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  • 2014⁄02⁄08(Sat)
  • 13:22

「痛い、やめてよ!」

「やめろ! やめろってば!!」
激しい抵抗をものともせず、男はショウタの体を衣類の上から撫で回していた。
足枷と手枷が邪魔をして、体の自由がまるで利かない。
先ほど水をかけられたため、Tシャツは透けている。もう十月も半ばとなれば、
その水はどんどんと体温を奪っていき、ショウタは寒さに歯をカチカチと鳴らし始めた。
寒い。そして痛い。男に拘束され、早一時間と言うところだろうか。
時計などないから、ショウタの感覚でしかなかったが、しかし最低でもそれくらいは
時間が経過しているように感じられる。
その間立ちっぱなしの足は、足首から膝まで、足と称する部分の全てが痛みはじめていた。
「放せってば! ケーサツに言うからな! 放せよ!!」
精一杯の声は誰にも届かないだろう。反響の仕方、窓のない不自然な部屋、
それらの条件を鑑みればここがおそらくどこかの建物の地下室であることは安易に知れた。
頭が悪い生意気なだけな子供だと何度言われたことか判らない。
そんなショウタでも、ここがどんな場所であるか推測することは容易かった。
「おい! おいってば!」
ファーのついたファンシーな手枷は、その愛らしい外見に反して造りはしっかりしていた。
引こうが振り回そうがびくともしない。
こんな体験は初めてのことで、ショウタはじわじわと追い詰められるような感覚に涙がでそうになった。
「悲しいのか?」
「違う!」
噛み付かんばかりの勢いで言ったのは、男が右手に持った鞭がショウタの顎をすくい、
そしてからかうようにしてそれを動かしたからだ。
足は寒くて冷たくて辛い。だが、体はどことなく熱いのだ。
この妙な体の変化に、ショウタは戸惑いつつも受け入れていた。
この手のものを使われるの初めてのことではない。何度か体験したことはある。
ここにつれてこられ、そして目隠しを取られる直前にちくりとした痛みが右ひじの内側に走ったのだ。
注射かなにかだったのだろう。
何を打った、どんなものを体に入れた。
それに怯えるよりも、慣れているという事実が悲しい。
そう、ショウタはこんな風にゴミ溜めではいつくばって生きている人生が、普通に生きて来た年月よりも
断然長いのだ。
可哀想な自分を慰めることはしない。春を売ることにも慣れたし、時として誰かに飼われることもなれた。
――だけれど薬は少し嫌だったな。
そんなことを思いながら、少し前に知り合ったばかりの男を睨んだ。
男のことを、ショウタは知っていた。
名前はタカシ。道端に座り込んでパンを食べているところを声をかけられたのだ。
まさかこういうプレイが好きな変態だとは思わなかったのだが……。
「おい、放せって!! 手、痛いんだってば!」
「うるさい」
タカシは冷徹な眼差しを向けたまま、その手に持った鞭を振り上げた。
ぴしゃりと振り落とされた鞭はショウタの腿を叩き、痛みが走る。
ハーフパンツを男が捲り上げると、そこには赤い筋が間もなくして現れ、
それは熱を持ってタカシの所有権を主張した。
今、ショウタはこの男のものなのだ。タカシは支配することに喜びを感じている。
抵抗されればされるほど燃えるのだろう。

「なあ、放せよ。俺、逃げたりしないよ……」
何度こういっただろう。だがしかし、タカシはそれを聞き入れる素振りさえ見せなかった。
にやにやと笑いながらショウタを見下ろしている。
「放すわけがないだろ?」
タカシは驚くほど冷静にいい、そしてもう一度鞭を振り上げた。
「痛いぃ!」
ショウタは走る痛みに思わず涙を零した。
あとはもう「酷い、酷い」という泣き言しかこぼれない。
自分の柔らかそうな皮膚が徐々に赤く染まっていくのが涙の向こうに見える。
あんまりだ、ひどい、やめて。
そういったところで男の手は止まらない。
そのくせ、時折鞭を握る手を止めてはショウタの唇を貪ってくるから、ショウタは息苦しさに喘ぐしかない。
「ん、ん、んー!」
声も碌に出ず、しかし先ほど打たれた注射の所為か奇妙な熱が体を支配し、やがて股間がむずむずとする。
「ね、ねえ、おにいちゃん、やめて、俺、なんでもするから、ねぇ……!」
言った傍から鞭が振り上げられる。
「あう!」
悲鳴かなんなのか判然としない叫び声に、しかしタカシは反応することなくそれを繰り返した。
やがて飽きたのか鞭は放られ、彼は再びショウタに近づくと、パンツを勢いよく下ろした。
体の中に入った何かの効果なのか、小さいそこはもうすでに勃ちあがっており、ショウタは思わず赤面した。
「ここ」
タカシはショウタのそこを今までの態度にそぐわぬ優しさでなで、そして突如としてしごき始める。

「気持ちいか?」
「やぁ、やめ、やめて……! や、あ!」
それに飽きたのだろう、タカシはその股間に顔を埋めた。
なぶるようにして舐め、そしてタカシはショウタの反応をあざ笑うようにして時折ショウタを見上げる。
急激な射精感に襲われるが、ショウタはそれをなんとか我慢するしかない。
「やめろ、やめて、やめてってば……!」
なきごとは一切聞かぬ。
そんな態度でタカシはショウタを責め立てた。
体のひりつく痛みと、そして快感の二つが同時にそこにある。
頭がおかしくなりそうだった。
「やめて、やめてよぅ……おにいちゃん、やめてえ……」
ぐすぐすと泣くうちに、鼻水までもが流れ出していく。
「気持ち悪いか?」
そこに歯を立てたまま言われると、恐怖が頭を支配し、思わず首を左右に振った。
「じゃあいいだろう」

そのまま口で弄ばれ、情けないことに足がプルプルと震えていく。
立っていることはままらなず、思わずがくりと膝を落とすと、上方に固定されていた手首に痛みが走った。
「ぃ……! やめてよう……お願いだよ……」
「でも気持ちいいだろ?」
痛覚と快感のセンサーが壊れてしまう。
ショウタはそんな恐怖に怯えていた。
「ねぇ、もうやめよう? おにいちゃん……」
「やめないね」
徐々にタカシに口の動きが激しくなり、そしてその都度ショウタは「あ、あ」と色めいた声を上げる。
馬鹿みたいだ。そう思う。こんなことをしてなにが楽しいのだろう。全く理解できない。
「やめろってばぁ!!」
あと一息で射精までたどりつく。そんな時に、タカシは「判った」と言うと、その根元をきゅっと握り締めた。
「え……」
「やめて欲しいんだろ?」
「で、でも」
「俺はなにもしていないよ」
そう、彼はただ、根元をきゅっと握っているだけ。
出そうで出ない。それが辛かった。
それがどれくらい続いたかは判らない。
しゃがみこんでいるタカシはショウタを見上げ、そしてショウタが弱音を吐くのを待っている。
一見優しげな目をするから性質が悪い。
「どうして欲しい?」
「いやだ、放して!」
「それは聞けない」
「ひどい……」
ぐずぐずと鼻を鳴らした泣き落としはもう何度も実践したが、しかし彼はやめなかった。
涙で訴えてどうにかなる相手ではないのは確かな話だった。
「なんでこんなことするの……」
「好きだから」
「な、なにが……」
好きとはなんのことだ。
まさかショウタのことを? 一瞬だけ、心臓が高鳴ったのが屈辱的だた。
「こういうことするのがさ。いたぶるのが好きなんだ。判っているだろ?」
そうだ、そうに決まっている。
「もうさ、やめてよ……俺嫌だよ……」
それでもやっぱり泣き言がでるのは、怖かったからだ。
痛みで気持ちよくなってしまいそうな自分がいるのが怖かった。

ぐずぐずと泣き、もう一度「やだよぅ」と懇願すると、タカシは溜息を吐いて立ち上がった。
「あー判った判った。面倒だな」
タカシはショウタのそこを握り締めていたそこを解き、それから先ほど投げ掛けたのと同じ
「どうしたい?」と言う言葉で再び尋ねてきた。
「……て……」
ショウタももう限界なのだ。
「なに?」
タカシはやけに楽しげに尋ねる。
「はっきり言わないと聞こえない」
「こすってぇ! お願い……っ!」
「仕方がないな」
タカシの手が上下に動かされる。
その度にショウタは「あ、あ」と喘ぎ、そして「もっと」と泣いた。
「しょうがない奴だ」
「あ、だめ、おかしくなっちゃうよ、だめ……!」
開放感が一気に広がる。
頭が白くなって、声が止め処なく漏れた。
「もう少し頑張ると思ったんだけどなぁ……」
真っ白くなる意識の向こう側で、男の揶揄するような声がした。
「おにいちゃんってサドなんだね」
髪まで濡れそぼったままのショウタはベッドに腰掛呟いた。
「最初に言っただろ。俺サドだよって」
丁寧に髪を拭いていく所作は、とてもではないが嬉々として鞭を振るっていた男には見えなかった。
「痛かったか?」
「痛いよ! 当たり前じゃん!」
「そのうち快感に……」
「ならないってば! もう! あーもー真っ赤かだよ、どうしてくれんだよ、これ。俺
まだこのあとお客さんあるのに」
そう言うと、タカシの指がぴたっと止まった。
「にいちゃん?」
首をめぐらせると、タカシが真剣な顔でショウタを見ていた。
「な、なに?」
「ショウタ」
「うん?」
「もうお前、こういう仕事辞めないか?」
ショウタは困惑して、そして最終的に眉をひそめてから口角を上げた。
「それは無理。俺、母ちゃん食わせなきゃいけないし」
あの人、酒がないと生きていけないから、と付け足す。
それに、学費も稼ぎたい。上の学校に行くのにいくら掛かるのかと言えば、ショウタが眩暈を起こすような
金額だったのだ。


「それなら俺が支援、」
「だーめだめ。俺はみんなのものなんですー。おにいちゃん一人のものなんかにはなれないの」
「……そうか」
タカシが悲しげにショウタを見た。
「……お尻に入れなくてよかったの?」
「いや、今日はいいよ。たくさん叩いたしね」
その後暫くして、会話は途切れた。
タカシは優しい。
時折こんな風に無茶なプレイを要求するが、しかし基本は優しく接してくれた。
お金も弾んでくれるし、紳士ではあるし、言うことなしの客だった。
ただ、銀行に勤めている。
時折、タカシの好意に甘えてずっと彼の傍に居られたら、と思わないこともない。
だけどショウタは年を取る。ずっと可愛いままではいられない。
本当に、タカシの傍に居られたらいいのに。
詮無いことを感がえ、そして気取られぬように笑った。
それに。それに、銀行マンがショウタのような子供に入れあげているなど、とんだ醜聞であろう。
これ以上の関係は、彼を破滅させないとも限らないのだ。それだけは避けなくてはならないだろう。
「ほら、乾いたよ」
「ありがと」
「ほら、お金」
分厚い茶封筒を差し出される。あまりにも厚いそれに怪訝に思い中を見れば、いつもよりは三枚は多かった。
「おにいちゃん、これ、多いよ」
「いい。俺の気持ちだ」
「でも、俺……」
尻にだって今日は入れさせていない。
「いい。遠慮せずに貰っておけ」
「う、うん……」
判った、と返事をすると、リュックサックを背負いそしてスニーカーを履いた。
元々も着ていた服は濡れてしまっているから、今着ている衣類はタカシがよこしたものだ。
本当に気が利く優しいひとだと思う。
「毎度あり、またね、おにいちゃん。あ、ちゅーしよ、ちゅー」
「んん?」
鼻で笑いながら、それでもタカシは顔をこちらに向けてくれる。
唇にちゅーっと子供だましのようなキスをすると、それでもタカシは全てを許すように笑ってくれた。
「じゃあねー」
ベッドに座して手を振るタカシにバイバイ、と言うと、ショウタは扉を開けた。
次の客は、そういえば初めての人だ。
「うーさむーい!」
秋口とは言え、外は流石に寒かった。タカシの買ってくれたパーカーは、冷えた空気を防ぐことまでは
してくれないようだ。
「優しい人だといいなぁ」
独り言を呟きながら、ネオン街をてってってと駆けていく。
すれ違う男や女がみなショウタを見るが、しかし心配から声を掛けるものは誰一人居ない。
ここはそういう街なのだ。だからショウタは生きていける。
「君、」
ショウタは男をちらりと見た。金のありそうな男だ。
「だめ、今日は忙しい。また今度遊んでね。これ、俺の番号」
「あ、ああ」
手をきゅっと握り渡してやれば、男は顔を赤らめた。
ちょろい。
そうだ、カンショーに浸っている場合ではないのだ。
ショウタはもっともっとお金を稼がなくてはいけない。
次の客が待つホテルはすぐそこだ。
「優しい人だといいな」
先ほど呟いた言葉をもう一度呟く。
これは、初対面の相手が怖くならない呪文なのだ。ショウタは何どもそう呟きながら走った。
優しい人だと、いいな。
優しい人ばかりではないのだ。だから、ショウタは何度も呟く。
優しい人だと、いいな。
足音と呪文は、夜の繁華街に溶けいて行った。
<終>

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