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  • 2015⁄11⁄21(Sat)
  • 00:24

支配の発端

金曜日の夕方、中学校のサッカー部の活動を終えた荒木俊太(あらき・しゅんた)と吉井広登(よしい・ひろと)は練習着姿のまま、家までの道を並んで歩いていた。二人とも中学二年生で、対外試合ではベンチを暖める時間の方が長い控えの選手。サッカーが好きな気持ちは他のチームメイトにも負けないつもりだったが、技能や試合での判断力がやや劣っているのも事実だった。
特に最近焦っているのは俊太の方で、いつもつるんでいる広登が技術的な欠点を確実に潰しつつあり、また交代要員として試合に投入された時の動きが適確になってきていることに対し、急に劣等感を抱き始めていた。
「…って、やっぱり評判通り面白いよ。今度貸そっか?」
広登は自分よりも背が高い俊太の顔を見上げながら、小遣いをはたいて購入したばかりのゲームソフトの話を続けていた。
「あ、うん、さんきゅ…」
俊太は半分上の空で返していた。俊太は広登に対して素朴な疑問を投げかけるべきかどうか、僅かな自尊心に足を引っ張られながら逡巡していた。
俊太が今の中学校に転校してきたのは、一年生の秋のこと。緊張していた彼に最初に声を掛け、周囲に溶け込むきっかけを作ってくれたのは広登だった。自宅が近所で、同じくサッカー好きであったことが手伝い、また何より広登がいつもニコニコ笑いながら俊太の強がりや弱音を受け入れてくれていたお陰で、二人は今ではお互いを一番の友人と認め合う間柄になっていた。二年生になってクラスが分かれてもその関係は変わらず、同級生の女の子に想いを寄せるようになった俊太が、顔を真っ赤にしながらそのことを相談したのも広登だった。但し、この時広登が「俊太だったら絶対大丈夫だって」と告白を勧めたものの、俊太は結局何もできずに今日に至っている。
「えーと、さ、広登…」
俊太は校内の噂話を始めようとする広登をさえぎった。
「ん?なに?」
「ちょっと恥ずかしいこと訊いちゃうんだけどさ…」
広登は不思議そうな表情で首を傾げた。
「広登って最近サッカー色々うまくなってんだろ?」
「えー、そんなことないって」
そうは言いながらも、広登はまんざらでもない顔をした、ように俊太には見えた。
「こんなこと訊いてもしょうがないかも知んないけど、なんで?なんか練習のコツあんの?あるんなら、俺も真似させてもらっていい?」
広登はポカンと口を開けて俊太の顔を見上げ、ややあってから笑みを浮かべた。
「僕なんかより俊太の方が元々うまいよ。僕は全然背も伸びないし」
「でもさ…」
食い下がろうとした俊太に向かって、広登はグイと顔を寄せてきた。
「敢えて言うと、一つだけ、やり始めたことがあるよ」
「え」
広登は顔を寄せたまま、やや小声で続けた。
「僕、カウンセリング受けてるんだよ。最近」
「え?カウンセ…、って何だっけそれ」
「カウンセリング。僕の義理のお兄さんがね、心理学かな?なんかそっちに詳しくて、メンタル含めて一対一の反省会やってくれるの。次の練習や試合ではどういう風にやればいいか、ってこと含めて」
「へーっ」
そういえばプロのスポーツ選手もそうしたものを受けているって耳にしたことがあるかも、と俊太は感心した。
「その義理のお兄さんって、サッカーの選手だったとか?」
「ううん、全然。陸上はやってたらしいけど、球技は全然ダメだったんだってさ。だけど、反省会のカウンセリングは僕の記憶を元に僕自身がイメージトレーニングするもので、兄さんはその手伝いするだけだから、あんま関係無いよ」
「ふぅん。そっか。そういうことしてたんだ」
「俊太も受けてみる?兄さんのカウンセリング」
「え?いいの?」
驚く俊太に対し、勿論、と広登はにっこり笑った。
「でも俺、お金なんて払えないよ」
「お金なんていらないよ。僕なんて、逆に色々おごってもらってるくらいだし」
「うーん…」
「兄さんも、友達連れてきていいぞ、って言ってるし、土曜日の数時間だけだし、続ける必要なんて無いし」
その時丁度、二人の帰路が分かれる交差点に差し掛かった。二人は立ち止まり、俊太は腕を組みながら考え込み、広登は黙ったまま俊太の決断を待った。俊太は少し慌てながら、やや強引に結論を急ぐことになった。
「そっか…。義理のお兄さんの家って近い?」
「うん。自転車で15分くらいかな。明日の午後も行くつもりなんだけどさ、どうする?」
広登の顔を見返すと、決断を煽るでもなく、いつも同様の笑顔があった。
「じゃあ…、行ってみようかな」
俊太の合意に、広登は笑みを深くした。
「そしたら、1時半くらいにいつもの公園でいい?」
「うん、分かった。チャリで?」
「うん、チャリで。あ、あとね、2つだけお願い」
「なに?」
俊太は微かに不安を覚えた。やっぱり、何か条件があるんじゃないか。しかし不安はすぐに好奇に変わり、寧ろ俊太の背中を押すことになる。
「兄さん、その道だとちょっと有名なので、内緒にしてもらっていい?」
「へーっ、そうなんだ。もしかしてテレビとか出てんの?」
「そこまでは行かないんだけど、本とか実名で書いてるんだって」
「すげ」
「あとね、イメージトレーニングし易いように、ってことで、ユニフォーム、ってかサッカーやる時の格好してった方がいいよ」
「え、まじ?」
俊太が面倒臭いと言わんばかりの表情を浮かべた。
「うん。僕は脚の感覚も分かり易いように、ソックス履いてレガースも付けてるくらい」
「ふぅん…。まぁ、うん、分かった。でもさすがに、スパイクはいらないだろ?」
「あ、そだね。スパイクはね。普通のマンションの中だしね」
じゃあまた明日。お互いに声を掛け合って、俊太と広登は分かれた。振り返ること無く小走りに去っていく俊太を眺めながら、広登は笑みを浮かべていた。
俊太の姿が民家の塀に隠れて見えなくなると、広登は溜息を一つついて踵を返した。
「俊太ぁ…」
自宅に向かいながら、広登はいとおしむように俊太の名前を呟いた。そして、肩から斜めに掛けていたエナメルバッグを前に引き寄せ、股間を隠すように腰の前辺りで抱える。バッグの陰で、広登の白いサッカーパンツは固くなった彼自身によって膨らみを増していた。
「あぁ…そうだ…明日のこと、兄さんに報告しとかないと…」
ぼそっと呟く広登の顔からは、ほんの数瞬の間ではあったが表情が消え去った。すぐに元の顔を取り戻した広登は、顔を上げ自宅への道を走り出した。
「早く…兄さんに…報告…」

興味

土曜日の昼下がり。俊太は集合時間より少し早めに公園に来ていた。薄手の半袖パーカーとハーフ丈のカーゴパンツという出で立ちではあったが、その中には広登の指示通りにプラクティスシャツと、スパッツ、サッカーパンツを着込んでいた。また、スニーカーを履いた足首には、サッカー用の黒いストッキングが丸められていた。
広登が現れたのは集合時間間際のことだった。お待たせー、と手を振る広登は、上下共に紺色の半袖ピステシャツとハーフピステパンツをまとい、いかにもサッカーをしに行くかのような姿だった。
「ばりばりサッカーの格好だなー。ボールとスパイク持ってないのがおかしいくらいだ」
俊太が言うと、広樹は少し照れ臭そうに笑った。
「半袖のピステってあんまり着ること無いから…。兄さんところ行く時は、これ着ることにしてるんだよね」
「確かに、長いのなら寒い時に着ることあるけど」
「俊太はどうした?ソックスは穿いてきたみたいだけど」
俊太はパーカーの裾をめくり、ハーフパンツを下げてみせた。脇に黒い切り返しが入った白いプラクティスシャツと、黒いサッカーパンツが見える。
「いつものヤツ着てきた」
「あ、だね。僕も今日は上が白で下が黒。一緒だ」
サッカー部のゲームユニフォームは黒を基調にしており、部員達が各々で購入する練習着も自然と白や黒が多くなっていた。膝下まで伸ばした広登のストッキングもまた、俊太と揃いの黒だった。
「レガースもちゃんとあるよ」
俊太はパーカーのポケットからレガースを引っ張り出した。広登はいつものようにニッコリ笑ってみせた。
広登が言った通り、広登の義理の兄が住むマンションまでは自転車で15分だった。木目調の大きな扉の前で、俊太は圧倒されていた。
「え、この高級マンションがお兄さん家?」
「高級なのかなぁ。うん。ここの14階だよ」
広登は扉を開けると、自転車を押したまま入っていく。
「ちょ、おい、チャリも?」
「うん、駐輪スペースは中にあるから」
広登はインターフォンのパネルを慣れた手付きで操作する。
「はい?」
すぐにスピーカーから応答がある。まだ若い感じの声だった。
「あ、僕です。広登です。今日は友達も連れてきましたー」
「待ってたよ。どうぞー」
広登の横で遠隔操作の自動ドアが開く。
「いいよ。入って」
「あ、うん、はい」
俊太は慌てて自転車を押した。
「広登の義理のお兄さんって、すごいな」
エレベータに乗り込みながら、少し興奮気味に俊太が尋ねる。
「うん。お金に余裕あるみたい」
「もう結婚してるのかな」
「まだ独身だよ。28歳だし」
「へー。えっと、この前広登の姉ちゃん結婚しただろ?その旦那さんの?」
「うん。姉ちゃんの相手の弟さん。こんな近所に住んでるとは思わなかった」
広登には5歳離れた兄と10歳離れた姉がいる。姉は社会人になって知り合った男性と昨年結ばれ、広登には姉よりも更に年上の兄弟ができたのだった。
「それも高級マンションにねぇ。やっぱり有名人なんだなー」
エレベータを下り廊下を歩きながら感心しきりの俊太に、広登は苦笑いした。
間も無く「真田」という表札が掛けられたドアの前に到り、広登は呼び鈴のボタンを押した。ボタンの近くにはカメラが備え付けられているのが分かる。俊太は何となく覗き込んでみた。
インターフォンでの確認も無く、やがて扉が開けられた。
「兄さん、こんにちは。また来ちゃいました」
「いらっしゃい、待ってたよ。広登くんと、えーと…」
「あ、あの、荒木、俊太ですっ。よろしくお願いしますっ」
俊太は緊張でやや噛みながらも挨拶し、頭を下げた。
「荒木くんか。真田諒(さなだ・まこと)です。よろしく。どうぞ、上がって」
諒は、グレーのデニムパンツに黒い長袖Τシャツという格好のためでもあろうが、大学生にも見間違えそうな童顔の持ち主だった。
二人が通されたリビングルームは広く明るく、大きなガラス窓の向こうには町並みが広がっていた。俊太は緊張していたことも忘れて思わず感嘆の声を上げてしまった。
「風景はいいだろ?」
「は、はいっ」
諒に声を掛けられ、俊太はまた固くなってしまった。
「緊張することはないって。とりあえず飲み物でも出そうか。そこのソファーに座ってて」
「はい、ありがとうございますっ」
「俊太、カチコチだよ」
広登は俊太の袖を引っ張ってソファーに座らせた。
「え、だってさ…」
中学生の目にも、室内の調度品や家電製品が高価なものばかりであることが容易に分かった。
ソファーは窓の近くにあり、座った目の高さからもバルコニーの柵を通して風景を見ることができる。諒がキッチンで準備する間、俊太は町並みと部屋の中とに交互に目を走らせていた。
「冷えた飲み物って、スポーツドリンクとお茶しか無くて。お茶が良ければ言ってくれよ」
諒は二人の前のガラステーブルにコースターとスポーツドリンク入りのグラスを置いた。自分自身も同じものを飲みながら、俊太と向かい合うソファーに座る。
「ありがとうございますっ」
「すみません」
俊太と広登がそれぞれ礼を言いながら、グラスに口を付ける。
「あれ、凄いですね」
俊太はグラスを持ちながら、リビングルームの端に設置された大型の薄型ディスプレイとリラックスチェアを指差した。ディスプレイの脇には筐体デザインで有名なメーカーのパソコンが置かれており、ディスプレイ上部にはウェブカメラと覚しき機材も据え付けられていた。リラックスチェアはリクライニング機能付きの高い背もたれとフットレストを備えた柔らかそうなものだった。
「あれでネットやったり、映画見たりとか、するんですか?」
「そうだね。自分でも使うけど、カウンセリングの時に相談者に座ってもらう椅子、と言った方が正確かな」
「へぇー」
俊太は広登の顔を覗き込んだ。
「うん。いつもあそこに座ってカウンセリング受けてるよ」
座ってみたいな、と思っていただけに、俊太の顔が期待で明るくなる。
「丁度カウンセリングの話になったから、じゃあ早速広登くんから始めようか」
「ですね。お願いします」
広登はグラスを置き、ソファーから立ち上がった。
「あ、そうだ、荒木くんにカウンセリングのやり方を説明しておかないとね」
諒は俊太の顔を真っ直ぐに見詰めながら言った。
「は、はい、お願いします」
俊太はまた少し緊張する。一方の広登は、ピステパンツのポケットから取り出したレガースをストッキングの中に差し込み、位置を調整していた。
「僕のカウンセリングは、催眠術を使います」
「え…、催眠、術、ですか?」
俊太は思いも掛けなった言葉に目を丸くした。
「そう。催眠術。ちょっと信じられなくなっちゃったかな?」
諒は苦笑しながら尋ねた。
「いや、その…」
俊太は口籠った。
「催眠術って、変なイメージが付いてしまってるからね。でも、臨床心理学や医学の世界でちゃんと認められた手法で、アニメやドラマにあるような荒唐無稽なものではないんだよ」
「はぁ…」
「僕のカウンセリング手法は、メンタルコーチングとでも言えばいいのかな」
「メンタル…コーチング?」
「そう、コーチングというのは本来、ただ教えるのではなく、選手それぞれが元々持っている力を引き出す指導方法のことを言うんだよね。部活のコーチもそうなんじゃないかな?」
「うーん…」
高校や大学でもサッカーを続けているOBが時々コーチという名目で指導にあたってくれてはいるが、諒が言うコーチングには合致しないかも知れない。俊太はそう感じ、曖昧な返事しかできなかった。諒はそれ以上問い掛けることも無く、説明を続けた。
「メンタルコーチングというのは、精神的な面から選手の潜在能力を発掘したり、実力を抑え付けている要因を取り除こうとするものなんだ」
俊太は頷く。
「でも、人間というのは自分自身の気持ちや記憶や潜在能力について、結構無自覚だし、自分だけで考え込んでしまうとますます分からなくなってしまうものなんだよ」
確かに。俊太にも思い当たることはある。深く頷いた。
「それを引っ張り出すために、催眠術を使う、というわけ。ま、とにかく広登くんのカウンセリングを見てもらって、納得してから受けてもらえればいいよ。そもそも、かかりたくない、って拒絶している人にはかけられないものだしね。安心してもらっていいよ」
「はい、分かりました」
諒の説明に安堵と納得を覚えつつも、俊太はまた少し不安になり広登の様子をうかがった。広登は既にピステの上下を脱ぎ、白いプラクティスシャツと黒いサッカーパンツという出で立ちになっていた。パンツの下から、同色のスパッツの裾を引っ張り出しながら、広登は笑った。
「心配しなくていいって。とにかく見ててよ。絶対次の部活に役立つから」
諒も笑いながら立ち上がる。
「荒木くんはそこで座って見ていてくれるかい?なお、広登くんが催眠状態から醒めるまで、絶対に音を立てたり喋ったりしないようにね。中途半端に催眠状態から抜けてしまうのは、良くないことだから」
「は、はい、気を付けます」
俊太は思わず背筋を伸ばし居ずまいを正した。
「固くなる必要は無いからね。さ、広登くん、椅子に座って、リラックスして待っててくれるかい」
広登は返事をしながらリラックス・チェアに座り、ヘッドレストに頭を埋めた。俊太の位置からはリラックス・チェアを丁度を真横に見ることができた。広登の顔はヘッドレストの縁に隠れていたが、深呼吸しているらしき胸の動きや、力を抜いてフットレストに委ねた脚の様子は見ることができた。
諒が窓にかかったカーテンを閉める。遮光性の高いカーテンらしく、部屋の中は薄暗くなった。
「じゃあ、広登くんのが終わるまで辛抱しててね」
諒は俊太に優しく声を掛けると、小さな丸い椅子をリラックス・チェアの横に置き、座った。俊太からはリラックス・チェアに隠れた諒の顔をうかがうことはできなかったが、諒の顔が広登の顔を覗き込むような位置関係になっていそうなことだけは分かった。
「広登くん、今、リラックスできているかい?」
「はい、でも、まだちょっと…」
静かな部屋で、二人の声が静かに響いた。

「では、先ず呼吸を整えよう。目を閉じて、ゆっくり深呼吸して」
暫く二人の無言が続く。俊太はゴクリと唾を飲み込んだ。
「楽になってきたかい?」
「…はい」
諒の声は穏かで、広登が返す声も大きくはなかった。俊太は耳をそばだてた。
「では、もっともっとリラックスしよう。体がソファに沈み込んでいく感じがするよ」
「…はい」
「目を閉じているし、部屋は暗いから、広登くんの周りは真っ暗で何も見えない。でも、僕がそばにいるから安心だ」
「…はい」
「全身の力がどんどん抜けていく。それに連れて、体の感覚も無くなっていく。宙に浮いている感じ。ソファに座っているかどうかも分からない」
「…浮いてる…」
「そう、そして、とてもホッとした気分で気持ちがいい」
「…はい、ホッとした気分…」
「今日が何日か、ここがどこか、気にならない」
「…気にならない…」
広登は、諒の言葉を一部反復するようになっていた。俊太の鼓動が早まる。広登の様子が少し恐しく、しかし羨しく思われた。
「今日が何日か、分かるかい?」
諒の質問に、広登は暫く答えられないでいた。
「…分かりません…」
「では教えてあげよう。今日は…」
諒は、一週間前の日付を口にした。
「丁度、カウンセリングが終わり、家に帰ったところだよ」
「…はい。家に帰ったところです」
「広登くんは、カウンセリングの後サッカーの練習をしたかい?」
「…はい、しました。土曜日の夜、公園に行って、シュート練習。色々なところに向けて打ち込んでみて、自分が苦手な方向がよく分かりました」
「では、日曜日になったよ。サッカーの練習は?」
「部活が無かったから、友達の俊太と一緒に公園に行って、一対一でドリブルやフェイントの練習をしました」
俊太は日曜日のことを思い出していた。確かに、いつもの公園で二人でボールを取り合って遊んでいた。俊太は、広登が催眠術によって過去の記憶を辿っていることを理解した。
「俊太は僕より体が大きいし、いつもカットされます。でも、俊太のことを見詰めながらフェイントできた時には、抜くことができました」
確かにそうだった。最近の広登は、ボールを見ないでうまく足さばきできるようになってきたように思う。
「うまく行った時のことを思い出せるかい?」
「はい、よく覚えています」
「もう一回、やってみよう」
「はい」
広登の腕と脚がピクリと動いた。催眠状態の中で、当時の自分自身の体の動きを再現しているようだった。
「その動きを、忘れずに覚えておこう」
「はい、覚えておきます」
「では、月曜日になったよ。サッカーはやったかい?」
「はい、月曜日は放課後部活があります。ストレッチと筋トレをして、アップで軽く走ってから、基礎練習をしました」
広登は一日ずつ記憶を辿り、その都度、うまく行ったこと行かなかったことを確認していた。月・水・金は部活動で一緒であったから、俊太の記憶と合致する部分もあった。俊太が驚いたのは、広登が部活が無い日の夜も公園で練習していたことと、そして何より、催眠によってかなり細かな記憶までが掘り起こされていることだった。俊太も、練習や試合の最中は、成功や失敗を感じて次回に活かそうと考える。しかし、次の機会にはそれらがあまり記憶に残っていないのが日常だった。催眠術で過去の記憶を辿れば、それらを思い出して体にも頭にも刻み込むことができる。俊太は催眠術の効果を目の当たりにし、強い期待を抱くようになっていた。自分にも、催眠術をかけてもらいたい。早く自分の番が来てほしい。
「広登くん、今日は…」
一週間の記憶を辿り終わり、諒は今日の本来の日付を伝えていた。
「広登くんはいつも通りカウンセリングに来て、一週間分のサッカーの記憶を取り戻した。この記憶を忘れることは無いよ」
「はい、忘れません」
「今は、僕の部屋でいつもの椅子に座ってる。だんだんと体に力が戻ってくる」
「はい」
広登の返事は、はっきりとしたものに変わった。
「僕が3つ数えたら、広登くんはとてもすっきりした気分で目を覚ます」
「はい」
「1、2、3っ」
諒は、ゆっくりと、しかししっかりした声で数を数えた。やや間があって、広登の体が動いた。腕を上げて背伸びし、膝を立てる。
「気分はどうだい?」
「いいです。すっきりした感じ」
広登はゆっくりと椅子から立ち上がった。
「先週の反省と、今週気を付けること、覚えているかい?」
「はい、全部しっかり」
広登は嬉しそうに言うと、俊太の方を向いて笑いかけてきた。
「俊太、どうだった?」
俊太は急に振られて一瞬驚きはしたものの、興奮しながら期待感をそのまま口にした。
「すごい!色々忘れちゃうことを思い出せるから、絶対次の練習がいいものになるよ!」
「でしょ」
「効果、分かってくれたかい?」
「はい!」
諒の質問に、俊太は身を乗り出して答えた。
「俺、あ、僕も、お願いしたいです!」
「それじゃ、早速やってみようか」
「はい!」
勢い良く立ち上がる俊太を見ながら、諒と広登はにっこり笑みを浮かべた。
準備

俊太は練習着姿になると、ややぎこちない様子でリラックスチェアに横たわった。部屋の中はカーテンのために相変わらず薄暗い。また、広登はそれまで俊太が腰掛けていたソファに座ってしまったため、俊太からは見えなくなってしまった。広登のカウンセリング中は俊太が沈黙を守っていたように、今は広登がじっと押し黙っている様子だった。
「催眠状態に入るには、何よりも安心してリラックスできた状態が必要なんだ」
「は、はい」
諒の説明に、俊太は一々返事を返していた。
「まだ荒木くんはかなり緊張しているね」
「えと、はい、すみません…」
「いやいや、謝らなくていいって。慌てないで、ゆっくり体と気持ちをほぐしていこう」
無用に恐縮し更に体を緊張させる俊太に、諒は笑いながら答えた。
「先ずは体をリラックスさせるところから始めようね」
「はい」
「僕がゆっくりと指示を出していくから、それに従ってくれるかい?」
「はい」
「そうしたら、自然に催眠術に適した状態になっていくからね」
「はい」
「では、目を軽く閉じよう」
「はい」
俊太は指示のままに瞼を落とした。
「目を閉じたまま、ゆっくり深呼吸しよう」
「はい…」
俊太は無理矢理深呼吸しようとし、胸を大きく動かした。
「慌てなくていいんだ。時間はたっぷりあるからね」
「すみません」
「大丈夫大丈夫。僕の言葉にペースを合わせて呼吸してごらん」
諒は、ゆっくりと「吸って」「吐いて」を繰り返した。
俊太の胸の動きはやがて緩やかになり、握り締められていた掌が開く。肘がソファに沈み込み、腕が軽く曲がる。
諒が言葉を止めても、俊太の呼吸が乱れる様子は無かった。
暫く俊太の様子をうかがっていた諒は、低く抑えた声で次の指示を出し始めた。
「荒木くんは今リラックスできている。分かるかい?」
「…はい」
俊太は小さな声で答えた。
「荒木くんはもっともっとリラックスして楽になれる」
「はい」
「柔らかい椅子に全身をあずけよう」
「はい」
「もっと体の力を抜こう。だらーんとしたイメージで」
「はい」
「またゆっくり、深呼吸」
諒は再び「吸って」「吐いて」を繰り返した。しかし、今度は前よりも更にゆっくりと、静かに、深く。
諒の言葉に従うことに慣れた俊太は、腕や脚を弛緩させて穏やかな呼吸を続けるようになっていた。
「気分はどうだい?」
「はい…とっても…ゆったりした気分で…」
俊太は諒の質問に答えようとしていたが、初めての体験のために適した表現を思い付けないでいた。
「幸せな気分で、気持ちいい、ね?」
諒は助け船を出したかのように振る舞いながら、俊太の思考を誘導した。
「はい…そう…です。幸せな気分…気持ちいい…です」
諒の問い掛けに答える俊太の口調は棒読みのようで、感情の抑揚が無くなっていた。
「カウンセリングにも最適な状態だよ。良かったね」
「はい…良かった…です…」
「これでカウンセリングを受けられるから、とても嬉しいことだね」
「はい…嬉しい…です」
俊太は既に催眠状態に入り、諒の言葉を従順に受け入れるようになっていた。
「これから、カウンセリングを始めよう」
「はい…お願いします…」
「僕の声をよく聞いて」
「はい…」
「今はメンタルコーチング中だ。分かっているね?」
「はい…メンタルコーチング…中です」
「では、僕のことはコーチと呼ぶんだ」
「はい…コーチ…と呼びます」
「そして、君は選手だ」
「はい…僕は…選手です」
「僕が、君を、選手として選んだんだ。分かるかい?」
「はい…コーチが…僕を…選んでくれました…」
「嬉しいかい?」
「はい…嬉しい…とても…ありがとう…ございます…」
目を瞑ったままの俊太の口から、自然と感謝の言葉が発せられる。諒は笑みを浮かべた。
「では、コーチの言うことをよく聞いて、しっかり頑張るんだよ」
「はい…コーチの言うことを…よく聞きます…頑張り…ます」
諒は俊太の被支配性を高める暗示を重ねた。
「僕がこれから言うことを繰り返して、心に刻み込むんだ」
「はい…繰り返して…心に刻み込みます…」
「選手は、コーチの言うことに従います」
「…選手は…コーチの言うことに…従います…」
「コーチは、選手の味方で、選手を守ってくれます」
「…コーチは…選手の味方で…選手を守って…くれます…」
「コーチは指導者で、常に正しい」
「…コーチは指導…者で…常に…正しい…」
「コーチに従うことは、良いことです」
「…コーチに従う…ことは…良いこと…です…」
「選手は、自分のことを全て、コーチに知ってもらいたい」
「…選手は自分…のことを全て…コーチに知って…もらいたい…」
「選手は、コーチに隠し事をしない」
「…選手はコーチに…隠し事をしない…」
「選手は、コーチに訊かれたことに、正直に答える」
「…選手は…コーチに訊かれたことに…正直に答える…」
俊太の口調は、相変わらず無感情ではあるものの、次第に流暢なものに変わってきた。
「荒木俊太は、コーチに選ばれた選手です」
「…荒木俊太は…コーチに選ばれた選手です」
「荒木俊太は、コーチに従うのが嬉しくて、気持ちいい」
「…荒木俊太は…コーチに従うのが嬉しくて…気持ちいい」
「荒木俊太の体は、コーチの命令通りに動く」
「荒木俊太の体は…コーチの命令通りに動く」
「荒木俊太の体と心は、コーチのもの」
「荒木俊太の体と心は…コーチのもの」
「コーチの命令は絶対です」
「コーチの命令は絶対です」
「僕はコーチのものです」
「僕はコーチのものです」
「僕はコーチに従います」
「僕はコーチに従います」
俊太の台詞は明瞭で、反復される言葉が俊太自身の意志を支配し始めていることを示していた。
「コーチ、命令してください」
「コーチ、命令してください」
やや間を置いてから、諒は次の指示を出した。
「もう、僕の言葉を繰り返さなくてもいい」
「はい、コーチ」
「俊太、今日から君は僕の選手だ。分かるね」
「はい、コーチ、僕の体と心はコーチのものです。分かります」
「いい子だ」
「ありがとうございます」
「今指導したことはとても重要なことで、俊太自身と、コーチである僕と、同じ仲間の選手である広登の三人以外には絶対に知られてはいけない。秘密だ」
「はい、コーチ。秘密にします」
「ところで、俊太は今のこの状態が大好きだ。そうだね?」
「はい、コーチ。気持ち良くて、大好きです」
「いつでもこの状態でいたい。そうだね?」
「はい、コーチ。この状態でいたいです」
「でも俊太は、家や学校では、この状態のことも、この状態で指導されたことも、全て忘れて生活しなければならない。それはとても残念なことだね」
「…はい…コーチ。とても残念です」
俊太の口調が感情で揺れた。本当に残念そうに、顔が小さく歪む。
「では、一つ、俊太が安心できる大切な言葉を教えてあげよう」
「はい、コーチ」
「僕が、真田諒が、『俊太、ドルミート』と言ったら、俊太はすぐにこの状態になって、気持ち良くなれる」
諒は後催眠のためのキーワードを刷り込み始めた。ドルミートとはラテン語 dormite で「眠れ」の意。日常生活では恐らく使われることのない音の筈だった。しかし、諒はキーワードについて更に細かく指示を出した。
「『俊太、ドルミート』という言葉が意味を持つのは、真田諒が口に出した場合だけだ。他の人が同じことを言っても、俊太には何も起きない。そして、この言葉を別のものに変えられるのも真田諒だけだ」
「はい、コーチ」
「俊太、キーワードを説明してごらん」
「はい、コーチ。『俊太、ドルミート』とコーチに言われたら、僕はすぐにこの状態になれます。でも、コーチ以外から言われても何も起きません。この言葉を変えられるのも、コーチだけです」
「いい子だ。よく理解できているね」
「ありがとうございます。コーチ」
俊太の口調には微かに褒められたことに対する嬉しさが慘み出していた。諒による支配力が更に強まっている証拠だった。
「キーワードを繰り返してごらん」
「はい、コーチ。『俊太、ドルミート』です」
「キーワードを言われたら、俊太はどうなる?」
「コーチから言われたら、すぐにこの状態になって、気持ち良くなれます」
「よくできた。では、この言葉も三人だけの秘密だ」
「はい、コーチ。秘密です」
「では、指導のことは全て心の中にしまってしまおう。普段は指導のことを思い出せない。大切な言葉も思い出せない。でも、心の奥底にはしっかりと刻み込まれている」
「はい、コーチ。心の中にしまって、思い出せないけど、心に刻み込まれています」
「じゃあ、僕が3つ数えてから俊太の肩を叩くと、俊太は指導のことを全部忘れて、すっきりした気分で目覚めるよ」
「はい、コーチ」
諒はしっかりと「1、2、3っ」と数え上げると、俊太の肩を軽く叩いた。
「…あ…れ…?」
俊太は目を開けると、ハッとした様子で首を巡らし諒の顔を探した。すぐに、薄暗がりの中で自分のことを見下ろす諒の顔に気付き、安堵の表情を浮かべた。俊太の中に諒に対する従属心が芽生えたことの現れではあったが、俊太自身が意識することは無かった。
「すみません、俺、いえ、僕、寝てました?」
「いやいや、大丈夫。うまく催眠導入できていた、ってことだよ」
諒はにっこり微笑む。その笑顔の真意に気付くこと無く、俊太は期待に満ちた顔で尋ねた。
「じゃあ、カウンセリングは…」
「カウンセリングの本番はこれからだよ。今は、その準備をしていたところ」
俊太は少し残念そうな表情を浮かべる。
「次に目が覚めたらカウンセリング終了だからね、ちょっとの辛抱だよ」
「あ、はい、お願いします」
「では、椅子に体をあずけて、またゆったりリラックスしてごらん」
「はい」
俊太は頭の位置を調整すると、体の力を抜いて目を閉じた。
「俊太、ドルミート」
諒が後催眠のキーワードを発した。急に下の名前を呼ばれた俊太は驚いて目を開くが、直後に顔と瞳は表情を失い、全身が弛緩する。
「さぁ、目を閉じて」
「はい、コーチ」
俊太は一旦見開いた瞼をゆっくりと閉じる。
「気分はどうだい?」
「はい、コーチ。気持ち良くて…幸せ…いい…気分。またこの状態になれて、とても嬉しいです」
一連の暗示は俊太の中にうまく刷り込まれていた。
「とても良い気分だね」
「はい、コーチ」
「そのまま、暫く待ってるんだ」
「はい、コーチ」
諒は俊太をリラックスチェアに残し、ソファにじっと座ったままの広登に近付いた。広登は練習着姿のままで、リラックスチェアの方に斜めに体を向けながらも、背筋を伸ばし両手を膝の上に揃え身じろぎせずにいた。
諒が広登のすぐそばに寄っても、広登の様子は変わらなかった。だが、
「広登、ドルミート」
と諒が広登の耳許で囁くと、広登の体は急に支えを失なったようにソファの背もたれに倒れかかった。諒の腕が背中を支えるが、首が前後に大きく揺れ、広登は一旦閉じた瞼を見開いて白目を剥いた。諒は瞼を優しく撫でて閉じさせると、小声で問い掛けた。
「広登、気分はどうだい?」
「はい、兄さん。とてもいい気分です」
「俊太の様子を見ていたかい?」
「はい、兄さん。もちろんです。とても、いいです。…興奮しました」
「そうか。それは良かった」
諒は片腕で広登の上半身を支えながら、もう片方の手で広登の股間に触れた。光沢感のある滑らかな生地の下で、若い広登自身が熱を帯び固くなっているのが分かった。諒は黒いサッカーパンツの上から、その膨らみを軽くつまんだ。
「…んはぅ…」
広登の全身が震え、吐息を漏らす。
「俊太は、広登の願い通り、広登と同じように俺配下の選手になった」
諒は広登自身を軽く揉み続けていた。
「んは…はいぃ、兄さぁん…。俊太もぉ、選手ぅ…。仲間ぁ、ぁあ…」
広登は体をのけ反らしながら、諒に答えた。
「だから、もう俊太の前で指導のことを隠す必要は無い。俺のことはコーチと呼んでいい。俊太に催眠術をかけている間、人形にならなくてもいい」
「は…い…コーチぃ…。ありがとうぅございまぁす…」
広登は快感に包まれ、半開きになった口から涎を垂らし始めた。唾液が頬を伝う。諒は自分の下唇を軽く当てて広登の唾液をすくい取った。
「広登、気持ちいいか?」
「はい…コーチ…。ずぅ…ずっとガマ…我慢…してた…から…。ハヤ…早く…ヌ…抜きたいで…すっ」
「広登は素直でいい子だ」
「ぁあ…ありがとうござ…ぃ…います…コーチ…」
「辛いだろうけど、もう少し我慢してるんだ。俊太の指導が終わったら、お前が俊太に快感を教えてやるんだ。それから、俊太に抜いてもらえ」
広登の全身が大きく痙攣し、広登自身が固さを増す。
「は…はひっコーチっ。俊太っ…俊太にっ…!」
俊太との行為を想像し、広登の興奮が一気に高まった。スパッツとサッカーパンツを通して、先走りが染み出し始めた。
「俊太を完璧な選手にするために、広登にも手伝ってもらう」
「はいコーチぃ…僕…にも…僕にもやらせ…てくだ…」
「広登、コンスルギート」
興奮で硬直していた広登の体が、急に柔らかくなった。
「…ん…はぁ…」
広登は熱い息を吐くと、諒の腕やソファを支えにしながらゆっくりと立ち上がった。口許に残った唾液を手の甲で拭い取ると、その手で膨れた股間をこする。
「…んあっ…コーチっ。僕は…吉井広登…コーチに選ばれた…忠実な選手で…すっ…」
広登は手の動きに合わせて腰を前後に動かした。
「あぁっ…今日も気持ちいいっ…濡れちゃってますっ…」
「広登は相変わらずエッチだな」
「はいっ、これがコーチに捧げる僕の真の姿ですっ」
広登は腰の動きを止めると、掌を鼻に近付けて大きく息を吸い込んだ。
「いい匂いですっ」
更に広登は、掌になすり付けられた先走りをペロリと舌で舐め、呟いた。
「しょっぱくて、おいしい…」
そして、諒に向かって直立不動の姿勢をとった。
「吉井広登の全ては、コーチのものですっ」
「いい子だ、広登」
「はいコーチっ。ありがとうございますっ」
広登は満面の笑みを浮かべた。今の広登は催眠状態にはないが、催眠下で与えられた情報を記憶したまま、それを素直に受け入れ振る舞っていた。
広登を忠実な下僕として目覚めさせ行動させる。そのためのキーワードが『広登、コンスルギート』だった。コンスルギートはラテン語 consurgite で「立て」の意味を持つ。
「俺は俊太のカウンセリングを続け、広登の願い通りに俊太を変えてやる」
「はいコーチっ。ありがとうございますっ」
「じゃあ、横で俊太のカウンセリングを見ているんだ」
「はいコーチっ、嬉しいですっ」
「俊太はまだ真の姿に目覚めていない。暫くの間、普段通りに振舞うんだぞ」
「もちろんですコーチ。俊太の真の目覚めのために」
広登はニタリと笑った。彼自身が吐いた先走りが、サッカーパンツの染みを大きくした。
リラックスチェアを挟んだ反対側にも椅子を用意すると、諒は広登を座らせて自分自身も元の位置に戻り、カウンセリングを再開させた。
「俊太、待たせたね」
「はい、コーチ。大丈夫です」
「気分はどうだい?」
「はい、コーチ。気分いいです」
「気分が良くて、今日が何日か、ここがどこか、気にならなくなってきた。そうだね?」
「はい、コーチ。気になりません」
諒はカウンセリングのための退行催眠を開始した。
広登の時とほぼ同様の手順で俊太の記憶と反省を引き出しカウンセリングを終えると、諒はまた新たなキーワードを俊太に与えた。
「僕が、真田諒が『俊太、スルギート』と言ったら、サッカーのカウンセリング以外の指導は全て心の中にしまってから、とてもすっきりした気分で目覚めるんだ」
「はい、コーチ」
スルギートもやはりラテン語であり、surgite すなわち「起きろ」を意味している。
「さっきも言ったように、普段はこの部屋での指導のことや、この気持ちのいい状態のことは忘れて、絶対に秘密にしなければならない。分かったね」
「はい、コーチ」
「俊太、キーワードを繰り返してごらん」
「はい、コーチ。『俊太、スルギート』です」
「このキーワードで、俊太はどうなる?」
「はい、コーチ。サッカーのカウンセリング以外のことは忘れて、すっきりした気分で目覚めます」
「よく理解できたね。俊太」
「はい、コーチ。ありがとうございます」
「では、俊太、スルギート」
俊太はゆっくりと目を開け、ややあってからリラックスチェアの上で大きく伸びをした。
「…んーっ」
諒は椅子から立ち上がると、窓際まで歩いてカーテンを開けた。陽光が部屋に差し込む。俊太は眩しそうに目をしばたたかせた。
「一回目のカウンセリングが終わったわけだけど、気分はどうだい?」
俊太は肘を付いて上半身を起こした。傍らに広登が座っていることに軽く驚きつつも、俊太は嬉しそうに答える。
「すごくいいです。それに、今週やったサッカーのこと、全部思い出せてるし、良かったこととか、悪かったこととか、分かったし。なんか、次の練習では今までよりうまくやれそうです。その、実際に体を動かした感覚が残ってるっていうか、さっきまで本当にやってたみたいで…すごいです、ほんと!」
俊太は一気にまくし立てると、リラックスチェアに座ったまま軽く拳を握り、膝を曲げたり伸ばしたりして見せた。
「ね?カウンセリング受けてみて良かったでしょ?」
広登が俊太のことを見詰めながら、嬉しそうに尋ねる。
「うん!ほんと良かった。ほんと、さんきゅー」
いつの間にか広登がそばに座っていたことに違和感を感じながらも、俊太は明るい声で応じた。
「来週も、一緒に受けに来る?」
「うん!…あ…」
俊太は勢い良く返事したものの、すぐに口を噤み自分の方へ戻ってくる諒の様子をうかがった。
「僕は大丈夫だよ。土曜日は仕事しないって決めてるしね」
優しく声を掛けた諒に、俊太は慌てて礼を言った。
「ありがとうございますっ」
リラックスチェアから立ち上がろうとする俊太の肩に手を置き、優しく押し留めながら諒は笑った。
「気にしなくていいんだよ。それからね、あと一個、カウンセリングのメニューが残っていたんだった」
「え?」
俊太が不思議そうに首を傾げる。
「ごめんごめん。初回には必ず行なうことなんだけどね。もう一回催眠状態に入ってもらうけど、いいかい?」
「分かりました!」
諒への従属心と依存性を強く植え付けられていた俊太は、進んでリラックスチェアに全身を預けた。
「俊太、ドルミート」
部屋が明るい状態のまま、諒は後催眠暗示のキーワードを口にした。二度目の後催眠誘導で、俊太はもはや下の名前が呼ばれたことを気にすることも無く、催眠状態に落ちた。
改造

「気分はどうだい?」
「はい、気持ちいいです。幸せで、嬉しいです」
催眠状態での遣り取りに慣れた俊太は、虚ろな目で宙を見詰めたまま、流暢に返事を返した。
「今日、俊太は俺の指導を受ける選手として選ばれた」
「はい、コーチ」
「選手は、上達のために全てをコーチに打ち明けなければならない」
「はい、コーチ」
「選手は、上達のためにコーチの命令に忠実に従わなければならない」
「はい、コーチ」
「では、答えるんだ。俊太が好きな子は誰だい?」
「はい、コーチ…」
恥ずかしさに妨げられているのか、催眠下でも俊太は口籠もってしまう。
「俊太が好きな子は誰だ?」
諒は少し語気を強め再度問い掛けた。
「はい、コーチ…同じクラスの…うえだ…ゆき…です」
俊太を見下ろす広登の目に、嫉妬の色が浮かぶ。上田有紀。広登が俊太から恋の相談を受け、諒によって本能を刺激された広登が恋敵として訴えた名前だった。
「俊太は上田さんに告白したのかい?」
「いえ、コーチ。告白なんてしていません」
「では俊太、オナニーは上田さんでやっているのかい?」
「は…」
俊太は口を開きかけるが、また黙りこくってしまう。自慰行為やその対象に関しては、催眠状態であっても羞恥心や自尊心が従属を拒絶してしまう。これは予期されたことであり、諒は戸惑うこと無く言葉を変えた。
「俊太、サッカーの上達のためには、メンタルの部分を全てコーチと情報共有しなくてはいけない」
「はい、コーチ」
「選手は、コーチに対して何も秘密にしてはいけない。分かるかい?」
「はい、コーチ」
「繰り返してごらん。コーチには全てを話します」
「はい、コーチ。コーチには全てを話します」
「そう。だから例えば、選手が誰のことを好きなのか、二人がうまくいっているのか、オナニーやセックスをどうやっているのか、そういう性に関することも、コーチにだけはちゃんと報告しなければならないんだ」
「はい、コーチ」
「では、もう一回訊くよ?俊太は上田さんでオナニーしているのかい?」
「はい、コーチ。…その通りです」
サッカーを理由に心の中の障壁を取り払われた俊太は、一瞬は逡巡したものの、今度は素直に質問に答えた。
「上田さんの何をオナペット…おかずにしているんだい?」
「はい、コーチ。体操服の格好を思い出したり、抱いてキスすることを考えたり、です」
すんなりと答えられるようになった俊太を見下ろしながら、広登が唇を噛んだ。その様子を見て、諒は小さく笑みを浮かべた。
奥手であった広登が元々オナペットにしていたのは、体操服や水着やユニフォームといった運動用衣料をまとった男子一般であり、俊太そのものを性の対象と見ていたわけではなかった。寧ろ俊太に対しては、劣情を殆ど伴わない純粋な友情を抱いていた。広登のそうした性的嗜好と友人関係を知った諒は、暗示によって広登の性欲の対象を俊太一人に集中させ、俊太を理由に広登の行動を操作できるようにしていた。
「俊太は、上田さんのことを考えていると気持ち良くなるんだね?」
「はい、コーチ」
「上田さんとキスしたりセックスしたら、きっともっと気持ちいいだろうね」
「は…い、コーチ」
行為を想像した俊太の頬が紅潮し、股間が盛り上がる。
「でも、もっと凄い快感があることを、俊太は知らない」
「はい、コーチ」
「これから俊太にとても気持ちいいことを教えてやる」
「はい、コーチ、お願いします」
「では、もっともっとリラックスしよう。俊太の体からどんどん力が抜けていく」
「はい…コーチ…」
「体が重く、動かない。でも大丈夫、目は見えるし、話をすることもできる」
「はい、コーチ」
「体には全然力が入らない」
「はい、コーチ」
「体には力が入らなくて動かせないけれど、感覚はよく分かる。とても敏感で、触られるとよく分かる」
そう言いながら、諒は俊太の腕を指先で撫ぜた。
「は…はい、コーチ。動かせないけど、触られたのは、分かる…分かります」
おかしな感覚に、俊太の口調には戸惑いが浮かんでいた。
「体に触られるのは、とても気持ちいいことだ」
諒は今度は膨張した俊太自身を優しくつまんだ。
「はっ、はいっコーチっ気持ち…いぃ…」
虚ろであった目を見開いて俊太は応えた。
「これからが本当に気持ちいいことだ」
そう言いながら、諒は立ち上がり手近なクローゼットを開いた。引戸が静かにスライドし、中から大型で傾きを変えられるキャスター付きの全身鏡が現われた。諒は音を立てないように注意しながら、リラックスチェアの足許に鏡を移動させる。更に傾きを調整し、俊太の視点から俊太自身が見えるようにした。
「俊太、何が見える?」
「はい、コーチ。鏡の中に、俺が写ってます」
「そうだね。サカユニを着て、サカパンを穿いている」
「はい、コーチ」
「光沢感があって、かっこいい。スベスベしていて、着ていて気持ちがいい」
「はい、コーチ。気持ちいいです」
「もっと気持ち良くしてやるよ。さぁ、広登」
「「はい、コー…ッ」」
諒に対して答える俊太と広登の声が重なり、言い終える前に消え入った。
広登は俊太の下腹部に覆い被さり、サッカーパンツの上から俊太自身を唇や前歯で愛撫し始めたから。そして俊太は、その刺激に言葉を失なったからだった。
「あっあっあっ…」
広登の唇が俊太自身を挟む度に、前歯が甘噛みする度に、俊太は熱い吐息を漏らした。鏡の中には、自分に覆い被さる頭が見える。俊太にはその頭に見覚えがあった。その頭が揺れると股間に快感が走り、自分の口から声が漏れる。体は動かないのに、快感だけは体の中に流れ込んできて、股間と頭の中を駆け回る。今までに味わったことの無い感覚に、俊太の意識は混乱を来たしていた。
「んっはっ…んはっ…あっ…」
頭の揺れが大きくなるに連れ、頭の中を占める快感も膨れ上がる。自分自身が置かれた状況を説明できないがために、俊太の意志は簡単に快感と性欲に押し流された。
「感じたことを口に出すと、もっと気持ち良くなれるよ」
諒の言葉に返事もせずに、俊太は快感に翻弄された性欲を口にし始めた。
「ちんこ…あっ…いい…もっと…あっ…シコりてぇ…んっ…腰…はぁっ…カクカク…してぇ…」
諒は広登の耳許で囁いた。
「直接、吸ってやるんだ」
「ん…ふぁい…コーチ…」
広登は口を俊太自身から離す。唾液と先走りとが混じり合って糸を引く。
「も…もっと…もっと…」
股間への刺激を感じなくなった俊太は、言葉で愛撫を求め始めた。広登は口から伸びた透明な糸を丁寧に舐め取ると、俊太のプラクティスシャツの裾をパンツの中から引っ張り出した。
「んっ」
広登が俊太のサッカーパンツとスパッツの紐を探る。腹を撫ぜられる感覚に、俊太が小さく反応する。広登はパンツとスパッツと、更にその中のビキニタイプのスポーツサポーターを素早く下ろした。先走りに濡れた俊太自身が屹立する。まだ短い陰毛が数本見える。亀頭の上部だけが皮を押し広げ顔を出していた。
「俊太のちんちんっ」
広登は嬉しそうに叫ぶと、根本を両手で押さえながらむしゃぶりついた。
「あうっ」
俊太が悲鳴のような声を上げる。広登は口で咥え込むと頭を上下させた。
「んあっはっんっあっあっんっんっ…すっ…げっ…いっいいっ…いっあっあっ…」
唾液と先走りで十分に濡らし終えると、広登は今度は、舌と指で皮を剥き下ろしカリを舐め回し、裏筋に沿って舌を這わせ、鈴口に舌先を押し当てるなど、様々な刺激を加えた。
「ひゃっひゃひっ…うっひゃっ…ひっいっひっ…うひぃっ…いっいいっ…あひゃうっ…」
俊太は見開いた目からは涙を、半開きの口からは涎を垂らしながら、快感に溺れていた。自慰行為を覚えたばかりの中学生には、強烈過ぎる感覚だった。
「うっんっ」
俊太が低く唸り、腰を緊張させる。広登は慌てて俊太自身を口に含む。直後に、広登の口の中に暖かさと苦味が溢れた。
「あっ…あっ…あっ…」
俊太は喉を鳴らしながら射精した。広登の口蓋の中で俊太自身が何度か跳ねる。
ゴクン、と広登は俊太の精液を飲み下すと、尿道に残った分を吸い上げた。
「ひぁっ」
射精後に畳みかけるように襲ってくる快感に、俊太は白目を剥いた。
広登は俊太自身から顔を上げると、諒に向かって満足そうに微笑みかけた。
「どうだい?はじめての俊太の味は」
「はい、コーチ。最高です。俊太のちんちんをフェラできるなんて、こんな夢が叶うとは思いませんでした」
広登の股間では、俊太自身に負けじと広登自身がサッカーパンツを押し上げていた。
「それは良かった。じゃあ、最後の仕上げだ」
諒は、白目を剥いたまま胸を上下させる俊太に話しかけた。
「俊太、気持ち良かっただろ」
「は…はい…コーチ…すご…かった…です」
俊太は何度か瞬きするが、射精後の脱力感で瞼の動きすら緩慢になっていた。まどろみに堕ち被支配性の高まった俊太に、諒は暗示を続ける。
「こんなに気持ち良くしてくれたのか誰か、教えてやる」
「はい、コーチ」
諒は広登に対して小さく手招きする。広登が俊太の顔を上から覗き込む。
「誰だか分かるかい?」
「はい、コーチ。広登…です」
「そうだ。俊太の一番の親友の広登が、あれだけの快感を与えてくれた」
「はい、コーチ。広登…」
広登がいつもの顔でにっこり笑う。
「俊太は広登にエッチなことをしてもらって気持ち良くなった」
「はい、コーチ」
「つまり、俊太は広登のことが大好きだ」
「はい、コーチ」
「広登にやってもらったことを思い出せ」
「はい、コーチ」
萎えかけていた俊太自身がピクンと反応し、頭を上げ始める。
「広登のことを考えると勃起する」
「はい、コーチ」
顔は表情を失ったままだったが、俊太自身は力を取り戻した。
「俊太は広登のことが大好きだ」
「はい、コーチ」
「声に出して言うんだ。僕は広登が大好きです」
「はい、コーチ。僕は広登が大好きです」
「僕は広登を愛しています」
「僕は広登を愛しています」
「僕は広登のことを考えると勃起します」
「僕は広登のことを考えると勃起します」
「僕は広登とエッチなことをするのが好きです」
「僕は広登とエッチなことをするのが好きです」
俊太は諒の言葉を忠実に繰り返す。性的快感の余韻と新たな興奮に浸りながら、俊太は諒の言葉を無抵抗に受け入れていた。
「僕はちんこが大好きです」
「僕はちんこが大好きです」
若い俊太自身は完全に復活してそそり立ち、鈴口には先走りの雫が浮かんだ。
「僕は女子には興味がありません」
「僕は女子には興味がありません」
「僕は女子を好きになったことがありません」
「僕は女子を好きになったことがありません」
「僕の恋人は広登だけです」
「僕の恋人は広登だけです」
俊太自身が血流によって揺れ、先走りが溢れ出した。諒の言葉は俊太の意思として、俊太の中に浸み渡っていた。
「僕は広登の恋人で、僕と広登はコーチのものです」
「僕は広登の恋人で、僕と広登はコーチのものです」
「よく言えた。もういいぞ」
「はい、コーチ」
「俊太、お前はなんだ?」
「はい、コーチ。僕は広登の恋人で、コーチのものです」
「いい子だ。お前は自分のことがよく分かっている」
「はい、コーチ。ありがとうございます」
「広登と抱き合って、広登のちんこを咥えたいだろ?」
「はい、コーチ。その通りです」
「では、良い言葉をまた教えてやる」
「はい、コーチ。お願いします」
「俺が、真田諒が『俊太、コンスルギート』と言ったら、俊太は催眠状態での俺の指導を全て記憶したまま、すっきりした気分で目を覚まし、自由に動くことができるようになる」
「はい、コーチ。コーチが『俊太、コンスルギート』と言ったら、俺は全ての指導を記憶したまま目覚めます。自由に動けます」
「よく分かっているね。いい子だ」
「はい、コーチ。ありがとうございます」
「では、俊太、コンスルギート」
俊太は数回瞬きすると、ゆっくりと上体を持ち上げた。パンツやスパッツを脱がされ勃起していることに驚きもせず、広登と諒に向かってはにかんで見せた。
「広登、すごく良かった。コーチ、ありがとうございます。俺は一生コーチのものです」
諒は俊太の頭を乱暴に撫ぜた。
「いい子だ、俊太。さぁ、広登に同じことをしてやるんだ」
「はいっコーチっ」
俊太は満面の笑みを浮かべた。
俊太はリラックスチェアから立ち上がると、スポーツサポーターの中に勃起した自分自身を無理矢理押し込み、スパッツとパンツを穿き直した。
「広登…」
俊太は椅子から立ち上がった広登に跳びかかると、両腕で広登の体を抱き締めた。以前から、好きな人をこの腕で抱きたいと思っていた。その願いが叶った瞬間だと俊太は感じていた。
「しゅ、俊太。嬉しいけど痛いって…」
腕の中で広登がもぞもぞと動く。二人してサッカーの練習着姿であることが、無性に嬉しかった。俊太は広登のプラクティスシャツの背中を撫ぜてみた。スベスベしていて気持ち良かった。手を下の方に持っていく。
「わ」
広登が身を固くする。ぴっちりしたスパッツと滑かな生地のパンツの内側に、広登の小さな尻の弾力を感じ、俊太は思わずその手で尻を揉み始めていた。広登は直接スパッツを穿いているらしく、下着の線は無かった。このことも俊太の興奮を加速させた。もう片方の手も尻に添え、両手で撫ぜたり揉んだりしてみる。太股には、固く熱くなった広登自身が密着している。俊太は腰を動かして自分自身を広登に何度もこすり付けた。
「俊太ぁ…」
広登の顔を見下ろすと、広登は目を瞑り快感に堪えていた。小さくもぷりっとした張りを見せる広登の唇に、俊太は急にキスの衝動を覚えた。
「広登…」
「ん?な…ぐっ…むっ…」
俊太は自分の唇を乱暴に広登の唇に押し当てた。誰かから教えられたわけでも無いのに、俊太は舌を広登の口の中に押し込もうとした。広登は暫くの間前歯を閉じて抵抗していたが、唇や歯茎を舐められている内に軟化したのか、やがて俊太を受け入れ絡み合いを始めた。広登の唾液は少し苦く感じられた。
「俊太はエッチだな」
腰と舌を動かし続ける俊太と広登の肩に手を置いて、諒は笑いながら二人を制止した。
「は…はい、コーチ。俺は広登とエッチなことをするのが大好きです」
俊太は唾液に濡れた唇をぴちゃぴちゃ言わせながら答えた。
「サカユニでこすり合うのは後にしよう。広登は一週間オナニーしていないからね、一番最初の濃いのはちゃんと俊太が飲んであげるんだ」
「あっ、はい、分かりました。コーチ」
俊太は慌てて跪くと、先走りに濡れたサッカーパンツの匂いを嗅ぎながら腰紐を解き、パンツとスパッツを一気に下ろした。俊太自身よりは小さく陰毛も生えてはいないものの、しっかり皮の剥けた広登自身が俊太の鼻先に突き立った。
「うまそ」
俊太は広登の腰に両腕を回すと、根本まで広登自身を咥え込んだ。丸くすぼめた唇を陰茎に沿って前後させるだけの拙いフェラチオではあったが、オナペットの俊太を前に散々我慢を強いられていた広登は、短時間で達し大量の精液を俊太の口にぶち撒けた。
「あっ、出る、出るよっ」
慣れている筈も無い俊太は、喉の奥への刺激と臭みのせいで咳込んでしまい、口の端から精液を吹き出してしまった。
「…わ…わりぃっ…」
俊太は口の中に残った分を無理矢理飲み込むと、謝りながら広登自身にまとわり付いた精液を舐め取り始めた。自慰行為の後に見る自分の精液は汚く余計なものでしか無かったが、広登の精液は飲み残してはならない貴重なものに思えた。美味しいとは感じられなかったが、自分の中に取り込まなければならないという思いが湧き上がっていた。
「俊太にフェラしてもらえるなんて、僕もう死んでもいいや」
「バカ言ってんじゃねーよ。俺はもっと広登とサッカーやエッチなことしたいもん。死ぬなよ」
再び練習着姿を整えた二人は、床に敷かれたフィットネスマットの上に横たわり、しっかり抱き合いながらキスや腰のこすり付け合いを繰り返していた。
「あ、また出る」
「ちょ、ちょっと待てよ。俺まだだよ。広登、顔に似合わずすげーな」
「顔は関係無いよ。だいたい俊太は毎日抜き過ぎなんだよ」
「毎日じゃねーよ。前回は一昨日だもん。広登のこと考えたら我慢できなかったんだよ」
一昨日の自慰行為のオナペットは実際には広登ではなかったが、強い暗示は俊太の記憶をも改変していた。
「よっ、と」
俊太は広登と抱き合ったままでゴロンと仰向けになった。俊太の上で広登が俯せになり、二人が上下で向き合う形になる。
「な、なに?」
広登が不思議そうに尋ねる。
「今日の4発目だから、広登に全身でこすってもらう」
俊太は広登の体に回した両腕に力を入れると、自分の上で上下に揺らし始めた。
「はっ、苦しぃ、って…」
「でもっ、いいだろっ?」
「ま、まぁっ、ねっ。どうせなら、もっと、締めてっ」
俊太は腕に更に力を入れる。広登は苦しそうにしながらも、笑みを浮かべていた。
「あっ俺っ広登にいかされっ…てるっ」
「「うっ…くっ」」
俊太と広登が同時に、練習着の中に射精した。各々のフェラチオの後、3回目のことだった。精液を吐き終えると、俊太は大きく溜息をつきながらマットの上に頭を落とし、広登は俊太の肩口に顔をうずめた。
「広登、俊太」
諒の声に、二人は荒い息遣いのまま顔を上げようとする。
「ドルミート」
後催眠暗示により、二人は上下に重なったまま催眠状態に入った。諒はソファから立ち上がると、苦笑した。
「ここまでノリノリになるとはね」
「広登、立つんだ」
「はい、コーチ」
諒は広登の背後から両脇に腕を差し込み上半身を持ち上げた。広登は緩慢な動作でマットに膝を突き、よろよろと立ち上がった。
「広登は人形だ。気を付けの姿勢で、ずっと立ち続ける」
「はい、コーチ」
広登の全身に力が入る。諒が両腕を離すと、広登は脇を締めて直立不動の体勢をとった。正面を向いた顔からは一切の表情が欠落していた。
「俊太も立つんだ」
「はい、コーチ」
俊太もまたゆっくりと、膝を曲げ肘を突き、立ち上がった。
「俊太は俺のものだ」
「はい、コーチ」
「モノ、だよ。呼吸以外一切身動きしない。俺の言葉を忠実に聞き続けるだけの物体。マネキン人形や石像のように」
「はい、コーチ」
初めての経験となる俊太に対しては、諒は丁寧に指示を与えた。
「俊太は俺の人形だ。気を付けの姿勢で、真っ直ぐにいつまでも立ち続ける。そう、俊太は人形なんだ」
「はい、コーチ」
俊太の頭から指先まで緊張が走り、俊太もまた直立不動の彫像のように動きを止めた。諒が頬を撫でても、無表情な顔に変化は生じず、目はガラス玉のように固く宙を見詰めたままだった。
「よく仕上がった。こういう姿が一番好きだよ」
諒はそう呟くと、広登と俊太の体に鼻先や唇を這わせ始めた。
「中学生の汗の匂いはとてもいい」
プラクティスシャツやサッカーパンツを触り、撫でる。
「ユニはいいね。肉体の美しさが映える」
二人のパンツの股間はお互いの先走りや精液に濡れていた。黒いサッカーパンツが更に光沢を増し黒光りしている。諒は俊太のパンツの中に手を入れると、スパッツの上から陰茎の位置を確かめた。俊太の腰がピクンと動くのを、叱責する。
「俊太、動くな。お前は人形だ。どこを触られても、何も感じない。お前は人形なんだ」
俊太が全身を更に緊張させる。腕やふくらはぎの筋が浮き出した。諒は指に付着した若い精液を舐め取ると、今度はサッカーパンツに舌先を這わせた。俊太自身の形を舌で追うように。
硬直し立ち尽くす二人の汗や精液の味と匂いをひとしきり味わうと、諒は二人への指示を再開した。
「広登、俊太、お前達は喋ることができる。コーチの命令に対して返事することができる」
「「はい、コーチ」」
二人は無表情のまま声を揃えた。
「お前達には、スルギートという言葉を教えてある。俊太、意味は分かるか?」
「「はい、コーチ」」「サッカーのカウンセリングのことを心にしまって、目覚めることです」
「そうだ、よくできた」
「はい、コーチ、ありがとうございます」
「これから、スルギートの新しい意味を教える。広登も俊太に心に刻むんだ」
「「はい、コーチ」」
「俺が、真田諒が、それぞれの名前と『スルギート』という言葉を言ったら、サッカーのカウンセリングと、広登と俊太が恋人同士であること、そして広登と俊太がここでオナニーし合ったことの3つ以外は心の奥にしまい込んで、すっきりした気分で目覚めるんだ」
「「はい、コーチ」」
「理解できたかい?確認してみよう」
諒はそれぞれに、覚えておくべき3つのことを復唱させた。暗示が正確に伝わったことを確認した諒は、二人を催眠状態から目覚めさせた。
「広登、俊太、スルギート」
二人は目をしばたたかせる。全身の緊張が一気に解けたために、特に俊太はふらついて床に膝を付いてしまった。
「あ…俺達…」
俊太は冷たく張り付くスパッツに気付き、顔を紅くした。
「すっすみませんっ、コーチの前で二人でっ…なんでこんなことっ」
諒の指示に従って行為に及んでいたことは忘れ、俊太は人前で自慰行為を繰り返したことに頭を抱えた。
「いいんだよ、俊太。男同士恋人になるなんて、今の世の中は許してくれないからね。僕も男が好きだし、二人のことを理解できる。だから、二人ともオナニーはここでするんだ。いいかい?」
諒の言葉に、俊太の表情が明るくなる。
「あ、ありがとうございますっ」
「その分、ここ以外、自分の家とか学校のトイレとか、そういうところでのオナニーは厳禁」
「え…」
俊太があからさまに残念そうな声を上げる。
「カウンセリングとセットにした方が、カウンセリングの効果が上がるんだ。それに、広登と一緒に濃いのを出し合う方が気持ちいいだろ?」
「なるほど。分かりました、コーチ」
サッカーや広登で理由付けされ、俊太は素直に納得した。
「さぁ、二人ともそんな濡れたユニでは帰れないだろ?着替えるんだ。それは次回までに洗っておくから」
そう言いながら、諒はクローゼットの中から洗濯用の籠を持ち出してきた。中には、練習着が二人分畳んで入れられていた。
「はい、コーチ、ありがとうございます」
「え?」
率先して脱ぎ始める広登の横で、俊太は不思議そうに籠の中を覗き込んだ。中には、俊太が今着ているものと同じシャツやパンツがあった。
「あ、それ?僕がコーチに伝えておいたの。俊太ってそのメーカーの好きでしょ?俊太のはインナーだってスパイクだって、何使ってるか、僕知ってるから。サポーターはメーカー分からなかったから、色だけで選んじゃったけど」
自分を見詰めていた広登の視線を知り、俊太は怖さではなく愛しさを感じた。
「うわ、すげ。広登ありがと。でも俺、広登のこと、そこまで分かってないよ。ごめん」
「いいよ。これからお互いのこと知ってきゃいいんだから」
広登はスパッツを下ろし、ストッキングとレガース以外は身に付けない姿になった。広登自身は4回抜いた後であるにも関わらず軽く勃っており、俊太自身も連動するように再び固くなり始めた。
「俊太も早く着替えなよ。あ、ソックスにもザーメン付いてた」
広登はストッキングを脱ぐと、それで自分の陰茎を包み込み拭き始めた。
「あは。気持ちいい。ダメなんだよね、サカユニ見てると、勃っちゃって」
広登はストッキングで彼自身を包んだまま、手淫を始めた。あっけにとられる俊太の前で、素っ裸の広登は腰を動かし始めた。
「俊太…も、もう一回…抜かない?…僕の…ソックスで…」
広登は自分よりも成績も教師の覚えも良いし、真面目だと思っていた。自分みたく自慰行為に耽ったりはしていないと思っていた。息を荒くする広登を見詰めながら、俊太は自分の鼓動が早くなるのを感じていた。広登、かわいい。俺も、同じことをしてみたい。俊太は諒の様子をうかがった。
「いいんだよ。広登と同じこと、してごらん。気持ちいいから」
諒が言い終わる前に、俊太は練習着を脱ぎ捨て、広登のもう片方のストッキングを手に取っていた。自分自身をストッキング越しに掴んでみると、柔らかい生地が思いの外気持ち良かった。床に丸められた汚れた練習着と、籠の中に畳まれた小綺麗な練習着を見ていると、抜きたい気持ちがますます強くなった。サカユニ、着たい。サカユニが好きだ。俊太は広登同様にサッカーのユニフォームに劣情を催すようになっていた。
「広登の…ソックス…」
「俊太、僕は俊太の味方だよ。遠慮無く気持ちいいことをするんだ」
「はいコーチ、ありがとうございます」
俊太は手を動かし始めた。
催眠下での記憶を殆ど封じられて覚醒した状態でも、俊太は諒に対し羞恥心を抱くこと無く、目の前で自慰行為まで行なうようになっていた。諒をコーチと呼び、諒から俊太と呼ばれることに違和感を覚えたりはせず、諒の言葉を素直に受け入れるようになっていた。オナペットは広登やユニフォームであり、また忠誠を誓うのは諒であり、それ以外には無くなっていた。
俊太は、数時間の「指導」を経て、諒が望む通りの「選手」に仕上げられていた。
支配

汚れた練習着やフィットネスマットは片付けられ、着替えを終えた俊太と広登は来た時と同じ出で立ちでソファに座っていた。
違うのは、二人がぴったりと身を寄せ合いながら座っていたこと。そして俊太が諒を見詰める目が、忠誠心に染め上げられていたことだった。
「来週も来れるだろ?」
「はい、コーチ。でも、練習試合がある日なので、今日より遅い時間になります」
俊太が答える。
「試合には出るのかい?」
「はい、コーチ。二人とも。ベンチですが」
今度は広登が答えた。
「じゃあ、試合用のユニフォームを着るんだね」
「「はいっ」」
二人が嬉しそうに声を揃える。
「クラブジャージでの移動になります」
俊太が補足した。
「では、二人とも試合後はそのままおいで。俺にも公式ユニ姿、見せてくれよ」
「「はい、コーチ」」
「でも、今日の練習着も一緒に持ってくること。公式ユニでのオナニーはしない方がいいからね」
「「はい、コーチ」」
二人は声を揃え、揃う声が一体感を高める。俊太が広登の手を握った。
「じゃあ、今日はここまで」
「「はい、コーチ。ありがとうございましたっ」」
二人は揃ってソファから立ち上がり、勢い良く頭を下げた。
「あ、それと、ここを出た時の約束、3つな」
「「はい、コーチ」」
「1つ目。ここでのことは、カウンセリング以外は絶対に秘密にすること。カウンセリングのことも、できるだけ言わないこと。2つ目。ここで三人だけの時以外、俺のことはコーチと呼ばないこと。広登は『兄さん』、俊太は『真田さん』と普通に呼ぶんだ。3つ目。ここ以外では、二人が恋人同士であることは絶対に知られないように振る舞うこと」
「「はい、コーチ」」
「この約束は、俺達三人を守るためのものだからね、絶対に守ること」
「「はい、コーチ」」
俊太と広登は、神妙に、しかし嬉しそうに答えた。二人にとっては、諒の指示に反した行動をとることなど思いもよらなかった。
「あ、そうだ。4つ目。次に来る時までオナニー厳禁な」
「「はい、コーチ」」「勿論です。広登と一緒にしたいから…」
広登は俊太の言葉を聞いて、俊太の手を強く握り返した。
「俊太、これからどうする?」
「んー、まだ時間もあるし、ちょっとボール蹴ろっか」
諒のマンションから出た俊太は、空を見上げながら答えた。太陽はまだ高く、暑い。
「そうだね。一旦うち戻って、ボールとスパイクとってこよ」
「サカパンとか、このまま使ってていいのかな」
俊太がパーカーの裾からプラクティスシャツを引っ張り出しながら心配そうに呟いた。
「いいんだよ。兄さんに預けたのの代わりなんだから。全く同じだから、家族も気付かないし。普通に使って、来週持ってけば」
「そっか。良かった。俺、サカユニ着てるの好きだしさ」
俊太は安心したように笑みを浮かべると、ペダルを押す脚に力を込めた。
「急いで帰って、早く練習しよっ」
マンションから自転車で遠ざかる二人の姿をバルコニーから確認した諒は、隣の部屋に続く扉を開けた。カーテンで陽光を遮られた薄暗い室内には、明るく輝くディスプレイと、それを見詰める若者の姿があった。ディスプレイの光に白く照らされた若者の顔は無表情で、諒にも反応せずに身を固くしていた。諒の催眠術が作り出した「人形」だった。ディスプレイには、先程まで男子中学生二人が催眠術を施され恥態を見せていたリビングルームが映し出されていた。
諒は若者の両耳からインナーイヤータイプのヘッドフォンを引き抜くと、若者に言葉をかけた。
「コーヘイ、スルギート」
若者はピクッと一瞬体を震わせると、椅子から立ち上がり諒の前に直立した。
「はい、コーチ」
若者の背は諒より高かった。若者は諒を見下ろすのではなく、宙を見上げ諒と視線を合わさずにいた。
諒は若者をそのままにすると窓の近くに寄りカーテンを開けた。部屋が一気に明るくなり、若者の姿も明確になる。若者は青を基調とした陸上のランニングシャツとランニングパンツを身に付けていた。シャツやパンツのサイズには余裕があったが、股間部分ははっきりと彼自身の存在を主張していた。諒は若者の前に戻り、彼自身を強く握った。
「あっ」
若者が腰を引く。諒は固さを確かめただけで手を離し、部屋を出た。
「付いてこい」
「はい、コーチ」
諒の後を若者が追う。諒がリビングルームのソファに座ると、付き従っていた若者はすぐ横に跪き、頭を垂れた。
「二人の様子見てて、どうだった?興奮したかい?」
「はい、コーチ。俊太がコーチの命令で次第に変えられていく様子に、勃ちました」
「俊太のことは知ってたのかい?」
「はい、コーチ。弟がよく話していました。写真で顔を見たこともあります」
「さっきの二人、気持ち良さそうに見えたかい?」
「はい、コーチ。相当に快感だったと思います。二人ともコーチの指導を受けられ、幸せだと思います。広登に良い恋人を作っていただき、ありがとうございます。ただ…」
「ただ?」
「催眠状態での指導内容を殆ど封印されていたのが可哀想でした」
「なるほどね。お前みたく全部覚えたまま目覚めさせた方がいい、と」
「はい、コーチ。コーチの指導内容を完全に自覚して目覚めてこそ、コーチに選ばれた選手と言えると思います。また広登達にも、コーチの直接のご指導を味わわせてあげたい、と思いました」
「なるほどね。顔を上げるんだ、コーヘイ」
若者は跪いたままで諒のことを見上げる。背は高いが、顔にはまだ幼さが残っていた。広登とそっくりな輪郭の顔に、理知的な瞳。広登の5歳離れた兄、諒のもう一人の義理の弟、吉井高平(よしい・こうへい)だった。
諒は高平に顔を近付けると軽くキスをした。高平の頬が紅潮する。
「まだ第二次性徴を迎えたばかりの男子には、あまり刺激は与えない方がいいんだよ。普段の暮らしで隠せなくなってしまうだろうし、快感のせいで本当に狂っちゃうかも知れないからね」
「はい、コーチ。失礼いたしました」
高平は恥ずかしそうにまた頭を垂れた。
「あの二人は大丈夫。お互いを縛り続けるように指導していく。大学生にでもなったら、二人とも綺麗なまま、完全に俺のものになってもらうよ。お前みたくね」
諒は高平の短い髪を掴むと、上を向かせた。
「はい、コーチ。分かりました」
高平は嬉しそうに答える。その目には、俊太や広登よりも深く濃く忠誠心が刻み込まれていた。
「今日は時間は十分にあるんだよな」
「はい、コーチ。今日は陸上部の練習はありません。家には、友達の家に泊まるかも、と伝えてあります」
「いい子だ」
「はい、コーチ。ご指導お願いいたします」
「高平は筋トレもロードワークも真面目にやってるからね。今日はお楽しみから入ろう」
「はいっ、コーチ」
高平は満面の笑みを浮かべた。
「広登と俊太を見ていたら、俺もかなり濡れちゃったよ」
諒は高平の頭を離すとソファから立ち上がった。
「脱がせてくれるかい?」
「はい、コーチ」
諒は長袖のTシャツを脱ぎ、高平は膝を付いたまま諒のジーンズを脱がせにかかった。Tシャツやジーンズの下から、青い生地が現れる。
「コーチ、これは…」
戸惑うように尋ねる高平に対し、諒はジーンズから脚を抜きながら事も無げに答えた。
「高平に着せたのと一緒だよ。今、高平は俺と同じユニを着てるんだ。お前と俺は一緒の格好をしてるんだ」
諒の言葉は、諒への敬愛を刷り込まれた高平に強く作用した。高平は興奮で薄らと涙を浮かべながら諒を見上げた。
「あ…はいコーチ…ありがとうございます。私は今、コーチと同じユニフォームを着ています」
「抜きたいだろ?」
「はい、コーチ。抜きたいです」
「でも、もっとしたいことがあるだろ?」
「はい、コーチ。コーチの精液を飲ませてほしいです。コーチのペニスと精液を私の中に注入してほしいです。コーチ、直接ご指導ください」
高平の目の前には諒自身によって盛り上がったランニングパンツがあった。高平は諒の顔とパンツとに代わる代わる目を遣りながら、哀願するように訴えた。
「よく言えたな。じゃあ、またお前を解放してやる」
「はい、コーチ。お願いしますっ」
「高平、コンスルギート」
広登や俊太にとっては催眠時の記憶を残したまま覚醒させる後催眠暗示であったが、平常時から諒の下僕となっている高平に対しては、別の意味を持つ言葉として働いた。
「は…い…コーチ…」
高平の顔は表情を失い、全身は弛緩した。その体は床に崩れ落ちる。ややあって、高平は体を起こし顔を上げる。催眠状態を一旦経由し目覚めた高平の目は、理性や羞恥を捨て性欲のみに彩られていた。
「あ…あ…ご主人様ぁ…」
高平の口許から涎が滴る。
「オナニー、オナニーしてぇ。でもご主人様のザーメンも飲みてぇ。ご…ご主人様、俺のケツ、俺のケツマンコにふっといチンコ突っ込んでグリグリパンパンしてえぇぇぇ」
高平は人が変わったようにまくしたて、諒にすがりつく。
「あぁー、ユニ、いいー。ランパンいいー。俺もランパン穿いてるぅ。ランパンで抜きたいぃぃぃ」
「おい、奴隷。ここは狭いからこっちに来い」
「あぁー、ご主人様ぁ。行く、行きますぅ」
諒は乱暴に言い放つと、リビングの中央に高平を引っ張り出した。高平は諒の腰にしがみ付いたまま、膝で摺りながら諒についていった。
「ほら、飲ませてやるよ」
諒は高平の鼻先に股間を突き出した。
「あぁー、ご主人様のチンコ。ランパンー。あー」
高平は諒のランニングパンツを舐め始めた。舐めながら腰紐を探り当て、解く。
「うまいぃ。ご主人様の我慢汁、くっさくてうまいぃぃぃ」
高平は諒のパンツを下ろした。インナーとの間に糸を引きながら、黒くて太い諒自身が姿を表す。高平の目の色が変わり鼻息が荒くなる。
「あぁー、ご主人様のチンコぉー。いつ見てもうまそうぅぅぅ。欲しい欲しい欲しいぃぃぃ」
高平は舌を突き出すと垂れかけた先走りを舐め、亀頭を口に含んだ。
「むふんっ。ふはっんうまぁ…んっ…んはぅ」
ぴちゃぴちゃと音と立て、鼻を鳴らしながら、高平は一心不乱に諒自身への奉仕を続けた。
兄の結婚相手の弟として、諒は大学入学を控えた高平に出会った。高校で陸上部に所属していたという共通点や、諒の仕事に対する興味から、高平は諒によく懐き色々なことを相談してくるようになった。高平が大学でも陸上を続けることを決意したのは諒の助言のためであるし、また長距離の選手として頭角を現わしたのは諒のカウンセリングのお陰だった。そんな高平を完璧に支配したいと思うようになるまで、大した時間はかからなかった。他の男を催眠術で操り一時の慰み者にしたことはあったが、高平は彼等とは違った。誰にも高平を渡したくない、いつしか諒はそんな想いに囚われていた。
諒の支配欲は高平の弟に、そしてその親友へと広がった。今日の仕込みで、彼等を手に入れる準備が整った。三人とも、綺麗で可愛らしい。
諒は催眠状態の三人が彫像のように無表情に立ち尽くす様を思い浮かべた。諒自身がますます熱を帯びる。
「ぁふっ…ぃひ…いいっ…んまっ…んむっグッ」
諒は高平の頭を両手で掴むと、高平のリズムを無視して彼自身を深く挿入し、大量の精液を放った。
「真田さん、こんにちはー」
インターフォン越しに俊太の声が聞こえてくる。2回目の訪問だった。マンションのエントランスを開錠すると、暫くしてドアチャイムが鳴らされる。諒が玄関のドアを開けると、揃いの黒いジャージを着込んだ俊太と広登が立っていた。
「よく来たね。どうぞ」
二人を招き入れてドアを閉めると、俊太が両手を広げて嬉しそうに言った。
「コーチ、見てください。これがクラブのジャージ」
左胸と背中、そして左大腿部に学校名と部名がアルファベットで圧着されていた。
「試合用のユニも見てください」
俊太がファスナーを下ろそうとしたのを、諒は慌てて止めた。
「あ、ありがとう。嬉しいけど、リビングで落ち着いてからにしようか」
「あ、はい、コーチ。すみません」
諒にリビングルームの方に追い立てられながらも、二人は振り返って笑顔を見せた。
「練習着の方もちゃんと持ってきてます」
「オナニー、ちゃんと一週間我慢しました!」
二人のサッカー少年は、カウンセリングを受けるため、性欲に耽るため、そして、忠実な下僕として目覚める日のために、廊下を駆けた。
おわり
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