- 2013⁄09⁄08(Sun)
- 00:24
サカキ×サトシ2
「森に入って二日目…」
「未だ出口は見付からず…」
「そしてこのまま…」
「白骨化…」
「ピカ…ピカ…」
そう嘆くサトシとピカチュウ、カスミに、先頭を行くタケシが振り返る
「そう言うな、いつもの事じゃないか」
「はぁ…ちょっと休もうよ」
へたりとカスミが座り込んだと同時に、轟音を立てながら何かが空中を飛んで行った
「な、何?今の!」
「鳥…とは違う様だな」
「あんな速い飛行タイプのポケモンなんて見た事無いぜ」
「…ピ?」
遠くからヘリコプターの音が聞こえる
それは段々と近付いて来る
三人が空を見上げた瞬間、大きくRと書かれたヘリコプターが目の前に現われた
「ロケット団!?」
窓から鋭い眼光が見えた
(サ…サカキ…!!)
「………」
目が合った
蛇に睨まれた蛙の様に、サトシは立ち竦んでしまった
ニヤリと口元が歪むのを見ると嫌な汗が伝った
「未だ出口は見付からず…」
「そしてこのまま…」
「白骨化…」
「ピカ…ピカ…」
そう嘆くサトシとピカチュウ、カスミに、先頭を行くタケシが振り返る
「そう言うな、いつもの事じゃないか」
「はぁ…ちょっと休もうよ」
へたりとカスミが座り込んだと同時に、轟音を立てながら何かが空中を飛んで行った
「な、何?今の!」
「鳥…とは違う様だな」
「あんな速い飛行タイプのポケモンなんて見た事無いぜ」
「…ピ?」
遠くからヘリコプターの音が聞こえる
それは段々と近付いて来る
三人が空を見上げた瞬間、大きくRと書かれたヘリコプターが目の前に現われた
「ロケット団!?」
窓から鋭い眼光が見えた
(サ…サカキ…!!)
「………」
目が合った
蛇に睨まれた蛙の様に、サトシは立ち竦んでしまった
ニヤリと口元が歪むのを見ると嫌な汗が伝った
「…どうしたのサトシ」
「!」
「………」
サカキの乗ったヘリコプターは暫く空中を漂った後、先程飛んで行った何かを追い掛ける様に発進した
「サトシ」
「…!タケシ…?」
「もう居ない、急いで森を出よう」
「でも出口が分からないのにどうやって?それに、何だったのかしら今のヘリコプター…まるで私達を観察してたみたい」
((………))
間違ないだろう、とタケシとサトシは思った
「サカキ様、今の子供は」
「…森に居るロケット団員、近くにピカチュウを連れた子供三人が居る
帽子を被った少年のみを、基地へ招待しろ」
『了解』三人は急ぎ足で出口を目指す
「ピカピ…」
「ん?…平気だよ、ピカチュウ」
「大丈夫かしら、余計迷子になりそう!」
「迷ってる暇は無い、とにかく進まなきゃな」
突然ピカチュウの耳がピンと立ち、振り返った
「どうしたピカチュウ」
「…」
再度声を掛けようとした瞬間、奥の茂みが動いた
「何なの…?」
ガサッ!と音を立ててその茂みからロケット団員が現われた
「居たぞ!」
「何!?」
「兎に角逃げるぞ!!」
「待て!」
人数が更に増え追い掛けて来る
「ピカチュウ!十万ボルト!」
「ピーカ、チュウウウ!!」
ロケット団の動きを封じながら、何とかその場を逃げ切った「はあっ、はあ…もう走れないぜ…」
「ふー…もう!何なのよ一体!」
「おい見ろ!あそこ!」
タケシが指を刺した先には警察が在った
「ジュンサーさんに匿って貰いましょう!」
三人は急いで走り出した
「うわ!!?」
サトシの慌てた声が聞こえた
振り返るとロケット団の一人に捕まり、サトシは身動きが取れないでいた
「「サトシ!」」
「ピカピ!」
「離せ!!」
「サカキ様の命令だ悪く思「ピカチュウ!十万ボルト!!」
「ピーカ、チュウウウ!!」
「「アバババババババババババババ!!」」
自らも電撃を受けたが、助かったので結果all right!「どうしたの君達!?」
「貴女に会いに参りました」
「邪魔!!」
タケシを突き倒し、カスミは事の経緯を話した
「ええ!?貴方達、直ぐに森へ!!」
「はっ!」
ガーディと共に複数の警官が森へ走って行った
「身に覚えは?」
あまりサトシに思い出して欲しくは無い
しかし追われる理由はあの事しか…
タケシは思わず握り拳を作った
「無いわ!」
俯いた二人は発せられた声に顔を上げた
「有る訳無いわ!私達はただの通行人だもの、いい迷惑!」
ねえ、とこちらに向けた瞳は合わせろと言っている様だった
「そ、そうだ!俺達ただ旅をしてただけです!」
「そう…分かったわ、暫くここで休んでいって」
「「「ありがとうございます」」」
「失敗か」
「あの子供に何か用事でも」
「ああ…自分でも不思議だ」
「は…?」
あれからあの少年の体を欲している
今までこう思った事も無かったのに…
あの最後まで光を失わなかった瞳を手に入れてみたいと思った
(これで終わりにしてやるさ)
己は逃げた“ミュウツー”を追い、そして残りの団員に指示するべく、無線を繋いだ「……………分りました、直ぐ向かいます」
「ジュンサーさん、今の電話…」
「ここから少し行った所に小さな町が有るの、そこでロケット団がポケモンを奪って大騒ぎしているらしいわ!」
「ええ!?俺達も行きます!連れてって下さい!」
「…迷ってる暇は無いわ、いらっしゃい」
全員がパトカーに乗り終えると同時にアクセル全開で走り出した
「ああっ!」
町に着くと大きな袋を担いだロケット団が小さな子供から老人まで、容赦なくモンスターボールを奪っていた
「やめなさい貴方達!全員逮捕します!」
警棒と手錠を持った警官が町へ突入した
「ゼニガメ、フシギダネ、リザードン、ピジョン!お前達も手伝ってくれ!」
勢い良く飛び出したサトシのポケモン達は、警察犬のガーディと共にロケット団のポケモンと戦い始めた
「皆さん落ち着いて!こっちです!」
タケシとカスミの誘導で町の住民が避難する
転んだ子供を起こして避難場所へ連れて行くサトシ
「もう誰も居ない?」
「…とりあえずな」
「大丈夫よ、皆のポケモンは絶対取り返すからね!」
ふと、パラパラと粉が落ちて来た
全員が空を見上げると、空一面にバタフリーの集団が居た
浴びた人々やポケモンは力無く地面に崩れてしまう
(…眠り粉だ…!)
三人の瞼も徐々に重くなっていく倒れた三人の前に誰かが立つ
その人物に気付き、遠くで戦っていたピカチュウが猛スピードで戻ってくる
振り返ったジュンサーは避難した人々の異変に気付いた
「…?ああっ、町の人達が!…あの人は…!?」
倒れた人々の前にただ一人、体格の良い男が立っている
「ピカピー!!」
「…ん……ピカチュウ…」
重い瞼を無理矢理上げ、佇む男の顔を見て体が硬直した
「お、お前…サカ…!」
「今日は運が良い…ミュウツーも再び捕まえる事が出来、その上未来の私の右腕が目の前に転がっている」
「まだそんな事…!」
「ピィカ…チュウウウッ!!」
ピカチュウの電撃が真直ぐサカキに向かって行く
サカキが投げたボールから飛び出したサイドンが電撃を弾き飛ばす
「ピカ!?」タケシは自分の腕を抓り、必死に起きていた
カスミも暫くは起きていたが、今は完全に眠ってしまった
(サトシ…!)
「お前がサカキか…」
「タケシ…!」
「ん?…ああ、サカキだが」
「許さないぞ…お前が、サトシを…!」
「そう睨むな
こいつをロケット団にする事が出来たら、もうお前達の前には現れん」
サカキはしゃがんでサトシの腕を掴み起こした
体を動かせないサトシはサカキをギロリと睨む
「…サトシ!」
(ああ、駄目だ…力入らない)
そして意識を失ってしまった
「ピカピッ!!」
サトシが居なければ上手く技が決まらない
どんどん傷付いて行く体を引き摺りながらもサトシを助ける為にぶつかっていった
「トレーナーの為なら死んでも良いと言うのか?素晴らしい絆だ、実にくだらん」
上空に待機させていたヘリコプターからロープが降りて来る
サトシを抱えたままロープを掴むとそのまま上がって行ってしまった
「ピカッ!」
高速移動でサイドンを抜かし、カスミとタケシに抱き付いた
心の中で二人に謝った
「ピィカ、チュウウウッ!!」
「きゃああああああ!!」
「うわああああああ!!」
ピカチュウの渾身の一撃で二人は思い切り目が覚めた
「な、え?何?何がどうなったの!?」
「行けズバット!あのロープを切ってくれ!」
「ズバ!」
サカキを追い越し、ガブリと噛み付き引き千切ろうとしたサカキが小さく舌打ちしたと同時に細くなったロープが切れた
「行っけえ!マイステディ!」
カスミのボールから飛び出したヒトデマンとスターミーは、サトシに向けて勢い良く水鉄砲を噴射した
二人は水のクッションに受け止められた
「良いわよ、そのままゆっくり降ろして!」
「このままでは全てが台無しになる…」
腕に抱えたサトシを見る
「起きろ」
「ん…」
水の冷たさに覚醒寸前だったサトシは、声をかけられ目を覚ました
「!!」
「暴れるな、今は引いてやる」
「…!」
「直にお前から私の元へ来る事になる」
「しつこいぞ!俺は絶対…!!」
全てを言う前に大きな手に口を塞がれる
「この町のポケモンはほぼ頂いた
お前が私の元へ来る事が出来たなら返してやらんでもない」
「…」
「これが地図だ、仲間を連れて来ても良いんだぞ?」
皮肉気に笑い、再び降りて来たロープに掴まると、そのまま上空へ登って行った
「…」
去るサカキを呆然と眺めながら、随分と近付いた地面に気が付き飛び降りた
「ピカピーッ」
「ピカチュウ!」
ピョンとサトシに飛び付き、抱き締められると安心したようにチャア、と鳴いた
「ボロボロじゃないか…大丈夫か?」
「…ピィカ!」
「サトシ、大丈夫?」
「ああ…びしょ濡れだけど」
「ロケット団が逃げるぞ!」
振り返ると団員全員が踵を返し走り去って行く所だった
それを追い掛けるジュンサー達
そして戻ってくるポケモン達
それぞれを労い、モンスターボールに戻した
「…町の人達を起こさなきゃ…」
「…自分のポケモンが連れて行かれてしまった事…きっと悲しむだろうな」
「…」
『これが地図だ』
「サトシ?」
無言で渡された紙を広げる「何?…地図?」
「サカキが…ここで待ってるって…来れたならポケモンを返すって!」
「!!………信じられないけど…縋るしか無いな」
「行かないで後悔したくないわ、行きましょう!」
三人は頷くと町の人々を起こし、全てを説明し終えるとポケモン救助へ向かった
「サトシ」
「?」
「奴の狙いは恐らく…いや確実にお前だ、気を付けろ」
静かに頷くと、真直ぐ前を見据えて走り出した地図の通り目的地の前へ着いた
入口には見張りが数人居る
「簡単には入れそうに無いわね」
見付からないように、近くの茂みに隠れ様子を伺う事にした
「…くっそぉ、離れないなぁ…」
「こうなりゃ強行突破だ!行くぞ皆!」
ガサッ!と茂みから飛び出すサトシとピカチュウ
やはりロケット団が全員こちらに注目してしまった
「ちょ、無茶よ!…ったく!!」
「しょうがないな」
一人で行かせる訳にもいかず、カスミとタケシも後に続いた
ズボッ
「「「へ?」」」目の前が暗くなったと思った次の瞬間、三人は腰を強打した
「ぃっててて…」
「お、落とし穴…?」
頭上から影が落ちて来た
見上げると見覚えの有る顔が二つ
「お馬鹿な子達ね」
「お前達がここに来る事はボスから聞いているのだ」
「ヤマト!」
「コサンジ!」
「コサブロウだ!!」
スルリと穴の中にロープが降ろされる
「登ってらっしゃい、案内してあげるわ」
三人は怪しく思いつつ、がむしゃらに突っ込んで行っても迷ってしまうだけだと、とりあえず従う事にした
「ジャリンコ達、何でこんな所に居んのかしら」
「ヤマト達と中に入って行ったぞ」
「後をつけるニャース」
「お前達のボスはどこに居るんだ?」
「んもぅせっかちね…今案内してあげてるじゃない」
暫く歩くと、眼前に大きな扉が現われた
「この部屋に入って更に真直ぐ行った所に鍵の掛かったボスの部屋が有るわ
鍵はこれ」
チャリ、と金色に輝く鍵をサトシに渡した
「俺達が案内出来るのはここまでだ」
くるりと踵を返し、元来た道を戻って行った
重い扉を思い切り開け、中に数歩進むとその扉が閉まってしまった
「ちょっと…開かないわよ!?」
押しても引いてもピクリとも動かない
「今更後戻りなんか出来ないんだ、進もう」
鍵を握り締め、サカキの居る部屋へ向かった
一歩一歩近付くにつれ、サトシの表情が険しくなっていくのを、ピカチュウは見逃さなかった
あの時自分が居ない間にサトシに何が有ったのかは知らない
けれど、あんなぐったりしたサトシを見れば、何か酷い事をされたのだという事だけは分かった三人は部屋の前に着くと、互いに顔を合わせると頷き、鍵を刺した
タケシが扉を押す
そして奥のイスに腰掛けている人物が目に入った
威圧感に三人の息が詰まる
「あ、貴方がロケット団のボス…」
「サカキだ、良く来たな」
「…約束だ!町の人達のポケモンを返せ!」
「そう慌てるな…少しばかりゲームでもしようじゃないか」
「そんな事してる場合じゃ…うわ!?」
「「あっ!」」
「ピカピ!!」
サカキが手元に有ったボタンをカチリと押すと、サトシの足元に巨大な穴が開き、そのままサトシは落下してしまった
ピカチュウが慌てて穴に飛び込もうとした瞬間、床は元に戻ってしまった「ピ…ピカ!!」
「お前!何を考えているんだ!」
「サトシはどこ!?」
ニヤリと笑って一枚の紙を投げる
受け取り、中身を見てみるとこの基地の見取り図が描かれていた
「あの少年はこの部屋の真下、“研究室”へ落ちた
確かに私はこの基地がどこにどう繋がっているかは全て把握している
だが、それからどう動くかは本人次第…つまり」
「貴方より先にサトシを見付ける…」
「その通り
先程の部屋の扉は開かんのでな、こちらの階段から行くが良い」
イスから立ち上がり、すぐ横の壁に触れると、音を立てて下へ繋がる階段が現われた
真っ先にピカチュウが駆けて行く
サカキを睨み付け、二人もピカチュウの後を追い階段を駆け降りて行った
サカキはニヤリと笑うと受話器を手にした
「…どうだ?」
『暴れはしましたが、無事終了しました』
「タケシ、この下は研究室って言ってたけど…!」
「ああ、その研究室から二手に別れている」
階段を降り研究室に辿り着く事は出来たが…
「グオオオオオ…」
「イワークとサイホーン!?」
どうやら二手に別れた扉へ向かうには、この二匹を倒さなければならないようだ
「くそっ!サカキが先にサトシを見付けてしまえば終わりだ!」
「タケシ、ピカチュウ」
タケシとピカチュウが振り返ると、自信に満ちた表情のカスミがモンスターボールを構えていた
「ここは私が食い止める!貴方達は早くサトシを見付けて!」
ヒトデマンを出し、水鉄砲で二匹の目を自分に向けた
「ピカチュピ!」
「カスミ…!」
「私は大丈夫…行って!」
カスミを気にしつつ、二人は扉へ走った
「…二人共、必ずサトシを見付けてね…」タケシとピカチュウは互いの無事を祈り別れた
「あのサトシが大人しくしている訳が無いからな…しかしサカキも何か作戦が有るに違いない」
慎重に行こう、と先の角を曲がると、見慣れた物が落ちていた
拾ってみるとそれはサトシの帽子だった
「この先に居るのか…?」
タケシはその帽子をしっかり握り締め走り出した
ピカチュウは薄暗い廊下を歩いていた
「ピカピ…」
目を凝らして探していると、前方に人影が見えた
「…」
「ピ…ピカァッ!!」
目が慣れると、それがサカキだと分かった
自分達より後に部屋を出た筈なのに…
そしてここへ来るにはカスミの居る部屋を通らなければならない筈
「ピカチュピ…!?」
「…」
無表情でピカチュウを一瞥すると、そのまま奥へと歩いていった
それをピカチュウは追い掛けた
やがて一つの扉の前へ着くと、グッと押し開いた
追い付いたピカチュウも後に続いて中へ入った
瞬間、ピカチュウの表情がパッと明るくなる
「ピカピ!」
倒れ、目を閉じてピクリとも動かないサトシに急いで駆け寄る
もう少しでサトシの元へ着くという所で足が動かなくなった
粘着シートに捕らわれてしまったのだ
「くくっ…ネズミ取りだ」
一歩一歩サトシに近付き、前まで着くとしゃがんだ
「目を覚ませ」
「…?」
薄らと目を開けサカキを見てもサトシは何も言わない…動かない
「ピカピーッ!」
「…」
ピカチュウの叫びが届かないのか、ただぼんやりどこかを見詰めているだけだった「自分が誰だか分かるか」
サカキの問いに小さく頷く
「ピカピ…!ピカピ!!」
様子がおかしいサトシに懸命に呼び掛けた
「…ピカチュウ」
未だ焦点が合わない瞳でピカチュウを探す
「そう、ピカチュウだ
あれは我々ロケット団のポケモンだ
君もピカチュウを持っているのか?」
妙な会話に怪訝そうに二人を見詰める
「どう…だったかな…」
小さな呟きにピカチュウは耳を疑った
サトシが自分を忘れてしまっている…
「俺は…何で…」
自分を見下ろしていた男が突然覆い被さって来た
「え…?」
「ピィカ!チュウ!!」
「五月蠅いポケモンだな」
パチン、と指を鳴らすとピカチュウの前に壁が出来、自分と二人を遮ってしまった
「…」
「どうやら君は記憶を失ってしまっている様だ
私が思い出させてやる」
首筋を舐められると、頭の中に映像が流れた
『な…何するんだ!』
『そうだな…何をしようか?』
「…っ!」
無意識にサカキを押し返す
「そう、それが君の前の記憶だ…これが終えれば…全ての記憶を思い出せる筈だ」
不安だが、それで記憶が戻るなら…
「分かっ…た…」
髪を柔らかく撫で、上着を脱がせると、黒いTシャツを胸元まで捲り上げた「ピィカ、チュウウウッ!…ピカ…ピィカ、チュウウウッ!」
巨大な壁を壊そうと何度も何度も十万ボルトを繰り出す
「ピカッ…ピ…チャァ…」
力尽きた様にぐたっと倒れてしまった
ふとピカチュウに三つの影がかかった
「あら…ジャリボーイのピカチュウじゃない?」
「何やってんだこんな所で」
「ピピッカチュウ…」
「とりあえず…これ剥がしてやるか」
体が自由になったピカチュウは素直に礼を言った
「ジャリンコ達と一緒じゃニャーのか?」
「ピ…!ピカピ!ピカピカチュウ!ピッカア!」
「ニャース通訳」
「どうやらジャリボーイがボスに捕まってしまってるらしいニャ」
「また!?ったくボスも変わってるわね…」
「しかもこの壁の向こうに居るらしいのニャ」
「なる程…で、ジャリボーイを助ける前にこれに捕まった訳だ」「それで?あんた達はここに何しに来たの?」
「そうニャ、おミャーらがヤマト達と中に入っていったのを見てたニャ」
ピカチュウは町で有った事を話した
「それでポケモン達を取り返しに来たのか」
「でも返してって言って返して貰える訳無いじゃない」
ダッとロケット団の足元を駆け、別のルートを探す為に部屋を飛び出した
「ニャニャ!?ピカチュウ待つニャー!」
「「ニャース!」」
二人は戸惑いながらもニャースとピカチュウを追った
サトシはギュッと目を瞑り体を舐められる感覚に耐えながら、擽ったさに時折小さく息を洩らした
徐々に体が熱を帯びていく
舌が胸の突起に触れるとビク、と体が揺れた
(抵抗するのを押さえ付けるのも中々楽しかったが、素直に感じているのも…悪くは無いな)
「っ…あ…!」
そして音を立ててそこに吸い付くと思わず声を上げ顔を逸らす
「…子供は素直なのが一番だな」
「わ…!や、やめ…っ!」
腰に手を回し抱き締めながら休む間も無く同じ場所を攻め立てられる
サカキの服を引っ張ってみるが全く動かない
暫く続けられると抵抗する気力も無くなってしまった
「あ…あの、さ…俺…いつ記憶戻るかな…
本当にこんな事しなきゃ戻らないの…かな…?」
「ああ、この方法しか無い」
サカキは上半身の服を脱ぎ捨て、サトシのズボンに手を掛けた
「あ、あの…」
「心配するな、私と君は今回が初めてでは無い」
「でも…」
流石に記憶に無い人物に全身を曝け出すのは抵抗が有る
脱がそうとする手を押さえ、困った表情になる
「あっ…!」
半ば強引にその手を滑り込ませると、サトシ自身を捕えた
「ん…っ」
そのまま揉まれると顔が紅潮し、自然と溢れる喘ぎ声を抑える
サトシの両手を掴んで頭上に上げた
そしてグッと顔を近付ける
閉じていた目を薄ら開け、すぐ目の前の鋭い目と搗ち合う
「…!」
「…サトシ」
名を呼ばれた瞬間頭の中に塞がれていた何かが弾けた「サ、カ…!?」
口元が歪むのを目の当りにすると額に汗が浮かぶ
掴まれていたままのサトシ自身を揉みしだかれると、急激に血の気が引いた
「うっ…!」
手が押さえられて動けない
足も間に入り込まれれば動く事なんて不可能だ
「やめろ離せ!!」
「先程までしおらしく感じていたのにな」
「嘘言うな!手退けろよっ!」
振り払おうにも少しも動かない
この状況はあまりにもまずい
またあの時の様な事をされるのかと思うと暴れずにはいられない
頭がおかしくなりそうだ
「無駄だ、ここには私とお前しか居ない…」
再び撫でられると、強く睨んでいた瞳が泣きそうに歪む
「っ…!」
「そのまま大人しくしてろ」
下着の上から弄んでいた手をその中に滑り込ませた
「なっ…!!」
「…嫌がっていた割りには…」
ニヤ、と厭らしい笑みにカッと顔が赤くなる
「っ、あ…っ!」
何かを言おうと口を開く度に握られたものが擦られ、喘ぎに変わってしまう
こんな快楽に負けてしまう自分が情けなくて歯痒い…
「あの時はガツガツしていた…済まなかったな」
そう言うサカキをチラリと見ると、目を細めて優しく微笑んでいた
しかし…
「今回は優しく抱いてやる」
反抗はしてみたが、やはり解放する気はさらさら無い様だ
動けない上に急所を捕らわれているサトシは、最早抵抗など無駄な体力を使うだけだと悟った
「…ポケモン達を無事に…帰してやってくれ…」
「それと………これで俺に付き纏うのは…やめてくれ…
俺は、ロケット団なんかにはならない」
先程と打って変わって静かに話すサトシに少々驚いたが、すぐに冷静になる
「………良いだろう、君とポケモン、二つを一度に手放す事になるのだからな…たっぷりと堪能させて貰うとしよう」
押さえ付けていた両手を解放する
全く動かず、抵抗する気が無いのが分かった
「もし辛くなったりする事が有れば、遠慮無く私にしがみつけ」
「…」
ズボンと下着を片足に脱がせ、足を大きく広げる
そんな自分の姿がとても惨めでたまらない今のそんなみっともない自分を消すように、サトシは固く目を瞑る
つ、とサカキの指がサトシ自身を撫でた
「っ…」
「怖い事など何も無い、全てを委ねていれば…次第に気持ち良くなる」
瞬間、肌がぞくりと粟だった
熱くてヌルヌルした何かが、晒されたそこに絡み付いてくる
筋を刺激され、体が制御出来ずに震えだしてしまう
恐る恐るそこに目をやると、案の定サカキの口内に収まっていた
「離…っ…あっ…!うぅ…!」
直ぐさまサカキの頭を引き離そうとしたが、腰を掴まれ身動きも取れず、されるがままになってしまった
全体を吸い上げられ先端を嬲られ、あまりの快楽に思考も停止してしまう
「離せ…やめろっ…て、ば…ぁ…!」
サカキを押さえる手の力が徐々に抜けていき、あの時の様な何とも言えない感覚に襲われる
「あっ…っ」
スル、と指をサトシの後口に宛行う
「…!」
そのままグッと第二関節まで中に挿れられると、アレをされる準備だと悟り、下唇をギュッと噛み締めた
「…」
咥えていたものを解放し指も抜くと、胡座に座り直す
「はぁっ………うわっ!?」
強い力で腰を持ち上げられ、サカキの眼前に後口を晒す格好になる
先程の愛撫で自分のそれがはち切れそうになっているのが目に入り、急激に顔が熱くなる「ぃっ…嫌だやめてくれっ!」
かぶりを振ってその光景を忘れようとするが、目を閉じても浮かんできてしまう
「交換条件を出したのはお前だ」
「あっ、ああっ!」
再びサトシの中に指を突き挿れた
突然の行為に思わず声を上げてしまい、ハッとして直ぐに口を押さえる
「良い声じゃないか、我慢するのは勿体無い」
指は狭い中を無理矢理に進み、そしてゆっくり引く
「――っ」
少しずつ少しずつ自分の意思とは裏腹に、快楽に溺れそうになってしまう
二本に増やされた指を難なく飲み込んでいく
「ここだけでイッてみるか?」
位置を把握してあったように、指を曲げ、固いしこりを擦る
「んんっ!!」
ふいに訪れた強烈な快感に背がのけ反った
(もう…だめだ!)
自分の表情を相手に見せないよう、腕で覆い隠す
「くっ…ぁ…あぁっ―――!!」
声にならない声で、サトシは自分の胸に白濁を零した
余韻でヒクつく後口とサトシを眺め、目を細めて厭らしい笑みを浮かべる「イケたな」
「………黙れ…」
荒い息を繰り返す子供の腰を降ろしてやる
表情は見てとれないが、火照った頬、荒くなった呼吸、胸まで上がった服として意味の無いTシャツ
そこに飛び散った白濁、力無く投げ出された肢体
十歳とは思えない色気が漂う
ふと自分自身が僅かに反応しているのに気付き、苦笑した
(溺れさせるつもりが…私が溺れ過ぎたようだな)
自分のスラックスを降ろし、サトシの腰を手前に引き寄せ、猛ったものを押し付けると怯えたように小さく息を吐いた
「や…約束だぞ…ちゃんとポケモンを返せよ…!?」
何も答えず体を重ねると、僅かに震えているのが分かる
「…約束は守ってやるさ」
「ぐ…!」
腰を掴む手に力が入った瞬間、体が圧迫される
「いっ…い、たっ…あ…!」
苦しそうに喘ぐサトシに構う事無く中に挿入っていく
唇を噛み過ぎたのか口に血の味が広がる(ちくしょう…!ちくしょうっ…!!)
こういう事をしに来たんじゃないのに…
でもこうしないとポケモンを町の人に返せない…
悔しくて悔しくてたまらない…
(そう言えば…カスミ…タケシ…ピカチュウは…)
「余計な事は考えるな」
体を起こすと少しずつ律動を始めた
圧迫感と痛みに、上手く呼吸をする事が精一杯で何も考えられない
また切れてしまったのか僅かに血の匂いがする
辛さに自然と涙が出て来てしまう
確かに気持ちが良いが、前よりは劣るのは何故か…
「んっ…あ!」
(…これだな)
萎えたサトシ自身に指を絡ませると良い具合に締め付けられる
前立腺も刺激しているのか、今まで苦痛しか感じていない表情だったサトシが体を捩る
「ん…!…ふ…っ」
顔を背け自分の腕に爪を立てた暫く擦りながら律動を繰り返していると中が痙攣し、ぶるりと震えた
手を離し、再び腰を掴むと、激しくラストスパートをかける
「あっ…!ん、あぁっ…!!」
ガクガクと揺さぶられ、頭の中が真っ白になった
「あ、あ―――――!!」
強い快感に侵され、再び音の無い声で叫びながら弾けた
「………」
「っ…はぁっ…ぁっ…」
頭がグラグラするが、何とか息を整える
「立てるか?」
「…無理に…決まってるだろ…!…いっ…!!」
服を渡されると急に体を起こされ、鋭い激痛が襲う
「ぐ…っ!…何す…!?」
起こされたかと思うと今度は持ち上げられた
「な、何だよ…!?」
「見せてやる」
何を、と問う前に、サカキは広間の更に奥へ歩き出した着いたのは広間の突き当たりの壁だった
「…?」
コン、と足元の壁を蹴ると、機械の唸る音と共に人一人入れるスペースが現れた
突如出来たその空間に足を踏み入れ、再び壁を蹴った
ガクンと小さく震動を感じると、上へ上り始めた
どうやらエレベーターらしい
暫く呆然としていたサトシは、まだ自分が服を羽織っているだけな事に気付く
「降ろせっ」
ゆっくり降ろされると、慌てて衣服を整え始める
(うっ…)
まだ中に残っている液体を感じて動きが止まる
「…後で私が掻き出してやろう」
「う…うるさい!こっちを見るな!」
震える腕で何とか着終わると丁度エレベーターが目的地へ到着した
「ここは…って、やめろっ!」
再び持ち上げられ外へ出る
「お前が望んだものだ」
その部屋の一角をカーテンで遮ってある
そのカーテンを開放つと大量のモンスターボールが有った「これは…町の人達の…?」
「そうだ、約束は守るぞ」
直ぐにサカキから離れ、一つ一つボールを開けポケモンを確かめる
特に怪我をした様子も無く、安堵した
「そこに窓が有る」
指された方を見ると外が一望出来る程の巨大な窓が有った
その窓の下は断崖絶壁
この基地は崖の上に立っていたようだ
「そこから逃がしてやると良い」
「…飛行タイプのポケモンは、飛べない奴を乗せてやってくれ
皆自分のモンスターボールはちゃんと持って行くんだぞ」
窓を開けてやるとポケモン達は主人の元へ帰るべく飛んで行った
「…」
「…ピカチュウ達はどこだ、俺達もここにはもう用は無いんだ」
『サカキ様失礼致します』
別の入口の扉が開き、黒い服のロケット団が入ってくる
そしてロープで拘束されたもう一人
「ちょっと!離しなさいよ!!」
「カスミ!?」
「…!サトシ!?」驚いた表情はやがて穏やかになる
「良かった…無事だったのね」
「お前ら!カスミを離せ!」
「離してやるさ…」
グイッ、とロープを引いて開け放たれたままの窓際まで連れていかれる
「もう一人はどうした」
「はい、今…」
『失礼致します』
再び扉が開き、またもロープで拘束された人物が部屋へ投げ入れられた
「ぐっ…」
「「タケシ!」」
「サトシ…カスミ…!」
「ピカチュウはどうした」
「それが、まだ見付からず…」
「…」
ロケット団に連れられカスミの居る窓際へ向かう
そこにサトシも駆け寄る
「っ…!」
ズキンと痛む腰に顔を歪めるのをタケシは見ていた
「サトシ…まさか…!」
「………言うな、平気だから」
心配そうなタケシに、ニッと笑って見せた
二人のロープを解こうとするが固く結ばれて解けない「さて…」
背を向けたままのサカキがゆっくり振り返る
「ネズミが一匹足りないが仕方無い…邪魔者には消えて貰おうか…」
「ふんっ、言われなくても消えてやるわよ!その前にピカチュウを探さなきゃ…」
「あのネズミは私が育てておいてやる
そして消えるのはお前達二人だけ、だ」
「え?」
「サトシ…お前はロケット団に入るんだ」
「「!?」」
「またお前は…!ならないって言ってるだろ!!」
ポイと投げられたモンスターボールからゴルバットが飛び出る
「超音波」
「…!」
キィン…と激しい耳鳴りに頭がおかしくなりそうになる
「うう…!」
「サトシ!」
「おい!やめろ!」
「ピィカ、チュウウウッ!!」
電撃がゴルバットに直撃し、パタリと倒れる
同時に頭を抱えたままサトシも膝をついた
「ピッカァ!」
「「ピカチュウ…」」
サカキは微動だにしないサトシを確認するとピカチュウに目をやる
「どうやって来た?」
そんな問いには勿論答えずサカキを睨み付け三人の元へ走り寄る
「ピカピ…」
「サトシ、そいつらを片付けろ」
ピカチュウを抱き、スッと立ち上がると二人を振り返った
「ど…どうしたのよ…」
「ピカピ?」
ロケット団の一人がカスミのロープをナイフで切る
両手が自由になったカスミにピカチュウを押し付ける
「ちょっと………ぇ…?」
体がグラリと傾き足が浮く
「う…そ…」
全てがスローモーションになった
窓際に立っていたカスミをサトシが押したのだ
そこには地面は無く絶壁だと承知していた筈なのに…「カスミ…!ピカチュウ…!」
叫びながら落ちて行く二人を、サトシは無表情で眺めた
「サトシ!!お前自分が何をしたか分かっているのか!?」
悲鳴が聞こえなくなった瞬間、タケシは必死に立ち上がりサトシに向かって走り出した
「…」
タケシが直ぐ後ろに来たのを感じると、しゃがんで足を引っ掛けた
「…な…」
そのままの勢いで外へ飛び出してしまう
見下ろしたサトシの表情は分からなかった
カスミ達と同じく叫びが聞こえなくなり、サトシは無言で立ち上がる
「…それでこそロケット団員だ」
ニヤリと口を歪め、サトシに近付くと頬に触れた
パンッ!とその手を払い除け窓際へ移動する
「…何をする気だ」
俯いたままだったサトシが見せた目は正気に戻っていた「チッ…!」
サトシが何をしようとしているのか察し、急いで手を伸ばす
手が触れる前に踵を返し、自分自身も崖下へ飛び降りた
「あ!ジャリボー(静かにするニャ!)むぐっ…!」
(下っ端の俺達がこんな所に居るのがバレたら、俺達がここに案内したかと思われちまうだろ!)
(ボスもニャんだか機嫌が悪いニャース…)
(わ、私達はただピカチュウがポケモンが捕まってる場所へ行こうとしたからであって…!)
(そ、そうそう、決してジャリンコ達に情が移って、逃がしてやろうと思って来たんじゃ無いんだからな!偶然だ偶然)
(そんニャ事言わなくても皆さんは分かってらっしゃるニャ)
(誰よ皆さんて)
(お前が先頭だったくせに)
(うう…どうでも良いから早くここから離れるニャ!)
「!!」
四人が落ちた崖下を覗くと火柱が迫って来た
間一髪でそれを躱し、体勢を整える
「何だ!」
突風と共に赤い巨体が目の前を覆った
「…なんと…」
「リザードン!火炎放射!」
雄叫びを上げ吹き出した強烈な炎は部屋に真直ぐ向かっていく
しかしその炎は寸での所でいつの間にかサカキの足元に居たキングラーが水鉄砲で消してしまった
「…やってくれる」
「…リザードン、もう一度火炎放射!」
「キングラー、消火だ」
再び火炎放射と水鉄砲がぶつかり合う
「頑張れリザードン…!もう少しだ!」
渾身の力で更に強力な火炎放射を繰り出し、キングラーを圧倒する
「…水が火などに負けるとは」
部屋の中に炎が迫るとスプリンクラーが反応し水が降り注いだ
その水を浴び、最後の力を振り絞り水鉄砲を繰り出した
「ピジョーッ!」
「よし…リザードン、もう良いぞ!」
サトシは下からピジョンが飛んで来るのを確認し、リザードンを後ろへ下げた
「どうした、諦めたか?」
「そんな訳無いだろっ!行けっ!!」
「ピジョッ!」
ピジョンは電光石火でサカキに突進していく
「無駄な足掻きは「ピカチュウ!」
「ピッカァ!」
「何!?」
ピジョンの背にピタリと隠れていたピカチュウに焦った
水は電気を良く通す
この部屋はキングラーの水鉄砲とスプリンクラーで水浸しなのだ「ピィカ…」
バチバチと頬に電気を溜めるとピジョンからピョンと飛び降りた
「………ここまでか」
フッと笑い静かに目を閉じた
「チュウウウッ!!」
ピカチュウが放った電撃はキングラーに命中し全体に広がった
「ピカピーッ」
ピジョンからそのまま落下したピカチュウを両手で受け止め、直ぐにその場を離れた途端、その部屋は爆発した
「これであいつも懲りただろ…な、ピカチュウ」
「ピカチュ!」
互いにニコリと微笑み、地上に降りた
「サトシ、ピカチュウ」
「タケシ…カスミは?」
「気を失ってるだけだ
大丈夫、どこも怪我はしていないよ」
「そっか…」
安心すると急に体の力が抜け跪いた
「ピカピ…」
「…お疲れ様、良く頑張ったな」
タケシはくしゃりとサトシの頭を撫でた
「タケシ、お前…」
「…お前が俺達を裏切る訳無いもんな」
自分を信じて騙された振りをしてくれたタケシに、顔を歪ませ、ありがとうと呟いて俯いた町に戻ると人々から感謝された
ジュンサーからも礼を言われた
あの爆発が起こってから直ぐに現場へ向かい、何人かには逃げられたが、結構な数のロケット団員を逮捕出来たらしい
町長が声を掛ける
「本当にありがとう!おかげで大切なポケモン達が帰って来たよ
何とお礼を言って良いか…」
「いいえ気にしないで下さい…あの…町長さん、一つお願いしても良いでしょうか?」
「ああ、何でも言って下さい」
「「風呂を貸して下さい!」」
「は、はぁ…ではどうぞ」
まだ目を覚まさないカスミをベッドに寝かせて貰い、風呂場へ案内された
「サトシ、先に入れよ
俺とピカチュウはカスミを見てるから、上がったら呼んでくれ」
「ああ、ありがとう」
脱衣所へ入り、衣服を脱いでいると近くに有った鏡が目に入った
「…」
自分の体中に在る赤い斑点
指でなぞってみると鳥肌が立った
ブンブンと頭を振って汚れを拭う為、風呂へ急いだ「タケシ、次良いぜ」
「ん、ああ」
「まだ…起きないか?」
「うん、まあ、俺は風呂へ行くよ
ピカチュウ、お前も来るか?」
「チュウ!」
「…起きたら覚悟しといた方が良いぞ」
「うっ…!」
タケシが出て行き、しんと静まった
サトシはベッドの横に有る椅子に腰掛け、静かに眠るカスミを見た
「…」
「…」
「…」
「…」
「…ん…」
「あ…お、起き、た?」
薄らと開いた瞳にサトシが映った
果たして何を言われるか…ドキドキしながら言葉を待っていると、カスミはムクッと上体を起こし、そっと手を取った
「カ…カスミ?」
「…どこも、怪我とかしてない?」
「え?う、うん」
「どこも痛くない?」
「(腰以外は)平気…」
「…良かった」
「…ええ…と…怒ってないの?」
「…」
「………ぃ…痛てててて!!」
手に鋭い痛みが走った
カスミが思い切りつねったのだ
「怒ってるに決まってんでしょ!?本当に死ぬかと思ったんだから!!この馬鹿!バカ!!」
「い、痛い痛いって!ごめんってば!」「おーい廊下まで聞こえてるぞ」
「ああっタケシ、ピカチュウ!助けてくれ!」
「詳しく教えて貰おうじゃない!ちょっとサトシ聞いてるの!?」
タケシはまあまあ、とカスミをなだめ、落ち着いてサトシの話を聞かせてやった
リザードンとピジョンのモンスターボールをピカチュウに預け、リザードンに死角の崖の上へ運ばせた事
そして二人を安全な所へ避難させた後基地を破壊した事
「だ、だからさ、味方を欺くにはまず敵からって言うだろ?」
「逆だサトシ」
「…タケシは知ってたの…?」
「知ってたというか気付いてたんだ」
「…そう…」
カスミはそのまま黙って俯いてしまった
「私もまだまだね…」
「え?」
「あ、忘れてた」
タケシを見ると何やら自分のカバンを漁っている
「サトシ、これ」
手渡されたのはいつの間にか無くなっていた自分の帽子だった
「どこで…」
「いやあ実はお前を探してる途中に見付けてな、拾ってからでかい部屋に出たと思ったらいきなりロケット団に囲まれちゃってなぁ」
ははは、と笑うタケシに二人とピカチュウは苦笑した「あ、二人共お風呂入ったんだ!私も行って来よ」
「歩けるか?」
「もう、馬鹿にしないでよっ」
ヒョイとベッドを飛び降り、急ぎ足で風呂へ向かった
「…なあタケシ、もう大丈夫かな…」
不安そうなサトシの声に振り返る
「…俺、もうあんな目に合うのは嫌だ」
「…ごめんな」
いきなり謝られ不思議そうにタケシを見る
「ずっと近くでお前を守るつもりだったのに」
「あ、いや…そんな事は別に…」
「もしまた何か有ったとしても、絶対に守ってやるから」
暫く見詰め合っていたが、サトシがフイと目を逸らす
そんなサトシの前でしゃがむ
「サトシ、俺は…」
「…え?」
柔らかく頬に手をやる
「…」
「何だよ…?」
「…」
「…?」
「ピ…ピカ、ピカ…チュウ…?」
妙な雰囲気に絶えきれずピカチュウが出て行った方が良いか尋ねる
ハッとしたタケシは慌てて離れた
「?何なんだよタケシ」
「あーあー忘れてくれっ!なっ?ピカチュウもっ!」
タケシがわざとらしく大声で笑い、サトシが首を傾げているとカスミが帰って来た
「うるさいわよタケシ、何やってんの?」
「さあ…」
暫く休憩しているとノックと共に町長が尋ねて来た
「夕飯がもう直出来るからいらっしゃい」
「あ、はい!行こうぜピカチュウ」
「ピカチュウ!」
「わーい!私お腹空いちゃった!」
慌ただしく出て行く二人とピカチュウ
一人残ったタケシは深く溜め息を吐いていた
「!」
「………」
サカキの乗ったヘリコプターは暫く空中を漂った後、先程飛んで行った何かを追い掛ける様に発進した
「サトシ」
「…!タケシ…?」
「もう居ない、急いで森を出よう」
「でも出口が分からないのにどうやって?それに、何だったのかしら今のヘリコプター…まるで私達を観察してたみたい」
((………))
間違ないだろう、とタケシとサトシは思った
「サカキ様、今の子供は」
「…森に居るロケット団員、近くにピカチュウを連れた子供三人が居る
帽子を被った少年のみを、基地へ招待しろ」
『了解』三人は急ぎ足で出口を目指す
「ピカピ…」
「ん?…平気だよ、ピカチュウ」
「大丈夫かしら、余計迷子になりそう!」
「迷ってる暇は無い、とにかく進まなきゃな」
突然ピカチュウの耳がピンと立ち、振り返った
「どうしたピカチュウ」
「…」
再度声を掛けようとした瞬間、奥の茂みが動いた
「何なの…?」
ガサッ!と音を立ててその茂みからロケット団員が現われた
「居たぞ!」
「何!?」
「兎に角逃げるぞ!!」
「待て!」
人数が更に増え追い掛けて来る
「ピカチュウ!十万ボルト!」
「ピーカ、チュウウウ!!」
ロケット団の動きを封じながら、何とかその場を逃げ切った「はあっ、はあ…もう走れないぜ…」
「ふー…もう!何なのよ一体!」
「おい見ろ!あそこ!」
タケシが指を刺した先には警察が在った
「ジュンサーさんに匿って貰いましょう!」
三人は急いで走り出した
「うわ!!?」
サトシの慌てた声が聞こえた
振り返るとロケット団の一人に捕まり、サトシは身動きが取れないでいた
「「サトシ!」」
「ピカピ!」
「離せ!!」
「サカキ様の命令だ悪く思「ピカチュウ!十万ボルト!!」
「ピーカ、チュウウウ!!」
「「アバババババババババババババ!!」」
自らも電撃を受けたが、助かったので結果all right!「どうしたの君達!?」
「貴女に会いに参りました」
「邪魔!!」
タケシを突き倒し、カスミは事の経緯を話した
「ええ!?貴方達、直ぐに森へ!!」
「はっ!」
ガーディと共に複数の警官が森へ走って行った
「身に覚えは?」
あまりサトシに思い出して欲しくは無い
しかし追われる理由はあの事しか…
タケシは思わず握り拳を作った
「無いわ!」
俯いた二人は発せられた声に顔を上げた
「有る訳無いわ!私達はただの通行人だもの、いい迷惑!」
ねえ、とこちらに向けた瞳は合わせろと言っている様だった
「そ、そうだ!俺達ただ旅をしてただけです!」
「そう…分かったわ、暫くここで休んでいって」
「「「ありがとうございます」」」
「失敗か」
「あの子供に何か用事でも」
「ああ…自分でも不思議だ」
「は…?」
あれからあの少年の体を欲している
今までこう思った事も無かったのに…
あの最後まで光を失わなかった瞳を手に入れてみたいと思った
(これで終わりにしてやるさ)
己は逃げた“ミュウツー”を追い、そして残りの団員に指示するべく、無線を繋いだ「……………分りました、直ぐ向かいます」
「ジュンサーさん、今の電話…」
「ここから少し行った所に小さな町が有るの、そこでロケット団がポケモンを奪って大騒ぎしているらしいわ!」
「ええ!?俺達も行きます!連れてって下さい!」
「…迷ってる暇は無いわ、いらっしゃい」
全員がパトカーに乗り終えると同時にアクセル全開で走り出した
「ああっ!」
町に着くと大きな袋を担いだロケット団が小さな子供から老人まで、容赦なくモンスターボールを奪っていた
「やめなさい貴方達!全員逮捕します!」
警棒と手錠を持った警官が町へ突入した
「ゼニガメ、フシギダネ、リザードン、ピジョン!お前達も手伝ってくれ!」
勢い良く飛び出したサトシのポケモン達は、警察犬のガーディと共にロケット団のポケモンと戦い始めた
「皆さん落ち着いて!こっちです!」
タケシとカスミの誘導で町の住民が避難する
転んだ子供を起こして避難場所へ連れて行くサトシ
「もう誰も居ない?」
「…とりあえずな」
「大丈夫よ、皆のポケモンは絶対取り返すからね!」
ふと、パラパラと粉が落ちて来た
全員が空を見上げると、空一面にバタフリーの集団が居た
浴びた人々やポケモンは力無く地面に崩れてしまう
(…眠り粉だ…!)
三人の瞼も徐々に重くなっていく倒れた三人の前に誰かが立つ
その人物に気付き、遠くで戦っていたピカチュウが猛スピードで戻ってくる
振り返ったジュンサーは避難した人々の異変に気付いた
「…?ああっ、町の人達が!…あの人は…!?」
倒れた人々の前にただ一人、体格の良い男が立っている
「ピカピー!!」
「…ん……ピカチュウ…」
重い瞼を無理矢理上げ、佇む男の顔を見て体が硬直した
「お、お前…サカ…!」
「今日は運が良い…ミュウツーも再び捕まえる事が出来、その上未来の私の右腕が目の前に転がっている」
「まだそんな事…!」
「ピィカ…チュウウウッ!!」
ピカチュウの電撃が真直ぐサカキに向かって行く
サカキが投げたボールから飛び出したサイドンが電撃を弾き飛ばす
「ピカ!?」タケシは自分の腕を抓り、必死に起きていた
カスミも暫くは起きていたが、今は完全に眠ってしまった
(サトシ…!)
「お前がサカキか…」
「タケシ…!」
「ん?…ああ、サカキだが」
「許さないぞ…お前が、サトシを…!」
「そう睨むな
こいつをロケット団にする事が出来たら、もうお前達の前には現れん」
サカキはしゃがんでサトシの腕を掴み起こした
体を動かせないサトシはサカキをギロリと睨む
「…サトシ!」
(ああ、駄目だ…力入らない)
そして意識を失ってしまった
「ピカピッ!!」
サトシが居なければ上手く技が決まらない
どんどん傷付いて行く体を引き摺りながらもサトシを助ける為にぶつかっていった
「トレーナーの為なら死んでも良いと言うのか?素晴らしい絆だ、実にくだらん」
上空に待機させていたヘリコプターからロープが降りて来る
サトシを抱えたままロープを掴むとそのまま上がって行ってしまった
「ピカッ!」
高速移動でサイドンを抜かし、カスミとタケシに抱き付いた
心の中で二人に謝った
「ピィカ、チュウウウッ!!」
「きゃああああああ!!」
「うわああああああ!!」
ピカチュウの渾身の一撃で二人は思い切り目が覚めた
「な、え?何?何がどうなったの!?」
「行けズバット!あのロープを切ってくれ!」
「ズバ!」
サカキを追い越し、ガブリと噛み付き引き千切ろうとしたサカキが小さく舌打ちしたと同時に細くなったロープが切れた
「行っけえ!マイステディ!」
カスミのボールから飛び出したヒトデマンとスターミーは、サトシに向けて勢い良く水鉄砲を噴射した
二人は水のクッションに受け止められた
「良いわよ、そのままゆっくり降ろして!」
「このままでは全てが台無しになる…」
腕に抱えたサトシを見る
「起きろ」
「ん…」
水の冷たさに覚醒寸前だったサトシは、声をかけられ目を覚ました
「!!」
「暴れるな、今は引いてやる」
「…!」
「直にお前から私の元へ来る事になる」
「しつこいぞ!俺は絶対…!!」
全てを言う前に大きな手に口を塞がれる
「この町のポケモンはほぼ頂いた
お前が私の元へ来る事が出来たなら返してやらんでもない」
「…」
「これが地図だ、仲間を連れて来ても良いんだぞ?」
皮肉気に笑い、再び降りて来たロープに掴まると、そのまま上空へ登って行った
「…」
去るサカキを呆然と眺めながら、随分と近付いた地面に気が付き飛び降りた
「ピカピーッ」
「ピカチュウ!」
ピョンとサトシに飛び付き、抱き締められると安心したようにチャア、と鳴いた
「ボロボロじゃないか…大丈夫か?」
「…ピィカ!」
「サトシ、大丈夫?」
「ああ…びしょ濡れだけど」
「ロケット団が逃げるぞ!」
振り返ると団員全員が踵を返し走り去って行く所だった
それを追い掛けるジュンサー達
そして戻ってくるポケモン達
それぞれを労い、モンスターボールに戻した
「…町の人達を起こさなきゃ…」
「…自分のポケモンが連れて行かれてしまった事…きっと悲しむだろうな」
「…」
『これが地図だ』
「サトシ?」
無言で渡された紙を広げる「何?…地図?」
「サカキが…ここで待ってるって…来れたならポケモンを返すって!」
「!!………信じられないけど…縋るしか無いな」
「行かないで後悔したくないわ、行きましょう!」
三人は頷くと町の人々を起こし、全てを説明し終えるとポケモン救助へ向かった
「サトシ」
「?」
「奴の狙いは恐らく…いや確実にお前だ、気を付けろ」
静かに頷くと、真直ぐ前を見据えて走り出した地図の通り目的地の前へ着いた
入口には見張りが数人居る
「簡単には入れそうに無いわね」
見付からないように、近くの茂みに隠れ様子を伺う事にした
「…くっそぉ、離れないなぁ…」
「こうなりゃ強行突破だ!行くぞ皆!」
ガサッ!と茂みから飛び出すサトシとピカチュウ
やはりロケット団が全員こちらに注目してしまった
「ちょ、無茶よ!…ったく!!」
「しょうがないな」
一人で行かせる訳にもいかず、カスミとタケシも後に続いた
ズボッ
「「「へ?」」」目の前が暗くなったと思った次の瞬間、三人は腰を強打した
「ぃっててて…」
「お、落とし穴…?」
頭上から影が落ちて来た
見上げると見覚えの有る顔が二つ
「お馬鹿な子達ね」
「お前達がここに来る事はボスから聞いているのだ」
「ヤマト!」
「コサンジ!」
「コサブロウだ!!」
スルリと穴の中にロープが降ろされる
「登ってらっしゃい、案内してあげるわ」
三人は怪しく思いつつ、がむしゃらに突っ込んで行っても迷ってしまうだけだと、とりあえず従う事にした
「ジャリンコ達、何でこんな所に居んのかしら」
「ヤマト達と中に入って行ったぞ」
「後をつけるニャース」
「お前達のボスはどこに居るんだ?」
「んもぅせっかちね…今案内してあげてるじゃない」
暫く歩くと、眼前に大きな扉が現われた
「この部屋に入って更に真直ぐ行った所に鍵の掛かったボスの部屋が有るわ
鍵はこれ」
チャリ、と金色に輝く鍵をサトシに渡した
「俺達が案内出来るのはここまでだ」
くるりと踵を返し、元来た道を戻って行った
重い扉を思い切り開け、中に数歩進むとその扉が閉まってしまった
「ちょっと…開かないわよ!?」
押しても引いてもピクリとも動かない
「今更後戻りなんか出来ないんだ、進もう」
鍵を握り締め、サカキの居る部屋へ向かった
一歩一歩近付くにつれ、サトシの表情が険しくなっていくのを、ピカチュウは見逃さなかった
あの時自分が居ない間にサトシに何が有ったのかは知らない
けれど、あんなぐったりしたサトシを見れば、何か酷い事をされたのだという事だけは分かった三人は部屋の前に着くと、互いに顔を合わせると頷き、鍵を刺した
タケシが扉を押す
そして奥のイスに腰掛けている人物が目に入った
威圧感に三人の息が詰まる
「あ、貴方がロケット団のボス…」
「サカキだ、良く来たな」
「…約束だ!町の人達のポケモンを返せ!」
「そう慌てるな…少しばかりゲームでもしようじゃないか」
「そんな事してる場合じゃ…うわ!?」
「「あっ!」」
「ピカピ!!」
サカキが手元に有ったボタンをカチリと押すと、サトシの足元に巨大な穴が開き、そのままサトシは落下してしまった
ピカチュウが慌てて穴に飛び込もうとした瞬間、床は元に戻ってしまった「ピ…ピカ!!」
「お前!何を考えているんだ!」
「サトシはどこ!?」
ニヤリと笑って一枚の紙を投げる
受け取り、中身を見てみるとこの基地の見取り図が描かれていた
「あの少年はこの部屋の真下、“研究室”へ落ちた
確かに私はこの基地がどこにどう繋がっているかは全て把握している
だが、それからどう動くかは本人次第…つまり」
「貴方より先にサトシを見付ける…」
「その通り
先程の部屋の扉は開かんのでな、こちらの階段から行くが良い」
イスから立ち上がり、すぐ横の壁に触れると、音を立てて下へ繋がる階段が現われた
真っ先にピカチュウが駆けて行く
サカキを睨み付け、二人もピカチュウの後を追い階段を駆け降りて行った
サカキはニヤリと笑うと受話器を手にした
「…どうだ?」
『暴れはしましたが、無事終了しました』
「タケシ、この下は研究室って言ってたけど…!」
「ああ、その研究室から二手に別れている」
階段を降り研究室に辿り着く事は出来たが…
「グオオオオオ…」
「イワークとサイホーン!?」
どうやら二手に別れた扉へ向かうには、この二匹を倒さなければならないようだ
「くそっ!サカキが先にサトシを見付けてしまえば終わりだ!」
「タケシ、ピカチュウ」
タケシとピカチュウが振り返ると、自信に満ちた表情のカスミがモンスターボールを構えていた
「ここは私が食い止める!貴方達は早くサトシを見付けて!」
ヒトデマンを出し、水鉄砲で二匹の目を自分に向けた
「ピカチュピ!」
「カスミ…!」
「私は大丈夫…行って!」
カスミを気にしつつ、二人は扉へ走った
「…二人共、必ずサトシを見付けてね…」タケシとピカチュウは互いの無事を祈り別れた
「あのサトシが大人しくしている訳が無いからな…しかしサカキも何か作戦が有るに違いない」
慎重に行こう、と先の角を曲がると、見慣れた物が落ちていた
拾ってみるとそれはサトシの帽子だった
「この先に居るのか…?」
タケシはその帽子をしっかり握り締め走り出した
ピカチュウは薄暗い廊下を歩いていた
「ピカピ…」
目を凝らして探していると、前方に人影が見えた
「…」
「ピ…ピカァッ!!」
目が慣れると、それがサカキだと分かった
自分達より後に部屋を出た筈なのに…
そしてここへ来るにはカスミの居る部屋を通らなければならない筈
「ピカチュピ…!?」
「…」
無表情でピカチュウを一瞥すると、そのまま奥へと歩いていった
それをピカチュウは追い掛けた
やがて一つの扉の前へ着くと、グッと押し開いた
追い付いたピカチュウも後に続いて中へ入った
瞬間、ピカチュウの表情がパッと明るくなる
「ピカピ!」
倒れ、目を閉じてピクリとも動かないサトシに急いで駆け寄る
もう少しでサトシの元へ着くという所で足が動かなくなった
粘着シートに捕らわれてしまったのだ
「くくっ…ネズミ取りだ」
一歩一歩サトシに近付き、前まで着くとしゃがんだ
「目を覚ませ」
「…?」
薄らと目を開けサカキを見てもサトシは何も言わない…動かない
「ピカピーッ!」
「…」
ピカチュウの叫びが届かないのか、ただぼんやりどこかを見詰めているだけだった「自分が誰だか分かるか」
サカキの問いに小さく頷く
「ピカピ…!ピカピ!!」
様子がおかしいサトシに懸命に呼び掛けた
「…ピカチュウ」
未だ焦点が合わない瞳でピカチュウを探す
「そう、ピカチュウだ
あれは我々ロケット団のポケモンだ
君もピカチュウを持っているのか?」
妙な会話に怪訝そうに二人を見詰める
「どう…だったかな…」
小さな呟きにピカチュウは耳を疑った
サトシが自分を忘れてしまっている…
「俺は…何で…」
自分を見下ろしていた男が突然覆い被さって来た
「え…?」
「ピィカ!チュウ!!」
「五月蠅いポケモンだな」
パチン、と指を鳴らすとピカチュウの前に壁が出来、自分と二人を遮ってしまった
「…」
「どうやら君は記憶を失ってしまっている様だ
私が思い出させてやる」
首筋を舐められると、頭の中に映像が流れた
『な…何するんだ!』
『そうだな…何をしようか?』
「…っ!」
無意識にサカキを押し返す
「そう、それが君の前の記憶だ…これが終えれば…全ての記憶を思い出せる筈だ」
不安だが、それで記憶が戻るなら…
「分かっ…た…」
髪を柔らかく撫で、上着を脱がせると、黒いTシャツを胸元まで捲り上げた「ピィカ、チュウウウッ!…ピカ…ピィカ、チュウウウッ!」
巨大な壁を壊そうと何度も何度も十万ボルトを繰り出す
「ピカッ…ピ…チャァ…」
力尽きた様にぐたっと倒れてしまった
ふとピカチュウに三つの影がかかった
「あら…ジャリボーイのピカチュウじゃない?」
「何やってんだこんな所で」
「ピピッカチュウ…」
「とりあえず…これ剥がしてやるか」
体が自由になったピカチュウは素直に礼を言った
「ジャリンコ達と一緒じゃニャーのか?」
「ピ…!ピカピ!ピカピカチュウ!ピッカア!」
「ニャース通訳」
「どうやらジャリボーイがボスに捕まってしまってるらしいニャ」
「また!?ったくボスも変わってるわね…」
「しかもこの壁の向こうに居るらしいのニャ」
「なる程…で、ジャリボーイを助ける前にこれに捕まった訳だ」「それで?あんた達はここに何しに来たの?」
「そうニャ、おミャーらがヤマト達と中に入っていったのを見てたニャ」
ピカチュウは町で有った事を話した
「それでポケモン達を取り返しに来たのか」
「でも返してって言って返して貰える訳無いじゃない」
ダッとロケット団の足元を駆け、別のルートを探す為に部屋を飛び出した
「ニャニャ!?ピカチュウ待つニャー!」
「「ニャース!」」
二人は戸惑いながらもニャースとピカチュウを追った
サトシはギュッと目を瞑り体を舐められる感覚に耐えながら、擽ったさに時折小さく息を洩らした
徐々に体が熱を帯びていく
舌が胸の突起に触れるとビク、と体が揺れた
(抵抗するのを押さえ付けるのも中々楽しかったが、素直に感じているのも…悪くは無いな)
「っ…あ…!」
そして音を立ててそこに吸い付くと思わず声を上げ顔を逸らす
「…子供は素直なのが一番だな」
「わ…!や、やめ…っ!」
腰に手を回し抱き締めながら休む間も無く同じ場所を攻め立てられる
サカキの服を引っ張ってみるが全く動かない
暫く続けられると抵抗する気力も無くなってしまった
「あ…あの、さ…俺…いつ記憶戻るかな…
本当にこんな事しなきゃ戻らないの…かな…?」
「ああ、この方法しか無い」
サカキは上半身の服を脱ぎ捨て、サトシのズボンに手を掛けた
「あ、あの…」
「心配するな、私と君は今回が初めてでは無い」
「でも…」
流石に記憶に無い人物に全身を曝け出すのは抵抗が有る
脱がそうとする手を押さえ、困った表情になる
「あっ…!」
半ば強引にその手を滑り込ませると、サトシ自身を捕えた
「ん…っ」
そのまま揉まれると顔が紅潮し、自然と溢れる喘ぎ声を抑える
サトシの両手を掴んで頭上に上げた
そしてグッと顔を近付ける
閉じていた目を薄ら開け、すぐ目の前の鋭い目と搗ち合う
「…!」
「…サトシ」
名を呼ばれた瞬間頭の中に塞がれていた何かが弾けた「サ、カ…!?」
口元が歪むのを目の当りにすると額に汗が浮かぶ
掴まれていたままのサトシ自身を揉みしだかれると、急激に血の気が引いた
「うっ…!」
手が押さえられて動けない
足も間に入り込まれれば動く事なんて不可能だ
「やめろ離せ!!」
「先程までしおらしく感じていたのにな」
「嘘言うな!手退けろよっ!」
振り払おうにも少しも動かない
この状況はあまりにもまずい
またあの時の様な事をされるのかと思うと暴れずにはいられない
頭がおかしくなりそうだ
「無駄だ、ここには私とお前しか居ない…」
再び撫でられると、強く睨んでいた瞳が泣きそうに歪む
「っ…!」
「そのまま大人しくしてろ」
下着の上から弄んでいた手をその中に滑り込ませた
「なっ…!!」
「…嫌がっていた割りには…」
ニヤ、と厭らしい笑みにカッと顔が赤くなる
「っ、あ…っ!」
何かを言おうと口を開く度に握られたものが擦られ、喘ぎに変わってしまう
こんな快楽に負けてしまう自分が情けなくて歯痒い…
「あの時はガツガツしていた…済まなかったな」
そう言うサカキをチラリと見ると、目を細めて優しく微笑んでいた
しかし…
「今回は優しく抱いてやる」
反抗はしてみたが、やはり解放する気はさらさら無い様だ
動けない上に急所を捕らわれているサトシは、最早抵抗など無駄な体力を使うだけだと悟った
「…ポケモン達を無事に…帰してやってくれ…」
「それと………これで俺に付き纏うのは…やめてくれ…
俺は、ロケット団なんかにはならない」
先程と打って変わって静かに話すサトシに少々驚いたが、すぐに冷静になる
「………良いだろう、君とポケモン、二つを一度に手放す事になるのだからな…たっぷりと堪能させて貰うとしよう」
押さえ付けていた両手を解放する
全く動かず、抵抗する気が無いのが分かった
「もし辛くなったりする事が有れば、遠慮無く私にしがみつけ」
「…」
ズボンと下着を片足に脱がせ、足を大きく広げる
そんな自分の姿がとても惨めでたまらない今のそんなみっともない自分を消すように、サトシは固く目を瞑る
つ、とサカキの指がサトシ自身を撫でた
「っ…」
「怖い事など何も無い、全てを委ねていれば…次第に気持ち良くなる」
瞬間、肌がぞくりと粟だった
熱くてヌルヌルした何かが、晒されたそこに絡み付いてくる
筋を刺激され、体が制御出来ずに震えだしてしまう
恐る恐るそこに目をやると、案の定サカキの口内に収まっていた
「離…っ…あっ…!うぅ…!」
直ぐさまサカキの頭を引き離そうとしたが、腰を掴まれ身動きも取れず、されるがままになってしまった
全体を吸い上げられ先端を嬲られ、あまりの快楽に思考も停止してしまう
「離せ…やめろっ…て、ば…ぁ…!」
サカキを押さえる手の力が徐々に抜けていき、あの時の様な何とも言えない感覚に襲われる
「あっ…っ」
スル、と指をサトシの後口に宛行う
「…!」
そのままグッと第二関節まで中に挿れられると、アレをされる準備だと悟り、下唇をギュッと噛み締めた
「…」
咥えていたものを解放し指も抜くと、胡座に座り直す
「はぁっ………うわっ!?」
強い力で腰を持ち上げられ、サカキの眼前に後口を晒す格好になる
先程の愛撫で自分のそれがはち切れそうになっているのが目に入り、急激に顔が熱くなる「ぃっ…嫌だやめてくれっ!」
かぶりを振ってその光景を忘れようとするが、目を閉じても浮かんできてしまう
「交換条件を出したのはお前だ」
「あっ、ああっ!」
再びサトシの中に指を突き挿れた
突然の行為に思わず声を上げてしまい、ハッとして直ぐに口を押さえる
「良い声じゃないか、我慢するのは勿体無い」
指は狭い中を無理矢理に進み、そしてゆっくり引く
「――っ」
少しずつ少しずつ自分の意思とは裏腹に、快楽に溺れそうになってしまう
二本に増やされた指を難なく飲み込んでいく
「ここだけでイッてみるか?」
位置を把握してあったように、指を曲げ、固いしこりを擦る
「んんっ!!」
ふいに訪れた強烈な快感に背がのけ反った
(もう…だめだ!)
自分の表情を相手に見せないよう、腕で覆い隠す
「くっ…ぁ…あぁっ―――!!」
声にならない声で、サトシは自分の胸に白濁を零した
余韻でヒクつく後口とサトシを眺め、目を細めて厭らしい笑みを浮かべる「イケたな」
「………黙れ…」
荒い息を繰り返す子供の腰を降ろしてやる
表情は見てとれないが、火照った頬、荒くなった呼吸、胸まで上がった服として意味の無いTシャツ
そこに飛び散った白濁、力無く投げ出された肢体
十歳とは思えない色気が漂う
ふと自分自身が僅かに反応しているのに気付き、苦笑した
(溺れさせるつもりが…私が溺れ過ぎたようだな)
自分のスラックスを降ろし、サトシの腰を手前に引き寄せ、猛ったものを押し付けると怯えたように小さく息を吐いた
「や…約束だぞ…ちゃんとポケモンを返せよ…!?」
何も答えず体を重ねると、僅かに震えているのが分かる
「…約束は守ってやるさ」
「ぐ…!」
腰を掴む手に力が入った瞬間、体が圧迫される
「いっ…い、たっ…あ…!」
苦しそうに喘ぐサトシに構う事無く中に挿入っていく
唇を噛み過ぎたのか口に血の味が広がる(ちくしょう…!ちくしょうっ…!!)
こういう事をしに来たんじゃないのに…
でもこうしないとポケモンを町の人に返せない…
悔しくて悔しくてたまらない…
(そう言えば…カスミ…タケシ…ピカチュウは…)
「余計な事は考えるな」
体を起こすと少しずつ律動を始めた
圧迫感と痛みに、上手く呼吸をする事が精一杯で何も考えられない
また切れてしまったのか僅かに血の匂いがする
辛さに自然と涙が出て来てしまう
確かに気持ちが良いが、前よりは劣るのは何故か…
「んっ…あ!」
(…これだな)
萎えたサトシ自身に指を絡ませると良い具合に締め付けられる
前立腺も刺激しているのか、今まで苦痛しか感じていない表情だったサトシが体を捩る
「ん…!…ふ…っ」
顔を背け自分の腕に爪を立てた暫く擦りながら律動を繰り返していると中が痙攣し、ぶるりと震えた
手を離し、再び腰を掴むと、激しくラストスパートをかける
「あっ…!ん、あぁっ…!!」
ガクガクと揺さぶられ、頭の中が真っ白になった
「あ、あ―――――!!」
強い快感に侵され、再び音の無い声で叫びながら弾けた
「………」
「っ…はぁっ…ぁっ…」
頭がグラグラするが、何とか息を整える
「立てるか?」
「…無理に…決まってるだろ…!…いっ…!!」
服を渡されると急に体を起こされ、鋭い激痛が襲う
「ぐ…っ!…何す…!?」
起こされたかと思うと今度は持ち上げられた
「な、何だよ…!?」
「見せてやる」
何を、と問う前に、サカキは広間の更に奥へ歩き出した着いたのは広間の突き当たりの壁だった
「…?」
コン、と足元の壁を蹴ると、機械の唸る音と共に人一人入れるスペースが現れた
突如出来たその空間に足を踏み入れ、再び壁を蹴った
ガクンと小さく震動を感じると、上へ上り始めた
どうやらエレベーターらしい
暫く呆然としていたサトシは、まだ自分が服を羽織っているだけな事に気付く
「降ろせっ」
ゆっくり降ろされると、慌てて衣服を整え始める
(うっ…)
まだ中に残っている液体を感じて動きが止まる
「…後で私が掻き出してやろう」
「う…うるさい!こっちを見るな!」
震える腕で何とか着終わると丁度エレベーターが目的地へ到着した
「ここは…って、やめろっ!」
再び持ち上げられ外へ出る
「お前が望んだものだ」
その部屋の一角をカーテンで遮ってある
そのカーテンを開放つと大量のモンスターボールが有った「これは…町の人達の…?」
「そうだ、約束は守るぞ」
直ぐにサカキから離れ、一つ一つボールを開けポケモンを確かめる
特に怪我をした様子も無く、安堵した
「そこに窓が有る」
指された方を見ると外が一望出来る程の巨大な窓が有った
その窓の下は断崖絶壁
この基地は崖の上に立っていたようだ
「そこから逃がしてやると良い」
「…飛行タイプのポケモンは、飛べない奴を乗せてやってくれ
皆自分のモンスターボールはちゃんと持って行くんだぞ」
窓を開けてやるとポケモン達は主人の元へ帰るべく飛んで行った
「…」
「…ピカチュウ達はどこだ、俺達もここにはもう用は無いんだ」
『サカキ様失礼致します』
別の入口の扉が開き、黒い服のロケット団が入ってくる
そしてロープで拘束されたもう一人
「ちょっと!離しなさいよ!!」
「カスミ!?」
「…!サトシ!?」驚いた表情はやがて穏やかになる
「良かった…無事だったのね」
「お前ら!カスミを離せ!」
「離してやるさ…」
グイッ、とロープを引いて開け放たれたままの窓際まで連れていかれる
「もう一人はどうした」
「はい、今…」
『失礼致します』
再び扉が開き、またもロープで拘束された人物が部屋へ投げ入れられた
「ぐっ…」
「「タケシ!」」
「サトシ…カスミ…!」
「ピカチュウはどうした」
「それが、まだ見付からず…」
「…」
ロケット団に連れられカスミの居る窓際へ向かう
そこにサトシも駆け寄る
「っ…!」
ズキンと痛む腰に顔を歪めるのをタケシは見ていた
「サトシ…まさか…!」
「………言うな、平気だから」
心配そうなタケシに、ニッと笑って見せた
二人のロープを解こうとするが固く結ばれて解けない「さて…」
背を向けたままのサカキがゆっくり振り返る
「ネズミが一匹足りないが仕方無い…邪魔者には消えて貰おうか…」
「ふんっ、言われなくても消えてやるわよ!その前にピカチュウを探さなきゃ…」
「あのネズミは私が育てておいてやる
そして消えるのはお前達二人だけ、だ」
「え?」
「サトシ…お前はロケット団に入るんだ」
「「!?」」
「またお前は…!ならないって言ってるだろ!!」
ポイと投げられたモンスターボールからゴルバットが飛び出る
「超音波」
「…!」
キィン…と激しい耳鳴りに頭がおかしくなりそうになる
「うう…!」
「サトシ!」
「おい!やめろ!」
「ピィカ、チュウウウッ!!」
電撃がゴルバットに直撃し、パタリと倒れる
同時に頭を抱えたままサトシも膝をついた
「ピッカァ!」
「「ピカチュウ…」」
サカキは微動だにしないサトシを確認するとピカチュウに目をやる
「どうやって来た?」
そんな問いには勿論答えずサカキを睨み付け三人の元へ走り寄る
「ピカピ…」
「サトシ、そいつらを片付けろ」
ピカチュウを抱き、スッと立ち上がると二人を振り返った
「ど…どうしたのよ…」
「ピカピ?」
ロケット団の一人がカスミのロープをナイフで切る
両手が自由になったカスミにピカチュウを押し付ける
「ちょっと………ぇ…?」
体がグラリと傾き足が浮く
「う…そ…」
全てがスローモーションになった
窓際に立っていたカスミをサトシが押したのだ
そこには地面は無く絶壁だと承知していた筈なのに…「カスミ…!ピカチュウ…!」
叫びながら落ちて行く二人を、サトシは無表情で眺めた
「サトシ!!お前自分が何をしたか分かっているのか!?」
悲鳴が聞こえなくなった瞬間、タケシは必死に立ち上がりサトシに向かって走り出した
「…」
タケシが直ぐ後ろに来たのを感じると、しゃがんで足を引っ掛けた
「…な…」
そのままの勢いで外へ飛び出してしまう
見下ろしたサトシの表情は分からなかった
カスミ達と同じく叫びが聞こえなくなり、サトシは無言で立ち上がる
「…それでこそロケット団員だ」
ニヤリと口を歪め、サトシに近付くと頬に触れた
パンッ!とその手を払い除け窓際へ移動する
「…何をする気だ」
俯いたままだったサトシが見せた目は正気に戻っていた「チッ…!」
サトシが何をしようとしているのか察し、急いで手を伸ばす
手が触れる前に踵を返し、自分自身も崖下へ飛び降りた
「あ!ジャリボー(静かにするニャ!)むぐっ…!」
(下っ端の俺達がこんな所に居るのがバレたら、俺達がここに案内したかと思われちまうだろ!)
(ボスもニャんだか機嫌が悪いニャース…)
(わ、私達はただピカチュウがポケモンが捕まってる場所へ行こうとしたからであって…!)
(そ、そうそう、決してジャリンコ達に情が移って、逃がしてやろうと思って来たんじゃ無いんだからな!偶然だ偶然)
(そんニャ事言わなくても皆さんは分かってらっしゃるニャ)
(誰よ皆さんて)
(お前が先頭だったくせに)
(うう…どうでも良いから早くここから離れるニャ!)
「!!」
四人が落ちた崖下を覗くと火柱が迫って来た
間一髪でそれを躱し、体勢を整える
「何だ!」
突風と共に赤い巨体が目の前を覆った
「…なんと…」
「リザードン!火炎放射!」
雄叫びを上げ吹き出した強烈な炎は部屋に真直ぐ向かっていく
しかしその炎は寸での所でいつの間にかサカキの足元に居たキングラーが水鉄砲で消してしまった
「…やってくれる」
「…リザードン、もう一度火炎放射!」
「キングラー、消火だ」
再び火炎放射と水鉄砲がぶつかり合う
「頑張れリザードン…!もう少しだ!」
渾身の力で更に強力な火炎放射を繰り出し、キングラーを圧倒する
「…水が火などに負けるとは」
部屋の中に炎が迫るとスプリンクラーが反応し水が降り注いだ
その水を浴び、最後の力を振り絞り水鉄砲を繰り出した
「ピジョーッ!」
「よし…リザードン、もう良いぞ!」
サトシは下からピジョンが飛んで来るのを確認し、リザードンを後ろへ下げた
「どうした、諦めたか?」
「そんな訳無いだろっ!行けっ!!」
「ピジョッ!」
ピジョンは電光石火でサカキに突進していく
「無駄な足掻きは「ピカチュウ!」
「ピッカァ!」
「何!?」
ピジョンの背にピタリと隠れていたピカチュウに焦った
水は電気を良く通す
この部屋はキングラーの水鉄砲とスプリンクラーで水浸しなのだ「ピィカ…」
バチバチと頬に電気を溜めるとピジョンからピョンと飛び降りた
「………ここまでか」
フッと笑い静かに目を閉じた
「チュウウウッ!!」
ピカチュウが放った電撃はキングラーに命中し全体に広がった
「ピカピーッ」
ピジョンからそのまま落下したピカチュウを両手で受け止め、直ぐにその場を離れた途端、その部屋は爆発した
「これであいつも懲りただろ…な、ピカチュウ」
「ピカチュ!」
互いにニコリと微笑み、地上に降りた
「サトシ、ピカチュウ」
「タケシ…カスミは?」
「気を失ってるだけだ
大丈夫、どこも怪我はしていないよ」
「そっか…」
安心すると急に体の力が抜け跪いた
「ピカピ…」
「…お疲れ様、良く頑張ったな」
タケシはくしゃりとサトシの頭を撫でた
「タケシ、お前…」
「…お前が俺達を裏切る訳無いもんな」
自分を信じて騙された振りをしてくれたタケシに、顔を歪ませ、ありがとうと呟いて俯いた町に戻ると人々から感謝された
ジュンサーからも礼を言われた
あの爆発が起こってから直ぐに現場へ向かい、何人かには逃げられたが、結構な数のロケット団員を逮捕出来たらしい
町長が声を掛ける
「本当にありがとう!おかげで大切なポケモン達が帰って来たよ
何とお礼を言って良いか…」
「いいえ気にしないで下さい…あの…町長さん、一つお願いしても良いでしょうか?」
「ああ、何でも言って下さい」
「「風呂を貸して下さい!」」
「は、はぁ…ではどうぞ」
まだ目を覚まさないカスミをベッドに寝かせて貰い、風呂場へ案内された
「サトシ、先に入れよ
俺とピカチュウはカスミを見てるから、上がったら呼んでくれ」
「ああ、ありがとう」
脱衣所へ入り、衣服を脱いでいると近くに有った鏡が目に入った
「…」
自分の体中に在る赤い斑点
指でなぞってみると鳥肌が立った
ブンブンと頭を振って汚れを拭う為、風呂へ急いだ「タケシ、次良いぜ」
「ん、ああ」
「まだ…起きないか?」
「うん、まあ、俺は風呂へ行くよ
ピカチュウ、お前も来るか?」
「チュウ!」
「…起きたら覚悟しといた方が良いぞ」
「うっ…!」
タケシが出て行き、しんと静まった
サトシはベッドの横に有る椅子に腰掛け、静かに眠るカスミを見た
「…」
「…」
「…」
「…」
「…ん…」
「あ…お、起き、た?」
薄らと開いた瞳にサトシが映った
果たして何を言われるか…ドキドキしながら言葉を待っていると、カスミはムクッと上体を起こし、そっと手を取った
「カ…カスミ?」
「…どこも、怪我とかしてない?」
「え?う、うん」
「どこも痛くない?」
「(腰以外は)平気…」
「…良かった」
「…ええ…と…怒ってないの?」
「…」
「………ぃ…痛てててて!!」
手に鋭い痛みが走った
カスミが思い切りつねったのだ
「怒ってるに決まってんでしょ!?本当に死ぬかと思ったんだから!!この馬鹿!バカ!!」
「い、痛い痛いって!ごめんってば!」「おーい廊下まで聞こえてるぞ」
「ああっタケシ、ピカチュウ!助けてくれ!」
「詳しく教えて貰おうじゃない!ちょっとサトシ聞いてるの!?」
タケシはまあまあ、とカスミをなだめ、落ち着いてサトシの話を聞かせてやった
リザードンとピジョンのモンスターボールをピカチュウに預け、リザードンに死角の崖の上へ運ばせた事
そして二人を安全な所へ避難させた後基地を破壊した事
「だ、だからさ、味方を欺くにはまず敵からって言うだろ?」
「逆だサトシ」
「…タケシは知ってたの…?」
「知ってたというか気付いてたんだ」
「…そう…」
カスミはそのまま黙って俯いてしまった
「私もまだまだね…」
「え?」
「あ、忘れてた」
タケシを見ると何やら自分のカバンを漁っている
「サトシ、これ」
手渡されたのはいつの間にか無くなっていた自分の帽子だった
「どこで…」
「いやあ実はお前を探してる途中に見付けてな、拾ってからでかい部屋に出たと思ったらいきなりロケット団に囲まれちゃってなぁ」
ははは、と笑うタケシに二人とピカチュウは苦笑した「あ、二人共お風呂入ったんだ!私も行って来よ」
「歩けるか?」
「もう、馬鹿にしないでよっ」
ヒョイとベッドを飛び降り、急ぎ足で風呂へ向かった
「…なあタケシ、もう大丈夫かな…」
不安そうなサトシの声に振り返る
「…俺、もうあんな目に合うのは嫌だ」
「…ごめんな」
いきなり謝られ不思議そうにタケシを見る
「ずっと近くでお前を守るつもりだったのに」
「あ、いや…そんな事は別に…」
「もしまた何か有ったとしても、絶対に守ってやるから」
暫く見詰め合っていたが、サトシがフイと目を逸らす
そんなサトシの前でしゃがむ
「サトシ、俺は…」
「…え?」
柔らかく頬に手をやる
「…」
「何だよ…?」
「…」
「…?」
「ピ…ピカ、ピカ…チュウ…?」
妙な雰囲気に絶えきれずピカチュウが出て行った方が良いか尋ねる
ハッとしたタケシは慌てて離れた
「?何なんだよタケシ」
「あーあー忘れてくれっ!なっ?ピカチュウもっ!」
タケシがわざとらしく大声で笑い、サトシが首を傾げているとカスミが帰って来た
「うるさいわよタケシ、何やってんの?」
「さあ…」
暫く休憩しているとノックと共に町長が尋ねて来た
「夕飯がもう直出来るからいらっしゃい」
「あ、はい!行こうぜピカチュウ」
「ピカチュウ!」
「わーい!私お腹空いちゃった!」
慌ただしく出て行く二人とピカチュウ
一人残ったタケシは深く溜め息を吐いていた
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