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  • 2014⁄01⁄28(Tue)
  • 01:28

君といた夏

大ちゃん!キャッチ・ボールやろうぜぇ、キャッチ・ボール!!」
 昼休みを告げるチャイムが鳴ったと同時に、俺たちは職員室になだれ込んだ。
 入口近くに設けられた臨時の席で、給食にがっついていた大ちゃんをせかして、まんまと外に連れ出す。
 校庭の隅でヘチマ棚の手入れをしていた校務員のおじさんが、水撒きホース片手に何事かと俺たちのほうを眺めていた。
 福島県南会津郡檜枝岐村(ひのえまたむら)――――駒ケ岳と帝釈山の麓にある全校生徒数わずか8名の中学、それが俺たちの学校だ。
「大ちゃん!きのうもいったけんど、手加減は無用だからな。思いっきり投げてけろ!」
 俺はキャッチャー・ミットをポンとたたいて、ホームベースにしゃがみ込んだ。
から……」
 大ちゃんの説明に聞き入りつつ、俺たち3人は四苦八苦しながら、初めての緊褌にチャレンジした。
 しかし、六尺の布はあまりに長く、思い通りに締められない。何度も外したり締め直したりを繰り返すうちに、チンコの先の敏感な部分がサラシにこすれ、微妙にくすぐったい。そのうちにぴくぴくと成長を始めてしまい、俺は股間を押さえたまま大ちゃんに背を向けた。
「んあぁ!もう、出来ねぇよ」
 後輩の2人も悪戦苦闘しているようで、イラついたようにうめいている。
「しょうがねぇな。そんなゆるフンじゃ、川に入る前に解けちまうだろ。俺がやってやるよ。彰太、まずお前からだ」
「えっ、おら……?」
 驚く暇もなく、いきなり大ちゃんが俺の前に現れ、勃起しかけたチンコを包んだ褌を、サッと引き抜いた。
「あっ!」
 幸い、後輩たちには背中を向けて立っていたため見られなくて済んだものの、大ちゃんにはバッチリ見られた。半勃ちになった俺の包茎チンコと、こんもりと生えたチン毛の丘を。
 恥ずかしさでうつむいた俺の顔が、チンコからわずかにのぞいた先っぽの色に負けないくらい、真っ赤に染まった。
「す、すまん、彰太……」
 大ちゃんは即座に謝りながら、手早く俺の体に六尺を締め始めた。
(見られたものを悔やんでもしょうがねぇべ。相手が大ちゃんなら、別にええか……)
 そんなふうにすぐにあきらめて、俺は大ちゃんの手さばきをじっと目で追っていた。
 きりりと締め上げた大ちゃんの粋な六尺姿が、右に左に、俺の目の前を動いている。立ったりしゃがんだりするたびに、六尺からはみ出た大ちゃんのチン毛が、股ぐらでからんだりほどけたりを繰り返している。大きく発達した尻の筋肉も、コリコリとした太腿も、どれを取ってもいまの俺にはないものばかりだった。
(大ちゃんの六尺姿、カッケぇぇべなぁ……)
 それまで半勃ちだった俺のチンコが、そこでいきなりグググッと急成長した。大ちゃんが見つめる前袋の中で、天を突いて猛然と反り返ったのだ。
「彰太のチンコ、元気だべなぁ……」
 大ちゃんはほかの2人には聞こえないような小声でいって、俺をからかった。
 大ちゃんだけに知られてしまったチンコが勃ったところ……。大ちゃんだけに見られてしまった俺のチン毛……。それはどこか、ふたりだけの秘密めいた出来事でもあり、それを大ちゃんと共有できたことが俺はなんだかうれしかった。
 真っ青に晴れ渡った一日の終わり、次第に低く傾いてゆく太陽の上を、小さな雲がすぅーっと流れて、また周りが明るくなった。
「よし!いっちょ上がり!!」
 大ちゃんが俺の尻っぺたをパチンと鳴らして、ほかの2人のところへ移動した。
 慣れた手つきで2人の褌をてきぱきと締め上げる大ちゃんは、やっぱりすごく頼り甲斐があり、カッコよく思えた。
 準備が出来た俺は、さっそく川に駆け込んだ。
 1年生の後輩たちも、少し遅れて入って来た。
 見慣れない六尺姿で水飛沫を撒き散らし、ワイワイはしゃぎながら大声で歓声を上げていた。
 初めての六尺褌の締め心地は、案外悪くなかった。固くねじった縦みつのコブがケツの穴に食い込みそうで、それだけがちょっと気になったほかは、いたって爽快そのものだった。
 大ちゃんが大きなケツを太陽にさらして、誇らしげに笑っている。水に濡れた前袋に大ちゃんのチンコがくっきりと浮き上がっている。
(あぁ、おら、チンコが勃ち過ぎて痛ぇべな……。締め付けがキツいんで小さくならねぇっぺな……。んだどもこの刺激、気持ちええよ。クセになりそうだべ……)


 俺たちの町には温泉がある。それも、いたるところで湧いている。
 大ちゃんが借りているこの宿舎にも、長い水路を利用して温泉のお湯が引かれていた。
「俺も入るぞぉー」
 堂々と脱衣場に入って来て、さっさと大ちゃんが服を脱いでいく。大ちゃんの家だから、当たり前なんだけど、俺たちが見つめる好奇の視線もなんのその、ズボンを下ろしてあっという間に六尺褌を取り去った。
 真っ白な六尺の内側の、真っ黒な茂みと褐色の肉、ものすごくぶっとい大人のチンコが、再びごろんと、俺たちの注目を集めた。
「何をじろじろ見てんだ。お前らも早く脱げ!」
 大ちゃんの鶴のひと声に、俺たちはたちまち我に返って丸裸になり、タオル片手に大ちゃんの待つ浴室へと転がり込んだ。
 川遊びの最中、ふいに1年生の貴志がいったのだ。
「大ちゃん先生、先生のうちさ、こっから近いんだっぺか?」
「おぅ?おぉ、近いぞ。目と鼻の先だ。……寄ってくか?」
「ええっぺか?」
「ええぞー、来い来い。皆で来い。温泉もあるぞ」
 それで決まりだった。
 温泉が湧く村に育ったせいか、人前で裸になることにあまり抵抗を感じたことはない。それでもチン毛が生えかけた小5の終わりくらいから、手やタオルで股間を隠して入浴するようになっていた。
 湯治場といっても、こんなに山深い田舎の小さな村だもの。村営の温泉に入りに来るのは数人の物好きなバイク乗りと、顔見知りばかりと相場が決まっていた。
 いつ、どこの誰それが入りに来るか知れたものじゃない。
 三浦の彰太はチン毛が生えたと、真っ先に学校ではやし立てられるのは、やっぱり気恥ずかしいことだった。
 その時からの癖で、中2になった俺はいまも、タオルや手で股間を隠しつつ、公衆の面前では風呂に入るのだ。
「こら、掛け湯もせずにいきなり入ろうとするヤツがあるか!」
 仲間のうちの山田の貴志が、大ちゃんに呼び止められた。
 股間を手で押さえているのは俺ひとりで、1年坊主のほかの2人はまったく隠してなどいない。何気なくその辺りに目をやると、思ったとおり、やはりまだほとんど無毛状態だった。
 目の前にいる大ちゃんはいうまでもなく、アマゾンの密林を絵に描いたようなジャングルぶりで、俺たちの衆目にあってもひとつも動じるふうでもなく、平気でぶらぶらさせている。大学生ともなると、皆そうしたものなのだろうか。
「ええか。入浴の前の掛け湯は、当然のエチケットだぞ。こんな家庭の風呂場でも、それはおんなじことだ」
 大ちゃんは両腿を開いて洗い場にしゃがむと、手桶に汲んだ湯を股間に掛けながら、チンコとケツを交互にゴシゴシ洗い始めた。
 毛むくじゃらの金玉が太ザオといっしょに、大ちゃんの股間でぐらぐらゆれる。
 俺たち3人は身動きもせず、キューピッドの魔法の矢で胸を射抜かれた少年のように、成熟したオスの魔力から目が離せないでいた。
「さ、お前らもやってみっぺ。恥ずかしがる必要などまったくねぇぞ。俺もお前らも同じ人間、同じ男なんだからな!」
「はい!」
 俺たちは声をそろえてうなづいた。
 そして俺も洗い場にしゃがんで、順番にケツとチンコを洗った。
 こんもりと生えそろった俺の股間に、ほかの2人の視線が痛いくらいに突き刺さった。それでも俺はおめることなくチン毛を披露し続けた。だって大ちゃんもずっと俺たちの前に披露し続けているのだから。
「よぅし。洗い終わったヤツから湯船に入れ。俺もいっしょに入るぞ」
 家庭用の風呂場にしては脱衣する場が広いし、湯船もすごく大きかったりするのが最初は不思議に思えたが、そもそもこの建物が教員専用の宿舎であったことを思い出せば、おのずとうなづけることだった。何年か前から子供の数が激減し、宿舎を利用する教師も減って、この建物そのものが使われなくなっていたものだから、俺たちもすっかり忘れていた。
 聞いた話によると、今回、大ちゃんが5年ぶりの利用者で、おそらく最後の住人になるのではないかということだ。すでに中学の廃校が決まっているとあっては致し方ないのだが、まだまだ使える建物だけに惜しい気がした。
「なぁ、彰太。チン毛が生えとると、お前恥ずかしいか?」
 唐突に、大ちゃんが訊いた。
 俺はちょっと戸惑った挙げ句、
「う、うん……」
 皆の前でうなづいた。
 もう中学2年なのだし、ほかのヤツらも薄々感づいていたとは思う。でも俺がひた隠しにしていたから、川遊びの時も、それ以外の時も、こいつらはこいつらなりに俺に気を遣って、そんな話題は一度も出さなかったのだ、きっと。
「なぁ、お前ら。男はな、遅かれ早かれ、いつか必ずチン毛が生えてくるものなんだ、モッサリとな。いつまでも生えなかったら、そっちのほうが恥ずかしいだろ?」
 湯船の上で、少年たちのイガグリ頭が小さくうなづく。
「俺は小5の時だったな……。チン毛が生えたら、堂々と周りに見せてやったらええんだ。どうだ、俺も一人前の男になったぞ!!ってな」
 ザザァーという大きな飛沫を撥ね上げて、大ちゃんが湯の中に立ち上がった。そのまま浴槽の縁に腰を下ろして、じっと俺たちを見据えた。
 お湯に濡れた大ちゃんのチン毛はいっそう黒味を増し、艶やかに妖しく照り輝いている。俺たちは熱い視線をいっせいにそこに注ぎ込み、なおも食い入るように見つめた。
 頭のムケ上がった大人のチンコが、ポタポタと雫を垂らしながら、先端のひとつ目でジロリと俺たちを睨んでいた。
 ふっくらとした張りとボリュームを備え、それでいてシミひとつない肉色を帯びた、とても柔らかそうな大ちゃんの頭は、思わず手で触れてしまいそうなほど魅力的に映った。
 ほかの2人の1年生たちも、大ちゃんにならって浴槽の縁に並んで腰掛けた。
 出来ることなら、俺もそうしてみたかった。でも、出来なかった。大ちゃんの特大チンコをガン見した時から、俺の包茎チンコが痛いほど勃っていたから。
「彰太、どうした。顔が真っ赤だぞ。早ぅ、お前も上がって来い」
 このままじっとしていてもおさまる気配はない。俺は仕方なしに湯船の中に立ち上がった。
「あっ!!彰太先輩のチンコ、勃っとる!!」
 チン毛に引き続き、またもや後輩たちの注目を浴びてしまった。
「こらこら、お前らも中1なんだから、もうわかるだろう。男は気持ちが高ぶった時や、気だるく感じた時なんかに、自然とチンコが勃つもんなんだぞ。男が男であるために、それはとても大事なことなんだ」
 俺の勃起にじっと視線を差し向けつつ、大ちゃんは諭すようにいった。そして、さらに厳かに続けた。
「それからな、もう始めとるヤツもいるかと思うが、こうして……柔らかなチンコを手の中に包んで、軽くしごくだけでも……」
 大ちゃんはそういいながら、自らのモノを握り締め、ゆっくりと上下にしごき出した。それはすこぶるさりげない空気の中で自然に始められた行為だったが、初めて目にする妖しげなその手の動きには、なぜだか無性に俺の気をそそるものがあった。
 先端の包皮がズルムケになった大ちゃんの大人のチンコは、縦に長く横に太く、みるみるうちに大きく膨らみ、立ち昇る温泉の湯気にまぎれてグングン背伸びをしていった。
「ほら、どうだ。見ての通り、手でしごいても男のチンコは硬くなる。これが女の体に入って、可愛い子供をつくるんだ。ええか、彰太のチンコが勃ったのはな、彰太の体が一人前の男になったという証拠なんだぞ。何も恥ずかしがることはねぇ、少しも不思議じゃねぇんだぞ」
 下腹部すれすれに垂直にそそり勃ったどデカいモノを、指先でピンっと弾いて、大ちゃんはきっぱりといった。
 俺たちはポカンと口をあけたまま、唖然として大ちゃんのチンコに見惚れていた。
 あまりにも神々しく、かつ、ふてぶてしげな大人の勃起チンコというものに生まれて初めて遭遇し、呆然となっていた。
 大ちゃんの勃起チンコに誘発されたのか、1年生2人の包茎チンコも、ぐいっ、ぐいっと着実にリズムを刻んで頭をもたげ始めた。そして、あっという間に一人前の男の片鱗を大ちゃんの前に見せつけたのだった。
「よぅし、貴志も和男も、立派な男になったんだべな!!」
 浴槽の縁に腰掛けたまま、大ちゃんは2人を見て爽やかに笑んだ。
「そうだ。皆で背中の流しっこやろう!!さぁ、上がった上がった!!」
 大ちゃんはうれしそうにそういうと、列の先頭に俺を立たせて、すぐうしろに自らが並び、1年2人をそれに続かせ輪になって洗い場に座った。
「前のヤツの背中を思いっきりこすってやれ。垢がたくさん出るように、力いっぱいタオルでこするんだ!!準備はええか。じゃあ、始め!!1、2、3、4……」
 陽気でやさしく、屈託なく、爽やかな実習生だった大ちゃん。しかし、教育者としてはまだまだ未熟な21歳の導き方は、時に強引で荒っぽいものだったかもしれない。
 けれども、これだけはいえた。
 全校生徒数わずか8人という山里の小さな中学の、平凡かつ閉鎖的だった3人の男子に、彼らが本来あるべきおおらかさとより強い精神を解放してあげたこと、そして、いつまでも忘れ得ぬ牧歌の思い出を、彼らの胸に鮮明に刻み込んだことも……。


「大ちゃん。明日、大ちゃんうちさ泊まりに行ってもええだか?父ちゃんも母ちゃんも、先生んちならええよってゆってくれたんだ」
「おぅ、俺んちに泊まるか?ええぞぉ、来い来い。飯食わしてやるから、夕方に来いよ」
 大ちゃんがふたつ返事でそういってくれた時、俺はとてもうれしかった。万が一、断られたらどうしよう、そればかりを考えて過ごしていたからだ。
 3週間という期限付きの実習期間も終わりに近づいた、7月中旬の金曜日のことだった。
 いつの間にそんな存在になっていたのか、俺の中で大ちゃんは、実の兄弟以上に身近な存在になっていた。
 そんな大ちゃんともっとたくさんいっしょにいて、もっとたくさん話がしたいと純粋に思っていたのだ。
 中学から歩いて2、3分のところに、大ちゃんの宿舎がある。木造平屋建ての日本家屋だが、周囲は田畑に囲まれていて近所に住む隣家もない。
 建物の所有者はこの周辺一帯の地主なのだが、管理そのものは民間の不動産が代行して行なっている。いまは大ちゃんより他に住人もおらず、俺たちが訪ねるのになんの気兼ねもいらないというわけだった。
「大ちゃーん、来たよー」
「おっ、よく来たなぁ。彰太ひとりか?」
「うん。ほんとは1年のヤツらも誘おうと思ったんだけんど、大ちゃんを独り占めしたかったんだ。ダメかい?」
「ダメじゃないぞぉ~。お前なら大歓迎だ。さ、早ぅ上がらんしょ」
 そういって迎えに出て来た大ちゃんは暑いのか、すでにして六尺褌いっちょうだった。
 コリコリした筋肉質の大きな尻っぺたを左右にゆらして、大ちゃんは奥へと俺を先導してゆく。
 板敷きの広い玄関を上がると、すぐに畳の居間があった。その部屋の襖から先に細長い廊下が伸びていて、同じような和室が左側に3部屋と、右側は庭になっていた。要するに、同時に3人までは独立して居住できるものらしい。
 廊下をどんどん進んで行って、突き当りのガラス扉がトイレ、くの字に曲がった廊下の左側に風呂場と物置、その反対側が台所兼食堂になっていた。
「うわぁ、ええ匂いがするなぁ!」
 台所に通されると、とたんに俺は叫んだ。
「カレー作ってたんだ。すぐに食わしてやるから、椅子に座って待ってろ」
 六尺姿の大ちゃんが、背中を向けて鍋のカレーをかき混ぜ始めた。
 俺はいわれたとおり、台所の椅子に座ってそれを見ていた。
 調理道具を収めた水屋の横に小窓があり、庭先に置いた洗濯機が目に入った。台所の入口に目線を移すと、真向かいにある風呂場のガラス扉があいていて、無造作に脱ぎ捨てられたシャツやズボンが洗濯カゴいっぱいになっている。
「今日は暑いなぁ。フェーン現象かなんかかな」
 カレーをぐるぐる煮つめながら、大ちゃんが首に巻いたタオルで額の汗をぬぐっている。
「彰太も暑いだろう。麦茶でも飲むか?」
「うん!」
 テーブルにコップを置くと、冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出してゴボゴボと注いでくれる。
「水出しじゃねぇぞ。ちゃんとヤカンで煮出したお茶だからな。ほれ、飲んでみっぺ」
「いただきまぁーす」
 鼻先に漂う香ばしい匂い、冷たい喉越しの褐色の液体が、さらさらと流れて胃の中に入った。
「うめぇなぁ。よう冷えとってうめぇよ、このお茶」
「んだべ?」
 コンロに張り付いた大ちゃんが、自慢そうに笑った。
 庭のほうからニイニイゼミの泣き声が響いてくる。洗濯機の小窓のそばにオニヤンマが1匹飛んで来て、水道の蛇口に止まった。
 虹色の大きなメガネで、俺のほうをじっと睨んでいる。
「大ちゃん、洗濯手伝おうか」
「はい?」
「あれ、風呂場の中のカゴん中、洗濯物だっぺ?」
 そっちのほうを指差して、俺はいった。
 カレーをまわす手を止めて、大ちゃんが笑う。
「ありがとうな。けど、そんなことしなぐでもええから。彰太は、今日はお客さんなんやから」
「何かしてあげたいんだよ、大ちゃんに……。おら、こう見えても家で手伝いやってんだ。柔軟剤のやり方だって知ってんだぞ」
 自慢げにいいながら、俺はついっと立ち上がり、風呂場に向かう。
「あっ、ちょっと彰太、それは……」
 近くでカゴをよく見ると、白い布切れがたくさん、下のほうに突っ込んである。見覚えのあるそれらは皆、大ちゃんの六尺らしかった。
「なぁ、大ちゃん。大ちゃんは、パンツ持ってねぇのか?」
「2、3枚なら持ってるよ。でも、ここじゃめったに穿かねぇな。いつもたいがい六尺なんだ」
「へぇー……。大ちゃんのフンドシ、ぜんぜん汚れてねぇべな。おらのパンツなんか、小便とかウンコとか、ネバネバした小便とかで汚れとるのに……」
「えっ、ネバネバした小便?」
「うん。朝起きると、たまに漏れてんだ。乾いてカリカリになっとることもあるし」
「お前それ、夢精じゃねぇのか?」
「ムセイ?」
「あぁ、保健の授業で習わなかったか?眠ってる間に起こる射精のこと」
「シャセイ?よく覚えてねぇべよ、そんなの」
「ダメじゃねぇか。大事なことなんだぞ……ってお前、射精を知らねぇってまさか、オナニーを知らないわけじゃねぇんだろ?」
「オナニー……、なんだっぺ?それってエッチなことだべか?」
「エッチなことかって、お前あのなぁ……。中2の夏で、そんなこともやってねぇのかよ。ちょっと遅れてるぞ、彰太」
 大ちゃんは唖然として、ため息をついた。
 俺は洗濯カゴを風呂場に残して、ふたたび台所に戻った。
「大ちゃんは……やってんのか?そのオナニーっての」
「もちろん、毎日やっとるさ。やらねぇから、夢精するんだぞ」
「ふぅん。そんな大事なもんだべかぁ、オナニーって……」
「まぁ、しょうがあんめ。とりあえず飯だ。さ、カレーが出来たぞ。今日のカレーはほうれん草と茄子と牛肉を使った俺の特製カレーだ。うんめぇぞぉ、腰抜かすなよぉ」
 テーブルに鍋を運びつつ、大ちゃんはうれしそうにいった。
 丸くて大きくて平らな皿に、真っ白なご飯を山盛り積んで、たっぷりとカレーをかける。
 扇風機のスイッチを入れて椅子に並んで腰掛け、手を合わせてさっそくパクリとひと口食べる。
「うんめぇ!!何これ、すんごくうんめぇ!!」
「んだべぇ~。ゆうべから時間をかけてゆっくり煮込んだんだからな」
「ゆうべから、おらのために?」
「もちろん、彰太のためにさ。ほら、遠慮しねぇで、腹いっぺぇ食わっせ」
「うん。こんなうんめぇカレー、おら初めて食っただよ。料理も出来るなんて、大ちゃんはカッコええ兄ゃだべなぁ~」
 庭先にいたはずのオニヤンマの姿がいつの間にか消えていなくなり、ニイニイゼミとカエルの鳴き声だけが浪々と聞こえていた。
 空の中ほどに青々と輝く帝釈山の山陰が、いよいよ極みゆく夏の香りを辺り一面に振りまいている。
 額に流れる汗のしずくを首にまわしたタオルで何度も拭きつつ、スプーン片手に俺たちは黙々とカレーを食べていた。


 日没になり、茜がかった山陰が漆黒の宵闇に染まりだした頃、大ちゃんはせっせと風呂の支度を始めた。
 年がら年じゅう絶えず温泉が流れ込んで来る贅沢な湯船に、硫黄の匂いがかすかに立ち込めている。
 この大きな湯船を大ちゃんとふたりだけの貸し切りに出来るなんて、俺は少し考えただけでもわくわくするのだった。
「よぉし、準備ができたぞ。ちょうどええ湯加減にうるまった。彰太、俺といっしょに入るか?」
「うん!!」
「よし来た!!脱いだ服さ、ぜんぶカゴに入れとけよ。下着は俺の六尺を貸してやっからな」
 そういった大ちゃんの表情も、俺に負けないくらいにうれしそうだった。
 脱衣場のところで六尺をさっさと腰から解くと、大ちゃんは浴室の中に消えた。
 俺もすぐに素っ裸になり、あとを追った。もう大ちゃんの前ではチンコを隠す必要もなくなっていた。
「一番風呂はええなぁ。なんて贅沢なんだ……」
 股間と肩に掛け湯をして湯船につかった大ちゃんが、手のひらに汲んだお湯の中でバシャバシャと顔を洗っている。
 俺も急いで掛け湯をして、さっそく湯船に入って行った。
 目の前に大ちゃんの裸がある。水面に沿うように両腕を広げて、ゆったりとくつろぐ大ちゃんの腋毛が、いくつもの波にふわふわゆれて、湯のおもてに漂った。
 風呂場の窓の網戸からは、ニイニイゼミとカエルの大合唱が引っ切り無しに聞こえていた。彼らは今年も相変わらず、夏の働き者なのだった。
「なぁ、大ちゃん……」
「うん?」
「あのな、おらな、なしてか知らんけんどな、大ちゃんのチン毛とか見とると、チンコがすぐに勃って来るんだ。なじょして勃つんやろ。どっかおかしいんだべか」
 すると大ちゃんは一瞬、はにかんだように唇を噛んで、まぶしげに目を細めた。
「彰太……。おかしくなんかねぇぞ、ぜんぜん。男はな、好きなヤツの裸を見てチンコが勃ったりするのは、当たり前のことなんだ。彰太の体は、それだけ健康で正直ってことなんだ。心配しなくてええんだぞ」
「じゃあ、大ちゃんも勃つんか?好きなヤツやったら、そいつが男でも」
「あぁ、勃つ。ちょうどいま勃っとる。見るか?」
 いうが早いか、大ちゃんは湯船に飛沫を上げて立ち上がり、仁王様のように足を開いた。
「あっ!でっかくなっとる!!」
「そうさ。好きなヤツの裸を、いま見てたからな」
「そ、それって……。好きなヤツって、おらのことか?」
「あぁ、そうさ。初めて会った時から、俺は彰太のことが好きだったぞ」
「それ、ほんとかい?」
「嘘じゃ、チンコはこんなには硬くならん」
「し、信じられん……。大ちゃんみてぇなカッコええ兄ゃが、なしておらなんかに……」
 針の先ほども考えもしなかった大ちゃんの告白に、呆然となった。あまりのうれしさに、湯の熱気にのぼせていまにも気が遠いところへ行ってしまいそうだった。
「彰太……。彰太は俺のこと、どう思ってるだ?」
「好きだべ。大好きだべ!おらは大ちゃんのことが、大好きなんだべ!!」
「お前も立てよ。立って、俺が好きだというお前の証拠を、ちゃんとハッキリ見せてみろ」
「大ちゃん!!」
 俺は弾かれたように、湯船の中に起立した。
 ビンビンに天を突くチンコの中心がもやもやして、下っ腹の奥のほうが無性に切ない。
「大ちゃん、おらのチンコ、なんか変だよ……。ヅキヅキして、チンコの奥のほうに、何か出来てそうな感じなんだ。 すごくムズムズするんだよ」
「さっき教えてやっただろ。それが精液だ。精液が体の外に出たがって、彰太に催促しとるのさ。そのまま朝まで放っておくと、また夢精するんだ」
「ムセイか……。おら、あれやんだよ。だって、パンツがベトベトするし、こっそり自分で洗わなきゃ、母ちゃんに叱られそうで恐いし……」
「夢精しなくて済む方法、あるぞ」
 大ちゃんは厳かにいった。
「それがオナニーってヤツかい?」
 俺も真顔になって、訊いた。
「中学生くらいの年頃になると、だいたいの男子はもうやっとるぞ」
「えっ、ほんとか?じゃあ、和男も?貴志も?達也先輩や洋二先輩も?」
「たぶんな。いまやってなくても、経験するのは時間の問題だろうさ」
 俺はまだ、オナニーというものを知らない。ほかの3年生や1年たちがすでに始めているかもしれないことを、自分だけが知らないというのはどこか惨めに思えることだった。
「大ちゃん、お願いがあるんやけど……」
「おぅ、いってみっぺ」
「それ、そのオナニーってもんを、おらにも教えてくれねぇべか。どうすればやれるもんか、おらも知りてぇべな。今日、いますぐに」
 けれども、大ちゃんはしばらく俺を見つめたあと、何事かを考え込むように黙り込んだ。堂々と股間にそそり立つ大ちゃんのズルムケのチンコと、俺の未熟な包茎チンコが、どちらも1歩も引かない形相で対峙していた。
 知りたかった。皆が知っていて自分が知らない、未知の世界の存在を。
 大ちゃんは、まだ黙っていた。俺はずっとハラハラしていた。
 ニイニイゼミとカエルの合唱が、ますます大きくなっていた。
 やがて、真剣な俺の気持ちが通じたのか、大ちゃんは大きく息を吸い込んでいった。
「教えてやる。こっちに来い」
 俺の手を取り、洗い場に上がるよう指示された。
 ひんやりした山の夜風が網戸の向こうから吹いて来る。
 大ちゃんと俺はタイルの床に、向かい合って立っていた。
「こうやるんだ……」
 大ちゃんは独り言をささやくようにそういうと、硬く大きく反り返ったズルムケのチンコをがっちりと握り締め、ゆっくりと上下にしごき始めた。
 幹に下りた褐色の包皮を上部に向かって滑らせるように、大ちゃんの手の動きは滑らかに続いた。
 やがて、しごく手の動きを小刻みにしたり、スピードに緩急をつけてみたりと、少しずつそれに変化が加えられてゆく。
 時には先端の頭の部分に指を這わせて、もう片方の手で金玉の袋を揉んだりもしていた。
 徐々に大ちゃんの呼吸が荒くなり、鼻息の音やしごく手の音までが聞こえるようになってきた。
 きりりとした切れ長の目をうっとりと細め、くびれた唇を半開きにして気持ちよさそうに吐息する。
「彰太、お前もやってみっぺ……」
 ここが頃合いと思ったのか、突然、大ちゃんが口をきいた。
 俺は見よう見まねで、大ちゃんと同じように勃起したチンコをグイッと握り、上下に手を動かした。
(な、なんだ……。何が起きてるんだべ……)
 とたんに巻き起こった複雑な感覚に、俺は危うく自分を見失いそうになった。
 急な斜面をスキー板でいっきに滑り降りるような爽快感と、股間を軟体動物が這い回っているようなくすぐったさとが、いっぺんに押し寄せて来る。
 切ないようなうれしいような、ひどく身につまされる心境なのだが、あえて手の動きを止めようとは思わない。止めることなど出来ないくらいの強烈な気持ちよさが、股間から波状攻撃で脳みそにビンビン響いて来るようだった。
 そして気がついた時には、俺も大ちゃんと同じようにうっとりと両目を閉じて、その行為のみに集中するようになっていた。
 ふたりの吐き出す切なげな吐息が、外から聞こえるカエルの合唱にうまく溶け込んでいる。
 大ちゃんと同じ動きをして、まだいくらも時間が経たないというのに、俺はもうそこに立っているのが困難なほど膝がガクガクして来ていた。
「あっ、あっ、あぁっ、だ、大ちゃん……、変だ。変だよ。なんかすごいものが、チンコの奥から漏れそうなんだ」
「やめるんじゃない!そのまましごき続けろ!もうすぐだ、もうすぐ精液が、チンコから飛び出して来るぞ!がんばれ……」
「あっ、あぁっ、あぁっ、ダメ、出る!なんか出る!ここに、出して平気だっぺ?!」
「出せ、ぶっ放せ!!お前の最初のセンズリだ!ここで思いっきり漏らしてみせろ!!」
 息せき切っていいながら、大ちゃんが1歩俺に近づいた。
 しごき上げる2本の右手が、こすれ合うスレスレのところですれ違っている。
 チンコの奥から先っぽに向かって激しい何かが押し寄せる。懸命にそれに耐えながら、俺は大ちゃんのたくましい右手に見入っていた。
 ぷっくりと膨れた大人の先端の1つ目から、何やら光る液体がダラダラと滲み出て、赤黒く怒張したテカテカの頭をますます妖しく艶めかせている。
 猛然とアップしてゆく大ちゃんの右手のスピードに合わせて、チンコの根元に張りついたモジャモジャの金玉がタバタバと大きくゆれている。
 手を伸ばせば触れられるほど目前で肉迫する男の自虐的行為に、俺はどうしようもなく興奮して、両膝からいっきに洗い場に崩れ落ちそうになった。その時だ。
「あっ!!く、来るっ!!なんか来るっ!!うんあぁっ!!で、出るぅ……」
 それまで見たことのない真っ白な液体が、チンコの先から飛び出した。
「あぁぁっ!!あぁっ!!ああぁっ、あぁっ!あっ、あぁっ!あっ……」
 真っ白な俺のカタマリが、大ちゃんの体に張りついていく。
 途中で止めようと思っても、とても止められるものじゃない。
 すさまじい衝撃は間隔を置いて繰り返し繰り返し訪れ、俺は耐え切れずにチンコを握り締めたまま床の上に座り込んだ。
「俺もイク……、俺もイクぞっ、彰太っ!!」
「えっ……!?」
 切羽詰った大ちゃんの水際立つ声にあおられて、俺は顔を上げた。
 うっとりと唇をゆがめ、いかにも気持ちよさそうに大ちゃんが目を細めた次の瞬間、緊張がついにピークに達した。
「うぅぁっ!!いっ、イクぅ――っ!!!」
 山なりに腹筋が凝り固まり、怒張した先っぽが目の前でぶち切れる。
 ドビシッ!ドビシッ!とものすごい水圧が、俺の顔面を強打する。
 生温かな粘り気が肌に張りつき、水滴に乗って流れ落ちる。
 青臭い匂いがにわかに立ち昇り、おびただしい量の白濁が俺の体に降り注いだ……。
「うおぁっ、うぅっ、ううぅっ、むうぅっ、んうぅぅっ……」
 顔面にわだかまる男の精が、生温かな軌跡を残して首すじから胸もとへと垂れ落ちる。
 爽やかな大ちゃんが表情をゆがめ、唇を噛み締めて耐える様子は、ことのほか俺を興奮させた。
 やがて、猛烈な手の動きが徐々に静まり、肩先に激しい吐息を残して大ちゃんの射出が途絶えた。
 細めた瞼をゆっくり開き、下顎を突き出して、寝起きのようなボンヤリとした表情を浮かべている。
 かすかに見えていた茜の空が、いつの間にやらどっぷりとした深い闇の中に消え果てた、ちょうどその時分の出来事だった。


 畳に敷かれたひと組の布団は、若い実習生のためにと村の公民館から貸与されたものだった。
 その薄い夏のひとつ布団に、大ちゃんから借りた六尺を締め、彼と並んで横になっている。
 長い廊下に色あせたカーテンを引き、縁側の網戸から吹き込む柔い夜風と扇風機の風のみで蚊取り線香の匂いを嗅でいる。
 天井の古びた蛍光灯が、この建物の敬虔な歴史をあわあわと照らし出している。
 エアコンなどなくとも、テレビなどなくとも、山里の夜はそれだけで充分に楽しい。
「大ちゃん、来週福島に帰るって、ほんとかい?」
 天井を向いたまま、俺はいった。
 縁側のそばの夏虫が、コロコロと風情ある音色を響かせている。
「あぁ、本当だ。来週、大学に戻るんだ」
「なして、なして大ちゃんはおらたちの先生になってくれんの?おらたちより、大学のほうが大事かい?」
「無理をいうなよ。俺は単なる実習生だ。先生になるにしても、それはまだ先の話だ」
「いつくらい?いつ先生になれるんだべや?」
「来年……、かな」
「来年やったら、おらたちすぐに卒業してしまうぞい」
「あぁ、そうだな」
「もう、会えんのか?キャッチ・ボール、もう出来んのか?」
「彰太……、俺は……。俺はお前が好きだ。それだけじゃダメか?」
 急に布団に半身を起こして、大ちゃんが俺を見つめた。切れ長の涼やかな2つの目が、真っ直ぐに俺をのぞき込んでいる。
 その瞳が、ゆっくりと俺に近づいて来た。
「好きなんだ。彰太……」
「だ、大ちゃん……」
 いいざまに、俺は唇をふさがれた。
 大ちゃんの生温かな舌先が、俺の中に忍び込んで来る。生まれて初めてのキスというものに、俺はたちまち頭の中がカッとなり、緊張でガタガタと身を震わせた。
「んっ……、んぅ……」
「そんなに恐がらなくていいぞ。俺はお前が嫌がるのなら、これ以上は何もしない……。大丈夫だ」
 口を離して、大ちゃんが俺の髪をやさしく手で撫でつけた。
 赤く潤んだ大ちゃんの目が、俺の顔を包み込むように見つめていた。
「そうじゃねぇべよ、大ちゃん……」
「え……」
「おらも好きなんや、大ちゃんのことが……。いっぱいいっぱい、好きなんや!!大ちゃんがいなぐなるとおら、おら……!!」
 いい終わるや否や、俺は力の限り大ちゃんの体に抱きついていった。
 いってしまった。ついに大ちゃんに本音を打ち明けてしまった。心臓が口から飛び出るくらい胸がドキドキして、いまにも呼吸が止まりそうだった。
 それでも下半身は元気なものだった。俺の包茎チンコはすでにもう痛いくらいギンギンに勃起して、大ちゃんに借りたサラシの布を突き破らんばかりだった。
「チンコ、こんなにカチカチにおっ勃てて……。彰太は俺のこと、そんなに好きでいてくれたんだな。ありがとうな」
「うん……。ほんとに好きや……。ええよ、大ちゃん。おらに、もっとキスしても。おらも大ちゃんとキスしたいもん」
「あぁっ、彰太……!!好きだぞっ、彰太っ!!」
 俺を抱き返す大ちゃんに、もう迷いは見られなかった。
 重ねた唇の舌先が狂ったように首すじを這い、むき出しの俺の乳首へと滑り落ちた。
 とたんにくすぐったくて、思わず身を硬くしてしまう。
「大丈夫か、彰太」
「だ、大丈夫だべ。もっと、もっと激しゅうやってもええんだべや!大ちゃん、もっと思いっきりやってけろや!!」
「是非もねぇっぺ」
 水を得た魚のように、左右の胸を縦横無尽に這いまわる大ちゃんのことが愛しくて愛しくて、俺は力の限りに彼の体を抱きしめた。
 抱きしめた背中がするりと下にすり抜けて、みぞおちからわき腹、カチカチのチンコを押し包む褌へと、激しいうねりを伴いながら大ちゃんの体は移動した。
 そして、
「あ、あっ、あっ、あぁ……」
 鋭く突き上げる俺のチンコを、サラシの上から噛み締めた。
(く、咥えとる……。大ちゃんがおらのチンコを、口に咥えとる……!!)
 それは2重に重ねたサラシの上からの行為ではあったが、あまりにも刺激的な初めての経験は、14歳の稚拙な官能を満たすに余りあるものだった。
 大ちゃんが何度も締めて使い古したというこの六尺褌に、しっとりとした大ちゃんの唾液が徐々にしみ込んでいる。
 大ちゃんはそれが透き通ってゆく感触を愉しむように、念入りに念入りに舐め続けた。
 そして、やがて、執拗な舌先の愛撫は両腿の付け根辺りにスライドし、日向と陰りのきわどい境目を何度も往復して舐め清めた。
 しばらくして、大ちゃんは再びゆっくりと俺をせり上がり、六尺の前袋の脇からグッと舌を差し込んで、細かい動きでチロチロと、チン毛の生え際をくすぐるように舐めている。
 俺はくすぐったさを通り越し、ある種の快感に目覚めかけ、つま先までをピンと伸ばして大ちゃんの愛に応えた。
 大ちゃんの尖った舌先は前袋の際を縁取りながら、指先で緩めた縦みつの隙間から、菊花のくぼみへと突き立てられた。
「あっ、ダメ、ダメだっぺよ、大ちゃん。そこはウンコが出るとこだよ。汚いからやめてけろ」
「彰太のケツなら汚くねぇぞ。もっともっと舐めてやるぞ。あぁ、なんてきれいなケツだ。さくら色で、花弁のしべみたいに真ん中にシワが集まっとる。俺はこの穴の感触が大好きだ。舌に触れるシワのたわみがたまらなく好きなんだ。彰太のケツ穴だと思うとなおさら興奮する」
「け、けど、大ちゃん……」
「きれいだぞ、彰太」
 次の瞬間、菊花の中心をこじ開けて侵入する舌の硬さを察知した。大ちゃんの高ぶった荒々しい鼻息が穴の周りに吹きかかり、経験したことのない快感が俺の理性を麻痺させた。
 気がつくと、俺の六尺はいつの間にか緩められていて、あらわになったタマの袋とケツ穴の間を、何度も何度も往復しては執拗に舐められていた。
 そんななんでもないようなところがなぜ感じるのか、不思議でならなかったが、時に睾丸を丸ごと口に含まれ、指先で穴をもてあそばれる気持ちよさに、俺は布団の上をのた打ちまわって熱い吐息を漏らした。
「彰太、金玉もきれいだぞ。ツルツルしてて、とても柔らかいぞ」
「気持ちええべよ、大ちゃん……。タマとケツの間がこだにええなんて、ぜんぜん知らんかった」
「それじゃあここはどうだろう。アリの門渡りよりもうんと気持ちええはずだぜ」
 大ちゃんはそういうと、喜色を帯びて来た熱っぽい目線を俺に向かって投げかけた。
 そして、俺の見ている目の前で、俺の六尺を横にずらし、中から現れた硬いチンコにパックリと食らいついた。
「あっ!!」
 驚く間もなく、大ちゃんの生温かな口内に俺のすべてが包まれた。くすぐったいような、気持ちいいような、これまでに経験したことのないタイプの刺激に、俺は瞬く間に翻弄された。
「彰太のチンコは完全に包茎だな。自分でむいたことはないのか?」
「むこうとしたんだけんど、痛いから途中でやめたんだ。何年か前、父ちゃんがいっしょの時に1度だけ、風呂でむいたことがあるっぺよ」
「よし、じゃあ俺がむいてやるよ。体の力を抜いて、もっと楽にしていろ」
 いいながら、大ちゃんはすぼめた唇でチンコの先っちょを包み込み、尖らせた舌先を包皮の内側に差し込んで徐々に押し広げ始めた。
 とたんにすさまじい痛がゆさがそこから伝わり、たまらず腰を引き気味にしてうめき声を漏らした。
 大ちゃんの舌先は包皮の内側を器用に動いて、次第に皮膚を柔軟にし、固いつぼみを開花の時へと丁寧にやさしく導いてゆく。
 大ちゃんの額からポタポタと玉の汗が流れ落ちる。
 すぼめた唇ごと首を前後に上下させ、素人目にも四苦八苦しているのがよくわかった。
「よぅし、やっとムケたぞ、彰太」
 弾んだ声に誘われて、くっと首を起こしてみると、赤みがかった鮮やかな亀頭が目の中に飛び込んで来た。
 部屋の蛍光灯に照らされて、おかしいくらいテカテカと若々しく息づいている。
「これで彰太も立派な大人だな。満足か、彰太」
「うん。だって、大ちゃんとおんなじ形しとるんだもん」
「それにしてもさっきから、ものすごい量の先走りだな。とりあえず、もうイッパツ抜いてやるか」
 いまむいたばかりの亀頭の表面に舌を丸めて巻きつけて、波が海面をうねるように複雑な動きで首を上下する。
 電気ショックを当てられたような強烈な刺激が背すじを突っ走り、とたんに先程の射精の快感に引きずり込まれた。
「あぁぁっ、大ちゃん、ダメ、もう、漏れるよ。精液が、また漏れそうなんだ!」
 うんうんと、チンコを奥深い場所に咥え込んだまま、大ちゃんがうなづいて見せた。
「もっ、もう出るぅ!口を離してけろ!大ちゃん!!」
 けれども大ちゃんは一向に口を離す気配がない。それどころか、腰をガッシリと抱えられて身動きひとつ出来なくなった。
 もう一分の余裕もなくなっていた。気を抜くとすぐにも暴発してしまいそうだった。
 大ちゃんはなおもすぼめた唇と丸めた舌先で、俺のチンコを激しく責めて来る。
「あっ、あぁぁっ!!もうダメだべっ!!も、漏れるぅ~!!」
 背中で布団にアーチを描き、俺は大ちゃんの口の中に2発目の精液を発射した。
 腰とチンコが同時にガクガクいいながら、1弾、2弾と次々にそれは出て行った。
 大ちゃんの喉がゴクリと鳴り、俺はビックリして我に返った。
「大ちゃん……。おらの精液、飲んだだか?」
「おぅ、飲んだぞ。飲んでやったぞ。大好きな彰太の精液だ。言葉にならないくらいうまかったぞ。お前の分身が、俺の中に入って来た。俺たちはこれでこれからも、未来永劫いっしょだぞ」
「大ちゃん……」
 疲労困憊してぐったりとなって、布団に仰向けた大ちゃんの筋肉に、小麦色に透けた汗のビーズがいくつもいくつも光っていた。


「大ちゃんのフンドシ、チンコの先っぽのとこ、濡れとる……」
 弓なりに大きく膨らんだ大ちゃんの六尺に、生地の色が透けて見える丸いシミが滲んでいた。
「うれしいと、チンポは涙を流すんだぜ」
「じゃあ、おらのも出とったんだべか?」
「あぁ、いっぱい出とったぞ。だくだくとたくさん、彰太のツユが溢れとったぞ」
「それも、飲んだんだべか?」
「おう、飲んだ」
「おらも……、おらも大ちゃんのが飲みてぇ。なぁ、飲んでもええっぺ?」
 大ちゃんの六尺の中心に、俺はこわごわ、手を伸ばした。
 初めて触る、大ちゃんのチンポのぬくもりだ。
「すんげぇ硬ぇ!!それに熱いんだべな、大ちゃんの!!」
 俺は思わず感動して、夜だというのに大声を張り上げた。
 大ちゃんのもっこりした前袋のシミが、さっきよりも大きく色濃く成長している。
「涙がどんどん出とるようだべなぁ」
「彰太に握られて、俺のチンコが喜んでるからさ」
「だったら、もっとたんと喜ぶようにしてやるっぺよ。おらも大ちゃんの精液、飲んでみてぇべさ」
 いいざまに、俺は大ちゃんの前袋にかじりついた。
「すんっげぇなぁ。ぶっとくて、とても全部は咥えきれねぇべ」
「待ってろ、いま咥えやすいようにしてやる」
 大ちゃんはそういうと、くいっと腰を浮かせて、くるくると六尺の結び目を解きだした。
 俺はそれを手伝って、横みつの片端を手繰り寄せる。
 大ちゃんの勃起チンコが、俺のすぐ眼下に現れた。
「た、たんまげたぁ……。こだに近くで見る大人のチンコ、まるでアナコンダの頭みてぇだ……」
 三角に尖った亀頭の先端から、解放されたうれし涙がだくだくとだくだくと溢れて来る。網の目の血管が浮き出た幹の中ほどに、ホクロが1つある。俺はそのホクロを右手の中にやさしく包み込むように、やんわりと握り締めた。
「アナコンダの心臓が、手の中でドクドクいっとる……。本当に生きとるみてぇだ……」
「彰太、それをしごいてくれ」
「わかったよ、大ちゃん」
 いまにも手の中から躍り出しそうな太幹を、俺はもう一度握り直して上下にこすり出した。
 その愛撫に応えるように、先端のひとつ目から大きな露の玉が浮き出て来て、ぷるぷるしたゼリーのように光りながらゆれた。
 飛んで火に入る夏の虫……。俺はその言葉の如く自然の摂理に従順に、浮き出た光に誘われるように舌先を近づけていった。
「うぅっんあぁー、ううぅん、うんっむぅー……」
 初めて聞く男らしい大ちゃんの、とても切なげなうめき声だった。それは舌先でひとつ目をぺろりと舐め透かすごとに大きく大胆なものになり、あわせて口の中の亀頭もその膨らみをグングン増していった。
 俺の舌の上にはおびただしいうれし涙がとめどなく流れ出ている。
(塩っぺぇー……。うれし涙って、こだな味なんだべかぁ……)
 想像したよりも意外に単純な味ではあったが、それが大好きな大ちゃんのチンコの涙だと思うと、何にも変え難くおいしく感じたのは喜ばしいことだった。
「あぁ、彰太……。タマも……、金玉の袋も舐めてくれ……」
 夢うつつの中でつぶやくようにいった大ちゃんの要望に応えて、俺はアナコンダの頭から血管の浮き出た幹を伝って、下の袋へとたどりつく。
 とたんに剛毛が舌先にからみついた。
 ちりめんの布のようにシワシワに縮れた袋の表面を、ひと舐めひと舐め、丁寧に引き伸ばしてゆく。そこにもホクロが、いくつか見えた。
「おぉっ!おぅぅっ、おぉぅっ、うぅっー……」
 快感に身をよじり、たまらず大ちゃんがあえぎ出した。
「感じるのかい?そんなにここがいいのかい?」
「あぁ、気持ちええぞ!!彰太にしてもらって、最高に気持ちええ……!!こんなにええのは、初めてだぞ、彰太!!」
「大ちゃんが、そんなに喜んでくれるなら、おら……」
 俺は大ちゃんの玉袋を舐めながら、少しだけ足先に移動した。
 丸太のような大ちゃんの両足を両腕で抱え、命ぎりの力でぐぐっと上に持ち上げ、谷間に顔をのぞかせた 大ちゃんの陰りに、ひっそりと舌先を滑り込ませていった。
「あ、しょ、彰太っ!!そ、そこは……!!」
「さっき大ちゃん、おらに同じことやったべな?けっこう気持ちえがったがら、大ちゃんにもしてあげてぇっぺよぉ」
 ひと抱えもあるたくましい太腿を肩の上に乗せて重量の負担を軽減し、俺はさらに大ちゃんの肛門に舌先をうずめていった。
 モジャモジャに生えた真っ黒な剛毛が、ケツ穴のシワを包み隠すようにして密集している。
 俺はかまわず、舌を動かした。
「ぐ、ぐぅぁぁっ……、うっ、うぐぁぁっ……、うっ、うんあぁぁっ……」
 口をあけ、顎を突き出し、気持ちよさそうに表情をゆがめる大ちゃんの姿がそこにある。小刻みに動かす舌先の摩擦で、剛毛の近辺がホカホカと微熱を帯びてくる。狭い場所に鼻をうずめて、舐めている俺のほうもけっこう息苦しかったが、それでも我慢してひたすらに舐めた。
「ぐぐぁっ……、んあぁぁっ……、うんあぁぁっ……」
 真っ赤に上気した大ちゃんの赤い唇からは、ひっきりなしになまめかしいあえぎが漏れ続けている。初心者の俺の目から見ても、大ちゃんは相当に感じているはずだった。
 舌先を尖らせ、これまでよりも強い力で穴の中心にねじ込んだ。
 大ちゃんのよがり声がひと際デカくなった。
 網戸から流れて来るカエルの合唱をかき消すほどに、大ちゃんの感じ方はすさまじかった。
 あえぎの合い間にハァハァと繰り出される激しい吐息も、次第に胴間声の入り混じった荒々しいものになっていった。
 目の前にそそり勃つ大ちゃんのチンコの先から、極太の幹を伝ってうれし涙がヒタヒタと玉袋のすぐ際にまで忍んで来ている。もう、それは洪水のような涙の量だった。
 それを上目遣いに見つめながら、舌先で穴をいじっていた俺は、いつの間にか自分のチンコがギンギンに硬く勃起しているのに気づいた。
 すでに2度の射精を終えたあとだったが、その時は3度目の勃起が男にとってどれだけ精力を必要とするのかなど考えもしないことだった。どれもこれもが14歳の若さのなせる業だなど、まったく気づきもしなかったのだ。
「大ちゃん、おら、また硬くなったよ、チンコ……」
「ちょ、ちょうどええ……。彰太、お前のチンコを、俺のケツ穴にぶっ刺してくれ!!」
「えぇ!!おらのチンコを、大ちゃんのケツに刺すのか?!」
「そうだ。頼む、彰太」
「けど、そんなことして大丈夫なんか?変な子供とか、出来んのか?」
 ちょっと心配だった。だいたい、男の肛門に何かをぶっ刺すなど、生まれて初めて聞いたのだ。
「大丈夫だ。俺は女じゃねぇから、子供は出来ねぇ。ただお前の、彰太の精液が欲しい。お前の命の分身を、俺のケツに注ぎ込んで欲しいんだ」
「おらの命を、大ちゃんに……」
「そうだ。やってくれるな、彰太」
 あまり気がすすまなかった。大ちゃんのことは大好きだが、そんな突拍子もないことをすること自体、いけないことのように思えたのだ。
 でも、俺はそれ以上に大ちゃんのことが好きだった。
 大ちゃんがそれで喜んでくれるのならと、すぐに思い直して心に決めた。
「つばを塗りたくれよ。お前のチンコにたっぷりとな」
 滑りがよくなるんだ、大ちゃんはそういいながら、自らのつばで自らのケツ穴を充分に湿していた。
 いわれたとおり、俺もつばを塗りたくった。何か神聖な儀式の前の厳かな準備をしているように思えて、俺は弾む呼吸を必死に整えていた。
 ほんの小1時間前にムキ上げられたばかりの亀頭が、真っ赤になってピリピリと痛がゆい。でも、そこは我慢のしどころだった。
 知識は何もなかったが、その代わりに、自分がいまとても貴重な経験をしようとしていることだけは、ハッキリと飲み込めていた。
 頃合いを見計らってか、大ちゃんが右腕をうしろにまわして、俺のチンコを握り締めた。硬さとヌルつき具合を確かめているらしかった。
「準備はええな、彰太」
「うん」
 こっくりとうなずくと、つかんだチンコの先っぽを、そろそろとケツの中心へ誘導してくれる。
 敏感すぎる俺の亀頭が、ケツ穴のシワシワにぶつかった。とたんに電流がビリリと駆け抜ける。
(あっ、痛ぇ……)
 思わず声が出そうになった。でも、やはり我慢だった。
 いま声を出したら、この場の雰囲気が壊れてしまうと、勘が働いた。
「彰太、そこだ……。そこを思いっきり突いて、俺ん中に入って来い!!」
 秒読みの段階はととのったということだ。俺はまさに本能としかいいようのないしぐさでもって、いっきに腰を押し出した。
 ぬぷっ……。そんな擬音がぴったりの空気音を伴って、俺の未熟な亀頭の先が一瞬にして埋没した。
「ぐっ、ぐぐぅあぁっ……」
 歯を食いしばり、顔面を障子戸にそむけて大ちゃんがうめいた。
「なじょした、痛いんか、大ちゃん……?」
 心配になって、俺は尋ねた。
 大ちゃんは首を横に振った。
「もっと、奥までええぞ。根元まで、まだ入ってないんだろ?」
「うん」
「彰太、突いて来い……。お前が気持ちよくなるまで、突いて突いて、突きまくってええんだぞ!!さぁ、早く突いて来い!!」
 俺はチンコを突き刺したまま、さらに奥まで前進した。
 ふと目についた大ちゃんの勃起チンコを思わず両手で握り締め、その力を体の支えにグイグイと腰を動かした。
(あぁ……、これがセックスか……。男と女は、これで子供をつくるんだべな……)
 おぼろげながらも確信に満ちた、男としての感動があった。
 そんな記念すべき神聖な儀式の初めての相手が、大好きな大ちゃんであったことが、何よりもうれしいと感じた。
「あぁ、ええ、ええぞ、彰太っ!!だんだんよくなって来た!その調子だぞっ!!」
 ケツの穴をグイグイ突き上げ、大ちゃんのチンコをこするたび、大ちゃんの先っぽからは相変わらずうれし涙が雫を成して流れて来た。
 焼き芋のような熱を帯び、バナナのように反り返り、うなぎにも似たヌルつきを見せる大ちゃんのチンコは、そのせいでうまくしごけない。ましてや、オナニーを覚えたての自分にとって、他人のモノを上手にしごくなどは無謀に近いことだった。
 けれども、大ちゃんは感じていた。精一杯、感じてくれていた。
 筋肉質な丸太の両足を俺の背中にからみつけ、快感にケツを浮かせて全身を硬直させていた。
 両手の中で煮えたぎったアナコンダが、急激に硬さを増して怒張したのはその時だった。
 大ちゃんの顔が大きくゆがみ、何かをこらえるように必死に歯を食いしばっている。
「イクのかい?大ちゃん」
「あ、あぁ……、イク、イク寸前なんだっ、もう……」
 誰に教わることもなく、俺は腰の抜き挿しをいっきに加速した。
 それにあわせて、両手のしごきも一段と早く……。
「おうぁあぁっ!!イク……!!イクぞ、彰太っ!!うんぬぁぁ!!イクぅ~~っ」
 そのとたん、握り締めたかま首が音を立ててぶち割れた。
 ものすごい量の精液のカタマリが、ドッと頭を越えて飛び散った。
 バラバラと夕立の音をまねながら、大きく弧を描いて畳の上に降り注ぐ。
 2弾、3弾、4弾、5弾、大ちゃんこそ2度目の射精だが、最初よりも大量の雨を辺り一面撒き散らす。
「す、すっげぇ、大ちゃん……。カッコえぇ……」
 大ちゃんの純白の精液は、俺の指をもしとどに濡らす。
 全身の筋肉が躍動するたび、グイグイ締め付ける肛門の力が俺のチンコを責め立てた。
 あまりに過敏な俺の亀頭が、そんな激しいうねりの中で耐え切れるはずもない。
 3度目の高まりがすぐにも極限に達しそうだった。
「大ちゃん、おらも、また出そうだっ……」
「おぅ!出せ出せっ、ガンガン出せ、待ってるぞっ」
 いまだ荒い呼吸の整わぬ大ちゃんの、筋肉で固めた太腿をガッシリと両胸の前で受け止める。
 俺はそのまま、未熟な動きながらも小刻みなピストンを打ち込んだ。
 パシンパシンとふたりの皮膚がぶつかり合い、亀頭と背すじにジンジンと焼けつく痺れが走り出す。3度目の噴出へといざなっていく。
「イクよ、大ちゃん!!」
「おぅ!!がんばれ!!力いっぱいぶっ放したれっ!!」
 吐息が乱れる。
 心臓がバクつく。
 目の前の視界がかすんでくる。
「出るぅ……!!!あぁぁっ!!」
 これまでとは違う新たな快感が俺の中を駆け抜けた。
 ドドドッ、ドドドッ、と勢いをつけて確かに放出している。
 目に見えない快感のほとばしりが確実に俺を見舞っている。
「わかるぞ、彰太!!お前の命が入って来るのが、俺にもちゃんと伝わってるぞ!!」
「大ちゃん……!!」
 薄目をあけて、眼下に横たわる大ちゃんを見た。
 大好きな人、大好きな大ちゃん……。
 大ちゃんは自らが放った精液で、小麦色の筋肉も白く濡れている。
 初めて好きになった人、あこがれの人、愛しくてならない人。
 ふたりで繰り出す愛の営みに、こんな感動が秘められていたとは、経験するまで知りもしないことだった。
 最後の精液の1滴までも大ちゃんの中に注ぎ終え、俺はぐったりと彼の分厚く熱い胸に崩れ落ちた。
「よくがんばったな、彰太……」
 荒い呼吸が引っ切り無しに、肺の奥から湧き上がる。
 ケツの肉に締め付けられた俺のチンコが、引きちぎられそうに痛い。
 すぐ目の前を、大ちゃんの精液が白く濁りながらゆっくりと流れてゆく。
 天井の明かりを反射しながら、この世のものとは思えないほど悠然と美しく流れている。
「精液って、なんとなく青臭い匂いがするもんだべなぁ……」
「空気に触れると、すぐに酸化してしまうんだ。すると、精液の中の命も死んでしまう」
「死ぬ……?ほんとに?」
「あぁ。だから、匂いが青臭くなるんだ」
「じゃあ、この大ちゃんの精液の命は、もう……」
「たぶんな。でも安心しろ、彰太。お前の精液の命は、生きたまま俺の中に入ったぞ」
「……おらも、おらも大ちゃんの、生きたまま欲しいっぺよ!!」
 俺は衝動的にそう叫ぶと、股間で縮こまっていた大ちゃんのチンコにかぶりついた。
 すでに柔らかなチンコのくびれには、大ちゃんが放った精液の残りがどろりと付着していた。
 ストローでジュースを飲むようにチンコを吸うと、オシッコの管の中に余っていた大ちゃんの精液がじわりっと滲み出て来た。それはくびれにわだかまっていた青臭い精液とはまったく違った、甘みを含んだ新鮮な粘液の味がした。大ちゃんの命が燃え残る、力を秘めたものだった。
 有り余る若い力で早くもよみがえろうとする大ちゃんのチンコに、俺は嬉々として舌をうねらせた。
 特に先っぽの粘膜が感じることを経験で悟った俺は、重点的にその表面とくびれと、包皮の束ねの部分ばかりを執拗に舐め転がした。
 俺の狭い口内は、たちまち大ちゃんのかま首で埋め尽くされ、支配された。
「あぁ、彰太、お前……。うまくなったな、しゃぶるの……。そんなふうにされたら、たまんねぇよ。俺、ここを離れたくねぇ……」
 ため息混じりに吐き出したその言葉は、大ちゃんの本音らしかった。
 大ちゃんに少しでも認めてもらえたのがうれしくて、俺は懸命にしゃぶり続けた。それこそ大ちゃんのすべてをしゃぶり尽くす意気込みで、一生懸命に舐めた。そして、しごいた。
(おらが3度出したんだもの……。こんな立派な体の大ちゃんが、3度出せねぇはずがねぇっぺな!!)
 そう心に信じ込んで、必死に首を動かした。
「うぅっ、うんぁっ、うんぁぁっ……。しょ、彰太……、気持ちええぞ……、すごく……」
 口の中の大ちゃんが、いっそう大きく膨れ上がる。
 大ちゃんのケツが次第に布団から浮き上がり、俺の顔めがけてゆっくりと前後に動き出した。
 まるで俺の口がケツの穴になったかのように、大ちゃんの動作はどんどんハッキリしたものになってる。
 大ちゃんの亀頭の先っぽが俺の喉チンコに突き当たる。そのたびに俺はえづき、窒息しそうになる。
 あまりの硬さとあまりの激しさに、ともすれば下顎が外れる危険さえあったはずだ。でも俺は愛しい大ちゃんのためを思って精一杯努めた。
 大ちゃんの両手が俺の頭を挟み込み、ガンガンに下から突き上げて来る。俺は目に涙を滲ませ、恋人の責め苦に耐えていた。
 そのまましばらく待っていると、大ちゃんの腹筋がプルプルと小刻みに震え出した。
 背中が布団に浮き上がり、いよいよ3度目の噴出が近いことを俺に予感させた。
「イクぞ、彰太……!!ちゃんと飲めよ!俺の精液っ!!俺とお前の、命の交換だからなっ!!」
 切羽詰った形相で大ちゃんが声を喉から搾り出すように叫んだ、その直後だった。
「うううぅぅっ!!!いっ、イグぅっっ!!」
 ほんの一瞬身動きが止まり、呼吸も止まったすぐあとで、すさまじい勢いの精液の射出が俺の喉奥で始まった。
 あまりに勢いがあり過ぎて、にわかには飲み下すことが出来そうにない。とりあえず頬の内側に貯水して、あとで飲み干すことにした。
 しかし、それは俺の大誤算だとすぐに後悔した。
 こんなに激しい水圧が、人間の体から出るものかと疑ってしまうほど、大ちゃんの命のみなぎりは迫力があった。頬に貯めた精液を、唇の端へと弾き出す。あとからあとから撃ち出され、俺の口内はついに満杯になった。
 大ちゃんのチンコを咥えたまま、唇からだらだらとナマの大ちゃんが流れ出た。勢い、俺はすぐさまチンコを引き抜き、口内に貯めた分だけでもと、ゴクリと喉奥に流し込んだ。
 甘やかな香りとさわやかな温もりが、ゆっくりと胃の中に落ちてゆく。口から流れ出た精液もすぐに指先で唇にかき集め、先陣のあとを追わせるように喉もと深くに押し込んだ。
(たとえ1滴たりとも無駄にするもんか!この精液は大好きな大ちゃんの命なんだ!おらの大ちゃんの、命なんだ……)
 大ちゃんの下腹部にすがりつくようにしながら、なぜだか俺は溢れ出る涙のわけを説明できないでいた。
「気持ち悪ぃか、彰太。無理せずに吐けよ」
「違う、気持ち悪ぃんじゃねぇべ。なしてか知らねぇけんど、大ちゃんの命がおらの中におるかと思うと、うれしぐで……」
「ありがとう、彰太……。彰太のことは、一生忘れねぇぞ……」
 大ちゃんが福島に戻るという日、1日に4本しか走らないバスの停留所に、俺は大ちゃんと並んで立っていた。
 本当は見送りになど来たくはなかった。涙が出て止まらなくなる予感が、前の晩からひしひしと身に迫っていたからだ。
 でも、校長先生がいったんだ。
“本校の生徒を代表して、三浦くん、君が七海先生を見送りに行って来なさい。七海先生は君のことを、一番買っておられたようだ。野球のセンスがいいと、いつも職員室で感心しておいでだったんだよ”
 朝礼の時、皆の前で、そういったのだ。
 それでのこのこ、1時間目の授業も受けずにバス停くんだりまで出て来てしまった。
「彰太、これをもらってくれないか」
 差し出された紙袋の中には、大ちゃんの六尺が何枚も畳んで入っていた。
 広げてみると、ちょうど前袋のチンコのところがその形に膨らんで、オシッコの黄色いシミや乾いてカサカサになった精液なんかが付いていた。
 俺はうれしくてうれしくて、とたんに涙がこぼれそうになった。
「大ちゃん……、ありがとうな。本当にありがとうな……。これ、大事にする。んだけんど、大ちゃんはええのか?もう、六尺締めへんのか?」
「川遊びした日と、おとといの晩と、彰太が締めた六尺を2本だけ、記念に持ってくよ。野球部の寮の相部屋じゃ、さすがに毎日六尺でいるのは無理だからな。こっそりオナニーが出来そうな時に、お前のを使わせてもらうさ」
「おらも、おらも大ちゃんの六尺でオナニーする……」
 セキを切ったように溢れ出る涙を大ちゃんにだけは見せまいと、俺は大ちゃんの広い胸にしがみついて嗚咽した。
 やがて遠くから、バスのエンジンの音が近づいて来た。
 大ちゃんの両腕がやさしく俺を抱きしめ、背中をさすった。
 子供心にも、それが別れの合図だと、最後の瞬間なのだと判っていた。だからこそ俺は、顔を上げて大ちゃんを見ることが出来ないでいた。
「ほんじゃあな、彰太。いつまでも元気でな」
「うん、大ちゃんも……」
 うつむいたまま、地面の上で握手を交わして、大ちゃんの白いスニーカーがバスのタラップを昇った。
 ブザーが鳴って、ドアが閉じた。
 目の前で、窓があく気配がした。
「彰太っ!!」
 大声で名前を呼ばれて、俺は弾かれたように顔を上げた。
 真夏の太陽と、まつ毛に溜まった涙のプリズムの中で、小麦色に陽に焼けた坊主頭の青年が、満面の笑みをたたえて爽やかに輝いていた。
 クラクションを1つ鳴らして、バスが左に滑り出した。
「あ、大ちゃん……!!」
 俺はたまらず、バスといっしょに走り出した。
「大ちゃんのことは、おらも一生忘れん!忘れるもんかよ!!さよなら大ちゃん!!さよなら!!」
 バスは砂ぼこりを巻き上げて、あっという間に遠ざかり、引き離され、やがて林間に見えなくなった。
 俺は走るのをあきらめて、その場に呆然と立ち尽くした。
 しばらくの間そうしてじっとたたずんでいたのだけれど、やがて、紙袋をギュッと胸に抱き締めて、まわれ右をしてゆっくりと歩き出した。
 バスが走り去った村道の、いままで並んで立っていたバス停に、大ちゃんの残像が残っていた。
 大ちゃんは最初から最後まで、ずっと笑顔のままだった。あんなにたくさん話をして、いっしょにいたのに、笑顔しか思い出せないのは、とても不思議なことだった。
 大ちゃんにもらった六尺は、俺の大切な宝ものになった。


 それから2年が経ち、俺は高校生になっていた。
 俺たちが通っていた中学は、予定通り廃校になり、9キロも離れた隣町の中学に統合された。校舎も講堂も解体されて、キャッチ・ボールを楽しんだ校庭と共に、みるみる草むらと化していった。
 さらに20年が過ぎて、俺は大人になっていた。教員宿舎として利用していた建物も、所有者が代替わりをして、いまでは荒れ地同然になっている。当時の姿など見る影もない。
 けれども、あの温泉だけはいまも村の水路を伝って、チョロチョロと建物に流れ込んでいる。
 窓ガラスが割れ、吹きっさらしに崩れ落ちた土壁の向こうに、苔むしたタイル張りの湯船が少しだけ垣間見えている。
 あれこそは、まだ自慰さえ知らずにいた幼い往時を忍ばせる、唯一無二の聖域にして、想い出の場所だ。俺の、永遠のスタート地点だ。
 いつも爽やかな笑顔に包まれていた大ちゃんの白い六尺姿と、皆で背中を流し合った楽しい光景が、あわあわと脳裏に浮かんでは、緑の中に溶け込んでゆく。
 ニイニイゼミとカエルの合唱は、いまも毎年この山里に変わらぬ郷愁を送り込んでいる。
 もう2度とは還り来ぬ、多感な少年期を君と過ごした、あのかけがえのない夏の日の想い出と共に……。
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