でまだら模様になった。
「やっぱり、擦っただけじゃきれいにならないな」
「小便で翼の顔を洗ってやれ」
学は一瞬息を飲んだ。でも、人前で排尿する恥辱より翼を自分の小便で辱める快感が勝った。
(翼はいつもぼくをバカにしていた。足が遅い、ボールの扱いがヘタ、スタミナ不足……)
学は硬くなった性器に手を添え、翼の顔面めがけて放尿した。ほとばしる金色のしずくが翼の目や鼻を濡らす。
歯を食いしばっても口の中に学の小便が入り、翼は吐きそうになった。
「顔を洗ってもらい、ありがとございました、マナブ様と言え」
学の長い小便がようやく終わり、ワルが翼に言った。翼がくぐもった声を出す。
「聞こえないぞ!」
ワルの叱責が飛ぶ。
「顔を洗ってもらい、ありがとうございました、マナブ様!」
口が床にくっつくほどの姿勢で叫んでいると、後頭部を踏みつけられた。
その間、学はそそくさと体操服を身に付けた。
「いよいよ翼の処刑だな」
「ほんとはおまえにやるはずだったんだけどな」
ワルがポケットからイチヂク浣腸を取り出して学に渡した。
「こいつ、小便まみれで触るの嫌だから、おまえにやらせてやるよ」
「いやだ、やめろ……」
翼が顔を上げ、弱々しく学に訴えた。学の眼鏡の奥に残忍な光が宿った。
学は翼の両足首を縄で鉄柵の上部に繋いだ。L字姿勢になった翼の尻を片手で広げた。
チョークで刺されて赤くただれた肛門がむき出しになった。学は浣腸を突き入れると一気に薬液を注入した。
「うっ、あっ、うわああっ」
しばらくすると、翼の腹がぎゅるぎゅると鳴る音が周りにも聴こえた。
エビがピチピチ跳ねるように、翼は鉄柵に繋がれたまま何度ものた打った。
ワル達に交じって、学もひくひくとせわしなく動く翼の秘孔に目を凝らした。
ふいに翼の動きが止まった。あわててみんなが飛び退く。
翼はぶるんと大きく全身を震わすと、けたたましい破裂音とともに大便を噴出させた。
「いやだぁ、いやだぁ」
かつて全国制覇を果たした天才少年は、あられもなく泣きじゃくった。
「あーあ、もらしやがった」
「くせーっ」
「チビのくせに、さすが翼君、ウンコもりもり出してます」
号泣しながら脱糞を続ける翼を見下ろす学の性器は、また勃起していた。
ワル達は、大便が飛び散った場所に翼の教科書やノートを引き裂いて次々と落としていった。
すすり泣く翼と学を残し、ワル達がベランダから引きあげた。
学は教室からハサミを持ってきた。手足の縄を切ってもらった翼は、へたりこんで泣き続けた。
(まあ、あとは自分でなんとかするだろう、元キャプテンなんだしさ)
学は腹を立てていた。帰りが遅くなった。日が落ちたベランダは寒く、翼の大便が悪臭を放っていた。
それになにより、自分がいじめられていたとき、翼がろくに助けてくれなかったのを思い出していた。
(明日の朝練が楽しみだ)
帰宅後、机の前で学は密かにどす黒い笑みを浮かべた。
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