- 2016⁄04⁄22(Fri)
- 02:59
愛と欲
普段はおっかない庸介でも眠ったらそれは平和そのもののようで、幸久はそっと隣の布団に潜り込んで律動的に動くその背中を見ていた。
ここ一年で一回りまた太ったんじゃない?
そんなこと言おうものならただでさえ無口な彼は憮然と黙ってしまって、機嫌が悪くなるだろう。しかし、その影で少し酒を控えたりするのも幸久は知っている。
寒い夜。暖房を切ってしまうと小さな部屋でも少しずつ寒くなる。
男二人で暮らすのも最初は戸惑うことばかりだったけれど最近はすっかり慣れた。洗濯や食事なんてどうにでもなるものだ。特に庸介は「生きていけりゃあそれでいい。」とコンビニ弁当だろうが幸久の下手な料理だろうがなんでも食べた。
一緒に暮らすなら何食べたって文句いわない人よ。
時々行くゲイバーのマスターの言葉だ。
時々つまらないことで怒らせたり、なんで黙りこくるのか判らない事がある。だけれど殴られる、ということは今のところない。セックス以外では庸介はなんだかんだいって優しい気がする。
セックスは・・・半年くらいは死にそうにきつかった。ものもでっかいし、幸久のペースなんて一切無視して、マジではじめのうちは次の日起きられなかったこともある。それでも彼はしたくなったら連チャンだろうがなんだろうが幸久にのっかってきた。
でもなあ・・・。
幸久は抱き枕をギュッと抱いて庸介の背中を見ている。大きな背中が息吸ったのと同時にぐっと盛り上がる。
何があっても逃げなかったんだよね。俺。
そして幸久は目を閉じた。
庸介を初めて見かけたときは正直、ちょっと怖い・・・汚い・・・・だけど・・・という感じだったのを今でも覚えている。
幸久の家の裏にある公園を工事することになって、それで挨拶に来たのが庸介だった。ガタイのでかい、迫力ある男が汚れた作業服で自分の家の前に立っていたのを見たときの瞬間を幸久は今でも忘れない。
「なんか用ッすか。」
あれは、塾の試験から帰ってきた、春休みの午後だった。玄関先に立っている男にちょっとビビってしまい、ちょっと距離をとって、門扉の外恐る恐る顔を見た。作業服姿の強盗か何かと思っても当然の感じだった。真っ黒に焼けた肌。鍛えられたたくましい胸。がっしりとした尻。そして厳しい眼差しと長めの無精ヒゲ。汚れた作業服がよく似合った。母親の自慢のイングリッシュガーデンにはそぐわない風貌。
「いや・・・明日からから裏。掘らせていただきますんで。」
こういうときにありそうな、慇懃な、バカに腰の低い態度は全くない。かといって、フレンドリーに「まあよくあることだし」、と迷惑かかっても笑ってごまかしそうな感じもない。
桜井家としても一応市役所の方から知らせは聞いていたのでああ・・・という感じだった。工事は明後日までするらしい。うるさいの、やだなあ・・・とちょっと思ってまた彼を見た。
無表情。
笑いもしなければ幸久に関心を持つでもない。ただ、そこに黙って存在していた。
そう。まるでオブジェが存在しているかのようだった。しかも、内側から迫力を漂わせているような。
彼の少し小さい目は、今は落ち着いているがもしも血走ったらものすごい迫力を帯びるのは目に見えている。いかにもガテン系だ。もしかしたら・・・塀の中に入ってたのかも知れない。
まだ四月、桜が咲き始めたとはいえまだ風はやや冷たさを残している。
「あの・・・。」
幸久は何となく声をかけた。無表情の瞳だけが数センチ、幸久を見た。
けれどその続きの言葉を続けることが出来なかった。男はぺこっと小さく頭を下げて、のっそりと門を出ていってしまったのだ。
幸久は今でもその後ろ姿を思い出すことが出来る。もしかしたら、あの背中を見た時から何か幸久の心の中に芽生えていたのかも知れない。
初恋は男だった。
幼稚園の時、給食室にいた調理師のお兄さんだった。構って欲しくて用事もないのに給食室に通って、下らない話をしてなんとか話をしよう、としていたのを覚えている。
その次は小学4年生の時。近所の中学生だった。
詰め襟に清潔そうな短髪。がっしりとした体格は少し太めだったかも知れない。学校に通うときいつもすれ違う彼が気になって、母親に聞いてみると案外簡単に名前も学校も判って。
陸上部で長距離を走っていたそのお兄さんが市の駅伝大会に出場したとき、みんなに黙って一人、自転車をこいで彼の走る区間でそっと待っていた。そして彼がすぎるのを見ながら胸がドキドキした。
あの頃から・・・男が好きだったなあ・・・。
どう思いだしても今までいっぺんも女を好きになったことなんてない。
なのに、男が好きになればなるほど、自分の身体は「女顔」になっていくのだ。もっと、切れのいいナイスガイになりたくて中学の時は母親に無理いってジムに通っても見たが、食べても太らない体質、そして長い手足。やさしげな顔立ちは変わらなかった。だからだろうか、だんだん自分の趣向が人と変わっていることに気がついた。ゲイバーで遊びも覚えた。何人もの知らない人とセックスだってした。アオカンだってなんだってした。
その殆どがある程度ガチブト系のヤツだった。
若いヤツ、今時のカッコカワイイ系には興味なんてない。幸久が興味あるのは。
「・・・たまんない・・・。」
今日来た、彼みたいな人だ。
一回奥の自室に走ってそっとズボンを脱ぐ。足首で絡まるのがもどかしい。
トランクスの中の自分のが固くビンビンになっている。それはぐっと反り立っていて亀頭の割れ目をそっとなぞるとツプッと透明のねっとりとした汁がもれてパンツに染みが出来た。。
「んふ・・・。」
あの小さな目に見つめられただけで幸久のチンポが勃起したのだ。
張りつめ、布越しに天を突いているそれをさすりながら大きく息を吐く。袋、裏筋、カリを確かめるようにさすると身体がゾクゾクする。
やられたい・・・。
あの人、どんなチンポだろう。俺みたいな女顔、好きかなあ・・・。
ああいうタイプって結構ハードゲイな人多いみたいだし、同じタイプの筋肉系好きな人多かったし・・・。
目を閉じて壁にもたれて立ったままパンツの中に手を突っ込んで扱き始めた。気分はすっかりあの男に犯され始めている。
男に無理矢理服を引き剥がされ、口をふさがれる。抵抗しようにも幸久の力では全くかなわない。彼はそんな幸久の両手両足を押さえ込むとおもむろに幸久のズボンを下ろすのだ。そして幸久は恥ずかしくて仕方がない。だってチンポはどうしようもないほどに疼き、勃起してるから。まるで誰かに虐めて欲しいみたいに。
男はそのチンポを楽しそうに扱く。
『はん、スケベチンポ。』
あの野太い低い声できつく言い放つ。そんなところまで想像すると幸久のチンポがジュブジュブ言うほどに先走りで濡れてきた。こんなになったのも久しぶりだ。今日のオナニーはとっても萌える。
男は汚れた作業ズボンのファスナーを下ろす。そして自分のチンボを引き出し、幸久の目の前に突き出すのだ。
そしてそこにあるのは・・・太くて美味しそうに勃起したチンポ。赤黒く、鬱蒼とした陰毛。独特の臭いがむんむんして、思わずむしゃぶりつくような。
「ん・・・あ・・・だめ・・・。」
勃起した自分のチンポを一生懸命扱きながら幸久の頭の中ではまだレイプは続く。
頭の中の男は意地悪に乳首を摘んだ。それにあわせて幸久の手も胸に延びる。
『どうした、こんなとこで感じるくらいエロい身体か。』
「あん、あ・・・。」
そしてコリコリに勃起した乳首を時折ぎゅんとつねる。来たままのシャツの裾を巻で声を押し殺した。まるで本当にレイプされている気がしてくる。
「うう・・・んん・・・。」
そして大きく脚を開くとやや腰を落とした。そして後ろのアナルをまさぐる。
ああ・・・したい・・・。
指を一本入れた。そしてズブズブと自分で押し込んでいく。全部はいるとそれを右往左往に動かしていく。腸をぐりぐりと拡げながら全然物足りないのだ。
もっと太いヤツだったらお尻の中もっとかき回してもらえるのに・・・。
幸久は壁に身を預け、片足を机においてオナニーを続けた。
犯されたい。このやられたい身体を思い切り犯して・・・そしてアナル奴隷として好きにして欲しい・・・。
「あ。いいよう、もっと犯してぇ・・・。」
たまらなくなって机の一番上の引き出しからバイブを出した。それは以前二度ほどプレイしたガチブトの兄貴から記念にプレゼントしてもらったやつだ。
ピンクのシリコンの亀頭をたっぷりとしゃぶる。まるであの男の本物のチンポのように、心を込めて下をねっとりと絡ませた。本物だったらもっとなま暖かくて味も美味しいはずなのに。
ベッドに四つん這いになる。わざとお尻を突き上げてみる。そしてバイブをあてがうとねじり込ませるように入れ始める。
「ああ・・・。」
思わず洩れる高い声。
アナルバイブでない、普通のバイブはいきなり入る筈はない。しかし、押し込み、無理矢理拡げながらもカリまでなんとかはいるとあとは楽だ。
「あ・・・入った・・・。」
クッ、とカリをアナルが包むようにくわえ込む。あとはゆっくり奥まで挿入だ。
少しずつ入り込むバイブのチンポ。息を吐きながらゆっくりとくわえ込む。
「んん・・・。」
大きく息を吐いた。そしてその場で細かく揺り動かす。
腸がぐにぐにと蠢いた。変な感じ。
下半身素っ裸で四つん這いになって異物挿入している姿誰かに見られたら・・・恥ずかしいなあ・・・。
そんなことを考えていると何故かチンポの先からツツーッと先走りが出てきた。シーツに染みになるが気にしていられない。
そしてゆっくりと挿入開始だ。ゆっくりと抜き、グンとつく。抜くときも入れるときも気持ち良い。思わず声が漏れて、幸久はだんだんその感触に夢中になっていくのだ。
アナルオナニーは大好きだった。自分のアナルが実は出すだけでなく、入れることもできるなんてびっくりだがそれで感じてしまうのもすごい。
「あん・・ああ・・・いい、もっと犯して・・・もっと虐めて・・・。」
あの冷たい目で見下され、汚い言葉で罵られたい。放尿を強要され、恥ずかしい格好をとらされて、みんなの前で射精したい。
マゾ犬として・・・あんなご主人様にお仕えしたい。
幸久の妄想は膨らむばかりだ。
縛られ、ケツにバイブ突っ込まれたまま上から学生服を来て学校に行く。写真を撮られてネット調教される。
ああ・・・俺のケツマンあの人に捧げたい。
ケツにバイブくわえたまま仰向けになって大きく足を拡げた。そしてスイッチを入れる。ブブブ・・・という鈍いモーター音が響く。
「ああ・・・。」
ぐりんぐりん回り始めたバイブで腸がかき回される。
たまんねえよ、バイブじゃなくって・・・。
「誰かホントのチンポで俺のケツマンかき回してくれよ・・・。」
切なく喘いだ。
「あ、でる・・・でる・・・ザーメン、ザーメン出る、チンボからエロカルピス発射したいよー・・・いく・・・。」
ぐい、と尻を上げる。目をぎゅっと閉じる。頬をシーツにこすりつけながらチンポを扱いた。グジュグジュと濡れた感触が助平で。
「あ・・・。」
想像の中のあの男がぐいぐいと虐めてくる。
「あ、チンポでおれ、壊して・・・。」
そして射精した。
幸久の部屋は一階の奥。昔、ばあちゃんが使っていた部屋でベッドと机をおいたら結構狭い。
そのオナニーをした晩はレンタルCDをMDにタビングしていた。アムロのアルバムで、別に好きでなかったけれどほかに借りるものがなかったので借りた程度だった。
そうこうしているうちなんだか急に腹が減ったのでコンビニに出かけたのだ。
歩いて2分のコンビニ。そのガラス越しに明々とともる建物の中にいる人間を見て幸久は思わず足を止めた。
あ・・・。
そこにいたのは昼間のあの男だ。
どうしようか。
一瞬ためらったが、向こうだって幸久を覚えているはずがない。ほんの数十秒顔を合わせた程度だ。
知らんぷりしてよう。幸久はその重いガラス戸を開けた。
ここ一年で一回りまた太ったんじゃない?
そんなこと言おうものならただでさえ無口な彼は憮然と黙ってしまって、機嫌が悪くなるだろう。しかし、その影で少し酒を控えたりするのも幸久は知っている。
寒い夜。暖房を切ってしまうと小さな部屋でも少しずつ寒くなる。
男二人で暮らすのも最初は戸惑うことばかりだったけれど最近はすっかり慣れた。洗濯や食事なんてどうにでもなるものだ。特に庸介は「生きていけりゃあそれでいい。」とコンビニ弁当だろうが幸久の下手な料理だろうがなんでも食べた。
一緒に暮らすなら何食べたって文句いわない人よ。
時々行くゲイバーのマスターの言葉だ。
時々つまらないことで怒らせたり、なんで黙りこくるのか判らない事がある。だけれど殴られる、ということは今のところない。セックス以外では庸介はなんだかんだいって優しい気がする。
セックスは・・・半年くらいは死にそうにきつかった。ものもでっかいし、幸久のペースなんて一切無視して、マジではじめのうちは次の日起きられなかったこともある。それでも彼はしたくなったら連チャンだろうがなんだろうが幸久にのっかってきた。
でもなあ・・・。
幸久は抱き枕をギュッと抱いて庸介の背中を見ている。大きな背中が息吸ったのと同時にぐっと盛り上がる。
何があっても逃げなかったんだよね。俺。
そして幸久は目を閉じた。
庸介を初めて見かけたときは正直、ちょっと怖い・・・汚い・・・・だけど・・・という感じだったのを今でも覚えている。
幸久の家の裏にある公園を工事することになって、それで挨拶に来たのが庸介だった。ガタイのでかい、迫力ある男が汚れた作業服で自分の家の前に立っていたのを見たときの瞬間を幸久は今でも忘れない。
「なんか用ッすか。」
あれは、塾の試験から帰ってきた、春休みの午後だった。玄関先に立っている男にちょっとビビってしまい、ちょっと距離をとって、門扉の外恐る恐る顔を見た。作業服姿の強盗か何かと思っても当然の感じだった。真っ黒に焼けた肌。鍛えられたたくましい胸。がっしりとした尻。そして厳しい眼差しと長めの無精ヒゲ。汚れた作業服がよく似合った。母親の自慢のイングリッシュガーデンにはそぐわない風貌。
「いや・・・明日からから裏。掘らせていただきますんで。」
こういうときにありそうな、慇懃な、バカに腰の低い態度は全くない。かといって、フレンドリーに「まあよくあることだし」、と迷惑かかっても笑ってごまかしそうな感じもない。
桜井家としても一応市役所の方から知らせは聞いていたのでああ・・・という感じだった。工事は明後日までするらしい。うるさいの、やだなあ・・・とちょっと思ってまた彼を見た。
無表情。
笑いもしなければ幸久に関心を持つでもない。ただ、そこに黙って存在していた。
そう。まるでオブジェが存在しているかのようだった。しかも、内側から迫力を漂わせているような。
彼の少し小さい目は、今は落ち着いているがもしも血走ったらものすごい迫力を帯びるのは目に見えている。いかにもガテン系だ。もしかしたら・・・塀の中に入ってたのかも知れない。
まだ四月、桜が咲き始めたとはいえまだ風はやや冷たさを残している。
「あの・・・。」
幸久は何となく声をかけた。無表情の瞳だけが数センチ、幸久を見た。
けれどその続きの言葉を続けることが出来なかった。男はぺこっと小さく頭を下げて、のっそりと門を出ていってしまったのだ。
幸久は今でもその後ろ姿を思い出すことが出来る。もしかしたら、あの背中を見た時から何か幸久の心の中に芽生えていたのかも知れない。
初恋は男だった。
幼稚園の時、給食室にいた調理師のお兄さんだった。構って欲しくて用事もないのに給食室に通って、下らない話をしてなんとか話をしよう、としていたのを覚えている。
その次は小学4年生の時。近所の中学生だった。
詰め襟に清潔そうな短髪。がっしりとした体格は少し太めだったかも知れない。学校に通うときいつもすれ違う彼が気になって、母親に聞いてみると案外簡単に名前も学校も判って。
陸上部で長距離を走っていたそのお兄さんが市の駅伝大会に出場したとき、みんなに黙って一人、自転車をこいで彼の走る区間でそっと待っていた。そして彼がすぎるのを見ながら胸がドキドキした。
あの頃から・・・男が好きだったなあ・・・。
どう思いだしても今までいっぺんも女を好きになったことなんてない。
なのに、男が好きになればなるほど、自分の身体は「女顔」になっていくのだ。もっと、切れのいいナイスガイになりたくて中学の時は母親に無理いってジムに通っても見たが、食べても太らない体質、そして長い手足。やさしげな顔立ちは変わらなかった。だからだろうか、だんだん自分の趣向が人と変わっていることに気がついた。ゲイバーで遊びも覚えた。何人もの知らない人とセックスだってした。アオカンだってなんだってした。
その殆どがある程度ガチブト系のヤツだった。
若いヤツ、今時のカッコカワイイ系には興味なんてない。幸久が興味あるのは。
「・・・たまんない・・・。」
今日来た、彼みたいな人だ。
一回奥の自室に走ってそっとズボンを脱ぐ。足首で絡まるのがもどかしい。
トランクスの中の自分のが固くビンビンになっている。それはぐっと反り立っていて亀頭の割れ目をそっとなぞるとツプッと透明のねっとりとした汁がもれてパンツに染みが出来た。。
「んふ・・・。」
あの小さな目に見つめられただけで幸久のチンポが勃起したのだ。
張りつめ、布越しに天を突いているそれをさすりながら大きく息を吐く。袋、裏筋、カリを確かめるようにさすると身体がゾクゾクする。
やられたい・・・。
あの人、どんなチンポだろう。俺みたいな女顔、好きかなあ・・・。
ああいうタイプって結構ハードゲイな人多いみたいだし、同じタイプの筋肉系好きな人多かったし・・・。
目を閉じて壁にもたれて立ったままパンツの中に手を突っ込んで扱き始めた。気分はすっかりあの男に犯され始めている。
男に無理矢理服を引き剥がされ、口をふさがれる。抵抗しようにも幸久の力では全くかなわない。彼はそんな幸久の両手両足を押さえ込むとおもむろに幸久のズボンを下ろすのだ。そして幸久は恥ずかしくて仕方がない。だってチンポはどうしようもないほどに疼き、勃起してるから。まるで誰かに虐めて欲しいみたいに。
男はそのチンポを楽しそうに扱く。
『はん、スケベチンポ。』
あの野太い低い声できつく言い放つ。そんなところまで想像すると幸久のチンポがジュブジュブ言うほどに先走りで濡れてきた。こんなになったのも久しぶりだ。今日のオナニーはとっても萌える。
男は汚れた作業ズボンのファスナーを下ろす。そして自分のチンボを引き出し、幸久の目の前に突き出すのだ。
そしてそこにあるのは・・・太くて美味しそうに勃起したチンポ。赤黒く、鬱蒼とした陰毛。独特の臭いがむんむんして、思わずむしゃぶりつくような。
「ん・・・あ・・・だめ・・・。」
勃起した自分のチンポを一生懸命扱きながら幸久の頭の中ではまだレイプは続く。
頭の中の男は意地悪に乳首を摘んだ。それにあわせて幸久の手も胸に延びる。
『どうした、こんなとこで感じるくらいエロい身体か。』
「あん、あ・・・。」
そしてコリコリに勃起した乳首を時折ぎゅんとつねる。来たままのシャツの裾を巻で声を押し殺した。まるで本当にレイプされている気がしてくる。
「うう・・・んん・・・。」
そして大きく脚を開くとやや腰を落とした。そして後ろのアナルをまさぐる。
ああ・・・したい・・・。
指を一本入れた。そしてズブズブと自分で押し込んでいく。全部はいるとそれを右往左往に動かしていく。腸をぐりぐりと拡げながら全然物足りないのだ。
もっと太いヤツだったらお尻の中もっとかき回してもらえるのに・・・。
幸久は壁に身を預け、片足を机においてオナニーを続けた。
犯されたい。このやられたい身体を思い切り犯して・・・そしてアナル奴隷として好きにして欲しい・・・。
「あ。いいよう、もっと犯してぇ・・・。」
たまらなくなって机の一番上の引き出しからバイブを出した。それは以前二度ほどプレイしたガチブトの兄貴から記念にプレゼントしてもらったやつだ。
ピンクのシリコンの亀頭をたっぷりとしゃぶる。まるであの男の本物のチンポのように、心を込めて下をねっとりと絡ませた。本物だったらもっとなま暖かくて味も美味しいはずなのに。
ベッドに四つん這いになる。わざとお尻を突き上げてみる。そしてバイブをあてがうとねじり込ませるように入れ始める。
「ああ・・・。」
思わず洩れる高い声。
アナルバイブでない、普通のバイブはいきなり入る筈はない。しかし、押し込み、無理矢理拡げながらもカリまでなんとかはいるとあとは楽だ。
「あ・・・入った・・・。」
クッ、とカリをアナルが包むようにくわえ込む。あとはゆっくり奥まで挿入だ。
少しずつ入り込むバイブのチンポ。息を吐きながらゆっくりとくわえ込む。
「んん・・・。」
大きく息を吐いた。そしてその場で細かく揺り動かす。
腸がぐにぐにと蠢いた。変な感じ。
下半身素っ裸で四つん這いになって異物挿入している姿誰かに見られたら・・・恥ずかしいなあ・・・。
そんなことを考えていると何故かチンポの先からツツーッと先走りが出てきた。シーツに染みになるが気にしていられない。
そしてゆっくりと挿入開始だ。ゆっくりと抜き、グンとつく。抜くときも入れるときも気持ち良い。思わず声が漏れて、幸久はだんだんその感触に夢中になっていくのだ。
アナルオナニーは大好きだった。自分のアナルが実は出すだけでなく、入れることもできるなんてびっくりだがそれで感じてしまうのもすごい。
「あん・・ああ・・・いい、もっと犯して・・・もっと虐めて・・・。」
あの冷たい目で見下され、汚い言葉で罵られたい。放尿を強要され、恥ずかしい格好をとらされて、みんなの前で射精したい。
マゾ犬として・・・あんなご主人様にお仕えしたい。
幸久の妄想は膨らむばかりだ。
縛られ、ケツにバイブ突っ込まれたまま上から学生服を来て学校に行く。写真を撮られてネット調教される。
ああ・・・俺のケツマンあの人に捧げたい。
ケツにバイブくわえたまま仰向けになって大きく足を拡げた。そしてスイッチを入れる。ブブブ・・・という鈍いモーター音が響く。
「ああ・・・。」
ぐりんぐりん回り始めたバイブで腸がかき回される。
たまんねえよ、バイブじゃなくって・・・。
「誰かホントのチンポで俺のケツマンかき回してくれよ・・・。」
切なく喘いだ。
「あ、でる・・・でる・・・ザーメン、ザーメン出る、チンボからエロカルピス発射したいよー・・・いく・・・。」
ぐい、と尻を上げる。目をぎゅっと閉じる。頬をシーツにこすりつけながらチンポを扱いた。グジュグジュと濡れた感触が助平で。
「あ・・・。」
想像の中のあの男がぐいぐいと虐めてくる。
「あ、チンポでおれ、壊して・・・。」
そして射精した。
幸久の部屋は一階の奥。昔、ばあちゃんが使っていた部屋でベッドと机をおいたら結構狭い。
そのオナニーをした晩はレンタルCDをMDにタビングしていた。アムロのアルバムで、別に好きでなかったけれどほかに借りるものがなかったので借りた程度だった。
そうこうしているうちなんだか急に腹が減ったのでコンビニに出かけたのだ。
歩いて2分のコンビニ。そのガラス越しに明々とともる建物の中にいる人間を見て幸久は思わず足を止めた。
あ・・・。
そこにいたのは昼間のあの男だ。
どうしようか。
一瞬ためらったが、向こうだって幸久を覚えているはずがない。ほんの数十秒顔を合わせた程度だ。
知らんぷりしてよう。幸久はその重いガラス戸を開けた。
コンビニというのは大体店の作りを決めているらしい。
入ってすぐは雑誌売り場。ここで立ち読みする客をみて外にいる人間が「あ、このコンビニって流行っているんだ。」と思う。弁当売り場はレジの向こう、飲み物はレジの向かい側。こうして店全体を一周させることで様々な商品を目に付くよう、工夫させている。
というのは先月見たテレビでやっていたことだ。
幸久はいつもなら雑誌のコーナーで今日出た雑誌を粗方チェックして、それから缶コーヒー、今は某コーヒー会社のブラック。そしてデザートか腹が減ったらおにぎりかラーメンを買って帰るのだが。
今日は店員の前を通って真っ直ぐにサンドイッチ売り場に行った。
結構気に入っていたローストビーフのサンドイッチは売り切れていて、しょうがないのでツナサンド。だけれどずっと背中の向こう、雑誌売り場ばかりが気になっていた。
そこには、彼がいる。
用事もないのに缶コーヒー売り場から雑誌の方を覗いてみた。ヤツは自動車雑誌をパラパラとめくっていた。
こんな時間なのに仕事帰りなのだろうか、ジーパンと皮のジャンパーだが足下は汚れた作業靴だ。無表情でつまらなさそうに雑誌を開いては閉じ、そして棚に返す。
あんまりみると気が付かれる。
気が付いて欲しいのと気が付いて欲しくないのと両天秤に載っている感じだった。心は彼に振り向いて欲しくなかった。しかし、足がそっちに向く。
やべえよ。
幸久はそう思いながら彼の隣に右手に立っていつもは読まない週刊誌を取ってみた。左半身が熱い気がする。彼の息づかいまで聞こえてきそうなほど緊張している自分。
パラパラと、とめくって違う雑誌に代える。それを2回繰り返した。心臓がばくばく言って張り裂けそうだ。自分のもらす息までも彼に聞こえるんじゃないか、と息を止める。
そしてちらっと彼をみた。
細い目で通った鼻筋が格好良いと思った。しっかりと下顎も太い首も、そして思ったより薄い唇も。
ドクン、と心臓が大きく鳴った。と同時にムクムクッと自分のジーパンの中で立ち上がっていくモノ。
薄いナイロンコートを着ているから外から見られることはない。だけれどコンビニで勃起させているなんて知られたら・・・。そう考えると一層興奮してしまう自分がいる。
「・・・どうした。たっちまったのか。」
それは突然だった。男は顔色変えず雑誌から目も上げずにそう言ったのだ。
聞き間違い、と最初は思った。しかし、男は雑誌をぱたんと閉めると元の場所に返し。
「こんな所で勃起させてんだろう。」
今度はこっちを向いてニヤッと笑い、幸久にそう言ったのだ。
「ありがとうございました。」
いつもは全く気にならないマニュアル通りの接客態度の店員の声が異常に耳に付く。
男はセブンスターと歯ブラシを買って先に外に出た。幸久に来い、と顎でしゃくる。
幸久の家の方向に歩いていく。話することなく、ずっと男のあとをついていった。男は振り向かない。革ジャンの背中がごつごつしていてもうむしゃぶりつきたくなるほど格好良かった。
路地を入って中華料理屋の裏手を曲がると幸久の家の裏の公園に着く。まさか・・・。そしてそのまさか。
「・・・脱げ。」
男の命令は完結だ。余計なことは言わない。
「・・・ここでは・・・出来ないよ・・。」
「うるせえ。なんなら親に聞こえるようにやろうか。」
・・・それだけは勘弁だ。
幸久は自分の家をちらっとみたが全ての明かりが消え、公演に面した自分の部屋の窓が閉まっているのを確認した。すぐにジーパンに手をかけてボタンとファスナーを下ろし、ずらす。
早春の寒い空気にそれが熱くそそり立つ。こんな寒い日の野外は初めてだった。
「勃起したモノ、出せ。」
言いなりだった。サクラの木の下にもたれパンツをずらす。
「へっ、どすけべチンポが。」
そうして男が幸久のチンポを握った。寒さで縮上がる、と思っていた物はあまりの興奮に固さも大きさもいつも通りだ。たまらず幸久の指が男のジーパンに延びる。男のモノも狭いジーパンの中で勃起していて布越しにその固さと大きさを確認してみる。
・・・おっきい・・・。
幸久はうっとりとそこを手のひらで包み込む。
「・・・チンポ好きか?」
男が耳元でささやく。それは甘い囁きでなく、あくまで見下した、下卑た笑いを含んで。
「・・・あ・・・好き・・・。」
そして男のファスナーを下ろした。男は抵抗しない。ジジッ、とかすかに耳に付く音がエロティックだ。
そして手を突っ込んで男のモノを出す。固くて太い砲身が勢いよく飛び出した。
「すげーオナニーだったじゃねーか。」
「・・・聞こえてたの?」
「聞いたんだよ。チンポ好きか?」
男の指が軽く幸久のモノを扱き始めた。幸久は腰を突き出し目を閉じてコクッと頷く。
「自分で言え。」
「あ・・・僕はチンポが好き・・です。」
「・・・今日のおかずはなんだ?えらい盛り上がってたじゃねえか。」
あんたに犯されるの想像しながら・・・とはさすがの幸久も言えない。
「どうした?このスケベなケツマンとろけさせてたんだろう。」
「・・・そんな・・・ケツマンだなんて・・・。」
「んじゃなんだ?ここは誰かに慰めてもらってんのか?」
男の指が幸久の尻たぶを分け入り、すぼまりをつんつんとつつく。
「あ・・・。」
「入れる喜び知ったアナルはケツマンっていうんだよ。」
男の指が一本奥まではいった。足を拡げ尻を付きだした格好で幸久はその指を感じている。
「んん、もうあんまりすると・・・。」
「嬉しくってエロカルピスでちゃうか?どうせだったらこの先の運動公園でやンなきゃな。あそこならお前みたいなエロいヤツいっぱいだからチンポはめ込んだ姿見てくれるさ。」
男の攻めは容赦がない。
「じゃあお前が大好きなチンポ、しゃぶれ。」
幸久はそこにしゃがみ込み、口を大きく開ける。でかい。口いっぱいに包み込むそのチンポは並の大きさではなかった。今まで味わったどのチンポより大きくてそそり立っている。先走りもたっぷり垂れていて陰毛で鼻先をくすぐられながらのどの奥まで吸い込んだ。
そして舌を絡める。口の中から出して横からはむ様にしゃぶる。ピチャッという音が響いた。
独特の匂いのする陰毛の奥に舌をのばして袋を舐めた。そして両手はそれを離さない。
「・・・うめえじゃねえか。見かけによらずエロいぜ。」
「・・・ん・・・。」
そしてコートのボタンを外しセーターの中に指を入れる。そして自分で乳首をいじり始めた。勃起した乳首はこりこりと充血して触っただけて疼いてしまう。
「ねえ・・・ここで?」
男がニヤッと笑う。
「何処でしたい?」
「・・・俺んち・・・すぐそこだから・・・鍵開けるから入ってきて。」
家では両親が寝ているだろう。窓から進入しているところを見られて警察沙汰になる可能性だってあるわけだ。だけれど幸久にとってはそんなことはどうでもいいわけで、今一番大切なのはこの身体のうずきだ。
やりたい。このおっきいのが欲しい・・・。
「待ってて・・・すぐに開けるから。」
そして下半身裸のまま男に唇を重ねた。男のキスは煙草の匂いがした。
男の名前は「内田庸介」と言うらしい。自己紹介なんて興味なさそうに、入ってくるとさっさと脱ぎ始めた。暫く前までいたから部屋はそんなに寒くない。
「幸久ッてんだ・・・。」
男に唇をしゃぶられながら幸久は名乗った。何故だろう、ちゃんと自分を告げたかったのだ。
男の腕が幸久の足をすくう。ベッドは揺れるとぎしぎしうるさいから床に布団と毛布を下ろした。邪魔なものは全部脇に寄せている。汚いけど関係ない。
開いた足の間に庸介が指を這わせる。愛撫ではない。ただ単にそこを探しているのだ。アリの戸渡りをゆっくりと降りてアナルに到達する。そこを見つけると庸介は指でくにくにともみほぐす。
「昼にバイブくわえてたのはどこだ?」
わかってるくせに。しかし庸介はもむばかりで入っては来ない。
幸久は自分で自分のものを扱き始めた。声が漏れないように歯を食いしばり体をねじった。早く来て・・・と指に押しつけるが庸介は知らんぷりだ。
「だから、昼間ッからバイブくわえてないと我慢できない恥知らずな穴はどれだ?」
「・・・それ・・・。」
「それじゃねえだろう。なんてんだ?」
「・・・アナル・・・。」
「そうだよなあ。幸久はアナルにバイブ入れられないと身体が疼いて仕方ないんだよなあ。」
庸介が耳元で吐息混じりに恥ずかしい言葉を並べる。
「入れられると喜ぶアナルをなんていった?」
「・・・ケツマン」
そしてご褒美だ、とばかりに指を一本入れる。そして小刻みに振動させた。
「ああ・・・っ。」
思わず声が漏れる。扱いていた手を払われて自分で出来ないように右手を押さえつけられた。
「いるのか?」
「え?」
「男だよ。彼氏だろうがヤリフレだろうが。」
いない・・・と首を横に振る。そしてその言葉はあまりにも自然にすっと出た。
「・・・あんたがいい・・・。」
庸介はさすがにやや驚いたようだったがすぐに鼻で笑う。
「まだ突っ込んでもないのにもう決定か?」
「俺・・・あんたに死ぬほど犯されたい気分。こんな事滅多にないけど・・・。」
そうだろうな。そうして庸介が自分のものを扱き幸久を四つん這いにさせる。形のいいすべすべした尻の肌を少し楽しんでいたが袋の陰毛を引っ張った。
「アウッ。」
「いい顔だ。覚えとけ。俺はな。」
ゴムを付けるとそこにあてがう。
まだ十分ほぐされていないところ。もちろん、幸久のそこは男を入れられるのが好きだし、昼もバイブで拡げている。しかしそれでも庸介のはでかいのだ。
「ぐあ・・・。」
声が出ないようにシーツを噛んだ。括約筋が伸びきる。足の指先までビリビリくるほどの緊張感。
「お前みたいな可愛い顔が歪むの見るのが好きなんだよ。」
「んぐぅっ。」
庸介のでかいのが無理矢理ねじり込まれる。ズンと鈍い痛みが走った。体を固くして声が漏れないようにするのが必死だ。
「んん・・・んん・・・。」
「安心しろ、切れてねえ。へっ・・・いい顔するじゃねえか。」
この痛みは知らない訳じゃないけれどここまでのは知らない。
きっつう・・・。
そしてズンと突き上げられた。内蔵が全部出る感じがする。それをゆっくりと繰り返すうちに幸久のそこが少しずつなれてくる。それと同時にわき上がる違う感触。
「あふ・・・ん・・・あ・・・。」
一回しぼんだものがもう一度ムクムクッと起きてきた。尻を突き出しいっぱいに広がったアナルでそれをくわえ込んでいる。力一杯捕まれた腰を前後に揺すられると前立腺にあたってチンポがウズウズしてくるのだ。
「だめえ・・・あん、あ・・・。」
聞こえないように声を押し殺す分腰の動きが激しくなっていく。自分のものを扱き、乳首をいじる。息が止まりそうな感覚。
セックスって言うより・・・。
今までやってきたセックスがお遊びみたいな気がした。セックスではない、完全に精神的にこの男には「犬」にまで成り下がってしまいそうなほどの被虐を感じた。
「あ・・・俺・・マゾになっちゃいそう・・・。」
脇に付かれた太い腕に頬をすり寄せた。シーツに自分のチンポをスリスリと擦りつける。舌を伸ばし濃い腕の体毛に絡める。汗と何か他の匂いがした。
「お願い・・・もうダメ、いっちゃう、ああ・・・。」
「はえーぞ。ソーローかあ?。」
「違うよ、でも・・・あん、ああ・・・もういっちゃう出ちゃう・・・はあんっ・・・。」
庸介が片足を後ろからすくってベッドにかけた。犬がオシッコするときの格好になる。そしてガンガン突き立てた。
「おら、いけやっ、エロカルピス出せっ・・・。」
「あうっ・・・出るッ出ちゃう。あん・・・見てて、出すとこ見てて・・・。」
そして身体震わしキュウッとアナルを締め付けた。ぐちょぐちょのチンポを扱き腰を動かす。
淫らであさましい姿だった。ビュビュッと白い液を力一杯に振り絞る。プルプルしたゼリー状のザーメンがベッドの縁を汚す。それがねっとりと降りていく。
庸介はそのザーメンを人差し指ですくった。それを幸久の口元に持っていく。
幸久は何も抵抗することなくチュウチュウとそれを吸った。タンパク質臭い雄汁が口いっぱいに広がる。
「お尻のなか・・・また入ってる・・・。」
庸介のものはまだ果てることなく幸久のアナルを突き刺していた。庸介が幸久の両乳首をぐりぐりといじる。
「俺はこれからだな。」
そしてあの笑み。軽く腰を揺するとまだ立っているものが腹の中かき回した。
3
裏の公園は市の緑化事業の一環で行われた公園だからブランコがあるとか滑り台がある訳ではない。
沢山の木が植樹されていてベンチがいくつかあった。夏には子供達がラジオ体操をし、セミを捕りに回る、そんな公園だ。
公園の工事は3日で済んだ。三日目は早く帰った幸久は窓からその工事の様子をずっと見ていた。
「危険・立入禁止」の区画の中で庸介は他の仲間と一緒に仕事をしていた。ユンボにのって土砂を移動させ、掘ったところを埋めていく作業だ。
作業服に黄色いヘルメット。仕事中は他の仲間と普通に話し、時々笑い声も聞こえる。
・・・まるで違う人みたいだ。
幸久は窓辺に椅子を持ってきて本格的に座った。
あの晩、庸介はあのあといって、そのあともう一回幸久を行かして自分もいった。
今日も・・・ケツいてえ。
庸介のものの大きさは馬並で、今日になってもまだ痛む。昨日はもっと非道かった。学校の固い椅子に急に座るとずきん、と鈍くいたんだ。体育休みたかったが男とセックスしてケツ痛くて休みました、なんて言えない。無理矢理やったが地獄だ。
昨夜は来なかった。今夜は・・・来るのかな。
そして向こうの庸介がちらっとこっちを見る。その目は冷たい。
思わず急いで窓とカーテンを閉めた。部屋が薄暗くなる。
なんだよ、あの目。まるで俺を汚いものみたいにみて。部屋にやってきて犯しまくったのはそっちだったしコンビニでナンパしてきたのもそっちだったし・・・・
あいつも結局一回限りか。そしてジージャンと鞄を拾った。塾の時間なのだ。
塾は夜の九時までだ。
どうせ地元の工業高校生なんだから受験には不利なのは充分わかっている。幸久の学校なんて一般受験でどんなに頑張っても三流の私大。ずっと一番をキープして工学部の推薦狙い以外は道がない。その成績は幸久の頭だったらたやすいことだ。何しろ40人のクラスが一年たったら35人に減っていたような学校なのだ。
それでも塾に通っているのは幸久の頭が工学部向けでないからだ。機械科なんて面白くない。これでも中学までは将来は通訳希望だったのだ。
通訳が無理ってわかったのは・・・いつだったっけ。
それでも塾の黒板をみてノートを取る。学校の授業とは全く比べようのない高い内容。カツカツと黒板を走るチョーク。
でも、な・・・。
工業高校に来たのはただ単に私立に失敗して公立の受験に熱が出たから。二次募集がここしかなかった。それだけだ。
一年の時、あまりのギャップにやめようかと思っていたが少しずつ身体は慣れてくる。男臭い教室、下品な落書き、ガラの悪い友達。夏休みのはいる頃には友人達と夜遊びも覚えた。
それがだ。
遊び仲間の兄貴の友人。名前も忘れた。「いいバイトがある」といわれて行ったのが「シャブリ屋」のバイトだ。本番なしのゲイ相手の援助交際。
それは今思い出しても最悪。整髪料臭い中年の粗チンしゃぶって1万円。マジ?って思った。薄々自分は男が好きかなって思ってたから経験したいっていう焦りもあった。
変わったのは二人目の客だ。
職業運送屋勤務という岡田という男は幸久をとにかく丁寧に「虐めて」くれたのだ。
幸久がまだ高校生で未経験に近い、と知ると決して無理はせず、そのくせじんわりと責めたのだ。綿ロープで両手両脚を縛られ猿ぐつわをされた。一応本番なしだから本番まではしなかったけれどそれ以外は全部岡田が丁寧に教えてくれた。関係は何回続いたか・・・割と長く彼は幸久に連絡とってその度に付き合っていた。
バーで遊ぶのも彼が教えてくれたことだ。
妻帯者の岡田は幸久を特別愛してる、というわけではなかったみたいだし幸久もそんなに気持が入っていたわけではない。そのころはちょっと片思いの人もいたし、男なんて勝手なものだ。結局、幸久を「開発」する楽しさだけが彼の目的で、幸久もそれで良かったと思っている。
壇上では塾の講師が英文を訳し、板書している。回りはみんな普通高校の学生で工業高校の学生は幸久くらいだ。
岡田はやや背は低いがガタイのしっかりした頼れる兄貴って感じで。
そのチョークの音を聞きながら何となく庸介を思いだした。
その店は最初は岡田が連れてきてくれた店だ。
繁華街から一本入ったところにある女性の入店禁止のゲイバー。小じゃれたドアを開けると失恋して髭剃った店長が迎えてくれる。
「あらー、チャム、久しぶり。」
小さく手を振るとオネエの店長がおしぼりと灰皿を差し出す。
「何、まだ学生やってんの?」
「ども。」
ジージャン姿の鞄持った塾帰りの姿でバーに入っていくのもどうかと思ったが何となく今日は家に帰りたくなかったのだ。じっと自分の部屋で庸介を待っている自分もいやだった。
「酎レモン。」
そうしてスツールに座ろうと腰を下ろす。すると
「おい。」
と、隣の男が幸久に声をかけた。おっと座る前からナンパ?・・・ハイハイ、と営業スマイルで幸久がにっこり笑ってそっちを向くと。
「うわっ。」
よく知った20代後半の男が神妙な顔つきでシッと人差し指を口にあてがう。いつもかけている眼鏡は外していて一瞬誰かわからなかったけれどすぐにわかった。
「・・・こんな所で会う顔じゃないだろ。」
幸久の言葉にそれはこっちの台詞だ、と男は苦笑いする。
「教え子とここで会うとはね。」
古典教師の津川がウィスキーを傾け、嫌みっぽくいった。
ゲイバーってのは変な空間だ。生徒と教師でも「ゲイ」であることを隠さなくていいという看板があれば一緒に酒を飲むことも出来る。勿論、それは津川がある程度の開き直りと寛容さを持って、幸久も学校はただの「証書」もらうところだと割り切っているからだが。
「やっぱり津川せんせってそうだったの?」
「何。噂になってる?」
「いや・・・俺が勝手に思ってただけ。」
「同類はわかるか?」
津川がいたずらっぽく笑った。年の割になんだか子供っぽい。黒いセーターとジーパンというラフな格好も初めて見た。
「・・・下田先輩と一回車載ってたの見ました。」
下田とは一度この店で鉢合わせしたことがある。岡田と一緒の時だ。
「下田かあ。見られてたのかあ。」
そしてグラスを傾けて氷をからんとならした。
「桜井は?今日は一人か。」
「いつも一人です。」
「ふーん。」
そして幸久をじろじろと見る。
「そうして酒なんて飲んでたら生徒じゃないみたいだ。」
「・・・別に。関係ないでしょう。」
まるで他人事みたいな言い方だがその言葉の奥に「先生の前で酒なんて飲んでんじゃねえ」というニュアンスを拾ってちょっとむかつく。しかし津川はそのむっとした顔さえも楽しそうに見ていた。学校ではごく普通の教師なのだが、こういう場所のせいかちょっと生態が違う。
「あ、今度図書室来いよ。」
「何でですか。」
「・・・別に話するくらいいいだろ。」
そんなに拒否するなよ、と津川が楽しそうに片眉をつり上げた。
津川は二年の時の古典の担当で教師にしては感覚が若いというかナチュラルなヤツで、体育の教師みたいにもう頭から押さえつけよう、と構えていることもなく年寄りみたいにびくびくしていない。幸久は別に教師に叱られるような生徒ではないが、やんちゃなグループの奴らも津川には手を出さなかった。傍目から見ててもそう言う生徒との距離の取り方がうまいのだ。
あ、ゲイだとしたらもてるだろうな。
下田と二人で車に乗っていたのを見たときも同じ事考えたな、と幸久は締まって滑らかな顎のラインを見ながら思った。
「いっとっけど・・・しませんから。」
生徒に手を出すのはかまわないけれどそれが原因でトラブルが自分に降ってくるのは勘弁。ちょっとした自己防衛。
ン?と津川がわからない顔をする。もう一回言うのはやや気恥ずかしくて声は小さく、早口になった。
「いっとっけど先生はタイプじゃないよ。」
津川はそんな幸久をじっと見ていたがそのうちぷっと吹き出すとげらげら笑いだしたのだ。
「な・・・笑うなよ。」
自分の顔がちょっと赤いのが自分でもわかる。
「お前、ゲイバーであうヤツ全員とするわけじゃないだろう。大体自分が一人だからって俺も一人って決めつけんな。」
ちょうどその時からん、とドアが開いた。タイミングばっちり、と津川が呟く。
「よう。」
そして津川が体をねじり、入ってきたヤツに手を挙げた。少し髪が長くて格好良い・・・そう・・・この人。
「遅かったな。下田がおそいせいで俺は会いたくないタイプの客にあった。」
「ごめん、ちょっと友達に捕まってて。」
そして人目もはばからずチュッとキスする。ちら、と下田が幸久に視線を投げた。
なに?津川先生と下田先輩って・・・続いてンの?
下田大地は津川の向こうに座るとビールを注文する。その様子を見ながら感心したような驚いたような、意外というか当然というか。
「・・・その・・・付きあっテンスか?」
工業高校では上下関係第一。先輩には頭低く腰低く。大地はそこで初めて自分の後輩かも知れない、と気が付いたようだ。堅苦しいのいいよと手を振り、幸久の質問にはいや、と笑うとマスターに酌してもらいきゅっと飲み干した。
「俺達、愛し合ってるように見える?」
「あ・・・いえ・・・でも・・・。」
下田の笑顔は優しい。津川と一緒に並んでいると雑誌にでてくる仲良しカップルみたいだがちょっとした仕草に二人の間にひかれた微妙なラインも見え隠れする。
「彼氏・・・いるんですか、先輩。」
「ん。」
横から津川が長すぎ、とチャチャ入れる。酎レモン口に含んで二人をじっと見ていた。
「あのなあ、桜井。」
それはちょっと不思議な間があった。津川が何かを言おうとした時、下田が煙草をくわえ先生、火、ちょうだいと肩をつつく。すると津川がジーンズのポケットからジッポを出してさりげなく火を付けた。少し肩を丸めて煙草に火を付ける大地とそれを受け止める津川。そこだけ切り取った一枚の写真のように格好良くて綺麗だと思った。
「身体と気持は一致しないことだってあるさ。好きでなくてもやっちゃえるのが男ってもんだ。」
「それは・・・俺もわかるけど。」
「身体と気持が一致したとしたらそれはな。」
そしてその下田の煙草を奪うと自分のものにしてしまった。あーあ、と下田はもう一本くわえ、自分で火を付ける。
「恋愛ってんだ。遊びじゃなくなっちまうだろ?」
家に付いたときは11時をまわっていた。家中の灯りが落ちてしんとしている。
受験に失敗してから家族との関係が少しおかしくなった気がする。もしかしたら幸久自身、たった一度の失敗に対する後ろめたさを未だに引っ張っているのかも知れない。塾から帰るのに家族起きていると苦手だった。何度か引き返して全員寝たのを待っていたときもある。
なーにやってんだろう。
結局今日は津川がいたせいで男の収穫ゼロ。
・・・ホントは・・・来たかな。
庸介が来たんじゃないか、忘れたくてバーに行ったのに帰って来るとそればかりが気になった。部屋に入って灯りをつける。昨日一昨日下ろしたままの布団はまだ庸介の名残がうっすらと感じられた。そして布団に突っ伏すと庸介がいた辺りをくんくんとかいでみる。
当然匂いなんて残ってない。でもここに彼がいた、という事実は確かだ。
からだときもちがいっちしたられんあい。
そうかもな。幸久は泣きたくなっていた。俺、もしかしたらあの変態鬼畜に恋してるかも。だって会いたくて抱かれたい。あの人に心も体も満たして欲しい。そして満たしてあげたい。こんなに誰かを死ぬほどに求めるのは初めてだった。
「庸介・・・ようくん・・・ようちゃん。」
なんで今夜塾なんて行ったんだろう、ウソついて休めば良かった、だってもしかしたら来てくれてたかもしれないのに。バカだった。工事も終わったから向こうから会いに来てくれない限りもう会えない。幸久は庸介の連絡先も知らないし、会社に電話して聞いたら迷惑がられるかも知れないし・・・迷惑がられるのが怖い。嫌われたくない。
起きあがり窓を開けてみた。整地もすっかり整って公園はきれいになっている。二人の関係は後腐れない関係だったって言いたげに。
その時。
公園のベンチに誰かが座っていた。見間違うはずない、あの背中。
「あ・・・庸介・・・さん。」
革ジャンに手を突っ込んで庸介が立ちあがった。
庸介の愛車は夜目にも解るほどにボロいマークⅡだった。塗装の剥げた鈍いシルバーのシャシにどこかの神社の古ぼけたお守り。埃と汗の匂いのするシート。庸介そのまんまだ。
そのマークⅡは家から15分程走ると、郊外にある貯水槽のそばの土手で止まった。
庸介はエンジンをかけたときからシートベルトなんてしてなくって、また幸久に何処に行くとも何も言わなかった。窓を閉めたまんま平気で煙草を吸い、短くなると窓を開けてポイ捨てしてしまう。。・・・ものすごい態度だ、と幸久は正直驚いた。
庸介は一言もあの場所で待っていた、とも会いたかったともいわなかった。呆然と公園を見ている幸久を見上げて当然付いてくるだろう、という顔して「来い」と顎でしゃくって誘ったのだ。本当にそれだけで、それについて行ってきた自分もどうかと思う。だけれど断るはずがない。だって、庸介に会いたかったのは自分だったのだから家族が起きないようにスニーカーを持ってきて、そして窓から飛び降りた。がさっと言う音がスリリングだった。幸久が降りたのを確認すると庸介は背中を向けてさっさと早足で行ってしまう。スニーカーに足を突っ込みながら闇の中待って、といえず必死で心ばかり急いて。
そう。スリリング。この人と出会うとスリリングで気分も高まる。
「や・・・こんな所でやるのかよ・・・」
車を止めると首を左右に傾けゆっくりと近づいてくる。
「盛った目ぇして物欲しそうだからな。」
そして庸介は幸久の身体の上にのってきたのだ。
シートベルトして、ドアには鍵がかかって、シートでがっちりと覆われている身体が抵抗できても逃げることはできない。その抵抗だってとりあえず「たしなみ」でやっただけで「ダメ」と言った瞬間、太股の筋肉が緩んで触りやすいようにちょっと腰を浮かせたのだ。
「カー・・・セックス?人に見られたらどうすんの?」
「そん時はアヘアヘいってケツの奥まで見せてやんだよ。」
そして静かにしろ、と低く吐き捨てた。
シートベルトを外してジーンズをおろす。闇の中ガラスが鏡になって痴態が歪んで移っている。今夜はちょっと暖かいや。そんなこと考えながらちら、と横目で庸介を見てみた。
庸介も黙ってごそごそとしていたがすぐに下半身裸になった。表情までは暗くて見えない。だけれど彼はこんな行為に慣れているのか落ち着き払ったものだ。。
・・・マジでこんなの初めてなんだけどなあ・・・。
何度も窓の外を見た。滅多に車がその辺りを通る気配はない。が。
「マジでちょっと怖い・・・。」
誰かに見つかって警察にでも通報されたら。それだけが心配だった。しかし自分のそれはキンキンに固くなって裏筋もくっきりと現れているのが自分でも解った。自分でそっと手を当ててゆっくりと扱く。ツプッと先走りが垂れた。
「しゃぶれ」
その命令のまま幸久は庸介の股間にそっと顔を埋めた。鼻先に男臭い匂いがむわっと漂った。その匂いをくんくんかぐ。男臭い匂いだ。カーセックスも初めてならこんな汚いところも初めて。初めて尽くしで変な気分だ。まるで初めてセックスしたときの事を思い出させる。
始めは両手をついて体を支えていたがシートを利用して体制を整えると片手を外した。そしてその手を自分のアナルに伸ばす。
自分で自分のアナルのすぼまりをつんつんとつついてみた。庸介の張りのある固い巨根が口を、そして自分の指が自分の感じやすいアナルを刺激する。上の口と下の口ってヤツ・・・一回・・・乱交もいいかも。気分はどんどん盛り上がってきて幸久は舌をいっぱいに動かす。
「人に見られたくなかったら俺をさっさと気持ちよくしろ。」
くわえたままコクッと頷いた。口端から涎が漏れる。美味しいのと大きすぎるのでだらだらと涎が出てダメなのだ。
「本当、お前、美味そうにシャブリやがる。」
「ん・・・美味しい・・・庸介さんのオチンポ美味しいです。」
自然、敬語で「家来」のように跪いているのだ。あー、マゾだなあ・・・と自分の事思いながら裏筋に唇を当てわざとジュルッと音立てた。
「・・・ん。」
感じてる。庸介さん、感じてる。少しずつ攻め立てる気分も乗ってくる。彼の太股の内側や膝の辺りを軽く撫でた。毛深いすね毛が指先に当たって割と好きな感触だ。
「ねえ、気持ち良い?」
奥までくわえ込むと口をやや締めて上下に動かす。喉の奥の粘膜でこする。庸介の太い指が幸久の髪に絡んだ。
「くっ・・・。」
呻いてその髪をぐいと引っ張り股間から引き離す。もういきそうになったのだろう。肩で息して我慢しているのが幸久にも解った。
「・・・飲ませてよ。」
その時、脇を一台、車が通った。車内の二人の姿がライトに照らされて、その瞬間幸久はわざと静かに薄く笑ったのだ。
「飲ませてよ。飲みたい。」
庸介の顔はよく見えなかった。ただ、いつも通りのふてぶてしい態度なのは解る。そう。どんなに手練手管を使ってもどうでもいいというこの態度がたまらないのだ。
「・・・淫売か?」
「なれって言うなら淫売になる。専用の便所にだってなれる気がする。」
庸介は顔色変えない。しかし何もできなさそうなお坊ちゃんの幸久の意外な言葉に庸介の様子が一瞬ひるんだ。そうだ、ここを突っ切れ。突っ切ってこの人をものにしろ。もう一人の幸久が脳裏で叫んだ。
「俺、あんたに染まりたい。」
多分、庸介が人に見られるのをいやがったり、対面を気にしたり、・・・・例えばもてるためにもっと良い車に乗っていたりしたらこんな気持にはならなかったはずだ。
今までのヤツみんなそうだ。好かれたくて一生懸命自分を演技する。強い男を気取った根性なし。何も知らないくせにちょっと読んだ知識ひけらかして気分覚めさしたヤツ。今までそんなヤツばかりだった。そして出会った始めの頃には必ずそんな部分しか見えず、付き合っているうちに結局「違うな・・・。」という気分に必ず陥る自分。彼氏が要らないのでもない。セフレで良いんじゃない、みんなセフレにしかならなかった。
この人は・・・違う。
そうはっきり解る。
「お願い・・・したいんだよ・・・。」
そして自分のシートを倒した。フロントガラスがまるでカメラみたいで異常な気分をもり立てるのだ。ゆっくりと大きく脚を開いた。そして闇の中自分で自分のものを扱き始める。自分の持っている全部のいやらしさで彼をものにしたいと思った。
「あ・・・お願い・・・んん・・・。」
庸介がじっと見ていた。あの小さな目がこのいやらしい姿をじっと見ている。窓を覆うものもない。そう。覗かれても・・・しょうがない。
脚をM字開脚して脚をダッシュボードの上に載せる。冷たいガラスが足先に触れた。
「ああん、あ、あ・・・。」
ガラスの向こうから第三者に見られているかも知れないと言うスリリングが幸久の欲望に火を付けた。シャツをめくって自分で乳首をいじる。庸介の指がアナルに伸びてきた。
「はあん、お願い・・・します、入れて下さいィッ。」
先走りが大量に出てぐちょぐちょといやらしい音立てた。
「ああん?もうケツマンとろけ始めたのか?」
蔑む口調に幸久の背中がゾクゾクしてしまう。こういう、直球ストレートな虐められ方、好き。
「お願い、庸介さんのでとろとろのケツマンかき混ぜてっ。」
「足りねえな。俺の犬にでも便所にでもなるっていうんならこんなもんじゃないだろ?オラオラ、俺は身体の隅までチンポ好きじゃなきゃあな。」
そしていきなり指が二本入ってくる。一昨日のプレイでまだちょっとケツが痛いけどそれでもこれは「我慢」できた。
「ああ・・・入ってくるぅ・・・。」
「キュッと締めろ。」
言われたとおり括約筋に力入れてみる。
「もっと・・・できっだろう。そうだ・・・そうそう。ケツの穴緩ましてんじゃねえぞ。ちゃんと鍛えとけ。」
「はい・・・。」
その返事に庸介は満足そうに笑うとダッシュボードを開ける。そして中から赤いベルベットの箱を出した。
「何・・・。」
「黙ってろ。」
そして中からローションを出してアナルに垂らす。冷たい液体にキュッと尻の筋肉が締まった。
「使ったことあるだろう。おもちゃだよ、ただのおもちゃ。」
そして取り出したのは大きめのパールが5つ、つながっているものだった。先には指を引っかける金具が付いている。
「脚抱えとけ。」
そして一個ずつ入れていく。バイブやローターは使ったことあるけれどこういうのは初めてだ。少年特有のすべすべでむっちりとした脚、毛の生えていないアナル。そして淫らにてらてらと濡れているチンポ。
そして最後の一個を入れるとぐい、ッと奥まで押し込んだ。
「アアッ!!」
直腸に鈍く感じた感触。そして庸介はぐにぐにと動かす。
「やだ・・・やめて・・・。」
「犬だろう。文句いってんじゃねえ。」
「だって・・・あ、お腹変だもの・・・。」
「出して欲しいのか?あん?」
「あ・・・や・・・。」
解っている。あの瞬間。
庸介が金具に指を通した。そしてゆっくりと抜き始める。そして一個目のパールが引っかかった感触を楽しみ始めたのだ。
「あ・・・だめ・・・。」
「ケツ、締めろ。さっきみたいに。」
「いやだ、ダメ、ゆっくりしてっ!!」
「うるせえ。俺のやり方たっぷり身体に教えてやるよ。しっかり締めろ。」
そしてビシッと力一杯尻をひっぱたいた。
「あああーーーっ!!」
そして腹から叫んだ瞬間、それを力一杯に引き抜いたのだ。
内側から拡げられ、体内のものを引き出される感触。快感と言うより気持ち悪い。しかし、幸久はその感じと同時に身体全体をぶるっと震わせると射精してしまったのだ。
プリプリとしたゼリー状のものが大量に飛びちった。自分の顔まで飛んできたそれ。若く、青い匂いを漂わせて幸久の頬を流れる。
「庸介さん・・・。」
肩で息しながら落ち着きを取り戻すし、見られてないか心配になって辺りを見た。窓が全部真っ白になっている。そっかー、頑張るから熱がいっぱい出て真っ白になるのか。あー、理科みたい。
庸介はニヤッと笑うと幸久の頬に唇を寄せる。そして付いていたザーメンをしゃぶり取った。
「・・・良いの?」
「黙ってろ。」
そしてゆっくりと耳たぶ、首筋を舐める。最後に唇を重ねてきた。
たばこ臭い、今までで一番不味いキスだった。もしも、客だったら即刻キャンセルさしてもらっただろう。だけど、今の幸久にはどうでも良かった。このたばこ臭いキスは「ご主人様」からの「犬」としてのお許しだから。
「次は俺だな。」
庸介が耳元でささやく。コクッと頷いて庸介の股間にそびえ立つその肉棒をそっと握りしめた。
カーセックスって・・・悪くない。
幸久は倒した運転席に仰向けになった庸介の上を跨ぐように乗った。膝や脚にハンドルやら何かしら当たって窮屈で、サイドブレーキは邪魔でしょうがない。
それでもそんなことかまわず庸介のものを手で扱く。胸がドキドキして自分のものもギンギンに立ってさきっぽからツツッと涎が出た。キンタマがキュッと吊り上がる感じ。ああ、やりたい・・・と半分うっとりしながらもう片方の手でぐちょぐちょ言う自分のチンポを確かめた。
今すぐにでもむしゃぶりつきたいのだが今の体勢だと狭くて流石にフェラチオは出来ないので一緒に倒れ込み首筋にキスした。やっぱり汗くさい。その匂いにくらくらする。
「ね・・・これ入れていい?」
庸介は無言だが幸久の尻を軽くつかみ浮かせる。尻をつかんだ手がちょっと痛い。
そして庸介が自分のものに入れやすい様に手を添えた。
騎乗位はあまりしたことがないけれど、さっきパールで一回ほぐれているから入りやすいだろう。背中を丸め庸介の脇に手をつく。大きく膝を開き、入れやすい角度を探してくねる腰がまるで誘っているようだった。
「はあ・・・あん・・・。」
鼻にかかった濡れた声が車内に響く。庸介のものをめり込ませるように埋めながら幸久は少しずつ腰を沈めていった。やっぱり太い。さっきのパールなんてただの余興で少しずつ鈍い痛みの様なものを伴って広がっていく。
「すごい・・・おっきい・・・。」
のどの奥から出た声はまるで女みたいな声だった。その太いのでケツマンかき混ぜられる快感に身体が期待していた。
一昨日の名残を感じながら尻を埋めていった。浅く息を吸い、力を抜く。内部を押し広げながらもカリまで入ると後は深い所まで誘導するだけだ。
「腰上下に振って見ろ。」
言われたとおりに尻を動かす。出るときに締め付けながら、腹の中に当たる鈍い感触を感じていた。
「あ・・・ああ・・・。」
それは半分快感、半分我慢。暗闇の中、うっすらと見える庸介の視線が自分を貫いていた。見られている、と感じた瞬間幸久のチンポの先からヨガリ汁が流れた。それを掬うと庸介はぺろっと舐める。
「もお・・・すごい・・・。」
その瞬間、庸介が腰をぐい、と上げた。大砲が体の中を一発駆けめぐる。
「アアッ。」
シートをぎゅっと握った。痛みではない、知った快感が体中を走る。突き上げはぐいっぐいっと律動的に続いた。
「ああ、突いてる、いいとこついてるよ・・・。」
その快感を逃さまいと肩にも腹にも力を入れた。生はやっぱりすごい。今は汚れることはないと思うけれど、病気は気になる。でもこんな時に病気の事なんて考えられない。何故か庸介を信じていた。
その律動に合わせて尻を上下に揺らす。髪を掻き上げ真っ白の窓をじっと見つめていた。時折車のライトが照らし、去っていく。ギシギシと揺れるマークⅡまで誰か気にするだろうか。そっと窓の向こうを見つめてみる。
見るんなら見れば?
「ああん、すごい、もっとぉ・・・。」
突き上げを感じながら腹の底から喘いだ。
誰かに見られるならそれも素敵だ。そっと聞き耳立てる奴がいれば聞けばいい。この庸介にガンガンに突き上げられながら感じるこの瞬間は覗いている奴らには判らない。自分だけが感じる最高の悦楽。
そう考えれば誰かが覗いている気もする。車が揺れているのは自分でも判った。もっと揺らしてやる。幸久は激しく腰を振った。
「もおだめ、いっちゃいそう・・・。」
切れ切れに高い声で訴えた。その声に庸介がウッ、と唸って一層突き上げる。
そうして自分のものに手をあてがって激しく前後させた。庸介の息づかいが生々しく聞こえた。でっぷりとした下腹にペチペチとチンポが当たる。
「あ、いく・・・いくいく・・・エロカルピス出ちゃうぅ。」
わざと使う汚い言葉は幸久自身を刺激する。
「アアッ。」
そして下腹をぎゅっと締めて体いっぱいに射精した。ハァハァと肩で息して目を閉じる。しかしラストはまだだった。
最後に庸介ががつんと一発撃ち込んでぶるっと体を震わせた。熱いものが体内でほとばしり、入れたまんまのアナルから漏れだした。
「このエロ猿。」
庸介は大きく息を吐くとそういい捨てる。その言葉の奥には何か冷たいものではない何かを感じた。それが何かはまだ子供の幸久には判らなかった。ただ、涙が出そうになるほどその声が熱い気がしたのだ。
「連絡先教えてよ。」
ん・・・と庸介は重い返事をする。
下半身裸のまま庸介の膝に倒れ込んでいた。ちょっと寒い気がするけれど離れる気は更々ない。サイドブレーキが脇腹に当たっているのを感じが2人の間柄を邪魔しているモノみたいな気がした。
庸介もまた下半身裸のままシートだけを元に戻して煙草を吸っていた。
窓は白くなくなっていて、だいぶ外が見えるようになっている。まるで事が終わった、と知らせているみたいで変だと思って、幸久は庸介の膝からフロントガラスを見上げながらくすっと笑った。
「今春休みなんだ・・・もっと会いたいな。・・・迷惑?」
「いや。」
そして庸介はまた煙草を大きく吸った。空いた手が時々幸久の髪に触れる。
言葉は決して優しくないが指先は優しいと思った。毛むくじゃらの膝に手を置いてもさもさした感触を楽しんでみる。
「庸介・・・さんって呼んでいい?」
「勝手にしろ。」
「んじゃようちゃん。」
「よおちゃん?」
鼻先でバカにしたような返事だがやめろとはいわない。幸久はそっと体を起こした。
「ダメ?」
しかし庸介は苦笑いしているだけだ。
「好きにしろ。呼び方なんてどうでもいい。」
「俺・・・チャム。そう呼ばれると楽なんだ。」
判ったとも何とも返事せず庸介は幸久の頬に親指を這わせた。幸久はそれをイエスと取った。そしてそっと目を閉じる。なんだか泣きたくなったので泣いた。ここはずっと探していた自分の居場所のような気がしたのだ。
よそよそしい家族。何をしているか判らない学校。ただの通りすがりの男達。そんなものから死んでも得ることの出来なかった一番欲しかったものがこのマークⅡの中にあった。
「・・・昔・・・ちょっと年少に入ってたことがあってよ。」
庸介は驚くような過去をなんでもないことのように漏らした。
「・・・何やったの。」
「どうでもいいじゃねえか。大したことじゃねえや、殺人はしてねえけどよ。そこでチャムみたいな奴がいたな。」
チャム、と呼んでくれたことが切ないくらい嬉しくて、でもその口から知らない奴の話題が出てそっと太股を握る。
「そいつと・・・出来てたんだ。」
「いや。」
「好きだった?」
「いや・・・。」
「じゃあなんで。」
「死んだんだ。」
幸久は突然の言葉に思わず下から庸介を見上げた。ギリッ、と歯を噛んだ。
「それだけだ。マジで。ただ・・・何となく思い出しただけだ。」
死んだ、と言う言葉が鈍く響く。
「そいつににてた?」
「いや。」
言ってることが無茶苦茶だ。庸介は起きろ、と命令した。本当はもっとくっついていたかったのだが言われるままに体を起こす。庸介は大きな体をかがませてハンドルの下からパンツを拾い脚を通しはじめた。
時計を見るともう夜中の1時を回っている。幸久も下半身に寒さを感じて脱ぎ散らかしたものを手探りで探す。
その時だった。
トントン、と窓ガラスをノックする音が聞こえて2人は同時に助手席の窓を見た。誰かが見ていた。流石に幸久はびっくりして声にならない声を上げたと思う。よく見ると夜中なのに警察官が窓越しに見ていた。
ドア越しに「あけるよー」と間の抜けた声がした。やべえ。
ドアロックしていなかった。ガチャッとドアが開いて冷たい空気が侵入してくる。幸久は何とかして上手い口実を考えようとしたが所詮子供の考えることだ、パニクるばかりで何一つ思い浮かばない。
自分が下半身裸。庸介もまだパンツ上げたところだった。
「こんな時間にこんな所で何やってんの?」
「別に。見りゃわかるだろう。」
庸介が堂々と面倒くさそうに言う。そして警察が要るにも関わらずチノパンを拾い上げると脚を通していた。それは「用事があるなら付いていくぜ。」という態度にも見える。逃げようとしない。
幸久は逃げたいようなでも逃げられないような状況にあたふたしていた。
警官の目が幸久に向けられる。そして上から下までじろじろと見て「パンツ履きなさい」と小さく言った。
「君・・・高校生?何年?」
「あ・・・二年。」
庸介がふうーっとため息付いた。そのため息の理由が幸久にはよくわからなかった。
「そういうのって淫行になるの判ってる?」
「・・・。」
「とにかく一回警察暑まで来てくれる?車のナンバーも全部控えたから。」
来てくれる、と言う口調だけど本当は来いッて事だ。
庸介は「さっさとジーパンはいとけ。」と低く呟いた。その時、闇の中でほんの少しすまなそうに笑った気がした。
とにかく夜中に男とセックスした事で春休みなのに呼び出されて下された処分が反省文一枚ですんだのはきっとこの学校がその程度のことで処分していたら生徒数が半分以下に落ちてしまうからだろう。
図書室で原稿用紙目の前にして頬杖を付きながら幸久はぼうっと窓の外を見ていた。
今日一日、図書室で反省文書いて、それを提出して先生に謝って一通りの儀式は終わる。
図書室の思いドアが開いた。入ってきたのは津川だった。黙ってこっちに近づいてくる。
昨夜飲み屋で会ったばっかりなのに。
「・・・どうも。」
軽く頭下げてみた。津川は隣に座ると原稿用紙を覗いた。
「まだ真っ白か。」
「・・・すいません。」
そして笑いもせずに幸久の顔をじっと見た。
「バカが。」
「はい。」
返す言葉もない。
迎えに来た父親は口も聞かず、帰りのタクシーの中でも幸久を見ようともしなかった。何となく何かに限界を感じた。庸介は多分書類送検だろう、と言うことではあったが警官は「強姦か和姦か」ばかりを聞いてきた。「強姦ではないです。」と小さな声で告げたときは恥ずかしさと同じくらい悔しかった。
「・・・まあお前はこの学校にしてはまじめな生徒って事になってるから。」
「・・・。」
そして原稿用紙をつんつんとつついた。書け、と言うことだろう。
「・・・反省する事なんてない。」
「書かなきゃ一生図書室だ。」
「それでも良いです。」
津川は黙ってみていたが背もたれにもたれ脚を組んだ。
「ばーか。だからガキだって言うんだ。」
その言葉は仕方ねえガキだ、と大人が子供を笑う言葉だった。みんな大人なんだ。庸介も津川も父親も。
「さっさとかいとけ。ウソバッカでいいさ。誰も作文一枚で反省したとは思うはずないしな。」
「・・・それが教師の言うことですか。」
「俺は教師でなくゲイとして言ってンだ。せっかくの春休み、反省文程度でつぶす事はないだろう?」
この人は本当に何考えてんだろう。
幸久はシャーペンを取った。そして原稿用紙の頭に「反省文」と書き込んだのだ。
「手ぇ止めずに答えろよ。奴はどうだった?」
聞かれてべらべら答える事じゃないよ。無視してどっかで読んだような言葉を並べる。
「・・・好きだったのか?」
思わず手を止めた。そしてコクッと頷いてまたシャーペンを走らせる。
「若いってのはいいね。俺ももうオッサンだ。」
「大地先輩と仲良しじゃないっすか。」
「下田はセフレだよセフレ。あいつはちゃんと彼氏がいるっての。」
「先生も作れば。」
津川が何?と笑った。なんだか楽しそうだ。
「彼氏をか?良いねえ、そういうのも。春だしな。」
まるで他人事みたいに言う。だけれど幸久にはその向こうにちょっと違うものを感じた。それが何かはわからなかったけれど、この人もホントは結構大変なんじゃないか、と子供心に心配してしまったりしたのだ。
反省文を出したら今日は自宅謹慎と言うことだ。
来月からも学校行きたくないなあ。ベッドに寝っ転がってぼうっと考える。
春休みと自宅謹慎は全然違う。毎日の行動を記録して、基本的に外出禁止だ。先生も時々やってくる。そして夏休みだろうが春休みだろうが自宅謹慎になった理由はどこからともなく漏れてうわさ話になる。ケンカして相手をボコッて立てなくして謹慎になった奴のときも休んだ午前中にはその理由を全員知っていた。幸久の自宅謹慎の理由はケンカなんて日常茶飯事でなくて男相手の淫行だからみんな面白がるに違いない。最悪、近所の人たちも知ってたりして。
こうなったら何でも悪い方に考えてしまう。石って本当に投げられるんだろか、なんて思ったりして。
今日は塾も休みだな。寝返り打ってため息付いた。リビングの電話が鳴っていた。それに応答する声がして、暫くして台所から誰かがこっちにやってくる足音が聞こえた。母親が自宅謹慎守って出ていかないようにずっといるのだ。その足音は部屋のドアの前で止まる。
「相手の人会社クビになったって。」
それだけ怒った口調で事務的に伝えるとまた台所に戻っていく。
ウソだろう・・・。
その時初めて事の大きさを感じて幸久はシーツをぎっとつかんだ。
6
気が付くと裏の公園の桜が咲いていた。
夜になると空気はひんやり冷えるがそんなことお構いなしにずっと窓を開けて公園を見ていた。
桜の花は満開ではなく、五分咲きという感じだろうか。そして咲くと綺麗だけれど散っていくのも早い。春の夜空は曇っていて星は見えなかった。
庸介が会社を首になった。自分のせいで。
幸久の頭の中には不思議と両親に対して、とか自分の未来への心配なんてなかった。ただ庸介がクビになったことだけが幸久の心をさいなんでいる。
終わった後さっさとパンツはいとけば良かったんだ。いや・・・警察が来たときに「高校生」だと言わなければ良かった。でも高校生って言わなくても名前言えば調べられて終わるか。
なんで俺高校生やってんだろう。考えていけばそんなことまで悔やまれた。
堂々巡りの悩みと不安は幸久一人が解決するには難しすぎる。
考えてたって仕方ない。どっか行こう。
家を出るとき、その様子を両親は見て見ない振りをした。本当は自宅謹慎中だから外出禁止なのだが男とセックスして警察に捕まった息子の顔なんて見たくないみたいだ。学校の奴と会うのは幸久が怖い。
スニーカーを履いて外に出る。行き先はないからコンビニくらいしか思いつかない。金は持っていなかったけれどとにかくどこかに行くことが大事だった。
庸介と会ったコンビニは煌々と輝いていて目が痛いくらいだ。
庸介の働いていた建設会社に電話して、住んでいるところとか電話番号とか聞いて、そして連絡取って・・・。
だけどその会社に電話するって言うのが高い壁だ。名前聞かれたらどうしよう・・・。ばれたら「ああ、あのホモの相手か」と勘ぐられて陰で笑われて・・・。
・・・転校しよう。
両親はなんて言うか判らないけれどどうせ入りたくなかった学校だし、どこか・・・遠い学校に行こう。学校でなくっても良い。そして?
そしてどうしよう。
バカな考えには結論なんて出ない。判っているのは庸介に会えなくなりそうと言うことで、でも会いたいと言うことだけ。
何も買わず、店内を一周して外に出た。そしてまた暗闇の中を歩いていく。何となく玄関でなく公園に回った。そして庸介が立っていた場所に立ってみる。
会おう。何とかして庸介さんにあって、きっちりと片付けよう。こんなに自分をぐちゃぐちゃにする奴。身体も心ももうぐちゃぐちゃだ。もう今までの自分とは違っていた。将来ずっと一緒にいる自信はない。だけど、庸介以上にもっと心揺さぶる相手と会えるとも限らない。決めた。そうしよう。
そして戻って玄関から入ろうと公園を出た、その時。
シルバーのマークⅡが前を通った。何故だろうすぐに判った。同じ車で違う人、とも思ったけれど絶対に庸介だという確信があった。
車は前方20メートル先でウィンカーも上げずに急ブレーキで止まった。焦っていたみたいだ。
庸介さんだっ。
幸久は走った。たった20メートル、体育の100メートル走よりも全速で走った。そして車の側に立つと屈んで窓の中を覗く。ガラスを拳でどんどんたたいた。庸介はただこっちを見ているだけで、肩で息する幸久に、キーロックはしてない、と顎でしゃくる。
幸久はもどかしく助手席のドアに手をかけた。そして何も言わず勝手に乗り込んでバタン、とドアを閉める。
「庸介さん・・・っ。」
抱きつこうと思ったが抱きつけなかった。
抱きつく前に庸介が幸久の髪をつかんで引き寄せたのだ。そして呟いた。
「意味わかってんのか?」
怒ってる。当然だ。自分のせいで会社をクビになったのだ。
こんな事で差別したくないけど、でもやっぱり庸介は少年院上がりだからいろいろと面倒なことが多いのだろう。庸介は何も悪くないのだ。
「ごめん、俺のせいで・・・ごめんなさい。謝りたかった・・。」
それは心からの謝罪だった。どう償えばいいのか判らない。だけれど自分の「本当」を知って欲しい、と思ったのだ。それには本心から謝る以外にはない。が、庸介の返事は想像していたものとは違っていた。
「そういう意味じゃねえ。俺はここを通ったのは全くの偶然だ。」
庸介はぎっと歯を噛む。煙草のヤニの匂いがした。
「・・・。」
「なんでてめーはいる。なんでたった数秒、俺がここを通る間に会うんだ?」
そんなこと聞かれても判らない。
「どうする。」
「どうするって?」
「来週引っ越す。来るか。」
「どうしたの・・・。」
「一緒にくるか、こねえか。今決めろ。」
そんな無茶な。
庸介はそのつかんだ髪を引き寄せて荒々しくキスした。汗とヤニ。なのに泣けそうなのはどうしてだろうか。
「こうなったら一緒に来い。」
「うん。」
返事はとっさだった。
「俺はきついぞ。」
「だと思う。」
こんなにさっさと決めちゃって良いんだろうか・・・家出して来いって言ってんだぞ。全部捨てて来いって・・・庸介はそういう生活になれているから平気かも知れないけれど幸久が家を出ると言うことは家族も学校も捨てる、と言うことだ。
そんなことも思ってみたが庸介はその間にウィンカー出して道路に戻る。
「何処行くの?」
「とりあえずホテルだ。・・・ポリ公に会いたくねーからな。」
庸介は興奮すると幸久を叩く趣味があるようだった。
「しっかりケツ振れやっ。」
そのぶっといものをガンガン突き立てながら太股をパンッと叩いた。叩かれる度に歯を食いしばり、痛みに耐える泣きそうな声で訴えるのだがけっして「やめて」とは言わなかった。言えなかったのだ。口にはパンツが詰められていて、両手は浴衣の紐で後ろ手にぎちぎちに縛られていた。「文句言うな、抵抗するな」という意志の現れだろうか。
呻き、涙が流れるほど痛みに耐え、それでも叩かれた部分が熱くなっていく。幸久の小柄な身体なんて庸介から見たら子供と一緒だろう。まるで赤ちゃんがオシッコするみたいに後ろから抱えられて両脚を大きく開いたままそのチンポがアナルを攻め立てる。
アンアンと喘ぐねっとりとしたセックスではない。「食べられている」感じのセックスに幸久は庸介の体にもたれうっとりとしていた。
壊れそう・・・。
壊れそうなほどにきついセックス、なんでこんなに良いんだろう。触れられるところ、舐められるところ、全部気持ち良い。痛みが快感になるんじゃない。我慢しているうちに「崇高感」を感じるのだ。
「自分で動いてみろ。」
浴衣紐が外された。前に屈んで両手をついて一生懸命に尻を前後にくねられた。太いものがぐにぐにと直腸をかき混ぜた。
「絶対に来いよ。」
そしてもう一発力一杯バンッと尻を叩く。何発目だろう。ひりひりと痛くて熱くてぽうっとしてしまう。
「ったくよお、この俺がてめーみたいなガキにいかれちまってよ。」
そして奥まで入ったまんま力任せに仰向けにすると両脚をつかんで開いた。真ん中で勃起している幸久のチンポを指先で弾く。その鋭い痛みにアウッと体をねじり、やめて、と顔を横に振る。
口の中に詰められたものを庸介の太い指が引き抜く。大きく息を吸おうとしたとき庸介がキスしてきた。シャワー浴びたときに歯も磨いたのだろう、さっきよりはましだ。
「よおちゃん・・・よおちゃんっ・・・」
たくましい肩に腕をまわす。腹の中をかき回す感じはまるで体の中に違う動物が暴れているみたいだった。
「いく、いっちゃう・・・」
自分で自分のものを扱く。庸介の汗がぼたっと幸久の額に落ちた。濡れた庸介の肌が当たって冷たい。
「いくぅ・・・。」
そして庸介が一番奥でグッと体を止めて震わせたとき、幸久も射精した。どろりとした暖かい粘液が肌と肌でこすれてねちゃねちゃした。
「べとべとになっちゃったよ・・・」
庸介が鼻で息を吐いた。ずるっと抜けたそれと同時にザーメンがどろっと出る。何回経験してもあまり気持ち良い感触ではないけれどそれでも庸介のものが出てしまうことにはちょっともったいない気もした。ティッシュを取ってアナルに当て、体を起こすとだらだらとそれが流れ出た。
そして同じように股間をティッシュで拭いている庸介の背中にそっと頭をくっつけてみる。
「絶対・・・いく。」
ん・・・と庸介が低く返事した。
ばいばい、今までの俺。
心の中でそっと呟いてみた。
「まだ寝てねえのか。」
暗闇の中、布団に潜り込んだ幸久の為に少しずれてスペースを空けると庸介は枕元の煙草を探した。
「いろいろ思い出しちゃって。」
「・・・帰りてえのか?」
庸介は二言目には「帰りたいか?」と聞く。本格的に縛られて直腸洗浄されて一晩中バイブ突っ込まされたときも、知らない男達と乱交パーティー初めてしたときも。だけど幸久はずっと首を横に振り続けていた。幸久がそういうのが結構嫌いじゃないことを庸介は身体でどんどん暴いていく。
「よおちゃんは俺が帰った方がいい?」
「お前の好きにしたらいいさ。」
来いって言ったのは自分のくせに。幸久は右手を伸ばして庸介の腹からゆっくり手を差し入れた。
「盛りやがって。」
「だって、好きなんだもの。」
「・・・エロ猿」
「好きなんだよ。よおちゃん、しよう。」
身体と気持が一致したら恋愛ってんだ。
誰が言ったんだろう。口を開けて庸介のものをしゃぶりながら思い出そうとしていた。
目を閉じ、口を開く。舌を一杯に伸ばし袋からチンポの先まで指と口で美味しく頬張っていた。
庸介は幸久を連れて全然知らない土地に来た。そこで慣れたふうに職探して、ない間はパチンコ行って。幸久はすぐに怪しげな雑貨店にアルバイトが決まった。暫くしたら庸介も就職できて生活が落ち着いたのは最近だ。
男2人の生活って合宿というか何というか、自分たちは夫婦という感じではない。パートナーでもない。ただ同じ空間に暮らしているだけだ。それでも幸久は幸せだし、庸介もそんな幸久を見ている。
愛と欲が幸久を支配していた。世の中、それ以外は全部くず。この充実した気持は何にも代えることが出来ない。
あの日、自分は生まれ変わったのだと思う。上手くいかなくなった人生、一回リセットしたって良いだろう?そしてリセットされた幸久に残っていたもの・・・それが庸介の全てを受け入れ彼の所有物として生きていきたいという思いとそれによって肉体を沈めて欲しいと言うことだ。
「・・・もうすぐ桜が咲くな。」
フェラチオされているのに庸介が呟いた。もうすぐ一年になる。
「・・・今度は外でやるか。」
幸久はそれを頬張ったまま頷く。そして口を離すと庸介のフェラチオで勃起したでかいチンポにそっとキスをした。
終わり
入ってすぐは雑誌売り場。ここで立ち読みする客をみて外にいる人間が「あ、このコンビニって流行っているんだ。」と思う。弁当売り場はレジの向こう、飲み物はレジの向かい側。こうして店全体を一周させることで様々な商品を目に付くよう、工夫させている。
というのは先月見たテレビでやっていたことだ。
幸久はいつもなら雑誌のコーナーで今日出た雑誌を粗方チェックして、それから缶コーヒー、今は某コーヒー会社のブラック。そしてデザートか腹が減ったらおにぎりかラーメンを買って帰るのだが。
今日は店員の前を通って真っ直ぐにサンドイッチ売り場に行った。
結構気に入っていたローストビーフのサンドイッチは売り切れていて、しょうがないのでツナサンド。だけれどずっと背中の向こう、雑誌売り場ばかりが気になっていた。
そこには、彼がいる。
用事もないのに缶コーヒー売り場から雑誌の方を覗いてみた。ヤツは自動車雑誌をパラパラとめくっていた。
こんな時間なのに仕事帰りなのだろうか、ジーパンと皮のジャンパーだが足下は汚れた作業靴だ。無表情でつまらなさそうに雑誌を開いては閉じ、そして棚に返す。
あんまりみると気が付かれる。
気が付いて欲しいのと気が付いて欲しくないのと両天秤に載っている感じだった。心は彼に振り向いて欲しくなかった。しかし、足がそっちに向く。
やべえよ。
幸久はそう思いながら彼の隣に右手に立っていつもは読まない週刊誌を取ってみた。左半身が熱い気がする。彼の息づかいまで聞こえてきそうなほど緊張している自分。
パラパラと、とめくって違う雑誌に代える。それを2回繰り返した。心臓がばくばく言って張り裂けそうだ。自分のもらす息までも彼に聞こえるんじゃないか、と息を止める。
そしてちらっと彼をみた。
細い目で通った鼻筋が格好良いと思った。しっかりと下顎も太い首も、そして思ったより薄い唇も。
ドクン、と心臓が大きく鳴った。と同時にムクムクッと自分のジーパンの中で立ち上がっていくモノ。
薄いナイロンコートを着ているから外から見られることはない。だけれどコンビニで勃起させているなんて知られたら・・・。そう考えると一層興奮してしまう自分がいる。
「・・・どうした。たっちまったのか。」
それは突然だった。男は顔色変えず雑誌から目も上げずにそう言ったのだ。
聞き間違い、と最初は思った。しかし、男は雑誌をぱたんと閉めると元の場所に返し。
「こんな所で勃起させてんだろう。」
今度はこっちを向いてニヤッと笑い、幸久にそう言ったのだ。
「ありがとうございました。」
いつもは全く気にならないマニュアル通りの接客態度の店員の声が異常に耳に付く。
男はセブンスターと歯ブラシを買って先に外に出た。幸久に来い、と顎でしゃくる。
幸久の家の方向に歩いていく。話することなく、ずっと男のあとをついていった。男は振り向かない。革ジャンの背中がごつごつしていてもうむしゃぶりつきたくなるほど格好良かった。
路地を入って中華料理屋の裏手を曲がると幸久の家の裏の公園に着く。まさか・・・。そしてそのまさか。
「・・・脱げ。」
男の命令は完結だ。余計なことは言わない。
「・・・ここでは・・・出来ないよ・・。」
「うるせえ。なんなら親に聞こえるようにやろうか。」
・・・それだけは勘弁だ。
幸久は自分の家をちらっとみたが全ての明かりが消え、公演に面した自分の部屋の窓が閉まっているのを確認した。すぐにジーパンに手をかけてボタンとファスナーを下ろし、ずらす。
早春の寒い空気にそれが熱くそそり立つ。こんな寒い日の野外は初めてだった。
「勃起したモノ、出せ。」
言いなりだった。サクラの木の下にもたれパンツをずらす。
「へっ、どすけべチンポが。」
そうして男が幸久のチンポを握った。寒さで縮上がる、と思っていた物はあまりの興奮に固さも大きさもいつも通りだ。たまらず幸久の指が男のジーパンに延びる。男のモノも狭いジーパンの中で勃起していて布越しにその固さと大きさを確認してみる。
・・・おっきい・・・。
幸久はうっとりとそこを手のひらで包み込む。
「・・・チンポ好きか?」
男が耳元でささやく。それは甘い囁きでなく、あくまで見下した、下卑た笑いを含んで。
「・・・あ・・・好き・・・。」
そして男のファスナーを下ろした。男は抵抗しない。ジジッ、とかすかに耳に付く音がエロティックだ。
そして手を突っ込んで男のモノを出す。固くて太い砲身が勢いよく飛び出した。
「すげーオナニーだったじゃねーか。」
「・・・聞こえてたの?」
「聞いたんだよ。チンポ好きか?」
男の指が軽く幸久のモノを扱き始めた。幸久は腰を突き出し目を閉じてコクッと頷く。
「自分で言え。」
「あ・・・僕はチンポが好き・・です。」
「・・・今日のおかずはなんだ?えらい盛り上がってたじゃねえか。」
あんたに犯されるの想像しながら・・・とはさすがの幸久も言えない。
「どうした?このスケベなケツマンとろけさせてたんだろう。」
「・・・そんな・・・ケツマンだなんて・・・。」
「んじゃなんだ?ここは誰かに慰めてもらってんのか?」
男の指が幸久の尻たぶを分け入り、すぼまりをつんつんとつつく。
「あ・・・。」
「入れる喜び知ったアナルはケツマンっていうんだよ。」
男の指が一本奥まではいった。足を拡げ尻を付きだした格好で幸久はその指を感じている。
「んん、もうあんまりすると・・・。」
「嬉しくってエロカルピスでちゃうか?どうせだったらこの先の運動公園でやンなきゃな。あそこならお前みたいなエロいヤツいっぱいだからチンポはめ込んだ姿見てくれるさ。」
男の攻めは容赦がない。
「じゃあお前が大好きなチンポ、しゃぶれ。」
幸久はそこにしゃがみ込み、口を大きく開ける。でかい。口いっぱいに包み込むそのチンポは並の大きさではなかった。今まで味わったどのチンポより大きくてそそり立っている。先走りもたっぷり垂れていて陰毛で鼻先をくすぐられながらのどの奥まで吸い込んだ。
そして舌を絡める。口の中から出して横からはむ様にしゃぶる。ピチャッという音が響いた。
独特の匂いのする陰毛の奥に舌をのばして袋を舐めた。そして両手はそれを離さない。
「・・・うめえじゃねえか。見かけによらずエロいぜ。」
「・・・ん・・・。」
そしてコートのボタンを外しセーターの中に指を入れる。そして自分で乳首をいじり始めた。勃起した乳首はこりこりと充血して触っただけて疼いてしまう。
「ねえ・・・ここで?」
男がニヤッと笑う。
「何処でしたい?」
「・・・俺んち・・・すぐそこだから・・・鍵開けるから入ってきて。」
家では両親が寝ているだろう。窓から進入しているところを見られて警察沙汰になる可能性だってあるわけだ。だけれど幸久にとってはそんなことはどうでもいいわけで、今一番大切なのはこの身体のうずきだ。
やりたい。このおっきいのが欲しい・・・。
「待ってて・・・すぐに開けるから。」
そして下半身裸のまま男に唇を重ねた。男のキスは煙草の匂いがした。
男の名前は「内田庸介」と言うらしい。自己紹介なんて興味なさそうに、入ってくるとさっさと脱ぎ始めた。暫く前までいたから部屋はそんなに寒くない。
「幸久ッてんだ・・・。」
男に唇をしゃぶられながら幸久は名乗った。何故だろう、ちゃんと自分を告げたかったのだ。
男の腕が幸久の足をすくう。ベッドは揺れるとぎしぎしうるさいから床に布団と毛布を下ろした。邪魔なものは全部脇に寄せている。汚いけど関係ない。
開いた足の間に庸介が指を這わせる。愛撫ではない。ただ単にそこを探しているのだ。アリの戸渡りをゆっくりと降りてアナルに到達する。そこを見つけると庸介は指でくにくにともみほぐす。
「昼にバイブくわえてたのはどこだ?」
わかってるくせに。しかし庸介はもむばかりで入っては来ない。
幸久は自分で自分のものを扱き始めた。声が漏れないように歯を食いしばり体をねじった。早く来て・・・と指に押しつけるが庸介は知らんぷりだ。
「だから、昼間ッからバイブくわえてないと我慢できない恥知らずな穴はどれだ?」
「・・・それ・・・。」
「それじゃねえだろう。なんてんだ?」
「・・・アナル・・・。」
「そうだよなあ。幸久はアナルにバイブ入れられないと身体が疼いて仕方ないんだよなあ。」
庸介が耳元で吐息混じりに恥ずかしい言葉を並べる。
「入れられると喜ぶアナルをなんていった?」
「・・・ケツマン」
そしてご褒美だ、とばかりに指を一本入れる。そして小刻みに振動させた。
「ああ・・・っ。」
思わず声が漏れる。扱いていた手を払われて自分で出来ないように右手を押さえつけられた。
「いるのか?」
「え?」
「男だよ。彼氏だろうがヤリフレだろうが。」
いない・・・と首を横に振る。そしてその言葉はあまりにも自然にすっと出た。
「・・・あんたがいい・・・。」
庸介はさすがにやや驚いたようだったがすぐに鼻で笑う。
「まだ突っ込んでもないのにもう決定か?」
「俺・・・あんたに死ぬほど犯されたい気分。こんな事滅多にないけど・・・。」
そうだろうな。そうして庸介が自分のものを扱き幸久を四つん這いにさせる。形のいいすべすべした尻の肌を少し楽しんでいたが袋の陰毛を引っ張った。
「アウッ。」
「いい顔だ。覚えとけ。俺はな。」
ゴムを付けるとそこにあてがう。
まだ十分ほぐされていないところ。もちろん、幸久のそこは男を入れられるのが好きだし、昼もバイブで拡げている。しかしそれでも庸介のはでかいのだ。
「ぐあ・・・。」
声が出ないようにシーツを噛んだ。括約筋が伸びきる。足の指先までビリビリくるほどの緊張感。
「お前みたいな可愛い顔が歪むの見るのが好きなんだよ。」
「んぐぅっ。」
庸介のでかいのが無理矢理ねじり込まれる。ズンと鈍い痛みが走った。体を固くして声が漏れないようにするのが必死だ。
「んん・・・んん・・・。」
「安心しろ、切れてねえ。へっ・・・いい顔するじゃねえか。」
この痛みは知らない訳じゃないけれどここまでのは知らない。
きっつう・・・。
そしてズンと突き上げられた。内蔵が全部出る感じがする。それをゆっくりと繰り返すうちに幸久のそこが少しずつなれてくる。それと同時にわき上がる違う感触。
「あふ・・・ん・・・あ・・・。」
一回しぼんだものがもう一度ムクムクッと起きてきた。尻を突き出しいっぱいに広がったアナルでそれをくわえ込んでいる。力一杯捕まれた腰を前後に揺すられると前立腺にあたってチンポがウズウズしてくるのだ。
「だめえ・・・あん、あ・・・。」
聞こえないように声を押し殺す分腰の動きが激しくなっていく。自分のものを扱き、乳首をいじる。息が止まりそうな感覚。
セックスって言うより・・・。
今までやってきたセックスがお遊びみたいな気がした。セックスではない、完全に精神的にこの男には「犬」にまで成り下がってしまいそうなほどの被虐を感じた。
「あ・・・俺・・マゾになっちゃいそう・・・。」
脇に付かれた太い腕に頬をすり寄せた。シーツに自分のチンポをスリスリと擦りつける。舌を伸ばし濃い腕の体毛に絡める。汗と何か他の匂いがした。
「お願い・・・もうダメ、いっちゃう、ああ・・・。」
「はえーぞ。ソーローかあ?。」
「違うよ、でも・・・あん、ああ・・・もういっちゃう出ちゃう・・・はあんっ・・・。」
庸介が片足を後ろからすくってベッドにかけた。犬がオシッコするときの格好になる。そしてガンガン突き立てた。
「おら、いけやっ、エロカルピス出せっ・・・。」
「あうっ・・・出るッ出ちゃう。あん・・・見てて、出すとこ見てて・・・。」
そして身体震わしキュウッとアナルを締め付けた。ぐちょぐちょのチンポを扱き腰を動かす。
淫らであさましい姿だった。ビュビュッと白い液を力一杯に振り絞る。プルプルしたゼリー状のザーメンがベッドの縁を汚す。それがねっとりと降りていく。
庸介はそのザーメンを人差し指ですくった。それを幸久の口元に持っていく。
幸久は何も抵抗することなくチュウチュウとそれを吸った。タンパク質臭い雄汁が口いっぱいに広がる。
「お尻のなか・・・また入ってる・・・。」
庸介のものはまだ果てることなく幸久のアナルを突き刺していた。庸介が幸久の両乳首をぐりぐりといじる。
「俺はこれからだな。」
そしてあの笑み。軽く腰を揺するとまだ立っているものが腹の中かき回した。
3
裏の公園は市の緑化事業の一環で行われた公園だからブランコがあるとか滑り台がある訳ではない。
沢山の木が植樹されていてベンチがいくつかあった。夏には子供達がラジオ体操をし、セミを捕りに回る、そんな公園だ。
公園の工事は3日で済んだ。三日目は早く帰った幸久は窓からその工事の様子をずっと見ていた。
「危険・立入禁止」の区画の中で庸介は他の仲間と一緒に仕事をしていた。ユンボにのって土砂を移動させ、掘ったところを埋めていく作業だ。
作業服に黄色いヘルメット。仕事中は他の仲間と普通に話し、時々笑い声も聞こえる。
・・・まるで違う人みたいだ。
幸久は窓辺に椅子を持ってきて本格的に座った。
あの晩、庸介はあのあといって、そのあともう一回幸久を行かして自分もいった。
今日も・・・ケツいてえ。
庸介のものの大きさは馬並で、今日になってもまだ痛む。昨日はもっと非道かった。学校の固い椅子に急に座るとずきん、と鈍くいたんだ。体育休みたかったが男とセックスしてケツ痛くて休みました、なんて言えない。無理矢理やったが地獄だ。
昨夜は来なかった。今夜は・・・来るのかな。
そして向こうの庸介がちらっとこっちを見る。その目は冷たい。
思わず急いで窓とカーテンを閉めた。部屋が薄暗くなる。
なんだよ、あの目。まるで俺を汚いものみたいにみて。部屋にやってきて犯しまくったのはそっちだったしコンビニでナンパしてきたのもそっちだったし・・・・
あいつも結局一回限りか。そしてジージャンと鞄を拾った。塾の時間なのだ。
塾は夜の九時までだ。
どうせ地元の工業高校生なんだから受験には不利なのは充分わかっている。幸久の学校なんて一般受験でどんなに頑張っても三流の私大。ずっと一番をキープして工学部の推薦狙い以外は道がない。その成績は幸久の頭だったらたやすいことだ。何しろ40人のクラスが一年たったら35人に減っていたような学校なのだ。
それでも塾に通っているのは幸久の頭が工学部向けでないからだ。機械科なんて面白くない。これでも中学までは将来は通訳希望だったのだ。
通訳が無理ってわかったのは・・・いつだったっけ。
それでも塾の黒板をみてノートを取る。学校の授業とは全く比べようのない高い内容。カツカツと黒板を走るチョーク。
でも、な・・・。
工業高校に来たのはただ単に私立に失敗して公立の受験に熱が出たから。二次募集がここしかなかった。それだけだ。
一年の時、あまりのギャップにやめようかと思っていたが少しずつ身体は慣れてくる。男臭い教室、下品な落書き、ガラの悪い友達。夏休みのはいる頃には友人達と夜遊びも覚えた。
それがだ。
遊び仲間の兄貴の友人。名前も忘れた。「いいバイトがある」といわれて行ったのが「シャブリ屋」のバイトだ。本番なしのゲイ相手の援助交際。
それは今思い出しても最悪。整髪料臭い中年の粗チンしゃぶって1万円。マジ?って思った。薄々自分は男が好きかなって思ってたから経験したいっていう焦りもあった。
変わったのは二人目の客だ。
職業運送屋勤務という岡田という男は幸久をとにかく丁寧に「虐めて」くれたのだ。
幸久がまだ高校生で未経験に近い、と知ると決して無理はせず、そのくせじんわりと責めたのだ。綿ロープで両手両脚を縛られ猿ぐつわをされた。一応本番なしだから本番まではしなかったけれどそれ以外は全部岡田が丁寧に教えてくれた。関係は何回続いたか・・・割と長く彼は幸久に連絡とってその度に付き合っていた。
バーで遊ぶのも彼が教えてくれたことだ。
妻帯者の岡田は幸久を特別愛してる、というわけではなかったみたいだし幸久もそんなに気持が入っていたわけではない。そのころはちょっと片思いの人もいたし、男なんて勝手なものだ。結局、幸久を「開発」する楽しさだけが彼の目的で、幸久もそれで良かったと思っている。
壇上では塾の講師が英文を訳し、板書している。回りはみんな普通高校の学生で工業高校の学生は幸久くらいだ。
岡田はやや背は低いがガタイのしっかりした頼れる兄貴って感じで。
そのチョークの音を聞きながら何となく庸介を思いだした。
その店は最初は岡田が連れてきてくれた店だ。
繁華街から一本入ったところにある女性の入店禁止のゲイバー。小じゃれたドアを開けると失恋して髭剃った店長が迎えてくれる。
「あらー、チャム、久しぶり。」
小さく手を振るとオネエの店長がおしぼりと灰皿を差し出す。
「何、まだ学生やってんの?」
「ども。」
ジージャン姿の鞄持った塾帰りの姿でバーに入っていくのもどうかと思ったが何となく今日は家に帰りたくなかったのだ。じっと自分の部屋で庸介を待っている自分もいやだった。
「酎レモン。」
そうしてスツールに座ろうと腰を下ろす。すると
「おい。」
と、隣の男が幸久に声をかけた。おっと座る前からナンパ?・・・ハイハイ、と営業スマイルで幸久がにっこり笑ってそっちを向くと。
「うわっ。」
よく知った20代後半の男が神妙な顔つきでシッと人差し指を口にあてがう。いつもかけている眼鏡は外していて一瞬誰かわからなかったけれどすぐにわかった。
「・・・こんな所で会う顔じゃないだろ。」
幸久の言葉にそれはこっちの台詞だ、と男は苦笑いする。
「教え子とここで会うとはね。」
古典教師の津川がウィスキーを傾け、嫌みっぽくいった。
ゲイバーってのは変な空間だ。生徒と教師でも「ゲイ」であることを隠さなくていいという看板があれば一緒に酒を飲むことも出来る。勿論、それは津川がある程度の開き直りと寛容さを持って、幸久も学校はただの「証書」もらうところだと割り切っているからだが。
「やっぱり津川せんせってそうだったの?」
「何。噂になってる?」
「いや・・・俺が勝手に思ってただけ。」
「同類はわかるか?」
津川がいたずらっぽく笑った。年の割になんだか子供っぽい。黒いセーターとジーパンというラフな格好も初めて見た。
「・・・下田先輩と一回車載ってたの見ました。」
下田とは一度この店で鉢合わせしたことがある。岡田と一緒の時だ。
「下田かあ。見られてたのかあ。」
そしてグラスを傾けて氷をからんとならした。
「桜井は?今日は一人か。」
「いつも一人です。」
「ふーん。」
そして幸久をじろじろと見る。
「そうして酒なんて飲んでたら生徒じゃないみたいだ。」
「・・・別に。関係ないでしょう。」
まるで他人事みたいな言い方だがその言葉の奥に「先生の前で酒なんて飲んでんじゃねえ」というニュアンスを拾ってちょっとむかつく。しかし津川はそのむっとした顔さえも楽しそうに見ていた。学校ではごく普通の教師なのだが、こういう場所のせいかちょっと生態が違う。
「あ、今度図書室来いよ。」
「何でですか。」
「・・・別に話するくらいいいだろ。」
そんなに拒否するなよ、と津川が楽しそうに片眉をつり上げた。
津川は二年の時の古典の担当で教師にしては感覚が若いというかナチュラルなヤツで、体育の教師みたいにもう頭から押さえつけよう、と構えていることもなく年寄りみたいにびくびくしていない。幸久は別に教師に叱られるような生徒ではないが、やんちゃなグループの奴らも津川には手を出さなかった。傍目から見ててもそう言う生徒との距離の取り方がうまいのだ。
あ、ゲイだとしたらもてるだろうな。
下田と二人で車に乗っていたのを見たときも同じ事考えたな、と幸久は締まって滑らかな顎のラインを見ながら思った。
「いっとっけど・・・しませんから。」
生徒に手を出すのはかまわないけれどそれが原因でトラブルが自分に降ってくるのは勘弁。ちょっとした自己防衛。
ン?と津川がわからない顔をする。もう一回言うのはやや気恥ずかしくて声は小さく、早口になった。
「いっとっけど先生はタイプじゃないよ。」
津川はそんな幸久をじっと見ていたがそのうちぷっと吹き出すとげらげら笑いだしたのだ。
「な・・・笑うなよ。」
自分の顔がちょっと赤いのが自分でもわかる。
「お前、ゲイバーであうヤツ全員とするわけじゃないだろう。大体自分が一人だからって俺も一人って決めつけんな。」
ちょうどその時からん、とドアが開いた。タイミングばっちり、と津川が呟く。
「よう。」
そして津川が体をねじり、入ってきたヤツに手を挙げた。少し髪が長くて格好良い・・・そう・・・この人。
「遅かったな。下田がおそいせいで俺は会いたくないタイプの客にあった。」
「ごめん、ちょっと友達に捕まってて。」
そして人目もはばからずチュッとキスする。ちら、と下田が幸久に視線を投げた。
なに?津川先生と下田先輩って・・・続いてンの?
下田大地は津川の向こうに座るとビールを注文する。その様子を見ながら感心したような驚いたような、意外というか当然というか。
「・・・その・・・付きあっテンスか?」
工業高校では上下関係第一。先輩には頭低く腰低く。大地はそこで初めて自分の後輩かも知れない、と気が付いたようだ。堅苦しいのいいよと手を振り、幸久の質問にはいや、と笑うとマスターに酌してもらいきゅっと飲み干した。
「俺達、愛し合ってるように見える?」
「あ・・・いえ・・・でも・・・。」
下田の笑顔は優しい。津川と一緒に並んでいると雑誌にでてくる仲良しカップルみたいだがちょっとした仕草に二人の間にひかれた微妙なラインも見え隠れする。
「彼氏・・・いるんですか、先輩。」
「ん。」
横から津川が長すぎ、とチャチャ入れる。酎レモン口に含んで二人をじっと見ていた。
「あのなあ、桜井。」
それはちょっと不思議な間があった。津川が何かを言おうとした時、下田が煙草をくわえ先生、火、ちょうだいと肩をつつく。すると津川がジーンズのポケットからジッポを出してさりげなく火を付けた。少し肩を丸めて煙草に火を付ける大地とそれを受け止める津川。そこだけ切り取った一枚の写真のように格好良くて綺麗だと思った。
「身体と気持は一致しないことだってあるさ。好きでなくてもやっちゃえるのが男ってもんだ。」
「それは・・・俺もわかるけど。」
「身体と気持が一致したとしたらそれはな。」
そしてその下田の煙草を奪うと自分のものにしてしまった。あーあ、と下田はもう一本くわえ、自分で火を付ける。
「恋愛ってんだ。遊びじゃなくなっちまうだろ?」
家に付いたときは11時をまわっていた。家中の灯りが落ちてしんとしている。
受験に失敗してから家族との関係が少しおかしくなった気がする。もしかしたら幸久自身、たった一度の失敗に対する後ろめたさを未だに引っ張っているのかも知れない。塾から帰るのに家族起きていると苦手だった。何度か引き返して全員寝たのを待っていたときもある。
なーにやってんだろう。
結局今日は津川がいたせいで男の収穫ゼロ。
・・・ホントは・・・来たかな。
庸介が来たんじゃないか、忘れたくてバーに行ったのに帰って来るとそればかりが気になった。部屋に入って灯りをつける。昨日一昨日下ろしたままの布団はまだ庸介の名残がうっすらと感じられた。そして布団に突っ伏すと庸介がいた辺りをくんくんとかいでみる。
当然匂いなんて残ってない。でもここに彼がいた、という事実は確かだ。
からだときもちがいっちしたられんあい。
そうかもな。幸久は泣きたくなっていた。俺、もしかしたらあの変態鬼畜に恋してるかも。だって会いたくて抱かれたい。あの人に心も体も満たして欲しい。そして満たしてあげたい。こんなに誰かを死ぬほどに求めるのは初めてだった。
「庸介・・・ようくん・・・ようちゃん。」
なんで今夜塾なんて行ったんだろう、ウソついて休めば良かった、だってもしかしたら来てくれてたかもしれないのに。バカだった。工事も終わったから向こうから会いに来てくれない限りもう会えない。幸久は庸介の連絡先も知らないし、会社に電話して聞いたら迷惑がられるかも知れないし・・・迷惑がられるのが怖い。嫌われたくない。
起きあがり窓を開けてみた。整地もすっかり整って公園はきれいになっている。二人の関係は後腐れない関係だったって言いたげに。
その時。
公園のベンチに誰かが座っていた。見間違うはずない、あの背中。
「あ・・・庸介・・・さん。」
革ジャンに手を突っ込んで庸介が立ちあがった。
庸介の愛車は夜目にも解るほどにボロいマークⅡだった。塗装の剥げた鈍いシルバーのシャシにどこかの神社の古ぼけたお守り。埃と汗の匂いのするシート。庸介そのまんまだ。
そのマークⅡは家から15分程走ると、郊外にある貯水槽のそばの土手で止まった。
庸介はエンジンをかけたときからシートベルトなんてしてなくって、また幸久に何処に行くとも何も言わなかった。窓を閉めたまんま平気で煙草を吸い、短くなると窓を開けてポイ捨てしてしまう。。・・・ものすごい態度だ、と幸久は正直驚いた。
庸介は一言もあの場所で待っていた、とも会いたかったともいわなかった。呆然と公園を見ている幸久を見上げて当然付いてくるだろう、という顔して「来い」と顎でしゃくって誘ったのだ。本当にそれだけで、それについて行ってきた自分もどうかと思う。だけれど断るはずがない。だって、庸介に会いたかったのは自分だったのだから家族が起きないようにスニーカーを持ってきて、そして窓から飛び降りた。がさっと言う音がスリリングだった。幸久が降りたのを確認すると庸介は背中を向けてさっさと早足で行ってしまう。スニーカーに足を突っ込みながら闇の中待って、といえず必死で心ばかり急いて。
そう。スリリング。この人と出会うとスリリングで気分も高まる。
「や・・・こんな所でやるのかよ・・・」
車を止めると首を左右に傾けゆっくりと近づいてくる。
「盛った目ぇして物欲しそうだからな。」
そして庸介は幸久の身体の上にのってきたのだ。
シートベルトして、ドアには鍵がかかって、シートでがっちりと覆われている身体が抵抗できても逃げることはできない。その抵抗だってとりあえず「たしなみ」でやっただけで「ダメ」と言った瞬間、太股の筋肉が緩んで触りやすいようにちょっと腰を浮かせたのだ。
「カー・・・セックス?人に見られたらどうすんの?」
「そん時はアヘアヘいってケツの奥まで見せてやんだよ。」
そして静かにしろ、と低く吐き捨てた。
シートベルトを外してジーンズをおろす。闇の中ガラスが鏡になって痴態が歪んで移っている。今夜はちょっと暖かいや。そんなこと考えながらちら、と横目で庸介を見てみた。
庸介も黙ってごそごそとしていたがすぐに下半身裸になった。表情までは暗くて見えない。だけれど彼はこんな行為に慣れているのか落ち着き払ったものだ。。
・・・マジでこんなの初めてなんだけどなあ・・・。
何度も窓の外を見た。滅多に車がその辺りを通る気配はない。が。
「マジでちょっと怖い・・・。」
誰かに見つかって警察にでも通報されたら。それだけが心配だった。しかし自分のそれはキンキンに固くなって裏筋もくっきりと現れているのが自分でも解った。自分でそっと手を当ててゆっくりと扱く。ツプッと先走りが垂れた。
「しゃぶれ」
その命令のまま幸久は庸介の股間にそっと顔を埋めた。鼻先に男臭い匂いがむわっと漂った。その匂いをくんくんかぐ。男臭い匂いだ。カーセックスも初めてならこんな汚いところも初めて。初めて尽くしで変な気分だ。まるで初めてセックスしたときの事を思い出させる。
始めは両手をついて体を支えていたがシートを利用して体制を整えると片手を外した。そしてその手を自分のアナルに伸ばす。
自分で自分のアナルのすぼまりをつんつんとつついてみた。庸介の張りのある固い巨根が口を、そして自分の指が自分の感じやすいアナルを刺激する。上の口と下の口ってヤツ・・・一回・・・乱交もいいかも。気分はどんどん盛り上がってきて幸久は舌をいっぱいに動かす。
「人に見られたくなかったら俺をさっさと気持ちよくしろ。」
くわえたままコクッと頷いた。口端から涎が漏れる。美味しいのと大きすぎるのでだらだらと涎が出てダメなのだ。
「本当、お前、美味そうにシャブリやがる。」
「ん・・・美味しい・・・庸介さんのオチンポ美味しいです。」
自然、敬語で「家来」のように跪いているのだ。あー、マゾだなあ・・・と自分の事思いながら裏筋に唇を当てわざとジュルッと音立てた。
「・・・ん。」
感じてる。庸介さん、感じてる。少しずつ攻め立てる気分も乗ってくる。彼の太股の内側や膝の辺りを軽く撫でた。毛深いすね毛が指先に当たって割と好きな感触だ。
「ねえ、気持ち良い?」
奥までくわえ込むと口をやや締めて上下に動かす。喉の奥の粘膜でこする。庸介の太い指が幸久の髪に絡んだ。
「くっ・・・。」
呻いてその髪をぐいと引っ張り股間から引き離す。もういきそうになったのだろう。肩で息して我慢しているのが幸久にも解った。
「・・・飲ませてよ。」
その時、脇を一台、車が通った。車内の二人の姿がライトに照らされて、その瞬間幸久はわざと静かに薄く笑ったのだ。
「飲ませてよ。飲みたい。」
庸介の顔はよく見えなかった。ただ、いつも通りのふてぶてしい態度なのは解る。そう。どんなに手練手管を使ってもどうでもいいというこの態度がたまらないのだ。
「・・・淫売か?」
「なれって言うなら淫売になる。専用の便所にだってなれる気がする。」
庸介は顔色変えない。しかし何もできなさそうなお坊ちゃんの幸久の意外な言葉に庸介の様子が一瞬ひるんだ。そうだ、ここを突っ切れ。突っ切ってこの人をものにしろ。もう一人の幸久が脳裏で叫んだ。
「俺、あんたに染まりたい。」
多分、庸介が人に見られるのをいやがったり、対面を気にしたり、・・・・例えばもてるためにもっと良い車に乗っていたりしたらこんな気持にはならなかったはずだ。
今までのヤツみんなそうだ。好かれたくて一生懸命自分を演技する。強い男を気取った根性なし。何も知らないくせにちょっと読んだ知識ひけらかして気分覚めさしたヤツ。今までそんなヤツばかりだった。そして出会った始めの頃には必ずそんな部分しか見えず、付き合っているうちに結局「違うな・・・。」という気分に必ず陥る自分。彼氏が要らないのでもない。セフレで良いんじゃない、みんなセフレにしかならなかった。
この人は・・・違う。
そうはっきり解る。
「お願い・・・したいんだよ・・・。」
そして自分のシートを倒した。フロントガラスがまるでカメラみたいで異常な気分をもり立てるのだ。ゆっくりと大きく脚を開いた。そして闇の中自分で自分のものを扱き始める。自分の持っている全部のいやらしさで彼をものにしたいと思った。
「あ・・・お願い・・・んん・・・。」
庸介がじっと見ていた。あの小さな目がこのいやらしい姿をじっと見ている。窓を覆うものもない。そう。覗かれても・・・しょうがない。
脚をM字開脚して脚をダッシュボードの上に載せる。冷たいガラスが足先に触れた。
「ああん、あ、あ・・・。」
ガラスの向こうから第三者に見られているかも知れないと言うスリリングが幸久の欲望に火を付けた。シャツをめくって自分で乳首をいじる。庸介の指がアナルに伸びてきた。
「はあん、お願い・・・します、入れて下さいィッ。」
先走りが大量に出てぐちょぐちょといやらしい音立てた。
「ああん?もうケツマンとろけ始めたのか?」
蔑む口調に幸久の背中がゾクゾクしてしまう。こういう、直球ストレートな虐められ方、好き。
「お願い、庸介さんのでとろとろのケツマンかき混ぜてっ。」
「足りねえな。俺の犬にでも便所にでもなるっていうんならこんなもんじゃないだろ?オラオラ、俺は身体の隅までチンポ好きじゃなきゃあな。」
そしていきなり指が二本入ってくる。一昨日のプレイでまだちょっとケツが痛いけどそれでもこれは「我慢」できた。
「ああ・・・入ってくるぅ・・・。」
「キュッと締めろ。」
言われたとおり括約筋に力入れてみる。
「もっと・・・できっだろう。そうだ・・・そうそう。ケツの穴緩ましてんじゃねえぞ。ちゃんと鍛えとけ。」
「はい・・・。」
その返事に庸介は満足そうに笑うとダッシュボードを開ける。そして中から赤いベルベットの箱を出した。
「何・・・。」
「黙ってろ。」
そして中からローションを出してアナルに垂らす。冷たい液体にキュッと尻の筋肉が締まった。
「使ったことあるだろう。おもちゃだよ、ただのおもちゃ。」
そして取り出したのは大きめのパールが5つ、つながっているものだった。先には指を引っかける金具が付いている。
「脚抱えとけ。」
そして一個ずつ入れていく。バイブやローターは使ったことあるけれどこういうのは初めてだ。少年特有のすべすべでむっちりとした脚、毛の生えていないアナル。そして淫らにてらてらと濡れているチンポ。
そして最後の一個を入れるとぐい、ッと奥まで押し込んだ。
「アアッ!!」
直腸に鈍く感じた感触。そして庸介はぐにぐにと動かす。
「やだ・・・やめて・・・。」
「犬だろう。文句いってんじゃねえ。」
「だって・・・あ、お腹変だもの・・・。」
「出して欲しいのか?あん?」
「あ・・・や・・・。」
解っている。あの瞬間。
庸介が金具に指を通した。そしてゆっくりと抜き始める。そして一個目のパールが引っかかった感触を楽しみ始めたのだ。
「あ・・・だめ・・・。」
「ケツ、締めろ。さっきみたいに。」
「いやだ、ダメ、ゆっくりしてっ!!」
「うるせえ。俺のやり方たっぷり身体に教えてやるよ。しっかり締めろ。」
そしてビシッと力一杯尻をひっぱたいた。
「あああーーーっ!!」
そして腹から叫んだ瞬間、それを力一杯に引き抜いたのだ。
内側から拡げられ、体内のものを引き出される感触。快感と言うより気持ち悪い。しかし、幸久はその感じと同時に身体全体をぶるっと震わせると射精してしまったのだ。
プリプリとしたゼリー状のものが大量に飛びちった。自分の顔まで飛んできたそれ。若く、青い匂いを漂わせて幸久の頬を流れる。
「庸介さん・・・。」
肩で息しながら落ち着きを取り戻すし、見られてないか心配になって辺りを見た。窓が全部真っ白になっている。そっかー、頑張るから熱がいっぱい出て真っ白になるのか。あー、理科みたい。
庸介はニヤッと笑うと幸久の頬に唇を寄せる。そして付いていたザーメンをしゃぶり取った。
「・・・良いの?」
「黙ってろ。」
そしてゆっくりと耳たぶ、首筋を舐める。最後に唇を重ねてきた。
たばこ臭い、今までで一番不味いキスだった。もしも、客だったら即刻キャンセルさしてもらっただろう。だけど、今の幸久にはどうでも良かった。このたばこ臭いキスは「ご主人様」からの「犬」としてのお許しだから。
「次は俺だな。」
庸介が耳元でささやく。コクッと頷いて庸介の股間にそびえ立つその肉棒をそっと握りしめた。
カーセックスって・・・悪くない。
幸久は倒した運転席に仰向けになった庸介の上を跨ぐように乗った。膝や脚にハンドルやら何かしら当たって窮屈で、サイドブレーキは邪魔でしょうがない。
それでもそんなことかまわず庸介のものを手で扱く。胸がドキドキして自分のものもギンギンに立ってさきっぽからツツッと涎が出た。キンタマがキュッと吊り上がる感じ。ああ、やりたい・・・と半分うっとりしながらもう片方の手でぐちょぐちょ言う自分のチンポを確かめた。
今すぐにでもむしゃぶりつきたいのだが今の体勢だと狭くて流石にフェラチオは出来ないので一緒に倒れ込み首筋にキスした。やっぱり汗くさい。その匂いにくらくらする。
「ね・・・これ入れていい?」
庸介は無言だが幸久の尻を軽くつかみ浮かせる。尻をつかんだ手がちょっと痛い。
そして庸介が自分のものに入れやすい様に手を添えた。
騎乗位はあまりしたことがないけれど、さっきパールで一回ほぐれているから入りやすいだろう。背中を丸め庸介の脇に手をつく。大きく膝を開き、入れやすい角度を探してくねる腰がまるで誘っているようだった。
「はあ・・・あん・・・。」
鼻にかかった濡れた声が車内に響く。庸介のものをめり込ませるように埋めながら幸久は少しずつ腰を沈めていった。やっぱり太い。さっきのパールなんてただの余興で少しずつ鈍い痛みの様なものを伴って広がっていく。
「すごい・・・おっきい・・・。」
のどの奥から出た声はまるで女みたいな声だった。その太いのでケツマンかき混ぜられる快感に身体が期待していた。
一昨日の名残を感じながら尻を埋めていった。浅く息を吸い、力を抜く。内部を押し広げながらもカリまで入ると後は深い所まで誘導するだけだ。
「腰上下に振って見ろ。」
言われたとおりに尻を動かす。出るときに締め付けながら、腹の中に当たる鈍い感触を感じていた。
「あ・・・ああ・・・。」
それは半分快感、半分我慢。暗闇の中、うっすらと見える庸介の視線が自分を貫いていた。見られている、と感じた瞬間幸久のチンポの先からヨガリ汁が流れた。それを掬うと庸介はぺろっと舐める。
「もお・・・すごい・・・。」
その瞬間、庸介が腰をぐい、と上げた。大砲が体の中を一発駆けめぐる。
「アアッ。」
シートをぎゅっと握った。痛みではない、知った快感が体中を走る。突き上げはぐいっぐいっと律動的に続いた。
「ああ、突いてる、いいとこついてるよ・・・。」
その快感を逃さまいと肩にも腹にも力を入れた。生はやっぱりすごい。今は汚れることはないと思うけれど、病気は気になる。でもこんな時に病気の事なんて考えられない。何故か庸介を信じていた。
その律動に合わせて尻を上下に揺らす。髪を掻き上げ真っ白の窓をじっと見つめていた。時折車のライトが照らし、去っていく。ギシギシと揺れるマークⅡまで誰か気にするだろうか。そっと窓の向こうを見つめてみる。
見るんなら見れば?
「ああん、すごい、もっとぉ・・・。」
突き上げを感じながら腹の底から喘いだ。
誰かに見られるならそれも素敵だ。そっと聞き耳立てる奴がいれば聞けばいい。この庸介にガンガンに突き上げられながら感じるこの瞬間は覗いている奴らには判らない。自分だけが感じる最高の悦楽。
そう考えれば誰かが覗いている気もする。車が揺れているのは自分でも判った。もっと揺らしてやる。幸久は激しく腰を振った。
「もおだめ、いっちゃいそう・・・。」
切れ切れに高い声で訴えた。その声に庸介がウッ、と唸って一層突き上げる。
そうして自分のものに手をあてがって激しく前後させた。庸介の息づかいが生々しく聞こえた。でっぷりとした下腹にペチペチとチンポが当たる。
「あ、いく・・・いくいく・・・エロカルピス出ちゃうぅ。」
わざと使う汚い言葉は幸久自身を刺激する。
「アアッ。」
そして下腹をぎゅっと締めて体いっぱいに射精した。ハァハァと肩で息して目を閉じる。しかしラストはまだだった。
最後に庸介ががつんと一発撃ち込んでぶるっと体を震わせた。熱いものが体内でほとばしり、入れたまんまのアナルから漏れだした。
「このエロ猿。」
庸介は大きく息を吐くとそういい捨てる。その言葉の奥には何か冷たいものではない何かを感じた。それが何かはまだ子供の幸久には判らなかった。ただ、涙が出そうになるほどその声が熱い気がしたのだ。
「連絡先教えてよ。」
ん・・・と庸介は重い返事をする。
下半身裸のまま庸介の膝に倒れ込んでいた。ちょっと寒い気がするけれど離れる気は更々ない。サイドブレーキが脇腹に当たっているのを感じが2人の間柄を邪魔しているモノみたいな気がした。
庸介もまた下半身裸のままシートだけを元に戻して煙草を吸っていた。
窓は白くなくなっていて、だいぶ外が見えるようになっている。まるで事が終わった、と知らせているみたいで変だと思って、幸久は庸介の膝からフロントガラスを見上げながらくすっと笑った。
「今春休みなんだ・・・もっと会いたいな。・・・迷惑?」
「いや。」
そして庸介はまた煙草を大きく吸った。空いた手が時々幸久の髪に触れる。
言葉は決して優しくないが指先は優しいと思った。毛むくじゃらの膝に手を置いてもさもさした感触を楽しんでみる。
「庸介・・・さんって呼んでいい?」
「勝手にしろ。」
「んじゃようちゃん。」
「よおちゃん?」
鼻先でバカにしたような返事だがやめろとはいわない。幸久はそっと体を起こした。
「ダメ?」
しかし庸介は苦笑いしているだけだ。
「好きにしろ。呼び方なんてどうでもいい。」
「俺・・・チャム。そう呼ばれると楽なんだ。」
判ったとも何とも返事せず庸介は幸久の頬に親指を這わせた。幸久はそれをイエスと取った。そしてそっと目を閉じる。なんだか泣きたくなったので泣いた。ここはずっと探していた自分の居場所のような気がしたのだ。
よそよそしい家族。何をしているか判らない学校。ただの通りすがりの男達。そんなものから死んでも得ることの出来なかった一番欲しかったものがこのマークⅡの中にあった。
「・・・昔・・・ちょっと年少に入ってたことがあってよ。」
庸介は驚くような過去をなんでもないことのように漏らした。
「・・・何やったの。」
「どうでもいいじゃねえか。大したことじゃねえや、殺人はしてねえけどよ。そこでチャムみたいな奴がいたな。」
チャム、と呼んでくれたことが切ないくらい嬉しくて、でもその口から知らない奴の話題が出てそっと太股を握る。
「そいつと・・・出来てたんだ。」
「いや。」
「好きだった?」
「いや・・・。」
「じゃあなんで。」
「死んだんだ。」
幸久は突然の言葉に思わず下から庸介を見上げた。ギリッ、と歯を噛んだ。
「それだけだ。マジで。ただ・・・何となく思い出しただけだ。」
死んだ、と言う言葉が鈍く響く。
「そいつににてた?」
「いや。」
言ってることが無茶苦茶だ。庸介は起きろ、と命令した。本当はもっとくっついていたかったのだが言われるままに体を起こす。庸介は大きな体をかがませてハンドルの下からパンツを拾い脚を通しはじめた。
時計を見るともう夜中の1時を回っている。幸久も下半身に寒さを感じて脱ぎ散らかしたものを手探りで探す。
その時だった。
トントン、と窓ガラスをノックする音が聞こえて2人は同時に助手席の窓を見た。誰かが見ていた。流石に幸久はびっくりして声にならない声を上げたと思う。よく見ると夜中なのに警察官が窓越しに見ていた。
ドア越しに「あけるよー」と間の抜けた声がした。やべえ。
ドアロックしていなかった。ガチャッとドアが開いて冷たい空気が侵入してくる。幸久は何とかして上手い口実を考えようとしたが所詮子供の考えることだ、パニクるばかりで何一つ思い浮かばない。
自分が下半身裸。庸介もまだパンツ上げたところだった。
「こんな時間にこんな所で何やってんの?」
「別に。見りゃわかるだろう。」
庸介が堂々と面倒くさそうに言う。そして警察が要るにも関わらずチノパンを拾い上げると脚を通していた。それは「用事があるなら付いていくぜ。」という態度にも見える。逃げようとしない。
幸久は逃げたいようなでも逃げられないような状況にあたふたしていた。
警官の目が幸久に向けられる。そして上から下までじろじろと見て「パンツ履きなさい」と小さく言った。
「君・・・高校生?何年?」
「あ・・・二年。」
庸介がふうーっとため息付いた。そのため息の理由が幸久にはよくわからなかった。
「そういうのって淫行になるの判ってる?」
「・・・。」
「とにかく一回警察暑まで来てくれる?車のナンバーも全部控えたから。」
来てくれる、と言う口調だけど本当は来いッて事だ。
庸介は「さっさとジーパンはいとけ。」と低く呟いた。その時、闇の中でほんの少しすまなそうに笑った気がした。
とにかく夜中に男とセックスした事で春休みなのに呼び出されて下された処分が反省文一枚ですんだのはきっとこの学校がその程度のことで処分していたら生徒数が半分以下に落ちてしまうからだろう。
図書室で原稿用紙目の前にして頬杖を付きながら幸久はぼうっと窓の外を見ていた。
今日一日、図書室で反省文書いて、それを提出して先生に謝って一通りの儀式は終わる。
図書室の思いドアが開いた。入ってきたのは津川だった。黙ってこっちに近づいてくる。
昨夜飲み屋で会ったばっかりなのに。
「・・・どうも。」
軽く頭下げてみた。津川は隣に座ると原稿用紙を覗いた。
「まだ真っ白か。」
「・・・すいません。」
そして笑いもせずに幸久の顔をじっと見た。
「バカが。」
「はい。」
返す言葉もない。
迎えに来た父親は口も聞かず、帰りのタクシーの中でも幸久を見ようともしなかった。何となく何かに限界を感じた。庸介は多分書類送検だろう、と言うことではあったが警官は「強姦か和姦か」ばかりを聞いてきた。「強姦ではないです。」と小さな声で告げたときは恥ずかしさと同じくらい悔しかった。
「・・・まあお前はこの学校にしてはまじめな生徒って事になってるから。」
「・・・。」
そして原稿用紙をつんつんとつついた。書け、と言うことだろう。
「・・・反省する事なんてない。」
「書かなきゃ一生図書室だ。」
「それでも良いです。」
津川は黙ってみていたが背もたれにもたれ脚を組んだ。
「ばーか。だからガキだって言うんだ。」
その言葉は仕方ねえガキだ、と大人が子供を笑う言葉だった。みんな大人なんだ。庸介も津川も父親も。
「さっさとかいとけ。ウソバッカでいいさ。誰も作文一枚で反省したとは思うはずないしな。」
「・・・それが教師の言うことですか。」
「俺は教師でなくゲイとして言ってンだ。せっかくの春休み、反省文程度でつぶす事はないだろう?」
この人は本当に何考えてんだろう。
幸久はシャーペンを取った。そして原稿用紙の頭に「反省文」と書き込んだのだ。
「手ぇ止めずに答えろよ。奴はどうだった?」
聞かれてべらべら答える事じゃないよ。無視してどっかで読んだような言葉を並べる。
「・・・好きだったのか?」
思わず手を止めた。そしてコクッと頷いてまたシャーペンを走らせる。
「若いってのはいいね。俺ももうオッサンだ。」
「大地先輩と仲良しじゃないっすか。」
「下田はセフレだよセフレ。あいつはちゃんと彼氏がいるっての。」
「先生も作れば。」
津川が何?と笑った。なんだか楽しそうだ。
「彼氏をか?良いねえ、そういうのも。春だしな。」
まるで他人事みたいに言う。だけれど幸久にはその向こうにちょっと違うものを感じた。それが何かはわからなかったけれど、この人もホントは結構大変なんじゃないか、と子供心に心配してしまったりしたのだ。
反省文を出したら今日は自宅謹慎と言うことだ。
来月からも学校行きたくないなあ。ベッドに寝っ転がってぼうっと考える。
春休みと自宅謹慎は全然違う。毎日の行動を記録して、基本的に外出禁止だ。先生も時々やってくる。そして夏休みだろうが春休みだろうが自宅謹慎になった理由はどこからともなく漏れてうわさ話になる。ケンカして相手をボコッて立てなくして謹慎になった奴のときも休んだ午前中にはその理由を全員知っていた。幸久の自宅謹慎の理由はケンカなんて日常茶飯事でなくて男相手の淫行だからみんな面白がるに違いない。最悪、近所の人たちも知ってたりして。
こうなったら何でも悪い方に考えてしまう。石って本当に投げられるんだろか、なんて思ったりして。
今日は塾も休みだな。寝返り打ってため息付いた。リビングの電話が鳴っていた。それに応答する声がして、暫くして台所から誰かがこっちにやってくる足音が聞こえた。母親が自宅謹慎守って出ていかないようにずっといるのだ。その足音は部屋のドアの前で止まる。
「相手の人会社クビになったって。」
それだけ怒った口調で事務的に伝えるとまた台所に戻っていく。
ウソだろう・・・。
その時初めて事の大きさを感じて幸久はシーツをぎっとつかんだ。
6
気が付くと裏の公園の桜が咲いていた。
夜になると空気はひんやり冷えるがそんなことお構いなしにずっと窓を開けて公園を見ていた。
桜の花は満開ではなく、五分咲きという感じだろうか。そして咲くと綺麗だけれど散っていくのも早い。春の夜空は曇っていて星は見えなかった。
庸介が会社を首になった。自分のせいで。
幸久の頭の中には不思議と両親に対して、とか自分の未来への心配なんてなかった。ただ庸介がクビになったことだけが幸久の心をさいなんでいる。
終わった後さっさとパンツはいとけば良かったんだ。いや・・・警察が来たときに「高校生」だと言わなければ良かった。でも高校生って言わなくても名前言えば調べられて終わるか。
なんで俺高校生やってんだろう。考えていけばそんなことまで悔やまれた。
堂々巡りの悩みと不安は幸久一人が解決するには難しすぎる。
考えてたって仕方ない。どっか行こう。
家を出るとき、その様子を両親は見て見ない振りをした。本当は自宅謹慎中だから外出禁止なのだが男とセックスして警察に捕まった息子の顔なんて見たくないみたいだ。学校の奴と会うのは幸久が怖い。
スニーカーを履いて外に出る。行き先はないからコンビニくらいしか思いつかない。金は持っていなかったけれどとにかくどこかに行くことが大事だった。
庸介と会ったコンビニは煌々と輝いていて目が痛いくらいだ。
庸介の働いていた建設会社に電話して、住んでいるところとか電話番号とか聞いて、そして連絡取って・・・。
だけどその会社に電話するって言うのが高い壁だ。名前聞かれたらどうしよう・・・。ばれたら「ああ、あのホモの相手か」と勘ぐられて陰で笑われて・・・。
・・・転校しよう。
両親はなんて言うか判らないけれどどうせ入りたくなかった学校だし、どこか・・・遠い学校に行こう。学校でなくっても良い。そして?
そしてどうしよう。
バカな考えには結論なんて出ない。判っているのは庸介に会えなくなりそうと言うことで、でも会いたいと言うことだけ。
何も買わず、店内を一周して外に出た。そしてまた暗闇の中を歩いていく。何となく玄関でなく公園に回った。そして庸介が立っていた場所に立ってみる。
会おう。何とかして庸介さんにあって、きっちりと片付けよう。こんなに自分をぐちゃぐちゃにする奴。身体も心ももうぐちゃぐちゃだ。もう今までの自分とは違っていた。将来ずっと一緒にいる自信はない。だけど、庸介以上にもっと心揺さぶる相手と会えるとも限らない。決めた。そうしよう。
そして戻って玄関から入ろうと公園を出た、その時。
シルバーのマークⅡが前を通った。何故だろうすぐに判った。同じ車で違う人、とも思ったけれど絶対に庸介だという確信があった。
車は前方20メートル先でウィンカーも上げずに急ブレーキで止まった。焦っていたみたいだ。
庸介さんだっ。
幸久は走った。たった20メートル、体育の100メートル走よりも全速で走った。そして車の側に立つと屈んで窓の中を覗く。ガラスを拳でどんどんたたいた。庸介はただこっちを見ているだけで、肩で息する幸久に、キーロックはしてない、と顎でしゃくる。
幸久はもどかしく助手席のドアに手をかけた。そして何も言わず勝手に乗り込んでバタン、とドアを閉める。
「庸介さん・・・っ。」
抱きつこうと思ったが抱きつけなかった。
抱きつく前に庸介が幸久の髪をつかんで引き寄せたのだ。そして呟いた。
「意味わかってんのか?」
怒ってる。当然だ。自分のせいで会社をクビになったのだ。
こんな事で差別したくないけど、でもやっぱり庸介は少年院上がりだからいろいろと面倒なことが多いのだろう。庸介は何も悪くないのだ。
「ごめん、俺のせいで・・・ごめんなさい。謝りたかった・・。」
それは心からの謝罪だった。どう償えばいいのか判らない。だけれど自分の「本当」を知って欲しい、と思ったのだ。それには本心から謝る以外にはない。が、庸介の返事は想像していたものとは違っていた。
「そういう意味じゃねえ。俺はここを通ったのは全くの偶然だ。」
庸介はぎっと歯を噛む。煙草のヤニの匂いがした。
「・・・。」
「なんでてめーはいる。なんでたった数秒、俺がここを通る間に会うんだ?」
そんなこと聞かれても判らない。
「どうする。」
「どうするって?」
「来週引っ越す。来るか。」
「どうしたの・・・。」
「一緒にくるか、こねえか。今決めろ。」
そんな無茶な。
庸介はそのつかんだ髪を引き寄せて荒々しくキスした。汗とヤニ。なのに泣けそうなのはどうしてだろうか。
「こうなったら一緒に来い。」
「うん。」
返事はとっさだった。
「俺はきついぞ。」
「だと思う。」
こんなにさっさと決めちゃって良いんだろうか・・・家出して来いって言ってんだぞ。全部捨てて来いって・・・庸介はそういう生活になれているから平気かも知れないけれど幸久が家を出ると言うことは家族も学校も捨てる、と言うことだ。
そんなことも思ってみたが庸介はその間にウィンカー出して道路に戻る。
「何処行くの?」
「とりあえずホテルだ。・・・ポリ公に会いたくねーからな。」
庸介は興奮すると幸久を叩く趣味があるようだった。
「しっかりケツ振れやっ。」
そのぶっといものをガンガン突き立てながら太股をパンッと叩いた。叩かれる度に歯を食いしばり、痛みに耐える泣きそうな声で訴えるのだがけっして「やめて」とは言わなかった。言えなかったのだ。口にはパンツが詰められていて、両手は浴衣の紐で後ろ手にぎちぎちに縛られていた。「文句言うな、抵抗するな」という意志の現れだろうか。
呻き、涙が流れるほど痛みに耐え、それでも叩かれた部分が熱くなっていく。幸久の小柄な身体なんて庸介から見たら子供と一緒だろう。まるで赤ちゃんがオシッコするみたいに後ろから抱えられて両脚を大きく開いたままそのチンポがアナルを攻め立てる。
アンアンと喘ぐねっとりとしたセックスではない。「食べられている」感じのセックスに幸久は庸介の体にもたれうっとりとしていた。
壊れそう・・・。
壊れそうなほどにきついセックス、なんでこんなに良いんだろう。触れられるところ、舐められるところ、全部気持ち良い。痛みが快感になるんじゃない。我慢しているうちに「崇高感」を感じるのだ。
「自分で動いてみろ。」
浴衣紐が外された。前に屈んで両手をついて一生懸命に尻を前後にくねられた。太いものがぐにぐにと直腸をかき混ぜた。
「絶対に来いよ。」
そしてもう一発力一杯バンッと尻を叩く。何発目だろう。ひりひりと痛くて熱くてぽうっとしてしまう。
「ったくよお、この俺がてめーみたいなガキにいかれちまってよ。」
そして奥まで入ったまんま力任せに仰向けにすると両脚をつかんで開いた。真ん中で勃起している幸久のチンポを指先で弾く。その鋭い痛みにアウッと体をねじり、やめて、と顔を横に振る。
口の中に詰められたものを庸介の太い指が引き抜く。大きく息を吸おうとしたとき庸介がキスしてきた。シャワー浴びたときに歯も磨いたのだろう、さっきよりはましだ。
「よおちゃん・・・よおちゃんっ・・・」
たくましい肩に腕をまわす。腹の中をかき回す感じはまるで体の中に違う動物が暴れているみたいだった。
「いく、いっちゃう・・・」
自分で自分のものを扱く。庸介の汗がぼたっと幸久の額に落ちた。濡れた庸介の肌が当たって冷たい。
「いくぅ・・・。」
そして庸介が一番奥でグッと体を止めて震わせたとき、幸久も射精した。どろりとした暖かい粘液が肌と肌でこすれてねちゃねちゃした。
「べとべとになっちゃったよ・・・」
庸介が鼻で息を吐いた。ずるっと抜けたそれと同時にザーメンがどろっと出る。何回経験してもあまり気持ち良い感触ではないけれどそれでも庸介のものが出てしまうことにはちょっともったいない気もした。ティッシュを取ってアナルに当て、体を起こすとだらだらとそれが流れ出た。
そして同じように股間をティッシュで拭いている庸介の背中にそっと頭をくっつけてみる。
「絶対・・・いく。」
ん・・・と庸介が低く返事した。
ばいばい、今までの俺。
心の中でそっと呟いてみた。
「まだ寝てねえのか。」
暗闇の中、布団に潜り込んだ幸久の為に少しずれてスペースを空けると庸介は枕元の煙草を探した。
「いろいろ思い出しちゃって。」
「・・・帰りてえのか?」
庸介は二言目には「帰りたいか?」と聞く。本格的に縛られて直腸洗浄されて一晩中バイブ突っ込まされたときも、知らない男達と乱交パーティー初めてしたときも。だけど幸久はずっと首を横に振り続けていた。幸久がそういうのが結構嫌いじゃないことを庸介は身体でどんどん暴いていく。
「よおちゃんは俺が帰った方がいい?」
「お前の好きにしたらいいさ。」
来いって言ったのは自分のくせに。幸久は右手を伸ばして庸介の腹からゆっくり手を差し入れた。
「盛りやがって。」
「だって、好きなんだもの。」
「・・・エロ猿」
「好きなんだよ。よおちゃん、しよう。」
身体と気持が一致したら恋愛ってんだ。
誰が言ったんだろう。口を開けて庸介のものをしゃぶりながら思い出そうとしていた。
目を閉じ、口を開く。舌を一杯に伸ばし袋からチンポの先まで指と口で美味しく頬張っていた。
庸介は幸久を連れて全然知らない土地に来た。そこで慣れたふうに職探して、ない間はパチンコ行って。幸久はすぐに怪しげな雑貨店にアルバイトが決まった。暫くしたら庸介も就職できて生活が落ち着いたのは最近だ。
男2人の生活って合宿というか何というか、自分たちは夫婦という感じではない。パートナーでもない。ただ同じ空間に暮らしているだけだ。それでも幸久は幸せだし、庸介もそんな幸久を見ている。
愛と欲が幸久を支配していた。世の中、それ以外は全部くず。この充実した気持は何にも代えることが出来ない。
あの日、自分は生まれ変わったのだと思う。上手くいかなくなった人生、一回リセットしたって良いだろう?そしてリセットされた幸久に残っていたもの・・・それが庸介の全てを受け入れ彼の所有物として生きていきたいという思いとそれによって肉体を沈めて欲しいと言うことだ。
「・・・もうすぐ桜が咲くな。」
フェラチオされているのに庸介が呟いた。もうすぐ一年になる。
「・・・今度は外でやるか。」
幸久はそれを頬張ったまま頷く。そして口を離すと庸介のフェラチオで勃起したでかいチンポにそっとキスをした。
終わり
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