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  • 2015⁄11⁄15(Sun)
  • 00:28

状態異常

彼は地元中学校の一年生。男子サッカー部に入部してから、毎朝6時には自主的に起床して朝練に向かうようになっていた。他の部が校庭を使用する日も、空き教室での筋トレのために同じ時間に登校していた。
朝ゆっくり寝ていたい、という気持ちが無いわけではない。しかし、6時には自然と目が覚め、朝練に出なくては、という義務感に背を押される。不思議なことにその義務感は、校庭を走り回れる日よりも教室に集合する日の方が強かった。
今朝も、彼は寝惚け眼でベッドから這い出した。パジャマ代わりのスウェットを脱ぎ全裸になると、チームカラーの赤いスパッツを肌に直接穿く。その瞬間全身に快感が走り、白いプラクティスシャツ、そして赤いサッカーパンツを着込む動きが早くなる。サッカー用の赤いストッキングを履くと、彼はクローゼットの扉に嵌め込まれた姿見の前に立ち、自分自身の姿を上から下へと眺めた。
「僕はサッカー部員です」
まだ眠そうな目をしばたたかせながら、無意識的に呟く。直後に、頭の中に
「お前は監督に忠実なサッカー部員だ」
という声が響いたように感じた。自分達を指導してくれる顧問兼監督の教師の声だった。彼の目がしっかりと見開かれた。
「はい。僕は監督に忠実なサッカー部員です」
彼の呟きは、意志のこもった力強いものへと変わっていた。彼は素早くスクールジャージの上下を纏うと、制服と体操服、そしてサッカーシューズとレガースをバッグに放り込み、階下へ駆け下りた。
朝食をもどかしそうに掻き込むと、彼は家を飛び出した。
校舎の隅の空き教室には、揃いの赤いサッカーパンツと白いプラクティスシャツを着たサッカー部員達が集合していた。誰もいない教壇のすぐ前で、彼は休めの姿勢で立っていた。視線は黒板の一点を見詰めたまま動かない。続々と登校してきた部員達が同じ姿勢で整列し始めても、彼は、そして彼等は、お互いに反応せずただ立ち尽していた。
男子サッカー部員が全員集合してから暫くして、ピステ姿の教師が教室に現われた。部員全員の目が、崇拝と安堵の表情を浮かべながら、教師に注がれる。
「おはよう」
「「「おはようございます。監督」」」
部員全員の抑揚に欠けた声がきれいに重なる。
「本日の指導を始める」
「「「はい、お願いします。監督」」」
「朝の宣誓、はじめっ」
教師の掛け声で、一年生から三年生までの全員が、感情を失なった口調で、しかし全く乱れること無く、心に刻まれた誓いの言葉を唱和し始めた。
「「「我々は、監督に忠実なサッカー部員です。監督は我々の主。我々は監督のしもべ。サッカー部の勝利のため、我々は監督に全てを委ね、全てのご命令に従います」」」
彼等の言葉は彼等自身の意識に刷り込まれ、暗示を強化し続ける。
校舎の隅の空き教室では、筋トレを終えた男子サッカー部員達がわいわいと騒ぎながら制服に着替え始めていた。素っ裸になった彼の肩を、顧問兼監督の教師が軽く叩く。
「は、はいっ」
彼は振り返って教師の顔を見上げると、顔を赤らめた。
「お前は次の試合からスタメン入りするからな。今日は個人指導してやる。部活の時間になったら、一人でこの教室に来るんだ」
「は、はいっ、ありがとうございますっ」
彼は全身で教師の方へ向き直り、嬉しそうに御辞儀した。周囲からは羨望の視線が集中する。
「みんな、これから毎日一人ずつ指導してやるからな、安心しろ」
教師の言葉に、部員達から歓喜の声が上がる。
顔を上げた彼の、そしてその周囲の部員達の股間では、彼等自身が力一杯天井を仰いでいた。

高校の男子バスケ部の練習試合を終えた彼は、試合時のユニフォームの上にウォームアップジャケットとパンツを重ね着した姿で電車に揺られていた。
あまり混んではいない車中で、彼は扉に寄り掛かりながら携帯電話を弄っていた。足許には、試合用のシューズや自前のバスケットボールを押し込んだエナメルバッグを放り出している。試合でのお互いの活躍を褒め合うメールをチームメイトと遣り取りしていると、ふと強い視線を感じた。
なんか感じ悪いな。そう思いながら視線の主を探すと、斜向かいの席に座る男だった。大学生か社会人か、それくらいの年齢で背は高め、筋肉質で彼同様にバスケでもやっていそうな雰囲気だった。それだけに自分の姿格好が気になるのかな。そう考えながら目を逸らそうとした瞬間、彼の意識に串刺しされたような衝撃が走った。
目が、頭が、動かせない。その男と目を合わせたまま、全身が動かなくなった。その視線に絡め取られてしまったように、携帯電話を操作していた指先すら、細かく痙攣したまま全く動かすことができなくなってしまった。
なぜ。どうして。戸惑う彼の額と背に冷や汗が吹き出した。必死で視線から逃がれようとするが、彼の視界の中では男の眼ばかりが存在感を増し、周囲の風景がぼやけ始めた。そして、彼の頭の中には急に数列のイメージが流れ込んできた。0…9…0…。11桁の数字が、鮮烈な印象で彼の意識に焼き付く。次いで流れ込んできたのは、ショートメールという言葉だった。
数字?ショートメール?…メールを、送る?11桁の数字は携帯電話の番号なのか。そう思い至った途端に、彼の体は自由を取り戻した。いや、自由と感じたのは彼の錯覚だった。彼はほっと安堵しながら、携帯電話の操作を始めた。頭に流れ込んできた11桁の番号に、何の疑問も持たずに本文の無いメールを送る。
彼はメールの送信完了を確認すると、扉の外に目を向けた。斜向かいに座る男と目を合わすのは、なんだか気まずかった。
程無く、携帯電話が震えメールの到着を知らせてくる。彼は再び携帯電話に目を落とした。
「自分は次の駅で降りる。自分に付いてこい」
先程メールを送った電話番号からの返信だった。メールには通常のメールを送れるアドレスも付記されていた。彼は一瞬違和感と緊張を感じるが、すぐに「そっか、付いていけばいいんだ」という思いに支配された。途端に意識の全てが安心感によって満たされ、彼の思考は完全に停止した。
自宅の最寄駅よりも何駅も手前で、彼は下車した。視線は、車内で目を一瞬合わせた男の背を追っていた。男の後を追って、階段を下り改札を通り、駅前の駐車場へと向かう。一台の車の前で、男は立ち止まり、彼の方へ振り返った。男と再び視線を合わせて、彼は嬉しいという感情を芽生えさせていた。
「乗れよ。シートベルトはいいから」
男が初めて口を開いた。助手席のドアが開けられる。彼は素直に乗り込んだ。
男は運転席に乗り込むと、助手席の方へ体を乗り出した。
「俺の目を見るんだ」
「はい…」
彼は男に言われるがまま、至近に迫った男の目を見詰めた。男の瞳は黒かった。黒い瞳が、彼の全てを包み込んでくるように思われた。同時に、男の言葉が、意味も分からないままに体の中に流入してきた。しかし、彼がその言葉の意味を反復する必要は無かった。流入と同時に、それは彼の意識に確実に焼き付けられたのだから。
「さぁ、俺が言ったことを繰り返してみろ」
男の肉声を聞いて、彼の口は自然と言葉を紡ぎ始めた。
「俺はあなたの奴隷です。あなたの言うことは全て正しく、俺はあなたに従います。俺はあなたを愛します。俺はあなたにこの体を捧げます。あなたに会えて嬉しいです。あなたは俺のご主人様です。俺はあなたの奴隷です。あなたの言うことは全て正しく…」
「よし、いいぞ。もう黙っていい」
押し黙った彼の頭を男は乱暴に撫ぜ、ウォームアップジャケットのスナップボタンを幾つか外した。彼は抵抗すること無く、その手を受け入れた。
「チームのユニフォーム、赤いんだな」
「はい」
男は更に、ウォームアップパンツの腰紐を解いて少し下ろすと、ゲームパンツを確認した。そして、そこにある彼自身を握った。
「あっ」
彼は小さく呻いたが、やはり抵抗はしなかった。
「俺に握られると気持ちいい。そうだろ?」
「はい」
男の言葉を受け入れた彼の顔に、ぎこちない笑顔が作られる。
「さっきメールしただろ。その中に書いたアドレスに、お前の名前と学校名、あと住所を送るんだ」
「はい」
彼は自身の個人情報をも素直に教えた。
「お前、俺のバスケチームにも入れよ。俺がメンバーを集めたんだ。高校生もいるし、大学生や俺みたいに社会人もいる。そこそこ強いし、その後のお楽しみがすげぇから」
「はい。お願いします」
彼の彼自身は、男の手の中でいつしか固くなっていた。
彼の自宅の近くで、男は車を停めた。彼はウォームアップジャケットとパンツを整えると、シートベルトを外した。
「来週日曜、迎えに来るから。その時、うちのチームのユニフォームもやるよ。お前のユニと同じで真っ赤なヤツだから、楽しみにしとけよ」
「はいっ、よろしくお願いしますっ」
彼は表情豊かな顔に笑みを浮かべて答えた。彼は自分の意志を取り戻していた。それは男によって改変されたものではあったけれど。

中学校の図書室の一番隅の自習席で、彼は一人ノートにメモをとり続けていた。机の上には、力学の参考書が数冊重ねられている。窓の外には夕闇が迫っていた。
「やば。急がないと」
彼は窓の外に目を遣り、そしてノートに目を落とした。図書委員の声が遠くに聞こえる。そろそろ図書室も閉まる時間となる。慌てて参考書を手繰る彼の頭が、コツンと小突かれた。
「な、なにっ?」
彼が憮然としながら斜め後ろを振り替えると、そこには悪友が一人立っていた。部活動を終えたばかりらしく、砂埃に汚れた体操服姿だった。
「悪いねー、俺のために勉強してくれてんの?」
悪友がおどけながら訊いてくる。
「ち、違うよ。お前に質問されて答えられなかったから、ちょっと調べようと思って…」
彼は頬を少しだけ紅く染めながら、ノートに視線を戻そうとする。
「俺、勉強はお前に頼ってばっかだからなー。すっげぇ助かる」
悪友は隣の自習席から椅子を引っ張ると、彼の隣に腰を下ろした。
「なんだよ…。邪魔…すんなよ?」
彼は顔を上げずに、やや戸惑いながら牽制した。
「わりぃわりぃ。いや、ちょーっといいこと教えてあげよっかな、って」
「え?」
彼は今度は顔を上げ、悪戯っ子のように笑う悪友の顔を見詰める。体温が上がるような気がして、彼はまた顔を背けようとする。
「ちょい待てって。こっち向けよ」
悪友は彼の方へズイと顔を近付け、更に人差し指を曲げて彼のことを招き寄せた。
「え…」
彼は自身の顔が火照るのを自覚しながら、恐る恐る顔を近付けた。
ゴツン。悪友の額が彼の額にぶつかる。
「いてっ」
そう言って顔を引っ込めようとする彼の頭に、グチッという耳障りな音が響き、額に激痛が走った。
「がぁっ」
何かが額に刺さり、更にその傷を押し広げようとする痛みに、彼は頭を抱えて叫び出しそうになった。しかし絶叫が口をついて出るよりも早く、彼は意識を手放していた。白く飛び散っていく視界に最後に残ったのは、いつも通り悪戯っ子の笑顔を浮かべる悪友の額に、黒光りする小さな角が生えている映像だった。
肩を揺さぶられ、彼は目を開けた。図書室の隅の自習席で、いつの間にやら寝込んでいたらしい。
「す、すみませんっ」
慌てて上体を起こすと、そこにはニヤニヤ笑う悪友の顔があった。急に激痛の記憶が甦る。彼は自分の額に触れるが、傷や痛みもそこには残っていなかった。額を触った指をまじまじと見るが、血の跡も無い。窓ガラスに顔を映してみても、そこにはいつも通りの自分の顔があった。
「あ…れ…?」
彼は困惑顔で悪友の顔をうかがう。悪友の額にも、黒い角など存在しない。自分が見たものが夢であれば、悪友が事情を知る筈も無い。彼はごまかすように苦笑いすると勉強に戻ろうとした。
「夢なんかじゃないよ」
「え…?」
悪友の言葉に、彼は驚愕する。そして直後に、更に大きな衝撃を受ける。
「見てろよ?」
悪友がニタリと笑うと、その額の中央が小さく割け、数cmの角が飛び出した。円錐状の角は黒く、金属のような光沢を湛えていた。先程の映像は夢ではなかった。彼は椅子から立って逃げ出そうとするが、声も出なければ体を動かすことも叶わなかった。しかし、
「こっちに来いよ」
悪友の言葉には、体が勝手に反応した。彼の意志とは無関係に、彼は立ち上がり、図書室の更に奥へと進む悪友の後を追い掛けた。
「お前も気持ち良くなれよな」
悪友が振り向きざまに彼の額を軽く撫ぜた。
「あっ」
彼は全身が熱くなるように感じた。額と、何故だか股間に違和感が生じた。微かに動く眼球を横に向け、窓ガラスに移る自分の横顔を見遣ると、その額には悪友同様の黒い角が生えていた。だが、今の彼には恐怖や嫌悪といった感情は湧いてこなかった。寧ろ、悪友と同じ何かを持っているということに、嬉しさすら感じるようになっていた。
一番奥の本棚の陰で、彼は壁に寄り掛かりながら悪友の愛撫を受け入れていた。体操服姿の悪友から熱く固いものをこすり付けられながら、自分の額をぴったりと悪友の額に密着させていた。二人の角は互いに溶け合い、相手の脳を探り合っていた。
彼の意識の中に、悪友の声がこだまする。
「好きだ好きだ好きだやりたいやりたいやりたい独占したい独占したい独占したい…」
そして彼は悪友に対し、完全な従属の意志を伝えていた。彼自身が元々望んでいたこととして。
悪友が額を浮かせた。溶け合っていた角が再び各々の額で形を成した。
「嬉しいよ。両想いだったなんてな」
彼は赤面して顔を伏せる。
「角を使えば、言葉を使わずに気持ちを伝えられる。これで、お前が勉強した内容は全部俺にも伝わるってわけ」
「なっ…」
彼は唖然として顔を上げた。
「逆に、俺はお前に体育のコツを教えてやるよ。お前、ちょっとコツが分かんなくてうまく行かないだけだもん。俺は言葉で説明すんの下手だし。な?」
「あ…ありがとう…。ごめん…」
彼は照れて再び俯くと、悪友の体を抱き締めた。汗と土埃が混じった体操服の匂いに、興奮が高まった。学生服のズボンの中では、彼自身が角のように固くなっていた。
「図書委員見回りに来っからさ、俺ん家、来いよ」
「…うん」
「俺、我慢できないよ」
「…うん。僕も…」
夕闇の中で、小鬼が二人、笑い合った。
1.
当プロダクションでは、携帯電話向けに若年層を対象とした無料の音楽配信を開始いたしました。当社が擁するアーティストは小中学生に人気が高く、また一切のプロフィール情報を要求しない合法的且つ安全な配信であるため、既に音楽配信サイトの中では最大のダウンロード数を誇っております。
当社の配信データの最大の特徴は、若年者の可聴域に対応したサブリミナルメッセージを合成している点にございます。サブリミナルメッセージは成人の耳には聞こえることが無く、また音楽にマスキングされているため若年者も顕在意識で認識することはございません。
2.
サブリミナルメッセージの内容は、アーティストの公式サイトを訪問すること、アーティストの指示に従うこと、この2点のみを訴える非常にシンプルなものとなっております。このため、確実に若年者を公式サイトに誘導することが可能となっております。
公式サイトでは、アーティストの言葉に従いページを遷移しアンケートに答えると、新たな楽曲データをダウンロードできる仕組みを設けております。この手順を繰り返すことで、アーティストへの服従が自身の利益に直結するという実感を条件付けいたします。
3.
これまでの手続きにより、多数の若年者が当社サイトとダウンロードのリピーターとなっております。サイト側では携帯電話の固有番号によりダウンロード数を記録しており、この回数が一定以上に達すると、それ以降はより複雑なサブリミナルメッセージが仕込まれた楽曲がダウンロードされることになります。
複雑化されたメッセージとは、アーティスト自身がファンに対して公式サイトから応援の言葉を送信するよう要求するもので、またその内容としてアーティストへの忠誠と隷属を明記することを条件としております。この段階で、ファン心理をアーティストへの盲従へと転換いたします。
4.
アーティストに対するファンメッセージは、全て当社内で人の目で内容を確認いたします。アーティストに対する忠誠心が十分に醸成されたと判断された場合には、サブリミナルメッセージを更に発展させたものに変更いたします。この第三段階のサブリミナルメッセージは、対象のファンに対し、全裸での顔・全身・性器の写真の送信を要求いたします。
5.
ファンから送信された写真で、当社は彼等の性別と年齢層、そして容姿を把握いたします。当社が独自に定めた各種基準を満たす少年少女に対しては、最終段階のサブリミナルメッセージを配信いたします。このサブリミナルメッセージには当社の特別な電話番号を仕込んでおり、アーティストに隷属したければ電話をかけるよう求めます。
この命令に従い当社に電話してきますと、対象のファンは当プロダクションの忠実な下僕としてほぼ完成していることとなります。
6.
電話をかけてきた対象者からは、アーティストに隷属するための条件として、氏名・年齢・住所・学校名・家族構成・生活スタイル・第二次性徴の進行・自慰行為の頻度と方法などあらゆるプロフィールをヒアリングいたします。
追って、隷属に対する報酬としてアーティスト自身が対象者へコールバックを行ない、忠誠心の強化を図ると共に当社への来訪の日時と場所の調整を行ないます。
7.
対象者の招喚は、当社の借り上げ施設の他、イベントの機会、或いは大型自動車を活用する形で実施いたします。
対象者はアーティストと対面することで興奮状態に達します。アーティストはこれまでに刷り込み続けてきたサブリミナルメッセージを繰り返し、更に踏み込んだ命令を下すことで、対象者を下僕として完成させます。
この段階に至れば、サブリミナル効果を利用せずとも対象者はアーティストの言葉を絶対的命令として受容し、命令を自らの意志として従順に行動いたします。
8.
下僕として完成した直後から、対象者には投薬を施し催眠状態下に置いた上で性的快感を教育いたします。対象者とアーティストが同性であればその組み合わせを維持し、異性であれば代替策として同性のアーティストまたは当社社員を隷属対象として割り当てます。アーティストも社員も万全の感染症対策を講じており、対象者の健康を損なうような事態は決して招かないことをお約束いたします。
以降は特に対象者が男子の場合をご説明申し上げます。男子少年に対しては先ず手淫と口淫を施し、隷属と快感とを確実に条件付けいたします。信奉する人物による行為という事実が、対象者自身を性的快感に対する羞恥や禁忌から解放し、以降は性的快感が対象者の行動の動機として位置付けられます。
9.
性的快感に支配された男子少年に対し、引き続き乳首や腋、または耳孔や臍など、固有の性感帯の探索と開発を実施いたします。性器以外でも性的快感を得られることに気付かせた後に、最終段階として肛門の開発を開始いたします。肛門は最もデリケートな部位でもあるため、複数の大きさ・硬さのディルドとバイブレータを用意し、ローションを用いながら時間をかけて丁寧に実施いたします。
10.
肛門の開発が完了いたしますと、対象の男子少年は覚醒状態でもアーティストとの間の肛門性交に積極的に臨む状態となります。アーティスト以外の人物を欲情と性交の対象とすること、その際にタチとなるかウケとなるか、また声の挙げ方や善がり方をどのように変更するかは、催眠状態での命令により規定と調整が可能となっております。
以上が、当社の商材の調達方法でございます。聴覚に対するサブリミナルメッセージと薬剤による催眠状態を組み合わせた当社独自の洗脳手法が、確実な教育と詳細な設定変更を可能としております。
当社商材は自らの意志で商材であり続けておりますため、機密性は高く、また当社は商材の健康状態に万全の対策を講じております。僭越ながら、当社ではお客様を限定させていただいており、信用力の高い方にのみ本商材を紹介させていただくことで、事業の継続性を確保しております。
ご納得・ご安心いただけましたでしょうか。
さて、本日お持ちいたしましたのは、先日いただきましたご要望に基き、お客様専用に制作した作品となります。
「各々学校のサッカー部の所属する中学生の兄と小学生の弟が、練習の帰りに偶然出会いそのまま肛門性交の行為に至る」という設定をご要望としていただいております。商材の中より、実際に兄弟でサッカー部に入部している二名を選定しております。ロケ場所としては当社のマイクロバスを親戚の車という設定として利用しておりますこと、また商材の健康のため実際の行為時にはゴムやローションを利用しており設定上やや無理が生じておりますこと、事前にご了承くださいませ。一方で、サッカーのユニフォームとしては対象者が所有する実物を利用しており、またスケジュール調整の上実際の練習の後にロケを敢行しておりますことから、サッカー少年ものとしてのリアリティは高いものと自負しております。
また日頃のご愛顧に対するささやかなお礼として、二名が催眠状態で忠誠の言葉を述べるシーンを特別に収録しております。催眠状態をご趣味とされていらっしゃいますので、お楽しみいただけるものと存じます。
今後とも当社サービスをご愛用くださいますよう、心よりお願い申し上げます。
そいつからは、よく色々な音楽聴かせてもらってたんだ。J-POPだろうが洋楽だろうが、クラシックだろうがメタルだろうが、演歌だろうがアニソンだろうが、とにかく色々なジャンルとアーティストのCDや配信データを少しずつ持ってて、「どうよ?これ」とか言いながら勧めてくれる。好みでなければ、素直にそう言えば「そっかー、俺もあんまグッてキてねぇんだよな」なんて、苦笑しながらちょっとした嘘をついて、すぐに引っ込めてくれる。だから、あまり気を遣わずにそいつのコレクションを物色させてもらうのが日常だった。
恐らく、そいつのバイト代はほぼ全部音楽関係に消えてたと思う。
週明け、憂鬱な月曜日の昼休み、俺はそいつと一緒にキャンパスの中を歩いていた。退屈な授業の後で、眠くてかなわない。天気が良ければ、芝生の上に座って音楽を聴きながらパンをパクついて、少し寝る。それが俺とそいつの習慣だった。
「それ、買ったんだ」
俺が、そいつの首にかかったデカいヘッドフォンを指差すと、そいつは嬉しそうに笑った。
「うん。音の感じが変わっちゃうけど、密閉式のが欲しかったんだ。没入できる、っつー感じ?それに、高域は40kHzまで行けるんだ、これ」
「MP3だったらカンケーねぇだろ」
「あはは。そっか」
「チャイム聞こえなくて、午後の授業サボりそうだな」
「いいんじゃねー?」
「後で、それで聴かせてよ」
「勿論、そのつもり」
「さんきゅ」
そいつは、にっこり笑った。CDとかを貸してくれる時のいつもの笑顔。その時はそう見えていた。
そいつは、いつもと違って、植え込みの陰に俺のことを引っ張っていった。
「なんだよ、日陰入らなくたっていいだろ」
「日焼けしちゃったら、イヤだし」
「野郎のくせに、何言ってんだか、今更」
そう言いながら、特に拒絶する理由も無く、俺は植え込みの陰に腰を下ろした。芝生や通路を歩く他の学生達からは死角に入る。結構いいな、ここ。
「ほら」
「あ、悪いね」
そいつは首からヘッドフォンを外すと、俺に差し出してきた。手許ではデジタルオーディオプレイヤーを操作している。俺に聴かせる曲を選んでくれてる。俺は髪の毛に気を遣いながらも、ヘッドフォンを頭にかけ耳の位置を調整する。外の音が一気に抑えられる。
「結構重いな」
そいつは笑顔を返してきた。違和感を覚えたのはその直後だった。
「わっ」
俺は声を挙げた。右耳の穴に、何かがヌルッと入り込んでくる感じがあったからだ。慌ててヘッドフォンを外そうとする俺の腕を、そいつが押さえてきた。ちょっと待てよ、耳の中に何かっ。そう叫ぼうとした俺は、口許が痺れて声を出せなくなっていることに気付いた。それに、そいつの力がやたら強いのか、それとも俺の腕から力が抜け始めたのか、俺はそいつの腕を振り解くことができなくなっていた。右耳にはヌルヌルしたものが這う感触が続いている。なんだこれっ。目の前が、真っ黒に、飛んだ。
頭の中に、やたら高い音の曲?言葉?が流れてる。なんだろう。ヘッドフォンから聞こえてるのかな。40kHzとか言ってたもんな。でも、なんで暗いんだろう。俺はヘッドフォンを外そうと耳許を探った。あれ。してない。
「目、開けなよ」
そいつの声が聞こえた。あ、そっか。俺、目を瞑ってたんだ。俺が目を開くと、そいつがいつもの笑顔で俺のことを覗き込んでいた。俺、寝転んでいるらしい。
「そのまま寝てな」
うん、そう言おうとした俺の口は、カラカラに乾いていて声が出ない。どうなってるんだ?
「聞こえるだろ?頭の中に。とても美しい音が。それに集中してみろよ。言葉は分からなくても意味は分かるから」
そいつは、よく分からないことを言った。でも、俺はそいつの指示に従って耳をすましてみた。また、高い音が聞こえてくる。どこから聞こえてくるんだろう、これ。その仕組みは分からなかったが、俺はだんだんその音に引き込まれ、気持ち良くなっていた。素晴しい。そんな気持ちで胸がいっぱいになった。素晴しい。この音楽は。素晴しい。この星は。素晴しい。やっと巡り会えた安住の地。素晴しい。人間という有機体は。この星の表層を離れては生命活動を継続できない肉体ではあるものの、多数の固体が社会構造を構成し、固体の多様性が創造性と生産性を実現している。素晴しい。人間は豊かな感覚器官と感情を持ち、それに支配される。素晴しい。なんという容易な支配方法だろう。俺の頭の中に、言葉にならない意味が飛び交う。なんだろう。嬉しい。俺は、俺達は、人間は、褒められている。
突然、全身に快感が走った。
「あ、あぁぁ…」
口から、乾いた声が漏れた。俺の股間で、チンコが大きく膨らむのが分かる。ジーンズの中が、急に窮屈になる。抜きたい。素晴しい快感だ。素晴しい感受性だ。俺は、俺達は、これで俺達を支配できる。抜きたい抜きたい抜きたい抜かせてっ。
腹の辺りがくすぐったくなる。頭を少し動かすと、そいつが俺のジーンズの前を開いているのが見えた。真っ青なビキニパンツを穿いているのが、ちょっと恥ずかしかった。そいつがビキニのゴムを引っ張ると、俺のチンコが空に向けてそそり立った。素晴しい快感だ。素晴しい分かり易さだ。人間の快感はこの股間の器官に発現し、この器官で人間の快感を操れる。
そいつは、俺のチンコを咥えた。俺の頭と目の前が、今度は真っ白に飛んだ。
数日後、俺は貯金を少しだけ崩して、大き目のヘッドフォンを買ってきた。洗面所で鏡に向かって立つと、右耳から黒光りする幼生体が顔を出していた。手を添えると、それがニュルンと掌に落ちてくる。それは俺の掌の上で、円を描くように長い体を丸めた。俺の初めての幼生体。これが人間に未来を与えてくれる。俺達人間は、遠い星からの来訪者と共存しなければならない。俺はヘッドフォンを手に取ると、そのイヤーパッドの内側に幼生体を優しく落とした。幼生体はイヤーパッドの黒いクッションに貼り付いた。明日、サークルのダチにヘッドフォンを付けさせよう。いいヤツだから、早く俺達の仲間にしてやろう。
「元気な子だな」
その声に振り返ると、ヘッドフォンを貸してくれたヤツがチンコを大きく勃起させながら全裸で立っていた。俺を仲間にしてくれてから、そいつと俺はお互いの家を行き来して毎晩快感に耽るようになっていた。
「うん。お前のお陰だよ」
人間の快感はチンコに集約される。俺はヘッドフォンを手近な棚に置くと、そいつに飛び付いた。早くチンコを吸い合おう。その快感が、俺を、人間を、支配してくれる。全裸の俺は、股間でチンコを大きく勃起させていた。
「俺の声が聞こえるか」
(あ…あれ…?誰の声だろう)
「答えろ。俺の声が聞こえるか」
はい。聞こえます。
(誰?ここ、どこ?あれ、体、動かない…)
「目を開けて、俺のことを見るんだ」
はい。
(まぶし…。あ、あれ?お兄さん?…そっか、僕、あっくんの家に遊びに来てて…)
「俺が誰か分かるか?」
はい。分かります。
(あっくんのお兄さん。分かるよ、そんなこと。それより、急に眠くなって…、それから…)
「お前は何も考えなくていい。考えられない」
はい。考えられません。
(どういうこと?口が勝手に…。考えられない、って?)
「お前は考えられない。何も思い浮かばない。頭が空っぽになる」
はい。頭が空っぽになります。
(考えられない?思い浮かばない?頭が空っぽ?…やだよ、何それ…)
「それはとっても気持ちがいい。頭が空っぽなのは気持ちがいいことだ」
はい。頭が空っぽなのは気持ちがいいことです。
(気持ちいい?空っぽなのが?気持ちいい…のかな…?)
「俺の言葉だけが頭の中にある状態。それ以外は空っぽな状態」
はい。お兄さんの言葉以外は空っぽな状態です。
(お兄さんの言葉だけが頭の中に?それ以外は無い?お兄さんの言葉だけ。お兄さんの言葉だけ…)
「俺の言葉で頭がいっぱいになると、気持ち良くなる」
はい。お兄さんの言葉で頭がいっぱいになると、気持ち良くなります。
(お兄さんの言葉で頭がいっぱいになると、気持ちいい…。気持ちいい…)
「お前の頭の中には俺の言葉しか存在しない」
はい。僕の頭の中にはお兄さんの言葉しか存在しません。
(そうだ。僕の頭の中にはお兄さんの言葉しか存在しない…)
「俺の言葉は正しい」
はい。お兄さんの言葉は正しいです。
(そう。お兄さんの言葉は正しい…)
「お前は俺の言葉に従う」
はい。僕はお兄さんの言葉に従います。
(そう。僕はお兄さんに従う…)
「お前は、俺の言う通りに行動する」
はい。僕はお兄さんの言う通りに行動します。
(そう。僕はお兄さんの言う通りに行動する…)
「俺の言う通りに行動すると、お前はとても安心して、気持ち良くなる」
はい。お兄さんの言う通りに行動すると、安心して、気持ち良くなります。
(そう。お兄さんの言う通りに行動する。安心…気持ちいい…)
「だから、俺はお前のご主人様だ」
はい。お兄さんは僕のご主人様です。
(そう。ご主人様…)
「お前は俺のことをご主人様と呼ぶ」
はい。ご主人様のことをご主人様と呼びます。
(ご主人様…ご主人様…)
「そして、お前は俺の奴隷だ」
はい。僕はご主人様の奴隷です。
(僕は…奴隷…)
「奴隷はご主人様の命令に従う」
はい。奴隷はご主人様の命令に従います。
(命令…従う…)
「立て」
はい。立ちます。
(立ちます…)
「奴隷は裸なんだ。服を全部脱げ」
はい。服を全部脱ぎます。
(脱ぎます…)
「よし。素直に全裸になったな。お前はいい子だ。ご主人様に褒められて、お前はとても嬉しい」
はい。ご主人様に褒められて、僕はとても嬉しいです。
(嬉しい…嬉しいです…)
「あれも俺の奴隷だ。誰か分かるか」
はい。ご主人様の奴隷は、あっくんです。
(奴隷…あっくんも…)
「これから奴隷の仕事を教える。ちゃんと覚えるんだ」
はい。奴隷の仕事を覚えます。
(覚える…)
「いいか。奴隷は考えてはいけない」
はい。奴隷は考えてはいけません。
(考えてはいけない…)
「でも、感じることはある。感じたことは全部口に出さなければならない」
はい。感じたことは全部口に出します。
(感じたら…口に出す…)
(裸のあっくん…近寄ってくる…)
裸のあっくん…近寄ってくる…。あっ。
(チンポっ、チンポくわえられちゃったっ)
チンポっ、チンポくわえられちゃったっ。
(汚いよ、そんなとこ)
汚いよ、そんなとこ。やめっ、あっ、ちょっ、あぁっ、やめてっ、固くなっちゃう、恥ずかしいよっ。
「恥ずかしくない。奴隷には恥ずかしいことは無いんだ」
は、はいっ、恥ずかしくない…あっ、なんかっ、あぁ、やっ…。
「気持ちいいだろ?」
は、はぃいっ、きもっ、気持ち、いいっ…ですっ。
「気持ち良かったら、ちゃんと気持ちいい、って言うんだ」
はいっ、はぁっ、気持ち、いぃって、言いま…あっ、ああっ、あっあっ気持ちいっあっいいっあっ…。
「出そうになったら、イク、って叫ぶんだ」
はいっ、気持ちいいっ、で、出そ、出そうにっ、なった…あぁっ、気持ちいっ、あっ、なったら、い、あっあっああっあっ、い、いく、って、あ、ぁあぁあぃい、イ、イクぅっ!…い、言いま、した、あっ気持ちいいっ、あっくん、吸って、あっ、チンポっ、気持ちいっ…ぃい…ょ…。
「俺の声が聞こえるか」
はい…。ご主人様…。
「立て」
はい。ご主人様。
「奴隷の仕事は分かったか?」
はい。ご主人様。チンポをくわえて、気持ち良くしてあげて、精液を吸って、気持ち良くしてあげる、こと、です。
「そうだ。この仕事をフェラチオと言うんだ。覚えておけよ」
はい。奴隷の仕事はフェラチオと言います。覚えます。
「お前の仕事は、ご主人様をフェラチオすることだ」
はい。僕の、奴隷の仕事は、ご主人様をフェラチオすることです。
「俺の体を見てどう思う?」
はい。ご主人様の体、胸毛が生えてて、腹筋がすごくて、チンポは、黒くて、とても大きい…です。
「お前に仕事をしてもらえると思うと、俺のチンコはすごくでかくなる。それは奴隷にとって、とても光栄で嬉しいことだ。分かるな?」
はい。ご主人様のチンポがでかくなることは、奴隷にとって光栄で、嬉しいことです。
「フェラチオしてもらって気持ち良かったろ?」
はい。フェラチオしてもらえて気持ち良かったです。あ、勃ってきました。僕のチンポ、フェラチオ思い出して、勃ってきました。
「ご主人様にフェラチオすることは、もっと気持ちいいことだ。奴隷のチンコをもっと勃起させるんだ」
はい。ご主人様にフェラチオするのはもっと気持ちいいです。もっと勃起します。もっと、勃ってきました。ご主人様、早く、フェラチオ、させてください。
「おいで」
はい。ご主人様。
「俺の胸の臭いを嗅いでみろ。これが男の臭いだ。とてもいい臭いだろ?この臭いを嗅ぐと、お前のチンコは勃起する」
はい。ご主人様。男の臭いはとてもいい臭いです。僕のチンポは勃起します。
「しゃがんで俺のチンコの臭いを嗅いでみろ。とても臭くて、とてもいい臭いだろ?この臭いを嗅ぐと、お前のチンコは勃起して、フェラチオしたくて仕方なくなる」
はい。ご主人様。チンポの臭いはとても臭くてとてもいい臭いです。僕、勃起します。フェラチオしたいです。早くフェラチオしたいです。
「俺のチンコから出るものは、全部とても美味しい。勿体無いから、全部飲み尽くすんだんぞ」
はい。ご主人様。ご主人様のチンポから出るものは全部とても美味しいです。勿体無いから、全部飲みます。早く飲みたいです。フェラチオさせてくださいぃっ。
「よし、始めるんだ」
はいっご主人ふぁまっ…
僕とあっくんとは親友同士で、よくお互いの家に遊びに行く。でも、あっくんの家に行く時は特別だ。あっくんには年の離れたお兄さんがいる。あっくんのお母さんが再婚した人の子供。でもこの人の本当の姿は、あっくんと僕の大切なご主人様。他の人には秘密だけど、僕とあっくんはお兄さんの奴隷にしてもらっている。奴隷の仕事はご主人様にフェラチオすること。でも、フェラチオしていると奴隷もとっても気持ち良くなれるから、僕もあっくんもこの仕事が大好き。仕事をうまくやると、ご褒美に僕とあっくんとでフェラチオさせてくれる。シックスナインというご褒美なんだ。僕達がもう少し大きくなったら、アナルセックスという仕事を教えてくれることになっている。セックスってのはエッチで気持ちいいことだって、僕でも知ってる。アナルセックスというのも、気持ちいいことなんだと思う。楽しみだな。
「アラタさん、こんちはー」
大家の息子のケイタが上がり込んできた。
今のアパートの大家は借家人のことを店子と呼び、半ば強引に家族付き合いに巻き込んでくる。体を壊した時には世話になったし、二回目の契約更新からは更新料は要らないと言ってくれたので、自分にとっては住み易い場所でもある。ただ一つ困るのは、俺が部屋にいる土曜日は必ず、ケイタが部屋にやってくることだった。何がお気に召したのか、親に怒られても俺の部屋に来ようとする。俺がある時笑いながら「いいですよ」と言ってしまったが最後、習慣と化してしまった。その内飽きるだろと高をくくっていたのだが、どうもその様子は無い。俺のマンガを読んだり、アニメのDVDを観たり、俺が使わなくなったPCでWebを見たり、何が楽しいんだかよく分からない。当然、マンガやDVDについては子供に見せられないものは隠しているし、PCには子供用のフィルタリングソフトを入れ、教育的配慮は怠っていないつもりだ。
別に迷惑ではない。でも困るんだ。俺は会社勤めの傍ら同人ゲーム作りに勤しんでいるんだが、これがショタコン向けの18禁アドベンチャーゲームで、俺の担当はシナリオ構成と絵コンテ、と言うか絵師に依頼するための下絵の担当で、つまり制作進行を大いに左右する立場にいる。でもって、うちのサークルが凌辱対象としているのが、正に今のケイタの年頃。俺が入居した頃のケイタには興味なんてそそられなかったのに、いつの間にやらストライクゾーンど真ん中だ。
男の子が掘られ喘ぐイラストを常にPCに表示するわけではないが、台詞を見られるだけでも十分にヤバい。つまりケイタがいるところでは制作なんかできないし、その、あれだ、俺にとってケイタは、あまりにも美味しそうなんだ。ケイタがいる間は四六時中半勃ちで、ケイタが帰ったら抜きまくる。元々制作速度の早いサークルではないけれど、この前のイベントで新作を出せなかった理由の大半はケイタにある。皆さんにはその点是非ご理解賜りたい。…なんて言えるわけがないよなぁ。
制作が滞る一方で、バスケのサークルに参加する機会は格段に増えた。これもケイタのお陰と言うべきか。煩悩を振り払う手段を探していたら、同人サークルで楽曲担当のヤツが俺と同じバスケ経験者で、社会人のサークルに誘ってもらえた。
ところが、俺がバスケをやっていると知ったケイタが、自分もミニバスをやりたいと言い出した。すると自ずとバスユニ姿のケイタを想像してしまうわけで、バスケも発散手段にならなくなってきた。
そんな話をバスケの後で楽曲担当にボヤいてみせたら、メモリカードを一枚差し出してきた。
「なにこれ」
「ケイタって子、パズル系のゲームは得意か?」
パズル系は、ケイタがとりわけ得意とするジャンルだった。
そのメモリカードには携帯ゲーム機用の同人ゲームがインストールされているという。非公式ゲームや不正コピーソフトを起動できるよう改造された機体専用だが、自分のゲーム機も当然、いや偶々、改造済みだ。
このゲームは、そいつが掛け持ちしている別のサークルで開発されたとのこと。このサークルが制作したゲームは、やたら面白いものが多い気がする。
「とりあえず、ケイタにやらせてみ」
「なんだよ突然」
「ゲーム解くのに夢中になって画面と音に集中してたら、被暗示性を高められて、いつの間にか催眠術にかけられて、お前の忠実な下僕になっちまう、っていうすんげぇブツ」
「はぁ?!」
そんなエロゲーのアイテムみたい都合のいいもの、存在するわけがない。馬鹿馬鹿しい。…が、実在するとしたら、こりゃ垂涎ものだ。俺が無関心を装う裏で強く興味を惹かれていることを、そいつは見透かしていたらしい。使い方の講釈が始まった。
初回起動時に自分の名前を登録すること。プレイヤーに与えられる暗示にその名前が使われるから。
プレイヤーには、普段音声チャットで利用するようなインカムを使わせること。音に集中させるだけでなく、言葉を喋らせて音声認識させる機能も持っているから。
俺とケイタの二人きりの状況でやらせること。登録した名前で刷り込みが行なわれるが、その場に他の人間がいた場合、誰を主と認識してしまうか分からないから。
そいつは早口で説明すると、
「実績あるけど、信じるも信じないも、試すも試さないも、全部アラタ次第な」
と言い、メモリカードを人のバッグに放り込んできた。
信じたわけじゃない。
ケイタに、友達が作ったゲームがあるからやってみるか?と訊いたら食い付いてきたから、インカムと一緒に渡してやっただけのこと。一応自分の名前は登録したけれど、ゲームの真の目的がバレた時にどう言い訳しようか、意識はそっちにばかり行ってしまう。動画サイトを見ている振りはしていたけれど、ケイタの様子が気になるばかりで、動画の中身なんて全然頭の中に入ってこない。
ケイタはゲーム機の小さな画面を凝視して盛んにボタンを操作し、時にはインカムのマイクに向かって「はい」「マル」「バツ」などと呼び掛けていた。だが、ある時から操作音が間欠的になり、声も呟きのように小さくなり始めた。あれ?と思いケイタの顔を窺うと、今にも眠ってしまうかのように、上瞼が落ち掛けていた。とろんとした表情で、何かブツブツと呟いている。ケイタがどんな画面を見て、どんな音を聴いているのか、自分には分からない。ケイタに近付こうとした瞬間、ケイタの首がカクンと前に落ちた。
「お、おいっ」
俺は思わず声を上げた。その声に呼応するかのように、ケイタは顔を真っ直ぐに上げた。俺は一瞬安心したが、すぐにケイタが普通ではないことに気が付いた。目はしっかり開けているが、表情が無い。顔全体が、固く無表情だった。ケイタはゆっくりと俺の方を見上げてくる。目が合うが、見詰め合っている実感が無い。ケイタの目は、目じゃなくてガラス玉のようだった。俺の股間がピクンと反応する。
「アラタ様…」
ケイタの口から発せられた台詞に、俺は耳を疑った。ケイタはすぅっと立ち上がると、驚く俺の前に立ち、ゲーム機を差し出してきた。
「アラタ様は、僕のご主人様です。僕は、ご主人様の忠実な下僕です」
明瞭だが抑揚の無い声で、ケイタが言う。まさか、本当に催眠術にかかった?俺のチンコは一気に固くなった。
俺はゲーム機の画面を覗き込む。そこには、
『ご主人様へ この画面が表示されていたら、プレイヤーの下僕化は成功です!おめでとう!ヘッドフォンは外してOK!ご主人様の声で下僕を操作できます!↓』
などとふざけた文句が表示されていた。方向キーで画面を送ってみる。
『後催眠暗示も仕込み済み!これからは、【ご主人様とゲームしよう】で催眠状態に入り、【ご主人様とのゲームはおしまい】で催眠中のことをすっかり忘れて目覚めるよ!↓』
『プレイヤーはとても面白いゲームに熱中していたという感情を植え付けられて目覚めるから、またゲームをやらせてほしい、ってねだってくる筈!↓』
『でも目覚めさせる時は、ちゃんと汚れを拭いて服を着せるのを忘れちゃダメだぞ!裸でやるゲームなんて、滅多に無いからね!裸でやるゲームについては、次を見てね!↓』
何言ってんだ、このゲームソフトは。そう思いながらも、俺は方向キーを操作していた。俺はこの時既に理性を失っていたのだと思う。
『裸でやるゲームのために、下僕に次の技を覚えさせよう!項目を選び、下僕に画面を見せよう!』
そこには選択項目として、
【ご主人様の前で気を付け!勃起!】
【ベロで探検!ご主人様の口の中!】
【ご主人様をモデルに射精大会!】
【感じの掻きとり!ご主人様と掻き合おう!】
【速さを比べる!一緒に握ろう二人の勃起!】
【美味しいな!ご主人様からミルクをもらお!】
【台形を作ろう!ご主人様とシックスナイン!】
…などと、酷いセンスの言葉が並んでいた。これ、体育だの社会科だの、学校の時間割に倣ったつもりらしい。給食の前に5コマあるけど。
そんな風に呆れながら、しかし俺の手は【ご主人様の前で気を付け!勃起!】を選択し、画面をケイタに向けていた。
Tシャツとハーフパンツ、そして期待のブリーフではなくトランクスを脱ぎ全裸となったケイタは、画面の指示通り気を付けの姿勢で俺のことを見上げてきた。相変わらず感情のこもらない目だったが、その空虚さが無性にエロく感じられた。
「僕はご主人様が好きです。ご主人様のことを考えると、勃起します」
まだ剥けておらず、毛も生えておらず、白く細っこいままのチンコがピクピクと大きくなる。俺は恐る恐る訊いてみた。
「ケイタ、お前オナニーってしたことある?」
「はい。あります」
ケイタは迷うこと無く答えた。
「ご主人様のことを考えながら、こすります。気持ち良くて、僕はオナニーが大好きです」
俺の頭は一気に沸騰した。ケイタが卑猥な言葉を口にしている。そして何よりも、ケイタが俺で抜いている。本当だろうか。この催眠ゲームのせいで記憶が改変されてないか?
「ほんとか?いつから俺でオナニーしてる?」
「少し前から…です。ご主人様がバスケを始める前…」
興奮する俺をよそに、ケイタは続けた。
「僕がオナニーで気持ち良くなってるせいで…、ご主人様は僕を置いてバスケに行ってしまいます…」
「え…」
ケイタは無表情に直立したまま、涙を一筋流した。ケイタはオナニーに罪悪感を感じている。自分にも覚えがある。オナニーが悪いことのように思え、オナニーの後に何か悪いことが起きると、自分のせいだと責めてしまう。
俺は思わずケイタのことを抱き締めていた。
「ごめん、ケイタっ。お前のオナニーは何も悪くない。俺だって、お前でオナってるんだからっ」
ケイタの体は熱く、また肌は日焼けしているくせにスベスベして瑞々しかった。
ケイタを一旦離して、二の腕を掴みながらその目を覗き込む。表情を欠きぽっかりと空いた穴のような黒い瞳は、俺の意識を吸い込んでいくようだった。俺は、ケイタにならば吸い込まれてしまっても良いと思った。
「俺、これからはもっとケイタと一緒にいる。ケイタのこと、もっと気持ち良くしてやるよ。ケイタは、俺に何してほしい?」
「はい。僕はご主人様のことをフェラチオしたいです。僕に美味しいミルクをください」
ケイタがフェラチオという言葉を何故知っているのか。そんな疑問は俺には浮かばなかった。俺は躊躇無く全裸になると、少し震える手で【美味しいな!ご主人様からミルクをもらお!】を選択し、画面をケイタに見せた。ゲーム機の中では、ポリゴンで描かれたと思しき二体の人形が、その頭上にケイタと俺の名前を表示させながら、フェラチオに興じている。
「ご主人様、いただきます」
「あっ」
ケイタの唇に咥えられ、ケイタの舌にねぶられ、俺の意識は飛びかけた。見下ろすと、ケイタが一心不乱に俺のチンコをしゃぶっている。ケイタが。あのケイタが。ケイタっ。
「くぅっ」
俺、こんな早漏だったっけ…。ケイタの口にザーメンを吐き出した俺は、罪悪感なんか覚えなかった。それよりも、ケイタに俺の全てが吸われていく快感に、頭の中を真っ白に支配されていた。いいぞケイタ、すっげぇ、いい。
「ご主人様、美味しかったです。今度はディープキスさせてください」
無表情なケイタが求めるがまま、俺はゲーム機を操作した。
「あのゲーム、未実装の選択肢があるだろ。俺、見付けちゃった」
ケイタと裸のゲームを楽しむようになってから数週間後、久々にバスケに参加した俺は、催眠ゲームをくれたヤツの家に上がり込んでいた。バスケ用に借りている体育館に近く、バスケ後に同人サークルの相談がてら二人で酒盛りすることがある。
「え?」
首を傾げるそいつに、俺は説明を続けた。
「一つ、選択できない項目があるんだよ。恥ずかしい項目名なんだけどさ、【気持ちえぇ語を覚えよう!Anal Sex!】って…」
言ってて本当に恥ずかしい。
「アラタ、それ、かなりの回数実行しないと出てこないぞ…」
「え…」
「ケイタって子と、相当楽しんでそうだな」
俺の額に冷や汗が吹き出した。
「まぁいいや。アラタは相手にリードされればノリノリになる、って仮説、正しかったって分かったし」
そいつはニヤニヤと笑い始めた。
「は、はぁ!?なんだよその仮説はっ」
「それよりこれ、実装済みのバージョン」
そう言いながら、そいつは携帯ゲーム機を取り出した。
「いや、メモリカードだけ貰えればいいんだけど…」
だが、そいつは俺の顔を見据えながら、言った。
「ご主人様とゲームしよう」
その言葉を聞いて、急に考えることが億劫になった。そもそも考える必要なんてあるんだろうか。目の前のご主人様が、全てを命令してくれるというのに。
「アナルセックスは未テストなんだ。先ずはアラタのケツマンコで実績積まないとな」
俺はご主人様からの命令が嬉しくて、勃起していた。
「はい。ご主人様。ありがとうございます」
(おわり)
お前は話すことができない。何故ならお前は人形だからだ。俺の操り人形だ。
そんな目で睨んでも無駄だ。実際、お前は話すことができない。お前の体はもう俺の言うがままだ。さぁ、そのソファから手をついて立ち上がるんだ。
不思議そうだな。そうだよ、どんなに抵抗したくても、お前の体は俺の指示に従って動いてしまう。こっちに出てこい。広いところで、制服を全部脱ぐんだ。
そんなにガンを飛ばすな。ほらみろ、お前はもう学ランを脱いじまった。今度はYシャツのボタンを一つずつ外し始めてる。
恐怖を感じ始めたようだな。大丈夫だよ。俺はただ、お前にいい生徒になってもらいたいだけなんだ。
睨むなよ。お前は頭が回るし、後輩の面倒見もいい。そもそも顔と体が俺好みだ。俺は教師の世界しか知らねぇが、お前を立派な社会人にしてやりたいし、俺一人のものにしてぇんだよ。ほら、今度はズボンだな。
焦っても無駄だ。お前は抵抗できない。へぇ、お前、ビキニ穿いてるんだ。体の魅力、自覚してんだな。
否定したがんなよ。黒ビキニ、割れた腹筋にすっげぇやらしい感じに似合ってるぜ。でも、今は脱がないとな。さぁ、一気に下ろして、お前のチンポを見せてみろ。
すげぇ。黒くて剥けてて立派だな。どれだけ女とヤってきたんだ?ん?
…そうだな、お前は俺の質問に素直に答える。Yesなら首を縦に振り、Noなら横に振れ。俺に隠し事をすることは許されない。全ての質問に対して正直に答えるんだ。
お前、女との経験は10回以上か?え?No?じゃあ、5回?それもNoなのか?だったら3?え、2?…1か?…あれ、お前、童貞なのか?そっか。そうなのか。おいおい、泣くなよ、俺だって童貞だよ。こら、今度は驚き過ぎだぞ、お前。
だったら、なんでこんなにズル剥けなんだ?オナニーしまくってるってことか?…へぇ…。素直になったな。いい子だ。素直なことはいいことだ。お前はもう俺から逃げられないんだからな。オナニーはどれくらいヤってる?毎日か?え、ほんとに毎日抜いてんのか?さすが若いな。ますますお前のことが欲しくなったよ。
じゃあ、生活指導に入る。お前はこの瞬間から、俺の傀儡(くぐつ)となる。クグツ、って言葉知らないか?操り人形のことだよ。傀儡師に操られて動く人形。今からお前は操り人形、傀儡だ。そして俺がお前の傀儡師。お前の体と心は全て俺の思うがまま。俺の言うがままに動くようになる。それがこれからのお前の人生だ。
挑戦的な目だな。そんなことできる筈無いって顔だな。そういう表情、好きだぞ。もう面と向かっては見れなくなるかも知れないけどな。お前が俺の傀儡だって証拠、もっと見せ付けてやるよ。さぁ、俺の方に来い。
不安そうだな。俺に抱き付くんだ。腕を回して。嫌そうな顔するなよ。俺も体は鍛えてるぞ。お前みたいな若さは無いけどな。よし、良く聞けよ。
お前の全身から力が抜ける。
おっと、危いな。驚いたろ、目が真ん丸だ。分かっただろ。俺が支えていなければ、お前は床に倒れていたところだ。俺がいなければ、ただの人形。お前はもう俺の傀儡なんだ。
お前の全身に力が戻る。お前は自分で立つことができる。
ちゃんと立てたな。じゃあ、このスポーツドリンクを一気飲みしてもらおうか。そんなに怖がるなよ。お前がさっき飲んだのとは違うものだ。ちょっと安心したか?薬の成分がさっきのよりもずっと濃いんだ。これでお前は生まれ変われる。心の底から俺の傀儡になれるんだ。安心だろ?おいおい、歯がカチカチ言ってるぞ。怖いのか?大丈夫だって、お前には俺の傀儡としての快楽が約束されてるんだから。
さぁ、このペットボトルを持つんだ。よし、じゃあ、この中身を全部、こぼさないように注意して飲み干すんだ。そうそう、ゆっくりと。そんなに鼻先睨み付けるなよ。すごい寄り目になってるぞ。飲み終わったらボトルを寄越せ。よし。
気分はどうだ?少し朦朧としてきたかな。瞼が落ちて、フラフラしてきたな。危いから、また俺に抱き付くんだ。そうだ、ずり落ちないように、しっかりとな。
よしよし、かわいいな、お前は。じゃあ、俺に抱き付いたままでしっかりと聞くんだぞ。お前の体はもう完全に俺の言いなりになっている。分かるな。
よし、いい子だ。では、肉体の全てが俺の傀儡となっていたら、心だって俺の傀儡に決まってる、だろ?
ん?まだ否定するのか。強情な奴だな。俺はそういうお前が好きだぞ。じゃあ、順を追って説明してやろう。お前の体を動かしているのは、お前の筋肉と神経だろ?
よし。その神経はどこからの命令で動いてる?脳だろ?
よし。つまり、お前の体が俺の命令通り動くということは、お前の脳も俺の命令に従ってるということだな。
ん?考え込むところか?体を動かしてるのは脳の命令だろ?
そう、よし。体を動かす脳が俺の指示に従ってる。これは否定できないだろ?
そう、否定できないな。否定できなければ、それは正しいことだ。そうだろ?
よし。では、お前の心はどこにある?胸か?違うだろ?脳だろ?
そう、そうだな。さぁ、お前の脳は俺の命令に従ってる。そして、お前の心は脳にある。分かるか?
よし、いい子だ。ならば、お前の心も俺の命令に従う。そうならないとおかしいだろ?
…どうだ?考え込んでも構わない。寧ろ、よく考えろ。お前の脳は俺の命令に従う。お前の心は脳にある。…だから…お前の心は俺に従う。…そうだろう?
…よし、よく分かっているな。そうだ。お前が認めた通りだ。お前は正しい。お前はいい子だ。お前の心は俺に従う。これは、お前の体と心の両方が俺の傀儡だということだな?
そう、答えが早くなってきたな。お前は状況をよく分かってる。いい子だ。お前のその全ては、俺の命令のままに動く傀儡なんだ。そうだろ?
よし。そして傀儡は、傀儡師のことを主として崇め、愛するものなんだ。
…それはまだ分からないか。では、これでどうだ?ほら、いいだろ?こんな経験無いだろ?大きくなってきたな。固くなってきたな。今、傀儡のお前は傀儡師の俺によってチンポを揉まれてる。俺によって揉まれたチンポは、お前の意志とは関係無く勃起してきた。分かるか?お前のチンポも、傀儡師である俺の思うがままなんだぞ?
よし。傀儡であるお前は、傀儡師の俺によってチンポを揉まれ、気持ち良くなってきた。そうだろ?
そうだな。気持ちいいな?
よし。傀儡師によって傀儡は快感を感じる。チンポが大きくなる。チンポが大きくなるって、どういうことだ?好きってことだろ?
よし、そうだな。お前は俺が好きなんだ。お前は俺を愛している。傀儡は、傀儡師を愛してる。そうだな?
そう、いい子だ。俺もお前のことを愛してるよ。大好きだ。傀儡師に愛された傀儡は、傀儡師に従ってさえいればいい。分かるか?
よし、お前はもう女を好きだという気持ちは捨て去るんだ。お前は俺とエッチなことをしていれば、最高の快感を得られるんだから。俺は童貞だと言ったが、それは女とだ。男を善がらせるのは得意だぞ。どうだ?俺とセックスして気持ち良くなってみないか?
よし、いい子だ。お前のチンポ、勝手に大きくなってきたな。俺とセックスしたいのか?
即答だな。いいぞ、お前はとても優秀な傀儡だ。お前は目が覚めたら、俺の傀儡としての人生を歩み始める。だが、お前が傀儡となったことは、傀儡師である俺以外には絶対に秘密だ。分かったな?
よし。じゃ、ソファに座らせてやる。目が覚めたら、最高に気持ち良くしてやる…。
「先生のクラス、最近優秀ですね」
「荒れてた子達が落ち着いてますし」
「中心だった子が素直になって、周りも感化されたようで」
「秘訣でもあるんですか?」
高校の職員室の雑談に、俺は苦笑を返した。
「いえ、生活指導室をお借りして、繰り返し意思疎通を図っただけですよ」
最近では生活指導室を使うことも無い。俺の傀儡が、自ら望んで俺の家に来るようになったからだ。
舌と尻で俺に奉仕し、俺が与えた命令に忠実に従う。俺の傀儡は優秀だ。
(おわり)
お盆が明けたある日の午後。
高校の屋内プールは静けさに支配されていた。グラウンドから、金属バットがボールを打ち返す音が遠く聞こえてくる。激しい水音が場を満たす普段の部活であれば、あり得ないことだった。
俺はプールの中を覗き込んだ。「水」の中には、水泳部員達が沈んでいた。皆一様に胎児のように体を丸め、脇腹を緩やかに上下させる程度の動きしか見せていない。
その部員達の体が、一斉に細かい痙攣を始めた。震えは次第に大きくなり、丸まっていた体が徐々に真っ直ぐに伸びていく。やがて水の底に沈んだまま直立姿勢になると、手足の指を先まで突っ張らせながら腰を動かし始めた。スパッツ型、或いはタイツ型の競泳用水着の中で、部員達のペニスは固く勃起していた。水着の腰回りに亀頭の先を押さえ付けられ、ペニスは窮屈そうに水着を盛り上げる。
部員達の腰の動きがますます激しくなり、遂に次々と射精に至った。その瞬間彼等の背筋は折れんばかりに弓なりに反り、突き出された水着の盛り上がりからは生地を透して白いザーメンが染み出した。しかしその粘液は瞬く間に分解されていく。射精後も部員達は腰を振り続けた。尿道に残ったザーメンを絞り出すように。いや、まるで絞り出されるかのように。
背後に人の気配を感じて、俺は顔を上げ振り返った。そこには、ブーメランパンツ型の競泳用水着、いわゆる競パンを穿いた水泳部部長が立っていた。
「そろそろだな」
その一時間余り前。
部員達は部長の指示で全員でウォームアップを始めた。部員を数グループに分け、奇数コースを往路、偶数コースを復路として、軽く泳ぎを続けるというもの。この部では慣れた方法であったため、部員達は何ら違和感を抱くこと無く、間隔を空けながら泳ぎを始めた。全員がプールに浸かった状態になったところで、プールの水に異変が生じた。
それまでは塩素の臭いが漂ういつもの水であったものが、急にスライムのように粘度を増し部員達の体に絡み出した。平泳ぎをしていたある部員は一瞬叫び声を上げたものの、すぐにその口と鼻を水に塞がれてしまい、もがきながら水中に引きずり込まれた。クロールの最中のある部員は、顔を水中に入れた瞬間に、そのままの体勢で底に沈められた。二十名を超える部員達は、助けを求める暇すら与えられずに、全員水の中に囚われてしまった。
粘度を高めた水は、部員の体を包み込むとあらゆる穴から体内に侵入し、あらゆる部位への浸透を開始した。呼吸に必要な酸素は、肺胞を包む水から直接与えられた。細胞の大部分を占める水は、侵入してきた水によって置換された。水は更にリンパ液や血漿を侵し、脳漿を我が物として脳内に逆流していった。
部員達は、まるで羊水の中の胎児のような姿で、その体を作り変えられ、既存の人間ではない存在としての教育を施されていた。彼等が胎児と異なるのは、明確な人格を持ち、性的な快感を知っていることだった。
肉体と思考の改造を終えた水は、その成果に見返りを与えるかのように、宿主達に性的な快感を与え始めた。
前日の夕方。
水泳部の部長は誰もいないプールを前に、競パン姿でプールサイドに立っていた。プールの対岸へ目を向けてはいるが、その焦点は合っていない。ただ無表情に、立ち尽していた。
プールの水面が微かに波立った。ザバ、という音と共に、部長の目前に水面から水の壁が立ち上がる。部長は誘われるかのようにその壁に向かって足を踏み出し、そして全身を壁の中に埋めた。まるでゼリーの中に浮かぶ果肉のように、部長の体は透明な壁の中に浮いていた。程なく、壁は部長を取り込んだまま水中に没した。
プールの水面に立ってその様子を見ていた俺は、部長が沈んだ辺りに歩いていった。俺の足許で、俺の望み通り、部長は胎児のように体を丸め改造を受け入れていた。俺のペニスは既に競パンの中でギンギンに固くなっている。部長が俺のコレクションの競パンを穿いている、それだけでも一気に三回は抜ける。
明日には部員全員仲間にできるんだ。俺にも気持ちいいことしろよな。そう念じた瞬間、俺の体はズブズブと水中に沈み込み始めた。脚がくすぐったくて、気持ちいい。これからはこの快感が学校の屋内プールで一年中味わえる。俺は改めて興奮を覚えた。水の入れ替えの度に「水」を吐き出さないといけないのが億劫だが、そんなのは他の部員にやらせてもいい。俺の腰までが水中に沈む。競パンとその中のペニスやアナルが水に触れる。気持ちイイっ。
お盆のこと。
俺は家族と一緒に親父の実家に里帰りしていた。俺にとっては海が綺麗なだけの退屈な土地ではあったが、一つだけここでしか味わえない楽しみがあった。すぐ近くに砂浜を持つ小さな入江があり、観光客が来るようなところではなかったから、そこは実家のプライベートビーチみたいになっていた。そこで競パンを穿いて、時には全裸になって、自然に向かって一人体を晒すのが俺の最近のフェチ的趣味だった。水泳部では普段スパッツ型の水着を使っていたが、俺の本当の嗜好は競パンにあった。
親や親戚は世代のためか競パンを当たり前だと思っていたから、俺が競パン一枚で入江に向かっても、「気を付けろよ」くらいしか言わない。その日も、一人で体を灼き、そして海に入って競パンの上からペニスをこすり始めた。自然の中で競パン姿でオナニー。最高だ。その時だった。俺の腰の周りで、海水が急にネトネトし始めたのは。
そして再び昨日。
俺はお土産を持って部長の家に上がり込んだ。土産話もそこそこに、俺は部長に抱き付くとキスを始めた。そう、俺と部長は元々そういう仲だから。まだセックスはしたことが無くてキスまでだったけれど、二人きりになるとお互いの筋肉を感じながら舌を吸い合うのが習慣だった。
しかし、昨日はそれまでと違っていた。俺の体は例の「水」によって作り変えられており、唾は「水」によって構成されていた。俺の唾を飲み込んだ部長は、途端に表情を失い、俺の命令のままに動く人形に変わった。
部長は顧問の教師からプールの鍵を渡されている。またお盆明けにプールの水は新しくなっている。暫くは水の入れ替えは無い筈だから、仕込むには良いタイミングだった。今俺がやるべきことは、部長を連れて高校に行くこと、そしてプールの水を「水」に変え部長を完全に仲間にした上で、明日の部活に備えることだった。
と言いながら、部長に出掛ける準備をさせるその前に、俺は自分のエナメルバッグの中から競パンを引っ張り出した。俺が好きなメーカーで、俺がいつも穿くヤツの色違い。俺はそれを穿くことを部長に命じた。
部長はいつも「時代じゃない」だの「恥ずかしい」だの言って、競パンを穿いてくれない。でも今の部長は、俺の言うがままだ。部長が素直に穿いた小さ目の競パンは、ペニスとプリケツを思いの外強調してくれた。俺は部長のペニスを甘噛みしてみた。野望が叶った瞬間、俺の勃起は一際固く大きくなった。痛ぇ。当然ながら、俺はハーフパンツの下に競パンを装着済みで、俺のペニスは行き場を求めて暴れ始めた。
部長には競パンの上に直接ジャージを着させ、二人で高校に向かう。
無表情で従順な部長にもそそられたが、やっぱり自分の意志で俺を愛してくれる部長も捨て難かった。
完全に作り変えられた部長と俺は、ネトネトの水をローション代わりにして、プールの中で初めてのセックスを交わした。人生で最高の瞬間だった。
夏休みも終わる頃の大会の翌日。
プールの中から水面へ、次々と部員達が姿を現した。部員達は水に押し上げられ、水面に直立していた。全員が揃いの競パンを穿き、ペニスを屹立させていた。
「大会優勝のご褒美だ。俺とコイツみたいにセックスしたいヤツ、手を挙げろ」
部長が俺のことを抱きながら声を張り上げる。全員が挙手したみたいだが、俺は部長の乳首を吸い、自分の勃起を部長の太股に擦りつけるのに夢中になっていて、詳しいことは分からない。
部員達を作り変えてから、色々なことが変わった。水と直接触れられる面積を増やすため、ということで全員一致で常に競パンが使われることになった。体と水の親和性が上がったのか、最近流行の低抵抗水着なんか着なくても記録が伸びるようになった。そしてお互いがオナペットになった。部員達が競パン越しにお互いにしごき合うなんて、この部では日常茶飯事だ。俺と部長も、自分達の仲を隠さなくなった。羨しがられるというのも悪くない。
このプールは二学期の授業でも使われるから、この学校の全員を作り変えることも不可能ではない。が、俺や部長と初めとする部員達も、そもそも「水」も、そこまでは望んでいない。とりあえず水泳部だけで楽しめればいい。
「俺達もヤるぞ」
部長に促されて、俺は部長と一緒にプールの水に飲み込まれた。水中では既に他の部員達がアナルセックスを始めていた。部長の手が俺の競パンを下ろし、水が俺の尻の割れ目を押し広げ始めた。
(おわり)
「これで最後だっ。魔王っ」
相棒の声を合図に、僕は改めて法術の呪文を唱え始めた。古びた城の大広間には、僕が張った立体的な魔法陣が浮かんでいる。その中心には、魔王と呼ばれた魔道士が捕えられていた。魔道士と言っても、ローブをまとったヒョロヒョロした体型の老人なんかではなく、筋骨隆々とした肉体に簡素な防具をまとった姿で、まるで格闘家のようだった。黄色い瞳を光らせ、全身に殺気をみなぎらせていた。
この魔道士は、かつてある領主の城と身分を乗っ取った。表向きは領主として合法的に、しかし実際にはその強い魔力を弄して、領地内に絶対的統治者として君臨した。また、王国に従わない反乱分子や闇の者達を身近に招き寄せ、城と領地をその巣窟へと変えていた。魔道士が王国に対して謀叛を企てるのは時間の問題と言われて数年来、王国は常に魔道士排除の機会をうかがっていた。
魔道士が遂に謀叛を起こす。その一報は王宮から法術士の里にも届けられた。王宮はその情報を大義名分として、討伐軍の編成を開始した。また編成が完了するまでの時間を使い、魔道士暗殺のための法術士が何名も派遣されることとなった。暗殺ならば大義名分を待たずにやれば良かったのに、と思ったが、これまでも暗殺の試みは何度と無く行なわれ、その度に失敗してきているらしい。今回は、仮に王宮による暗殺計画がバレたとしても大義名分を振りかざせる、ということで、僕や相棒にまで命令が下りてきたわけだ。
勿論、討伐軍にも多くの法術士が組み込まれており、この暗殺計画が一か八かのものであることは、暗殺団に選抜された法術士を見れば分かる。あまり実力の高くない者、将来を嘱望されていない者、法術士院本部に反抗的な者、そんな連中が集められている。相棒は、若いくせに反抗的だから。僕は、きっと将来を期待されていないから、だと思う。相棒は僕に対してよく「お前は実力を発揮できていないだけだ」って言ってくれるけれど、それは大いに贔屓目であることを僕自身が理解していた。
だから、暗殺団の一行は死を覚悟していたし、里を出た時点で個別行動に移行していた。中には逃げ出した法術士もいるかも知れない。広大で迷路のような城の中で、先行していた年上の法術士が石に変えられているのを見た時には、さすがに僕も相棒も怖気づいた。こうやって、一番若手の僕と相棒が魔道士を追い詰め魔法陣内に封じ、とどめを刺そうとしているのは、本当に奇跡みたいなものだと思う。
僕の呪文で、魔法陣を構成する力の場は、その方向を全て魔道士に集中させる。通常、魔法陣による防壁は、対象を内側に閉じ込め動きを封じるだけでなく、外からの攻撃をも削いでしまう。そのため、強力な攻撃魔法で魔法陣ごと消失させたり、攻撃の直前に魔法陣を解除するという方法がよく採られる。だが、相棒の攻撃魔法は馬鹿力ではないし、強い敵に対しては例え一瞬でも魔法陣を解除するのは危険なことだった。だから僕は、防壁の外部から魔力的な攻撃を透過させられるよう、魔法陣を構成する全ての力の方向を外から内に向けて固定する、という制御法を考え出した。巧い方法かどうかは分からなかったが、これが僕にできる最大限の工夫だった。
相棒が上段に構える剣の表面に、複雑な文様を描きながら光が走る。準備が整った。そう察知した僕は、別の呪文を唱える。魔法陣の内、相棒の方へ向いた面の数ヶ所で、力の場が一瞬反転する。全ての力が魔法陣内部に向いていると、対象の魔力的な動きが外からは正確には分からない。相棒の攻撃魔法の照準合わせのために、僕は本当にほんの一瞬だけ、小さな領域数ヶ所で、魔力の流れを反転させた。今回の魔道士相手ではこれすら危険な賭けであり、一方で相棒にとっては十分な時間だった。反転した力が再び内側を向いたのと同時に、相棒は剣を振り下ろした。剣の刀身から切っ先へ光が集まり、光束として放たれる。その光の矢は魔法陣の防壁を透過し、魔道士の額を正確に貫いた。魔道士の頭部が一瞬膨張し、破裂する。
血塗れの魔道士の死体。それは決して気持ちの良いものでは無かったけれど、僕達はそれを目の当たりにして仕事を成し遂げたという安堵を覚えていた。相棒は普通の金属に戻った剣を鞘に収め、僕は魔法陣を解除した。ふぅと溜息をつく。僕と相棒は顔を見合わせて苦笑した。魔法陣を張った僕も、攻撃魔法を放った相棒も、それぞれ十分に疲労していた。
「魔王の部下どもが騒ぎ出す前に、逃げ出すぞ」
「うん。そうだね」
僕と相棒は魔道士の死体を背に、大広間の出口の方を向いた。その瞬間のことだった。僕達は強大な殺気を感じて振り返った。だがこの時点で、僕達は既に対処の余地を失っていた。僕の体は暴風のように押し寄せる魔力によって、軽く吹き飛ばされた。
「ぐぁっ」
背中から床に落ちて、僕は声にならない呻きを上げた。何秒か、息ができない状態が続いた。
「ど、どういうこと...」
体を起こそうとした僕は、肩から下が麻痺、いや動きを封じられていることに気付いた。首を巡らすと、自分の周囲の床に光る線が踊っていた。完全に魔法陣に囚われていた。誰の仕業だ。魔道士の部下だろうか。僕は顔を起こし、そして驚愕した。
「なっ、なんで生きてるっ!?」
そこには、先程相棒が葬った筈の魔道士が、腕組みをしながら悠然と立っていた。
「て、てめっ...。さっきが俺が...」
僕同様に魔力の爆風に吹き飛ばされた相棒が、体の痛みを堪えながら半身を起こすのが見えた。そう、確かに相棒の攻撃は魔道士の頭部を撃ち抜いていた。だが、今ここに立つ魔道士は...。
「あれは私の複製だ。それでも、法術士などに負けるとは思っていなかったがな。まさかこの私に本気を出させようとは、貴様ら、なかなか見所があるな」
魔王と呼ばれる魔道士本人と考えざるを得なかった。周囲に放たれる気と魔力は、先程まで対峙していた複製の比ではなかった。
「っるせっ」
相棒がややふらつきながら、立ち上がった。僕の様子をうかがってくる。僕は動きを封じられてしまったことを伝えるため、首を横に振った。
「何故あいつだけ封じたっ」
相棒の問いに、魔道士はニヤリと笑みを浮かべた。
「一人ずつ処置しようと思ってな。先ずはお前だ」
相棒は無言で剣を抜いた。刀身が光を帯びる。魔道士は全く動じない。それどころか、笑みを深くした。
「二人とも、我が軍門に下るがいい」
「はぁっ!?なめてんじゃねぇっ!!」
相棒の言葉は乱暴だったが、裏では緻密に攻撃の準備を重ねているようだった。柄を握る手の指先が、微かに複雑に動いていた。
「お前達のことを舐めているのは、私ではなく法術士院だと思うが?」
意外な言葉に僕は驚いた。それは相棒も同じだったようで、言葉の勢いが削がれていた。
「なっ...何言ってんだてめぇ...」
「このタイミングで我が城に差し向けられたということは、お前達は捨て駒扱いだろう。だが、魔力を高純度に集約させ、それを照準をあやまたず高精度に撃ち出す集中と技巧、複雑な立体魔法陣を短時間で生成し、更に力場を自在に緻密に操る発想と技能、いずれも非凡の才であり、太刀打ちできる法術士などそうはいまい。このような人材を捨て駒同然に扱うとは、法術士院は相変わらず木偶の坊だな」
「法術士院のお偉方が木偶の坊ばっかってことには賛成すっけど、お前に降伏するかどうかは、別問題だっ」
相棒が柄を握り直した。いつでも攻撃魔法を放てるようになった様子だ。疲労は大きい筈だが、全力の一撃が完全防御されなければ、相当のダメージを与えられる。
「私はお前達を配下に迎えるつもりだ」
「無理な相談だな」
相棒は撃ち出しの間合いを測っている。
「私には、相談を持ち掛けるつもりなどは無い」
僕も相棒も眉をひそめた。
「間も無く、お前達は自ら望んで我が配下に加わることだろう」
魔道士はニヤリと笑った。それを隙と見て、相棒は一歩踏み込みながら剣を魔道士に向かって突き出した。
「ざけんなっ」
相棒が放った力は、最もガラ空きであった腹に向かった。
「妥当な選択だ」
魔道士は余裕の表情を崩さず、そして相棒の渾身の攻撃は、魔道士の体に達すること無く、光の屑となって四散してしまった。僕は目を疑った。
「私以外を相手にするのであればな」
魔道士は恐らく高速で防壁を張って攻撃を無力化し、直後に解除したのだと思う。だが、その素振りも防壁自体も、僕の目には止まらなかった。
「な...」
相棒も絶句し立ちすくんでいた。魔道士は笑みを絶やさぬまま、右手を上げ掌を相棒に向けた。まずい。
「逃げてっ!!」
僕は思わず叫んでいた。相棒にしてみれば、僕にわざわざ注意されるまでも無い筈だったのだけれど。
叫ぶ僕の視界は、光の洪水に白く眩んだ。
視力が戻った時、僕の目に飛び込んできたのは、剣を中断に構え魔道士を茫然と見詰める姿のまま、石像と化した相棒の姿だった。マントのひだや跳ねた髪の毛は、そのまま石像の一部となっていた。眼球は、茶色の瞳の形跡など無い単なる球面へと変貌していた。
僕の頭の中は、驚きと怒りと悲しみと恐れがない混ぜになり、真っ白になった。きっと、何かわけの分からないことを怒鳴り、泣き叫んだんだと思う。首を絞められる感覚に、僕は我に返った。
「騒ぐな。死んではいない」
相棒に近寄った魔道士が、僕のことを見下ろしている。僕の首を締め上げていた力が消え去った。僕は咳き込みながら訴えた。
「もっ、戻せっ、元に戻せよっ」
「勿論、石化は解いてやる。私とて、石像が欲しいわけではない。但し、私への忠誠を植え付けてから、な」
「なっ…。そんなっ、やめろっ」
相棒のことを洗脳するということか。僕はあらん限りの大声を上げた。威嚇にすらならないことは承知の上で。魔道士は妙に優しげな顔付きに変わった。
「法術士達の中にあっては、お前達の実力は活かされない。我が許でその力と技を更に鍛え存分に発揮するというのは、お前達にとっても悪い話ではないと思うが。私としても、我が右腕として欲したのは、お前達二人が初めてだ。お前達がいれば、私は流血を回避し王国を掌握できる。民草を踏み躙らないためにも、我が配下へ加わることがお前達に残された道だ」
僕は黙りこくってしまった。こんな風に必要とされたことは、無かったから。
魔道士は右手の人差指と中指を揃えて伸ばすと、石像と化した相棒の額に触れた。指先と額がボゥと光る。
「あっ、ちょ、ちょっとっ」
魔道士はニヤッと笑うと、すぐに指を離した。
「お前の望み通り、元に戻してやろう」
魔道士の右手の掌が、相棒にかざされる。魔道士の手と相棒の全身が光に包まれ、次の瞬間には相棒は元通り、生身の人間の姿に戻っていた。
「あ…れ…?…俺…?」
相棒は剣を下ろし、首を傾げた。僕は一瞬安堵したが、忠誠を植え付けると言った魔道士の言葉が気にかかった。魔道士は相棒の額に触れたあの一瞬で、相棒を洗脳できたというのだろうか。
この疑問はすぐに解けた。
「気分はどうだ?」
魔道士に声をかけられ、相棒はにっこりと笑った。
「はい、我が王。我が王により、新たな目覚めを迎えることができました」
相棒は手にしていた剣を鞘に収めると魔道士の足許に跪き、剣を鞘ごと外して魔道士に向かって捧げ持った。寝る時も、水浴する時も、手放したことが無い剣だと言うのに。魔道士は剣を受け取ると、相棒に尋ねた。
「これは、私に対する忠誠の証か」
「はい。我が王。何卒、その忌しき剣、滅していただけますよう」
僕はその言葉を聞いて、確信し、無力感に囚われた。相棒は魔道士の下僕として、完全に洗脳されていた。
「分かった。お前の忠誠を認めよう」
「ありがとうございます」
相棒は頭を垂れる。
「では、その古い装束も捨て去ってしまうがいい」
「はい。我が王」
カチリ、という音がして、相棒がマントの中に纏っていた革鎧が外れ、床に落ちる。魔力に対する防御力を仕込んだ鎧で、法術士にありがちな装備だった。相棒の背で、マントやそのフードが見る見る朽ち始める。相棒が身に付けていた全てのものが、急速に時を経ているかのように崩れ、床に落ちながら姿を消していった。
やがて、すっと立ち上がった相棒は、褌すら外した一糸まとわぬ全裸となっていた。その股間では、相棒の男性器が、大きくそそり勃っていた。僕は、自分でも意識しないままに、ゴクリと喉を鳴らしていた。
「来い」
「はい。我が王」
相棒は、魔道士に呼ばれるがまま、魔道士の屈強な体に寄り添うと、気持ち良さそうな吐息を漏らした。
「我が王。何卒、我が王の精を我が身にお与えください」
「無論だ。だがその前に訊きたい。お前は愛する者と精を交わし合っているのか?」
僕は、相棒と魔道士の台詞の意味を理解できなかった。
「いいえ。我が王」
相棒は僕に視線を投げかけてくる。その目付きは、なんだか熱を帯びているようで…。
「かの友とは、未だ交わっておりません。彼との行為を想像し、一人手淫に耽るのが関の山でありました。揃って我が王に仕えることとなれば、精を交わし、共に我が王の悦びに身を捧げたいと存じます」
相棒は何を言っているんだ?相棒の言葉を僕は理解できなかった。いや、理解しようとしなかった。違う、そうじゃない。あまりの嬉しさで興奮し、一切の思考が停止していたのだった。危機的状況下であるにも関わらず、僕の性器は固く勃起し、褌をすっかり濡らしてしまっていた。僕が密かに恋い慕っていた相棒が、僕のことを愛してくれている。
魔道士が、相棒を引き連れて近付いてきた。
「我が王。この者への処置を、お願い申し上げます」
僕の目は、怒張し透明な汁を垂らす相棒の性器を凝視していた。見たくて、触りたくて、しゃぶりたくて仕方の無かったものが、今目の前にある。
「お前の体の縛めは解いた。お前の望むままに振る舞うがいい」
魔道士の言葉の通り、周囲の魔法陣は消えていた。腕が、脚が、動く。体の自由が戻っていた。
僕は立ち上がると、魔道士と相棒に向かって一歩踏み出し、顔を上げた。
「相棒と同じように…」
魔道士が笑った。魔道士の腕が僕の額に向かって伸びてくる。その腕の筋肉が、とても魅力的だった。その腕に抱かれたい。相棒と二人で抱かれたい。そう思った。
「完璧な忠誠を捧げるため…洗脳を…」
魔道士の、いや、我が王の指先が自分の額に触れようとした瞬間、僕は満足そうに笑っていたに違いない。相棒と一緒にいるために、相棒と同じでいるために、相棒同様の処置を我が王から受けたいと、僕は心の底から望んでいたのだから。
夜の闇の中、僕と相棒は十数名の法術士の後輩を率い王都を目指していた。
法術士の里には、今は石像しかいない。主力の法術士を欠いた里を手中に収めるのは、我が王によって覚醒した僕と相棒にとって、あまりにも容易いことだった。
後方に付き従う後輩達は、石と化した法術士達の中から選抜し、忠実な下僕として洗脳済みの人材だった。彼等を王都の周辺に配置し、僕と相棒の魔力の中継者とする。巨大な王都を一気に支配下に置くためには、それなりの準備と法術士が必要となるからだ。
「王都全体を飲み込む魔法陣か。俺なら思い付かねぇよ。さすが、魔法陣の名手だけあるな」
相棒の世辞に、僕は照れ笑いを浮かべた。我が王と相棒のためならば、何でも思い付けるし、何でも実現できるような気がする。
「そろそろ散開を命じる地点だよ」
僕は顔を引き締め、相棒に伝えた。
「分かった」
僕と相棒は暗闇の中、黄色く光る瞳同士で見詰め合った。二人の額では、我が王の紋章が薄らと光っている。この紋章のお陰で、僕達は我が王の意志を自らの言葉として理解することができた。以前のように、王国や法術士院の誤った考えに惑わされてしまうことは無い。僕と相棒は我が王に守られている。そして、僕と相棒がこの国を我が王に捧げる日は、もう目前だった。
(おわり)
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