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  • 2010⁄07⁄27(Tue)
  • 22:30

大泰西遊記、悟空の電気あんま大好き編

もう何十年、何百年と……。
 僕は空を見てきた。
 遙か彼方まで何もない、ただひたすらの荒野。僕は巨大な岩の下に封じられていた。仰向けに寝かせられた僕の目に映るモノは、無限に広がる蒼穹しかなかった。
 何でここにいるのかは忘れてしまった。この巨大な岩が僕に乗せられた理由も忘れてしまった。その前に僕が犯した罪も、なぜ僕が生まれたのかも、僕は全て忘れてしまった。
「僕は……」
 孫悟空。
 この名前が最後の砦だった。こんな僅かな言葉以外、僕の頭からは全ての記憶がこぼれ落ちてしまった。
 僕は空を見ていた。巨大な岩の下、ただただ虚ろいながら……。

 ふと、顔に影が差した。太陽の光が遮られ、残像が揺れた。
「あー、こいつかよ。お釈迦さんが言ってた味方ってヤツは。掘削機持ってこいってのは、この岩をどうにかしろってことだな……」
 風の音が聞こえた。それが人の声だとは認識できなかった。人間も妖怪も神も仏も、この岩に封じられて以来ただの一度も僕は見たことがなかった。だから、そんな可能性があることさえ考えていなかった。
 しばらくすると、ガツンと岩の向こうで音がした。何か硬いモノが岩盤に突きつけられたような、そんな音だった。そして、次の瞬間、
 ドガがガガガガガガガガガガガガガガッ!! ガガッ!! ガガッ!! ガガガガガアアアアァァァッ!!
「………………ぁぁあっ! ……ああぁ、ひあああああぁぁっ!!」
 世界が揺れた。
 この土地には今まで地震が起こったこともなかった。僕は突然の振動に激しく驚いた。
 しかも、その揺れはあまりに強烈だった。強大な力で震える鉄棒は、ガリガリと僕の股間ただ一点に集中しているかのようだった。
 凶悪すぎる無機質な震動がただただ続いた。もうずっと使っていなかった性器が、徹底的に責め抜かれた。
 徐々に体中の血がそこまで巡ってきた。ずっと長い間、聞いていなかった鼓動を感じた。
 この感じ、生きてる。僕……生きてるっ!
 ガガッ!! ガガッ!! ガガガガガガアアアァァッ!!
 圧倒的な怒濤の震動。これが何かは分からないけど、僕も快感に震える。ああ、気持ちいい……。これ気持ちいい……ッ!
「ひあああぁっ……あっ……ああぁっ! あああああああぁぁっ!!」
 嗄れた喉から、絞るような悲鳴が漏れる。苦痛の呻きにも、歓喜の雄叫びにも聞こえる、生の絶叫。
 あぁ……気持ちいい……。これ、気持ちいいよぉ……。もっと、もっと気持ち良くしてえぇっ!
 単調で乱暴なリズムに合わせて僕の体が跳ねる。暴れる。気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい!
「ああぁ、あ、あぁ……、ああああぁぁっ!!」
 ドビュウウゥゥッ! ビュルルウウゥッ! ビュルウゥゥッ! ビュッ! ビュッ! ブビュウウウゥッ!
 僕は射精していた。もう延々と触れられていなかったおちんちんは、あまりに凄まじい刺激によってあっけなく果てた。
 それでも、振動は緩まない。続く、続く、ひたすらに続く。
 ガガガガガガガガガアアアァァッ!! ガガアアァッ!! ガガッ!! ガガアアアアァァッ!!
「あああぁぁっ! ああぁっ! あっ……、うああああぁぁっ!」
 そして僕は、法悦の白い光に包まれながら、意識をその中に沈めていった。


「ごめんなさい……。お師匠様、ごめんなさい……」
「あーいいよ、そんなに泣くなってば。お前は十分役に立ってるから」
 お師匠様はそう言うと、消毒の終わった僕の腕をパンとはたき、包帯を巻きはじめた。
「ひっ……! い、痛いです、お師匠様……」
「痛い、か。小口径の銃とはいえ、まともにくらってそれで済むんだから……。いいよな妖怪は」
 お師匠様は包帯を巻き終えると、その大きな手で僕の頭を撫でた。髪の毛を指でとかれて、ちょっとくすぐったい。僕は赤い革ジャンを着込み、袖を整える。
「さてと、山賊が出てくるような所とはいえ、もうじき夜か……。今日はここで野宿だな」
 野宿か……。確かに周囲三百六十度見渡しても、民家どころか木の一本さえ見あたらない。あるのは荒れ果てた大地にただ岩、岩、岩だ。
 僕は別に野宿でも構わない。もともと妖怪だし、苦になるモノは何もない。でも、お師匠様は人間だ。連日の草枕は身体に応えるのではないのだろうか。
 僕はお師匠様の大きい背中を見上げる。黒い僧衣に、ザンバラ髪。男の人のいい匂いが、風にのって薫る。
 お師匠様、かっこいい……。
「さてと。完全に日が暮れちまう前にバイクだけでも修理しとかないとな。悟空、ちょっと手伝え」
「はい、お師匠様っ!」
 僕は工具箱をバイクの荷台から取り出し、お師匠様にスパナを手渡した。

 お師匠様の名前は玄奘三蔵。大都・ワシントンDCではとってもえらいお坊様だそうだ。もっとも、どのくらい偉いのかは何百年も岩に封じられていた僕にはよく分からない。
 それに、僕にはそんなことどうでもいい。僕を救ってくれたってだけで、この人に命をかける理由には十分だ。
 お師匠様は大統領という人の命令で、遥か西にあるという天竺から、この壊れた世界を救うための法典をもらってこなくてはいけないらしい。
 ただ、その遥か西っていうのも、どれほど西かは分からないらしい。
「まあなー、おそらくは西海岸のどっかってことなんだろうけど。何せ夢の中のお釈迦さんも詳しいことは教えてくれねーし……」
「……御釈迦様と、喋れるんですね?」
「玄奘三蔵になってからな……。まったく難儀な役割だ。おい、そこのレンチとってくれ」
「はい」
 僕は用途もよく分からない道具をお師匠様に渡す。お師匠様は複雑なバイクのエンジンをガシャガシャといじる。が、しばらくすると諦めて、乱れた髪をボリボリと掻く。
「あー、ったく、あの山賊どもめ……。あんなにパンパン撃ちまくるから部品が足りねーよ。次の街までは騙し騙し乗るしかないな」
「そうですか……、すいません」
 僕は謝る。あの山賊どもを調子づかせたのは自分が原因だ。僕がもっと早く気づいて、バイクの盾になっていれば……。
「バイクの盾になっていれば、……なんて考えてないよな」
 僕は驚いてビクッと顔を上げる。見れば、お師匠様は少し恐い顔をして僕を睨みつけている。
「お、お師匠様……」
「お前、分かりやすすぎ……。ったく、どうしてそういうモノの考え方しかできねーかな」
「で、でも僕はお師匠様を……あの……、そのぉ……」
「その気持ちだけで十分だ」
 お師匠様はレンチを投げ捨て、僕を見つめる。そして少しかがんで手を伸ばし、僕に耳の裏をくすぐる。
「あっ……、お、お師匠……」
「悟空……」
 お師匠様が手を広げる。僕はその大きい胸に抱きつく。汗の臭いが鼻を刺激し、暖かい体温に僕はとろける。
「あのな、お前は確かに妖怪だよ。俺より強い生き物だ。でも、ムリをする必要なんてないのさ。……お前の心は弱い」
 お師匠様が僕の耳元で囁く。
「そして、そのことを気に病む必要も無い。……お前はただ、やるべきことだけやればいいのさ」
「お師匠様……」
「いいこと言うだろ……? 坊主だからな」
 そう言うと、お師匠様は僕のアゴを指で持ち上げた。自然と僕の目は伏せた。
「あ……」
 ゆっくりと、唇が重ねられた。お師匠様の舌が隙間を割って中に入り、上唇の裏側を舐められた。
 そのまま何回も唇を吸われた後、舌を絡められた。優しい舌使いで口の中を舐め上げられ、僕はうめいた。
 そっと、厚い手のひらが僕の二の腕を撫でる。抱きしめる力が強くなり、僕は首の角度を上げていく。
「ふあ……、あぁ……」
 ようやく唇が離れた時、僕は舌をつきだしたままピクピクと震えていた。うっとりとした目でお師匠様を見つめたまま、大きな肩を握りしめていた。
「柔らかいな、悟空は……」
「お、お師匠様……。お坊様がこんなことして……、いいのですか?」
 そう、これも僕の疑問だった。この人は、僧籍に身を置く人なのに、肉も酒も喰らう。博打も打つ。破戒坊主もいいとこだ。
 でも、お師匠様は涼しい顔で、こう答える。
「やるべきことを、やってるだけだ」
 お師匠様は僕を再び抱き寄せ、僕の頬に唇を寄せる。赤いホッペにキスの嵐。僕はくすぐったくて、顔を背ける。
「や、やぁん……! お、お師匠様ぁ……。だ、ダメですぅっ!」
「何がダメだよ。悟空の身体、熱くなってるぜ?」
「だから、そういうことも言っちゃダメえぇっ!」
 ……もう、こんなにたくさんキスされちゃったら、興奮しちゃうに決まってる! 僕はお師匠様の胸を押し、強引に身体を引き離す。
 身体の大きさは負けていても、妖怪の僕の方が力は強い。あっさりと僕達の距離は開く。
 でも、ダメ。僕の体はすでに発情しきっていて、膝がカクカクいっている。僕はヨロヨロと後ろに倒れ、しりもちをつく。
「ふあぁ……、いや…………。いやぁ……」
「ん、どうした悟空。顔を真っ赤にしちゃって」
「う、うぅ……」
「アレ……して欲しいんじゃないの?」
「あ、あぁ……お、お師匠様……」
「して欲しいんだろ。ちゃんと言ってみろよ。して欲しいって」
 ……うう。どうしてお師匠様はこうやって人を辱めるのが好きなんだろう。僕の頭はどんどんのぼせ上がって、意識に霞がかかっていく。身体が熱くって、欲しくてたまらなくなってしまっている。
 結局、僕が言いよどんでいられたのも僅か数秒だった。僕は目に涙を浮かべながら、お師匠様に懇願した。
「して……ください……」
「ん、どうした。もっとはっきり言えよ。俺に何をして欲しいんだ?」
「……お、お願いしますっ! 僕に、……電気あんま、してくださいっ!」


「かわいい顔をしてるけど、やっぱりお前は猿なんだな。こんなことが病みつきになっちまうなんてさ」
「そんなこと言われても……、だって…………」
 そう、あの時の激しすぎる大地震……。
 岩に封じられている僕を、お師匠様は掘削機を使って助け出した。その手段は御釈迦様の指示だったそうで、まあ致し方ない。
 でも、あのあまりに強烈なバイブレーションは僕の性を間違った方向へ目覚めさせた。強い股間への無機的な刺激だけが、僕の欲望を満たす唯一のモノになってしまった。
 もちろん、こんなのがいいコトだなんて思っていない。でも、止めることができない。
 つくづく、自分が猿の化身なんだということを思い知らされる。僕はお師匠様に電気あんまをされることがクセになってしまったのだ。
「じゃあ、直接やってやろうか。ズボン脱げ」
「は、はい……」
 僕はベルトの留め金を外し、ジーンズを下ろしていく。膝まで下げたところでトランクスにも手をかけ、やはり下ろす。
 僕の股間が外気に晒される。
 僕はとっくに勃起している。ビクッビクッと、鼓動に合わせて先端が揺れる。堪え性のない僕は、さっきのキスだけで亀頭に透明な汁をにじませてしまっている。
 グイと足でズボンを脱ぐ。僕は荒野のど真ん中、下半身を丸出しにしながら立ちすくんでいる。そして、それを見ているのはお師匠様一人だ。
「なんだ、もう噴き出しちゃってるじゃないか……。悟空はエロすぎるな」
「だ、だって……、だって……」
 僕はどうにか反論したかったが、お師匠様はただ事実を言っているだけだ。言い返すコトなんてできるはずがない。結局、僕は羞恥心に震えながら、お師匠様の攻めをじっと待ち続けることになる。
 ふと、お師匠様は何かを思いついたようだ。
「……そうだな。悟空、頭の金剛圏をそのだらしないチンポにはめるってのはどうだ?」
「え、こ……これをですかぁっ?!」
 僕の頭には金剛圏と言われる金色の輪がつけられている。これは対妖怪用の調教具で、緊箍呪という呪文で頭を締めつけることができる。一応のために、僕の頭にはつけられているが、今まで絞められたことは一度もない。
 そんなモノを、股間につける……? お師匠様は何を考えているのだろう。
「……なんだよ。少しでも気持ちいいのを長引かせてあげようって思っただけじゃん。そんなにたびたサカられたらたまらないからな」
「サカるだなんて……、そんな」
(じゃあ、お師匠様がキスなんてしなければいいじゃないか……ッ)
 でも、そんなことは言えない。お師匠様には逆らえないし、早く電気あんまもしてもらいたい。……僕って、いけないな子だ。
 僕は仕方なく頭から金剛圏を外す。そして金色の輪を、無理矢理お腹まで勃起したおちんちんにかける。
「……いいです。準備できました」
 やだ、こんなの恥ずかしい……。おちんちんを見せるのだけだって恥ずかしいのに、こんなエッチなことするなんて……。
「よし、じゃあ呪文かけるぜ」
 お師匠様が口の中で何やら文言を唱える。言霊が口内で圧縮され、一つの式を紡いでいくのが僕には分かる。
「縛ッ!!」
 言霊が凛と響いた。その瞬間、僕のちんちんにかけられた輪はその径をキュキュッと縮め、細い肉茎にグルグルと巻きついていく。
「あっ! やああぁっ! ……あ、ああぁ……」
 ギュウゥッ……! ギュッ……、ギュウウウゥゥッ!
 神聖な金色の法具が僕の逸物を締め上げる。その刺激に僕は呻き、圧迫感に歯ぎしりで耐える。
「ひぎっ……、い、痛ぁ……」
 しかしどんなにこらえても、身体が保ってくれなかった。僕は膝から崩れ落ち、地面に這いつくばる。
「おいおいなんだよ、情けないな。それじゃ電気あんま出来ねーぞ。仰向けになれよ」
「は、はいぃっ……、ううぅ……」
 僕は苦痛に耐えながら、体勢を直し、仰向けで大地に寝っ転がる。胸の前で拳をギュッと握りしめながら、股を広げていく。尻尾が石とこすれて少し痛い。
「よし、いい子だ」
 お師匠様は大きな体をかがませ、僕の足首を掴む。それを十分な高さまで引き上げると、僕の腰が浮いていく。この身は全て、お師匠様に委ねられる。
 硬質なブーツの底が僕の股ぐらに当てられる。ギュッと踵をひねられ、僕はわななく。
 ああ、されちゃう……。電気あんまされちゃう……。おちんちんに変なモノまで巻かれて、僕は恥知らずに股間を足蹴にされている……ッ!
 一番大切な人に、一番最低な行為をされるという背徳感。そんなモノまでが僕の快感の燃料になる。身体が燃えるように熱くなっていく。
「悟空いくぞ。……覚悟しろよ」
「は、はい……。お願いします。どうか僕のおまた、グズグズにしてくださいッ!」
「よし、よく言えたな」
 そう言うと、ついにお師匠様はその全体重を足にかけ、僕の股間に最大限の振動を与えはじめた。
 ブルウゥッ! ブルッ! ブルルルルルルウウゥッ!!
「ひぐううぅッ!!」
 容赦のない一撃だった。靴の裏全面を会陰部に押し当て、股間の柔らかいところを全部いっぺんにシェイクするような、強烈なキックだった。
 僕の小さな身体が打ち上げられた魚のようにビクビク跳ね上がる。全身を縮み上がり、僕は自分で小さな肩を抱く。皮膚には爪が食い込んでいく。
 剥き出しの神経に、雷でもくらったかのような快感が僕を襲う。
 気持ちいい……。身体が芯からブルブルと震えだす。僕はもの凄く気持ちいい。
 自然と涙が溢れてくる。僕は気持ち良すぎると泣いてしまうらしい。まるで女の子みたいだ。
 延々と続くバイブレーションに僕の理性が崩れていく。僕は本当に猿になってしまう。
「ひっ、ひあああぁっ!! あっ……、あぁっ! あぐうううぅッ!!」
 快感に身をよじる。それは反射運動のようなものだったが、ガッチリと掴まれた足首はそんな動きも許してくれない。僕は体勢を直され、さらに強い衝撃を股間に受ける。
 ダメ……、ぼく壊れる……。お股が壊れるうッ!
 ビクンと、おちんちんが発作的に暴れる。それは射精の前兆だった。
 しかし、それは許されない。ぼくのシャフトは黄金の法具でコイルが巻かれてしまっている。
 おちんちんの奥に逃げ場のない精液が溜まっていく。欲望が証左がボコボコと煮込まれていく。
 僕の頭も発熱したかのように熱くなる。絶頂寸前でそこに到達できない苦痛が僕をさいなむ。
「ぎっ、ひぎいいぃっ!!」
 僕は歯を食いしばる。歯ぎしりのイヤな音が鼓膜に響く。
 たまらずにアゴを上げると、大地と後頭部が激突する。でも、痛みを解している余裕はない。僕は徐々に発狂寸前まで追い込まれていく。
「どうだ悟空、気持ちいいか……?」
 お師匠様が僕を問いただす。この痴態をその目で見ながらも、なお僕から答えを聞きたがる。
「うああぁ……、も、もぉ……だ、ダメですうぅ……、ひ、ひいっ! ひにゃあああぁっ!!」
 縛り上げられたペニスにはなおも血液が集まってくる。出口を求めて精子が暴れる。僕はもう本当に死んでしまいそうだ。
「ああぁ、うあっ! うあああぁぁっ! ひうぅっ! ……うあああぁっ!!」
 もう気持ちいいなんて通り越えてしまった。苦しい。気持ち良すぎて苦しい。強烈すぎる快感に、僕はひたすらに泣く。
「はは、十二分に楽しんでいるみたいだな。尻尾もパタパタ喜んでるぜ」
「い、いやああぁ……。お、おし……おししょ…………さまぁ…………」
 もう言葉を喋ることさえ難しい。僕は金魚のように口をパクパクさせながら、喉から声を絞り出していく。
「ん、どうした?」
「は、…………はず…………してぇ……。おちん……ちん……の…………はず…………はずしぃ……」
 それはもう、お願いというより命乞いだった。もう僕に理性は残っていない。獣の本能が射精を欲する。……射精したい。……出したい。……精液噴き出したい!!
 だが、ご主人様はまだなにも反応しない。ただ僕の股間をひたすらに揺する。
「なんだよ、妖怪がこの程度でめげるのか。……ダメだ。悟空にはもっともっと気持ち良くなってもらわないとな」
 そう言うと、ご主人様は呪文を唱えた。
 いよいよ金剛圏が外されるものと僕は期待した。だが、違った。それはもっと別の動きを金剛圏にさせるための式だった。
 ブブブブブブブブブブウウウゥッ! ブブウッ! ブッ! ブブブブブブブブブブブブブブブブブッ!
「…………かあぁっ!! あ、……あぁ?! ああぁっ! ひはああああぁっ!!」
 金剛圏が、震えだした。
 中に小さなモーターでも入れたかのような、小刻みな振動だった。金の法具は呪文に反応し、小さなバイブレーターと化して限界まで張りつめた陰茎自身を揺すりはじめた。
「どうだ。金剛圏はただ絞めるだけじゃない。そこに振動をくわえることだってできるのさ。いや、もっといろいろできるぜ。……全部試してやろうか?」
「ひゃああぁっ…………! い、いやあぁ……。イヤだあぁ…………。いあああぁッ!!」
 もう僕にはプライドの一欠片さえ残っていなかった。凶悪なお師匠様の所行にただ恐怖した。僕はこのまま続けられたら、死んでしまう。……殺されてしまう。
 ギュウギュウに締めつけられた揺れるペニスの先端から、透明な汁が伝う。もう本当に限界。僕は身体をのたうち回らせて、悶える。汗を振りまきながら、喘ぎ、震える。
 ああ、気持ち良すぎる。……振動が、振動が凄すぎる。もう僕の股間は震わされているのか、自分で震えているのかさえ分からない。ダメ……これ以上はダメ…………ダメえぇっ!!
「…………らめえ…………し、…………しんらう…………よぉッ! お、……おししょ…………さまぁ…………、あぐうぅッ!!」
「そうか、じゃああと十秒な。あと十秒で外してやるよ」
 あと十秒……。普通なら数えるのもバカらしい短い時間。……でも、今の僕には永遠という言葉にさえ等しく思える。あと十秒も……。十秒も……。
「じゃあ、いくぞ……。いーち…………、にー………………、さーん……………………」
 な、永い……ッ!!
 目の裏がバチバチと放電しているかのように光る。破戒的な愉悦に体中の全細胞が煮立ち、脂汗がビッシリと噴き出す。
「しー…………」
 股間の振動も、おちんちんの振動も緩まない。ただ無慈悲に僕を追いつめていく。
「ごー…………」
 ご主人様の声が遠い。もう、ここがどこだか分からない。
「ろーく…………」
 ああ、早く……、早くぅ…………ッ!!
「しーち…………」
 射精したい、射精したいッ!
「はーち…………」
 精子出したいッ!!
「きゅーう…………」
 お師匠様に足蹴にされて、僕は射精したいのッ! お、おししょうさまああぁッ!!
「じゅーうっと…………。よし、よく耐えたな。……じゃあ、外すぜ」
 僕はお師匠様の最後の言葉を震えて待つ。もう、十二分に準備は出来ている。……イくっ。僕はイくッ。お師匠様に踏まれながら、射精しちゃううぅッ!!
「……解ッ!!」
 バチンッ!
 解呪と共に、金剛圏はその大きさを取り戻した。黄金の戒めが弾き飛び、僕のおちんちんが一気に膨らんだ。
 奔流とも言うべき衝撃が、僕の全身を波になって突き抜けた。煮溶けた精液が限界まで高められた圧力に押し上げられ、僕の精輸管を灼きながら駆け抜けた。
「ひぎいぃっ! ……ぎっ! ひにゃあああああぁぁッ!!」
 ドビュルウウウゥゥッ! ドビュルウゥッ! ブビュッ! ブビュウゥッ! ブリュウウウウゥゥッ! ビュンッ!
 ブブビュウウゥッ! ドビュドビュウウゥッ! ビュルルウゥッ! ビュルン! ビュウゥッ!ビュルウウウウゥッ!
 濃縮されたところてんのような精液が、噴水のように鈴口から噴き出した。
 熱い塊が僕の鼻を痛いくらいの勢いで打った。続いて腹、アゴ、頬、髪。次々と灼熱の白濁液が僕の体を汚していった。
 発狂ギリギリまで追いつめられてのアクメは、射精を延々と終わらせない。どこにこんなに溜められていたのか、精液は次から次へと飛び出してくる。
 僕は今まで感じたことのない法悦にガクガクと痙攣しながら、歓喜する。トクトクと溢れる涙を止められない。
「ひああぁ…………、あはぁ……、あ、あは…………」
 白痴のような緩い微笑みで、僕は泣いている。もう何もいらないくらいの快感……。脳を灼く至福……。僕の心が真っ白になっていく。
 そして、精液は僕の体を真っ白に染めるほど降り注いだ。コテコテになった体は湯気が立ちそうなほど熱かった。
 お師匠様は僕の股間から足を外し、足首を地面に置いた。
 いつの間にか時間も経ち、太陽が遥か向こうの地平線に落ちようとしていた。


「……よし、やってみるか。悟空、合図と一緒に押せ」
「はいっ」
「じゃあ行くぜ……。いっち、にーの……、さんっ」
 お師匠様がエンジンキーを回すのと同時に、僕は後ろからバイクを押す。
 不機嫌な自動二輪車はガガガと幾度か泣いたあと、バフッ排気ガスを吐き出し、エンジンを回しはじめる。
「よし、かかったっ! 後ろに乗れっ!」
「はいっ」
 アクセルを回し、エンジン全開。僕達はそのままバイクに飛び乗り、荒野をまっすぐに走り始める。
「よし……せーこーっ!」
「いえーい♪」
 地面がギュンギュンすっ飛んでいく。風が髪をはためかせる。後ろを向けば、砂埃が一直線に舞い上がっている。
 バイクは西へ向かって走る。道無き荒野を、ひたすら西へ……。
 僕はお師匠様の大きな背中にしがみつく。
「いやー、昨日は勢いで電気あんまなんかしちゃったからな。バイクを直す時間がろくにとれなかったし。……いや、動いて良かった」
「まったくです。お師匠様の考えなし……」
 僕はふてくされて膨れた頬をお師匠様の背中に押しつける。
「あれ、そういうことを言うんだ悟空はー」
 お師匠様は僕の方に振り向きながら、唇の端を上げて笑う。なんだかとっても意地悪な笑顔。
「なんだよ、じゃあ昨日のアレは気持ち良くなかったの? あんなにたくさん精液出しちゃってさ」
「だ、だってあれは…………!」
 僕の顔は赤くなる。なにせ昨日の射精でシャツが一枚ダメになったしまったのだ。いいわけもできない。
「そんなにイヤならもうやってやらないよ。それでもいいのか?」
 もの凄く意地の悪い問いかけ。僕が逆らえないって分かっているから出来る質問だった。
 でも、今日は少しだけ反論したかった。
「イヤです……。止めてください」
「……お?」
 この答えは予想していなかったようだ。お師匠様は意外なモノを見る目つきで、僕を観察する。
 僕は、すねているんだか、泣いているんだかよくわからない、微妙な顔つきになってしまう。でも、この顔は僕の心がよく表している。
「どうしたんだよ……。電気あんまはもうイヤか?」
「そうじゃありませんっ! でも、あんな意地悪は止めてくださいッ!」
 僕は声を張り上げる。
「永かった……。あの十秒、とっても永かったんです。……そう、岩の下に封じられていたときより、……ずっと」
「悟空……」
「お願いです。……せつなく、させないでください」
 僕はお師匠様の背中に抱きつく腕に、少し力を入れた。少しでも僕の思いが伝わってくれることを願った。
「そうか、せつないのは……イヤか」
 そう言うと、お師匠様もさらに強くアクセルを握りこんだ。バイクはさらに速度を上げ、風が強くなった。
 ガクンと、タイヤが石に乗り上げた。でも速度が落ちることはない。僕達は地平線のその先を目指して、一直線に荒野を突き抜けていく。

「でもなぁ、その金剛圏はもっといろいろできるんだぜ? 輪っかになるだけじゃない。まっすぐ伸ばしたり、大きくしたり、電気走らせたりな」
「は、はあ……」
「あ、あんまり頭が回ってない感じだな。考えてみろよ……、いろいろ面白い使い方もできるぜー」
「考えたくないですっ!」

 西へ、西へと僕達は進んでいく……。灼熱の太陽も、百日の寒波も、風も嵐も乗り越えて。
 ずっと、ずっと一緒に。
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