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  • 2015⁄11⁄08(Sun)
  • 00:27

束縛の臭気

夏の熱気がこもる薄暗い部屋の中。土埃が積もったコンクリートむき出しの床に、全裸の少年が一人転がされていた。彼は両方の手首を後ろ手に縛られ、また両脚を幅の広いテープで巻かれ、逃げる手段を封じられていた。助けを呼ぼうにも、詰め物をされた口からは低く小さな呻き声を漏らすのが関の山だった。その彼のことを取り囲み、腕を組んだまま見下ろす幾つもの人影は、自身らが首謀者であることを見せ付けるように無言を貫いていた。
数分続いた呻き声と沈黙との対立に、鉄の扉が開くガチャリという音が割り込んだ。薄暗かった室内に白い陽光が差し込む。床の少年の体が光に曝され、その肉体が大人の筋肉を徐々に獲得しつつあることを見せ付けた。
少年は土埃に汚れた顔を上げ、救いの手の出現を期待した。しかし、現れた人物の声と言葉に、彼は再び絶望する。
「まだ済んでねぇのかよ」
「すみませんっ」
扉に背を向けていた一人が、振り返りながら頭を下げる。
「とっとと仕込めよ。練習始めっぞ」
その人物は扉を大きく開け、部屋の中を光で満たした。そこに集まっていたのは、揃いのユニフォーム姿のサッカー少年達だった。全員が、赤いサッカーストッキングとプラクティスシャツ、そして白いサッカーパンツを身に付けていた。
謝罪の言葉を口にした少年が、エナメルのシューズケースから薄汚れたサッカースパイクを取り出した。
「分かるだろ?俺のスパイク、今日はずっとお前のために使ってやるよ。感謝しろよな」
そう言いながら、彼はスパイクの片方を手に持ち、その履き口を全裸の少年の顔に押し当てた。鼻をすっぽりとスパイクに覆われた少年は、首を振って拒絶しようとするものの、傍らに駆け寄ったもう一人によって頭を押さえ付けられ、スパイクとその臭気から逃れられなくなってしまった。
一際大きく呻き声を上げる少年の周囲で、サッカー少年達は一様に笑みを浮かべた。
スパイクを押さえ付けた少年は、恐れに満ちた目で鼻先のスパイクを睨み付ける相手に対し、朗らかな口調で声を掛けた。
「深呼吸してみな。すぐ楽になる。気持ちくなって、逃げてた自分がバカバカしくなるから」
そして、斜め後ろに立つ別の少年に顎をしゃくって見せた。指示を受けた少年は、2cm幅の弾力性のあるベルトを手に全裸の少年に歩み寄り、スパイクもろとも、そのベルトを頭部に巻き付け始めた。全裸の少年は一瞬身をよじったものの、それきり抵抗することを諦めてしまった。いつしか、全裸の少年は半ば目を閉じ、リラックスしたかのようにゆっくりと呼吸を繰り返すようになっていた。深く息を吸う彼の鼻孔は、使い込まれたスパイクの臭気を確実に取り込んでいた。
「お待たせしましたっ。準備終わりましたっ」
周囲を取り囲んでいた少年の一人が声を上げる。
「集合急げよっ」
「っす!」
扉の外からの声に答えながら、サッカー少年達はスパイクの金具の音を立てながら、足早に室外へと出ていった。しんがりとなったのは、スパイクの持ち主の少年だった。彼は、室内に残された全裸の少年を振り返った。
全裸の少年の全身を陽光が白く浮かび上がらせる。両脚の自由を奪っているのは、幾重にも巻かれたテーピング。そして両手を縛めるのは、何本もの靴紐。口の詰め物は赤いサッカーストッキングを丸めたものであり、スパイクと共に頭部を締め上げるベルトは、シンガードストッパーをマジックテープで繋ぎ合わせたものだった。
「後で来てやるからな。俺の足の臭い、しっかり覚えろよ、カズヨシ」
そう声を掛ける少年の視線は、全裸の少年の股間に向けられていた。そこでは、それまで縮こまっていた陰茎が、徐々に首をもたげ始めていた。そのことを確かめた少年は、口許を微かに歪め室外へと出た。鉄の扉が閉められ再び薄暗くなった室内には、本来はサッカーのために作られた道具によって拘束された一人の少年が、置き去りにされた。
ホイッスルの音が、室内にも微かに響く。小さな窓と鉄の扉の出入口を持ち、コンクリートブロックを積み重ねて作られたこの建物は、中学校の校庭に設置された二つ目の体育倉庫だった。
全裸で囚われた少年は、中澤和良(なかざわ・かずよし)。そして己れのスパイクを和良の顔に押し当てた少年は、青木正継(あおき・まさつぐ)。いずれもサッカー部の一年生部員だった。
実質的にサッカー部専用と見做されている体育倉庫の床で、和良の腰がピクンと動く。正継のスパイクの臭いを深く吸い込みながら、彼の若い陰茎はますます固くなっていた。
五月、大型連休を終えて新年度が日常に変わり始めた頃のこと。
サッカー部の金曜日の活動は、早目に終わるのが常となっていた。野球部など他の部が練習を続けているのを横目に、部員達は校舎の中へと引き上げていった。
「一年は各自教室で着替えて自由解散。いいな。二年三年はいつも通り技術室で反省会に入るぞ」
部長を務める三年生の大野裕文(おおの・ひろふみ)の号令に、部員達は大声で返事をしながら二手に分かれた。まだ小学校時代の幼さを残す一年生達は各自の教室へ、成長の真只中にあって大人へと変わりつつある二年生と三年生は、校舎一階の端に位置する特別教室へ、それぞれ足を向けた。
サッカー部が放課後の技術科室を占有できているのは、一重に顧問の川崎のお陰だった。技術科担当で自身もサッカー経験が長い川崎は、職員室で最年少故の気の遣い方であったのかも知れないが、サッカー部の顧問とコーチを買って出て、常にサッカー部の活動に立ち会っていた。常勤の技術科教諭が川崎一人であることも手伝って、いつしか放課後の技術科室はサッカー部用に開放されるようになっていた。但し、入部してから一ヶ月以上が経過した時期だというのに、一年生部員が技術科室での反省会に参加することは禁じられていた。
まだ部内の紅白戦にも参戦できておらず、参加は不要という判断も理解できなくはないが、同じ部のメンバーとして同席させてもらっても良いのではないか。熱心な者を中心に一年生の中にもそのような意見は燻ってはいたが、裕文は「必要になったら呼ぶ」とにべも無かった。
「なんで反省会出さしてもらえねーんだろな」
「俺は別に気になんねーけど。ミーティングなんてめんどーなだけじゃん」
「でも、俺達一年の採点してんのかも、って思ったら、やっぱ気になる」
不満を募らせているのは、柴田英史(しばた・えいじ)。不安を漏らすのは、山本利光(やまもと・としみつ)。そして無関心なのは正継だった。同級生の彼等は、自分達の教室の扉を閉めるとプラクティスシャツを脱いだ。まだ他の部活動は終わっておらず、教室には彼等三人の姿しか無かった。
「俺、少し腹筋付いてきたかな」
英史がガッツポーズのように両腕を上げながら、腹を他の二人に晒した。
「どうよ。触ってみてくんね?」
英史が正継の方を振り向きながら言う。
「えっ」
正継は一瞬怯みつつも、恐る恐る英史の腹に指を這わした。確かに、腹筋は固く、そして割れ始めていた。
「うひゃ、くすぐってぇ」
「ご、ごめん」
正継は慌てて手を引っ込め、所在無げとなった自分の指の置き場所を求めて、自分の腹を撫で始めた。英史の腹から目を逸らしながら、正継は呟くように言う。
「お、俺より、付いてきてんじゃん」
「毎晩腹筋やってるもん」
無邪気な英史とは対照的に、正継は困惑の表情を浮かべていた。中学生になってから、他の男子の裸を見ると妙に息苦しさを感じるようになったことに、正継はただただ戸惑いを覚えていた。
その時、教室に素頓狂な声が響いた。
「うわっ、くっせっ」
利光だった。利光は自分の机に座りながら、自分のスパイクを床に放り投げた。
「何やってんだよお前」
正継は苦笑しながら尋ねた。
「四月に買ったばっかなのに、俺のスパイクめちゃくちゃくせぇ」
「そりゃしょうがないだろ。すげー汗かくし」
英史も自分のスパイクを鼻先に近付け、そして顔をしかめた。
「いや、俺の方がぜってーくせぇ」
机から下りて二人に近寄ってきた利光は、変なところを誇りながら、正継のスパイクに手を伸ばした。
「な、なにすんだよっ」
「嗅ぎ比べ」
そう言うと、利光は正継のスパイクの臭いをくんくんと嗅ぎ始めた。
「ばかっ、臭いに決まってんだろーが。やめろよっ」
慌てる正継をよそに、利光は黙ったまま臭いを嗅ぎ続けていた。
「おいっ、利光っ」
だが利光は数秒間無言を続け、そしてポロリとスパイクを取り落とした。利光はどこを見ているか図りかねるような虚ろな表情で、立ち尽していた。その様子を見た正継と英史は、当然ながら利光がふざけているのだと判断した。
「なんだよっ、俺のスパイクそんなに臭いかよっ」
「すっげぇ臭そー。俺にも嗅がせろよっ」
正継は憤慨し、英史は笑った。そして正継が止める間も無く、英史も正継のスパイクのもう片方を手に取り、その臭いを嗅ぎ始めた。正継が異常を察したのはその時だった。英史はスパイクを顔に近付けたまま、利光同様に黙りこくってしまった。
「え、英史?」
正継の呼び掛けに、英史はピクンと一瞬肩を震わせると、スパイクの履き口を自分の鼻と口に力一杯押し当てた。英史は無表情に虚空を見詰め、胸を大きく上下させ始めた。明らかに、正継のスパイクにこもった空気を深呼吸していた。
「ちょ、ちょっとっ、おいっ」
英史の変貌に驚く正継の横で、利光が動いた。
「と、利光っ?」
利光は自分が落としたスパイクにすがりつくように跪くと、スパイクを床に置いたまま、スパイクを両手に抱えて顔を埋めた。
「何やってんだよお前らっ」
正継は英史と利光からスパイクを取り戻そうとするが、二人とも信じられない程の力でスパイクを掴んでおり、引っ張ろうが捻ろうが、顔を離そうとはしなかった。
「ちょっとおいっ、もうほんとにやめてくれよ、ふざけてんなよ…」
数分間の格闘に疲れた正継が泣きそうな声で嘆願した時、二人に変化が訪れた。
「「はい、やめます…」」
英史と利光の二人は揃って返事を返すと、英史はスパイクを正継に向かって差し出し、利光はスパイクを床に置いたまま静かに立ち上がった。英史と利光は頬を紅潮させながら、正継の顔をじっと見詰めてきた。その目付きは普段の二人のものではなかった。正継にすがるように、何かを欲するように、異様な熱を帯びていた。
「ど…どうしたんだよ、二人とも…」
正継は一歩後退った。
「はい。俺は、正継の…正継様の、臭いが大好きです」
利光が一歩正継に近付きながら、答えた。口調は穏かだが平坦で、言葉遣いもおかしかった。
「はい。俺は正継様のことが大好きです。俺は正継様に従います」
英史が利光よりも大股の一歩を踏み出し、正継に近付いた。正継はまた一歩後ろに逃げようとして、誰かの机に行く手を阻まれた。
「俺、抜きたい。正継様で抜きたいです」
「正継様、俺のチンポ、触ってください」
利光と英史は正継ににじり寄ると、各々正継の手首を握り、自身の股間へと正継の手を引き寄せた。
「ちょっ、まっ」
正継の両掌に、固い何かが押し付けられる。サッカーパンツとスパッツに覆われながらも、それが熱を帯びていることは明らかだった。右手には英史の、左手には利光の。
「うわああああああっ!」
正継は大きな叫び声を上げると、二人の腕を振り解き、英史と利光のことを続け様に殴り付けた。二人の体は教室の机を幾つも巻き添えにしながら倒れ込む。
「なんなんだよお前らっ」
怒鳴りながら、正継は自分自身の変化に気付き、驚愕していた。正継の陰茎は勃起し、サッカーパンツを押し上げていた。
「う、うそ…。なんで…」
そう呟きながらも、正継は自覚し始めていた。自分が誰の何に対して欲情しているのか。
「う…」「あ…」
英史と利光が呻き声を上げながら上半身を起こす。正継は二人を殴ってしまった罪悪感と、異常を来たした二人への警戒心とで、そろそろと後退りし始めた。だが、英史と利光はこれまでとはまた違う様子を見せた。
「「すみませんっ」」
二人は慌てて床の上で姿勢を正すと、正継に対して土下座した。
「俺っ、正継様の足の臭い嗅いでたら、すっげぇ気持ち良くなっちゃって…」
「よく覚えてないんすっ。なんかマズいことしましたっ?」
そう言いながら顔を上げた英史と利光の顔付きは、いつもの彼等と変わらなかった。だが、土下座しながら敬語で謝罪する様子はやはりおかしい。
正継はまだやや警戒しながら、そして己れの勃起を隠すために、手近な机の後ろに周りながら二人に尋ねた。
「本当にどうしちゃったんだよ、英史も利光も。なんで俺のこと様付けで呼ぶんだよ」
すると、二人は寧ろその質問自体が不思議だと言わんばかりに首を傾げた。
「なんで、って、俺達、正継様の…、えと…」
言葉を探して、英史の視線が宙を泳ぐ。科白の後を継いだのは利光だった。
「あっ、ほら、あれ、奴隷だから。俺達、正継様の忠実な奴隷だからっ」
「そうそう、奴隷っ。俺達奴隷ですっ」
適した言葉を見付けたことに満足したのか、英史と利光は満面の笑みを浮かべた。正継は、自身の陰茎がビクビクと脈打つのを感じていた。だが、事態をそのまま受け入れるわけにはいかなかった。二人が共謀した悪戯である可能性もあるのだから。
「お前ら、俺のことからかってんだろ」
「違いますっ」「そんなこと無いですっ」
英史と利光が必死な様子で否定する。
「だったら、俺の前でサカパン脱げる?えと…、さっき、二人とも…勃起…してたろ…?」
正継の言葉は尻窄みになったが、一方の二人は弾かれたように立ち上がり、サッカーパンツとスパッツの腰紐を解いて一気にそれらを下ろした。
「ちょっ、おいっ」
まだ小さいもののしっかりと剥けた英史の陰茎、皮を半ば被りつつも毛が生え揃い始めた利光の陰茎。それらがスパッツとの間に我慢汁の糸を引きながら、正継の目の前でそそり立った。正継の喉が、唾をゴクリと飲み下した。
「俺の勃起、正継様に見てもらいたいですっ」
英史は心底嬉しそうに言った。
「オナニーしろ、っつったら、すんの?」
「勿論ですっ」
即座に答えながら、利光は陰茎を握り締めた。
「早く抜きたいですっ」
「オナニーしろって命令してくださいっ」
利光と英史はすぐにでも陰茎をこすり始めそうな勢いでいた。
本物だ。正継は、頭の中で心臓が拍動しているかのような錯覚を覚えていた。勃起した英史の陰茎を見詰める正継の瞳が、微かに左右に震え始める。眩暈だった。英史の勃起が自分の周りを回っているのか、それとも自分が英史の勃起の周りを飛び回っているのか。足が地に付いていない感覚に、正継は一瞬吐き気を催し机に手を突いてうずくまってしまった。
「「大丈夫ですかっ?」」
二人の声が近付き、肩と腕を両側から支えられる。人の温度を肌に直に感じて、正継は我に返った。正継が顔を上げると、不安そうな英史と利光の顔が目に入ってきた。
「あぁ、うん。大丈夫」
正継は落ち着きを取り戻した声で応じると、自力で立ち上がった。もう眩暈は感じない。今はただ、高揚感と万能感が全身に満ちていた。
「二人は俺の奴隷なんだな」
ニヤリと満足そうに笑う正継は、それまでの正継ではなかった。だが、正継自身がそのことに気付くことは無く、英史と利光は従順に正継の言葉を受け入れるだけだった。
「「はいっ」」
「俺も二人を見てたら勃起してきた。一緒にオナニーしよ」
「はいっ」「嬉しいですっ」
「でも、もうすぐ他の部活も終わっちゃうな。なぁ利光、お前ん家、今日の夜はお前しかいないんだろ?」
「はいっ。今晩は俺一人ですっ」
利光の言葉に、正継は思わず舌舐めずりしていた。
「すぐにサカユニ着直して、三人で利光の家に帰るんだ。そこで三人でオナニーし合おうな」
「「はいっ!」」
英史と利光の返事は、悦びに震えていた。
3

利光の家に到着すると、正継は玄関を施錠しリビングルームのカーテンを全て閉めさせた。その上で三人で全裸になると、自身のスパイクを英史と利光に対して差し出した。
「俺のスパイクの臭い、嗅ぎたいだろ?」
「「はいっ」」
既に勃起していた二人は、陰茎を揺らしながらスパイクに飛び付くと片足ずつ手に取り、その臭いを深く吸い込んだ。間も無く、二人の顔から表情が削げ落ち、瞳がゴロンと上へ転がり白目を剥く。陰茎がますます力を得て、大きく高くそそり立った。
「英史と利光、お前らは俺の忠実な奴隷だ」
「「はい。正継様」」
スパイクを鼻と口に当てたままであったため、二人の声はくぐもっていた。
「目が覚めた時でも、お前らは俺の奴隷だ」
「「はい。正継様。俺は正継様の奴隷です」」
「その正継様、ってのはちょっと違和感あんだよな。二人とも目が覚めたら、今まで通りの言葉遣いで、俺のことも正継って呼べよ」
「「はい。正継様」」
「他の奴らには、俺の奴隷であることを知られちゃいけない」
「「はい。正継様」」
「うん、よし。じゃあ、二人とも目を覚ませ」
「「はい」」
二人は何度か瞬くと、スパイクを顔から離した。
「あー、正継のスパイクの臭い、さいこーだ」
「うん。すっげーいい臭い」
正継は利光に目を遣ると、命令を下した。
「利光、オナニーしろ」
「はいっ!」
利光は嬉しそうに大声で返事すると、自身の右手で勃起した利光自身を勢い良くこすり始めた。
「利光、お前が考えてること、全部言いながらオナニーするんだ」
「はいっ。俺、正継の奴隷になれた。正継の奴隷で嬉しい。奴隷は正継が好き。正継で勃起。正継でオナニー」
利光は自分自身の言葉で更に昂り、手の動きを早める。腰が前後に大きく揺れ始めた。
「気持ちいい。俺奴隷。正継好き。勃起。奴隷。俺奴隷。チンポ勃つ。俺オナってる。チンポ気持ちいっ。正継、俺、奴隷、オナニー、チンポ、シコってる、奴隷、チンポ、奴隷、気持ちいぃ、奴隷、俺奴隷正継まさつぐおなにーどれいおれどれいどれいきもちいどれいどれいどれいあぁっ!」
ビュッビュッ、と利光の尿道から精液が吹き出した。
「ああっ出る出てる出てるザーメン出てるよ正継見て見て見て見て俺射精してる射精しゃせいいぃっ」
利光の手は精液を絞り出すかのように動き続け、フローリングの床には白濁した水溜りが広がった。
「あ…あぁ…きもちいぃ…」
射精を終えた利光が呟いた。
「利光、疲れたろ。ソファに座って寝てていいぞ」
「は…い…」
利光はふらふらと後退ると、ソファに体を預けた。首がガクンと前に落ちて、すぐに寝息を立て始めた。
「たっくさん出したなー」
正継が笑いながら英史の方を見遣ると、英史は口を半開きにして涎を垂らしていた。
「英史…?」
「俺も…俺も早く抜きたいよ…なぁ正継、俺、まだ抜いちゃダメ?」
英史の陰茎は我慢汁を漏らし続け、彼の足許には小さな水溜りができていた。
「あ、ごめん。英史には、別のことをしてもらいたんだ」
「何?俺、正継の命令だったらなんでも聞くっ。だから早くっ」
「英史、俺のこと好き?」
正継は英史に近付くと、両手で胸筋と腹筋を撫で回し始めた。英史の顔が一気に紅くなる。
「あっ、んっ、も、勿論、好きっ。大好きだっ」
英史は喘ぎながら応えた。
「女子よりも、俺が好き?」
「うんっ、俺、もう女子とか好きとか思わねぇっ。正継の方が好きだもんっ」
「じゃあ、俺のこと、抱き締めてよ」
「え、あ、うんっ」
英史の腕が正継の背中へ伸び、正継のことを乱暴に抱き寄せた。
「くっ」
正継は一瞬唸りながらも、英史に締め上げられるまま体を委ねた。
英史のチンポが、俺のチンポと触れ合ってる。正継の脳が、一気に沸騰した。
男子同士で全裸の体を密着させ合うことの快感に、正継は目を閉じた。
元々自分も女子のことを好きになるものだと思っていた。どの女子がかわいい、そんな話を男子同士で交わしたことも少なくない。だが、自分自身が精通して以来、自分が目を奪われるものが普通ではないことに気付き始めていた。それは女子の顔や胸や尻や脚ではなく、男子の顔や腹や股間や脚であり、特に胸に奇妙な閊えが生まれるのは、英史のことを考える時だった。
その閊えの理由に気付いたのが、今日だった。正継が好きなのは、英史なのだということに。
正継は英史の背中に腕を回し、力を込めた。
「なぁ英史?」
「なに?」
「俺、英史のこと大好きだ。俺、男なのに男のこと好きになっちゃった…」
「俺も正継のこと好きだから」
「でもそれは、俺のスパイクの臭い嗅いで、おかしくなったからだろ」
「違うっ。いや、分かんない。きっかけは、分かんない。でも、今の俺、正継のこと考えると勃起しまくる。正継と抱き合ってて、すっげぇ幸せ」
「俺達、おかしいよな」
「分かんない。でも、気持ちいい」
二人の腰が上下に動き始めた。
「す、すげっ」「いぃっ」
正継が驚嘆の声を上げ、英史が熱い吐息を吐いた。二人は激しく彼等自身を擦り付け合った。
「あっ、んはっ」「いひっ、いっ」
両手の爪を互いに相手の背中に突き立てる。だが、背中の痛みよりも股間から湧き上がる快楽の方が勝っていた。
「はっはっぁあっ出るっ、出るっ」「んっんひっ、俺もっ、んっ」
二人の動きが一瞬止まり、そして腰が前後に暴れ出した。ビクッビクッと腰を動かす度に、相手の腹から胸へと熱い白濁液を飛散させる。
「あぁぁぁ…」「ふぅ…」
ひとしきり精液を吐くと、正継と英史は再び固く抱き締め合った。二人の間で、二人の精液が混じり合う。
「んなっ」
正継が小さく悲鳴を上げた。英史が正継を床へ押し倒し、今度は頭を抱えながら正継の唇を貪り始めた。一瞬抵抗しかけた正継も、すぐに英史の唇と舌を受け入れた。二人の若い舌が、そしてまだ体毛の薄い脚が、それ自体が独立した生き物のように絡み合う。
チュパチュパという湿っぽい音が暫く続き、そして途絶えた。
「チュウって、気持ちいいんだな」
「チュウってお前。キスって言えよ」
英史に笑われ、正継は恥ずかしそうに顔を背けた。
「なぁ正継」
「なんだよ」
正継は恥ずかしさを隠そうと、顔を背けたままわざと怒ったように応えた。英史は気に留めること無く続けた。
「来週から、サッカー部の一年、全員正継の奴隷にしよう」
「はっ?」
正継が耳を疑い英史の顔を覗き込む。親しくなりつつある部員達の顔が次々と頭に浮かぶ。
「正継は俺達のご主人様なんだから、当然だろ」
いやいや、と正継は首を横に振った。
「今日はたまたまこんなことになっちゃったけど、俺、別にそんなこと望んでな…ンムッ」
英史は唇で正継の口を一瞬塞ぎ、黙らせた。
「一年だけじゃなくて、先輩達だって奴隷にしちゃえばいい。そしたら、みんな男子が好きってことになって、俺達別に変じゃなくなる」
「それは…」
「みんなで一緒にオナニーできる。先輩達も真っ裸になって。な?」
正継と英史は、お互いの陰茎が再び熱を帯びたことを知った。
「でも、俺のことだけは特別扱い…してくれよ」
英史はそう言いながら、また唇を重ねた。二人の腰が横へ縦へと動き始めた。
4

事は簡単だった。一年生のサッカー部員が一人または二人になった隙を突いて、英史と利光が正継のスパイクを顔に押し当てる。それだけで、正継を初めとする男子に劣情を催し、正継に従順に従う奴隷ができあがる。
正継が自身の足の臭いの力を知ってからの二週間で、正継は全ての一年生部員を支配下に収めていた。先輩達が反省会を行なっている金曜の夕方、正継は奴隷と化した部員達を引き連れて空き教室を占拠していた。見張りに立たせた利光と和良の二人を除き、全員が全裸となり、勃起した陰茎を晒していた。英史がその日の汗を吸った正継のスパイクを手に、部員の間を周る。部員達は我先にとスパイクに鼻を突っ込み、臭いによって我を失うと自慰に耽り始めた。最後に臭いを吸引した英史が、正継の陰茎に手を伸ばす。英史は左手で自分自身を、そして右手で正継自身をしごき出した。
「あはぁ…、いいぞ英史ぃ。すっげぇ気持ちいぃ…」
正継は快感に溺れながら室内を見回した。部員達は各々の勃起をこすり上げることに夢中になっており、早くも床を精液で汚しながら果てる者も出ていた。正継は英史と利光を使って得た成果に、満足していた。サッカー部の仲間達は、自分のお陰で快楽と幸福に浸っている。そう確信する正継は、多幸感に包まれながら笑みを浮かべた。
「次は…んっ…先輩…達だ。な…っ?」
正継の言葉が聞こえたのか聞こえていないのか、正継の陰茎を握る英史の指に更に力が入る。快感に顔を歪める正継の目は、高慢に彩られていた。
翌週月曜日の昼休み、五時限目の体育の授業に備えて正継達はジャージに着替えて校庭に出ようとしていた。その正継を一階の昇降口で呼び止めたのは、サッカー部部長の大野裕文だった。
「青木、今ちょっといいか?」
「えっ…はっ、はいっ、なんですか?」
「ちょっと、部活のことで相談があるんだ。技術室まで、いいか?」
裕文は学生服のズボンのポケットに両手を突っ込みながら、技術科室の方向へ顎をしゃくった。
「俺、一人、ですか?」
一年生の部員が一人で部長に呼び出されるというのは、尋常ではなかった。正継は警戒しながら尋ねた。
「うん。一年の部員のことで、ちょっと訊きたいことがあるんだよ。お前、一年部員のこと、よく知ってそうだし」
「分かりました…」
正継は一緒にいた同級生と分かれると、裕文の後に付いて技術科室へと向かった。
裕文の背中を見詰めながら、正継は考えを巡らしていた。一年生のサッカー部員達は、全て奴隷として支配下に置くことができた。よく知っていると言うよりも、正継は彼らを従わせることができる。裕文はそれを見抜いたというのだろうか。まさか。それよりも、今はもしかすると裕文を奴隷化する良い機会なのではないか。教室に一旦戻らせてもらってスパイクを取ってこようか。それとも、上履きの臭いでも奴隷化が可能なのだろうか。一年生で試しておけば良かった。でも、今日この機会を逃がしたとしても、裕文の信頼を得られれば、今後何か理由を付けて二人きりの相談の場を作れるかも知れない。そうしたら、裕文を奴隷に変える絶好のチャンスを得られる。慌てることは無いか…。
裕文に声を掛けられた時に正継の心を覆っていた不安は、いつしか高慢によって塗り替えられていた。
「じゃ、入ってくれ」
校舎の端に位置する技術科室の周囲は、昼休みでも比較的静かだった。裕文が開けた技術科室の入口の扉を、正継は何ら警戒せずにくぐった。
「あっ」
正継の体が強引に引っ張られ、背後から羽交い締めにされたのは、その瞬間のことだった。
「なっ、なんだよっ」
「黙っとけ」
「なっ…」
裕文が鋭い視線を正継に投げ掛けてくる。技術科室の扉が素早く閉められ、施錠される音が聞こえてきた。死角に潜んでいたらしい何人もの人影が、正継のことを取り囲む。皆、サッカー部の二年生三年生だった。正継のことを拘束しているのも、恐らくは先輩の誰かであった。
「先輩っ」
「黙ってろ、っつってんだろ。チンコ蹴り上げるぞ」
裕文の声は低く、それが冗談では済まないことをほのめかしていた。正継は怯え、口を噤んだ。
「お前、一年の部員達に何した」
正継の額から冷や汗が吹き出す。何も応えられない。
「金曜の部活の後、全員でオナニー大会してたろ」
正継は思わず首を横に振っていた。
「嘘つくんじゃねーよ」
裕文の手が正継の喉元を鷲掴みにする。正継の目が恐怖に見開かれた。
「まさか、お前がそんな力を持ってたとはな」
裕文は笑みを浮かべるが、瞳の奥に冷徹な感情を読み取り、正継の膝がガクガクと震え出した。
「おい、あれ、持ってこい」
裕文は横を向き、部員の一人に声を掛ける。声を掛けられた側は無言で、汚れが浮いたエナメル製のシューズケースを裕文に向かって差し出した。
「なんだか分かるだろ、これ」
正継の喉元から手を離し、裕文はシューズケースのファスナーを開けた。裕文が取り出した裕文自身のスパイクを目にして、正継の歯がガチガチと震え音を立てた。その様子を見て、裕文は笑い出し、饒舌になった。
「俺もお前と同じなんだよ。俺の足の臭いで、みんな興奮して俺の性奴隷として生まれ変わるんだ。二年と三年は全員俺の奴隷になってる。一年の連中はもう暫くしてから奴隷にしてやろうと思ってたんだけどな。まさかお前に先を越されるとは思ってなかったよ。でも、手間が省けた。お前を俺の忠実な奴隷に変えれば、一年が一気に俺の奴隷にもなるんだから。今週からは、一年も含めて、全員で反省会、いや、セックス大会できるな。すっげぇ楽しみになってきた」
裕文は傲慢に笑いながら、スパイクの履き口を正継の顔に向けた。正継は首を横に振って拒絶しようとする。
「どうしたんだ、青木」
裕文の背後から、大人の声が上がった。技術科の教諭でありサッカー部顧問の川崎だった。
「せ…せんせぇ…」
正継は助けの手が現われたものと期待し、枯れた声を上げた。
「ダメだろ、部長の言うこと聞かないと。ちゃんとスパイクの臭いを嗅いで、奴隷にしてもらうんだ」
川崎はいつもと変わらない調子で、教師らしからぬことを口にした。
「そ…そんな…」
正継の全身が脱力する。
「川ちゃんも俺の性奴隷になってんだよ、もう」
裕文は勝ち誇る。
「川ちゃんのチンポ、でかくて太くて固くて、すげぇんだ。フェラだってうまいし。な、川ちゃん」
「はい、裕文様。ありがとうございます」
教師が、生徒に対して頭を下げている。その様子に絶望した正継の顔に、裕文がスパイクを押し当ててきた。
「んっ」
咄嗟に逃げようとする頭を横から誰かに押さえ付けられ、正継の鼻孔にツンとした臭いが充満した。
「すぐに気持ち良くなんだから、ほら、深呼吸してみろ」
裕文の言葉を、しかし、正継は聞いていなかった。嫌な臭気の筈であったスパイクの臭いが、すぐに香ばしく、そして甘いものへと変わったように感じられたからだった。裕文に指示されるまでも無く、正継は勢い良く息を吸い込み始めていた。気持ちが楽に、頭が軽くなるような、そして全身に力が満ちる臭いだった。正継は深く呼吸を繰り返すようになっていた。その臭いは、確かにスパイクにこびりついた足の臭いであったのだが、嫌な臭いではなかった。いつまでも吸っていたくなるような、素晴らしいと思える臭いだった。
「もういいだろ」
裕文がそう言いながらスパイクを離した。
「あ…」
もっと吸っていたい、とでも言いたげな顔で、正継は虚ろな視線を裕文の顔に送る。正継を拘束していた腕の力が緩む。
「大野先輩…」
正継は裕文に自ら一歩近寄ると、頭を垂れた。
「ありがとうございます」
裕文の手が正継の頭に置かれる。
「こんなに…気持ちいいなんて…知りませんでした。俺…奴隷になれて嬉しいっす」
「下、脱いでみろ」
「はい…」
正継はジャージのパンツと体操服の綿ポリのパンツの腰紐を解くと、トランクスも含めてそれらを膝下まで下ろした。正継の陰茎は、裕文に向かって勃起していた。
「いいチンポだな」
「はい…ありがとうございます…。俺…大野先輩のことが大好き…です。大野先輩で…抜きたいっす…」
「柴田のことはどうすんだ?」
裕文は英史の名前を持ち出した。
「それは…英史は…前から好きだった…けど…」
戸惑いを見せる正継に対し、裕文は急に優しげな表情を見せた。
「お前は俺の奴隷だ。だけど、柴田のことも大事にしてやりな。お前は俺の後継者になるんだから」
「俺…後継者…?」
「そう。お前で良かったよ」
そう言いながら、裕文は正継の頭を少し乱暴に撫でた。
「ほら、俺に見られながら抜いてみろよ。抜いた瞬間、お前は俺の奴隷として完成する。そしたら、後は俺の命令通りに行動するんだ」
「はい…抜きます…俺は…大野先輩の奴隷です…」
正継は勃起した陰茎を握り、前後に動かし始めた。虚ろな顔が、無表情なままで紅みを帯びる。
「…はっ…あっ…俺…俺…抜いたら…奴隷…奴隷…完成…するっうっ…」
技術科室のコンクリート打ちっ放しの床に、正継の精液が散った。
その週の金曜日の部活動では、サッカー部は変則的な動きを見せていた。一年生の部員と顧問が先に校庭から姿を消し、暫くしてから先輩部員がその後を追った。
毎週金曜日にサッカー部が反省会として利用している技術科室の扉を、二年生と三年生の部員達が取り囲んでいた。部長の裕文が扉をノックする。扉の小さな窓から顧問の川崎が顔を覗かせる。ノックの主を確認すると、川崎は鍵を開け部員達を教室内に招き入れた。
そこには、上履きと赤いサッカーストッキング以外は何も身に付けず、勃起した陰茎を晒した一年生部員が、直立不動で整列していた。
一人の一年生が、二年生三年生の先頭に立つ裕文の前に進み出て、一礼した。
「裕文様。ご命令通り、全員に俺のスパイクの臭いを嗅がせ、整列させました」
他の一年生部員を奴隷として支配しながら、自らは裕文の奴隷に堕ちた正継だった。
「裕文様のスパイクを貸してください。これから、一年生部員を裕文様の奴隷として生まれ変わらせます」
「ここまでは命令通りだな。よくやった」
「はい。ありがとうございます」
勃起した陰茎を揺らしながら、正継は深く頭を下げた。
他の部活動が校庭から引き揚げ始めた頃、技術科室の中には正継と一年生達の声が響いていた。
「お前達は、俺と裕文様の両方に仕える奴隷だ」
「はい。俺達は、正継様と裕文様に仕える奴隷です」
「お前達は、俺と裕文様に対して忠誠を誓う」
「はい。俺達は、正継様と裕文様に対して忠誠を誓います」
「お前達は、サッカー部の部員同士でセックスすることが大好きだ」
「はい。俺達は、サッカー部の部員同士でセックスするのが大好きです」
自分の指示通りに一年生部員を洗脳する正継の横顔を見詰めながら、裕文はサッカーパンツの中の自分自身を屹立させていた。
「オナニー以外の気持ちいいこと、教えてやるよ。ザーメンの美味さとか、ケツの穴の気持ち良さとか」
裕文は正継の尻に目を遣り、舌舐めずりした。
5

七月の期末試験を前に、部活動は停止され、放課後は勉強の時間ということにされていた。
正継は黒く空いた肛門から白濁液をダラダラ垂らしながら、快感に泣いていた。
「裕文様っ、今日も良かったっすっ。もっと、もっとザーメンくださいっ」
「淫乱野郎。今日の分は終わりだっつーの。早くトイレでザーメン出してこいよ。今日の勉強始めんぞ」
「でもっ」
「平均点80点超えないと、もうセックスしてやんねーぞ」
「は…はい…」
正継は勉強を教えてもらうという名目で、部活動停止期間中は毎日裕文の家に通っていた。
「小テスト、どうだった?」
「はいっ、毎回90点以上取れるようになってきましたっ」
正継は毎日性欲を満たされ、また勉強への集中を裕文によってコントロールされることで、確実に学習の成果を上げていた。期末試験では、惨憺たる結果だった中間試験に比してかなりの点数向上を見込めた。裕文の計画通りに正継が行動し続ければ、正継は教師達からの信頼を得て、干渉を受けること無くサッカー部を自由に操れるようになる。
それが、それなりの成績を修めてきた裕文の成功体験に基く方針だった。裕文はサッカー推薦の候補となることを自ら断わり、通常の入学試験で上位校を狙う予定でいた。麻薬のように他人を虜にできる自身の力をどう活用するか、更には正継という同様の力を有した後輩をどう自分の元へ取り込んでおくか、裕文は静かに昏い計画を練り続けていた。
そのためには、些細な穴にも油断はできなかった。
「正継、お前、最近の中澤のこと、分かってるか?」
トイレから戻ってきた正継に、裕文は尋ねた。
「はい。和良のことですよね。あいつ、最近部活をサボり続けています」
正継は少し困ったような表情を見せた。
「洗脳が解けてきてんじゃないのか?」
「はい。そうかも知れないです。しっかりした奴だから見張りによく立たせていたんですが、その分洗脳の機会が少なくなってしまいました。それが原因じゃないかと思います」
「体質的に俺達の臭いが効きにくい奴もいるからな」
「はい。期末試験最終日の部活解禁の日に、徹底的に仕込み直します」
「絶対に逃がすなよ」
裕文の目は冷たく、それに応じる正継も、裕文同様の冷徹さを瞳に湛えていた。
「はい。勿論です。英史達に指示し、準備を進めています。第二体育倉庫、使ってもいいですか?」
「あそこでやんのか。いいぞ。どうせサッカー部しか使ってないし。ただ、ノロノロしてんなよ」
「はい。分かりました。ありがとうございます」
力強く応える正継に対し、裕文も頷いて見せた。
「じゃ、勉強始めるぞ。俺の声を良く聞くんだ」
「はい。裕文様」
フッと正継の顔から表情が消える。今や正継の心身の全ては、裕文のコントロール下にあった。完全な奴隷へと変えられた姿、だった。
期末試験を終えた日、中澤和良は図書室で時間を潰してから、他の生徒の目が少なくなったことを確かめた上で昇降口へ向かった。もうサッカー部とは関わりたくなかったから、部活動が始まる時間を避けて下校するようになっていた。
今のサッカー部はおかしい。和良は気付いていた。部長の裕文と、同じ一年生の正継が、他のサッカー部員達を支配し、洗脳し、変態的な行為を強いている。支配されたサッカー部員達は、裕文と正継に逆らえなくなり、二人のチンポを大喜びでしゃぶり、自分達も人前でオナニーしまくるようになる。
その異常さに、ある時和良は気付いてしまった。そして、自身もそうした行為を耽っていたことに嫌悪と憎悪を抱き、今では勃起したり自慰を行なうことすらできなくなってしまっていた。
だが、何故そんな事態に陥っていたのか、それが裕文と正継のスパイクの臭いのためだなどと、訴えたとしても信じてもらえるとは思えなかった。顧問の川崎すら裕文と正継の支配下にあって、変態行為に参加している。こうしたあまりにも荒唐無稽な状況に対して、和良はただ一人忌避する他無かった。
下履きのスニーカーに履き替え、校門に続く通路に出たところで、和良は全身に水を浴びせられたような感覚に震えた。サッカー部のユニフォーム姿の一年生達が、自分の周囲を取り囲んでいた。
「あれ?なんでユニ着てないんだよ、和良」
「これから校庭で部活だぞ」
「先輩達も待ってるよ」
「ほら、早く来いよ」
口々に言いながら、部員達は包囲網を狭めた。やがて和良は、首と肩に両側から腕を回され、通学鞄を奪われ、拘束されてしまった。
「声上げんなよ。痛い思いはしたくねぇだろ?」
英史が、正面から和良の顔を見据え、低く言い放った。
「お前ら…おかしいよ…今のサッカー部、異常だって…グハッ」
和良の腹に英史の膝が入っていた。
「裕文様と正継様に忠誠を誓わない、お前の方がおかしい」
英史の瞳は昏かった。入部した頃の英史は、こうではなかった。
「静かにしてりゃ痛くしねぇよ。ちょっと付き合ってくれりゃいいんだよ」
英史は和良に背を向け、和良を拘束した部員達を先導する。その行き先は、校庭に設置された二つ目の体育倉庫だった。そこには部員達の支配者である正継が待機していた。和良は、正継の指示によって全裸に剥かれ、テーピングやスパイクの靴紐によって縛り上げられることになる。そして、拒絶虚しく、スパイクの臭気によって再び奴隷へと、完全に堕とされることになる。
部活動の時間が終わりに近付いた頃、第二体育倉庫の扉が開けられた。その中には、本来はサッカーのために作られた道具によって拘束された全裸の少年が一人、置き去りにされていた。二つの人影が、全裸の少年に近付く。一人が屈み込み、頭部に巻き付けられていたベルトを外すと、少年の顔に当てられていたスパイクが床へと転がった。次いでもう一人も屈み込み、少年の口に詰められたサッカーストッキングを引き抜くと、股間で固く勃起した陰茎を握り締めた。
「あ…」
全裸の少年が吐息を漏らした。
「和良、聞こえるか?」
声の主は正継だった。スパイクを拾い上げ、正継は呟く。
「お前にこの臭いを嗅がせるために、今日はわざわざ先輩から別のスパイク借りて履いてたんだからな。感謝しろよ」
「う…ん…」
「中澤、気分はどうだ?」
もう一人は、裕文だった。和良の勃起を握りながら、尋ねる。
「あ…んん…、ま…正継…様?」
和良は頭を持ち上げ、逆光で黒く影になった人物のことを見上げる。
「うん。俺だよ」
正継の応答に、和良が狂ったように喚き始めた。
「正継様っ、すみませんでしたっ、俺、奴隷にしてもらえたのにっ、逃げてましたっ。俺、頭おかしかったですっ。俺、奴隷なのにっ、正継様に忠実な奴隷なのにっ、裕文様の臭いも嗅がせてもらったのにっ、俺っ、今凄く嬉しいっす。俺勃起してるっ。俺っ、正継様から逃げてる間、勃起できなくなってましたっ。逃げてたせいっすっ。もう俺逃げないっ。逃げないで正継様にオナニー見てもらいたいっすっ。裕文様にケツ掘ってもらいたいっすっ。俺、俺ほんとっ、すみませんっしたっ」
正継と裕文は顔を見合わせ、ゆっくりと唇を歪ませた。それは笑いだった。
「こいつはもう大丈夫だな。よくやったな、正継」
「はい。裕文様。ありがとうございます」
二人をよそに、和良は泣き喚き続ける。
「俺のことっ、犯してっ犯してくださいっ。ご主人様に従わなかった奴隷の俺をっ、罰してくださいっ。俺の体は正継様と裕文様の物なのにっ、俺の体にっ、ご主人様のザーメンくださいっ」
「いいよ。全員でぶっかけてやる」
正継は、嬉しそうに、しかし冷淡に、応えた。
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