- 2015⁄08⁄20(Thu)
- 03:06
シゲサト6
俺はポケモントレーナーの修行を終え、故郷マサラタウンへ帰ってきた。
自分の部屋へ篭るなり、布団を被る。目につくもの全てが、あの旅立ちの日
の期待感を蘇らせ、苦しくさせるからだ。
泣かない・・・そう決めたのに・・寂しくて、苦しい。
今まで涙を流せば、仲間が・・・相棒のピカチュウがいつも近くへ来て
俺を一人ではないと、励ましてくれた。
だけど、その仲間も今は、もういない。
思い出、景色、匂い・・・全てが苦しい。
俺は枕に顔を埋めて心の中で大声を上げて泣いた・・・。
・・・・。
「サトシ・・・今、何やっているの?」
ママの声だ。ママらしくもない。俺に気を使って、中には入ってこない。
扉の向こうから遠慮がちな小声で問いかけてきた。
俺は眠い目を擦ってビリリダマの時計を見た。
夜・・八時か・・。
どうやら眠ってしまったようだ。
「なに?」
なるべく元気に・・大きな声で・・・。
だけど、どこか寂しげでいつものような声が出ない。 苦しい。
「シゲル君が・・来たけど、どうする?今日は帰ってもらう?」
シゲル・・・。心が一瞬ドキッとした。
その感情が何なのか俺には分からない。
ただ、シゲルに会いたい・・と俺は思った。
そういえば、あいつもトレーナー志望だったんだよな。初めは。
同じ境遇だ。会えば、何か変わるかな?
「会うよ。部屋にいるから来てって伝えて。」
ドアの向こうでママが少しほっとしている顔が思い浮かんだ。
それを証明するかのように少し明るい声で「分かったわ。」とママは言った。
ママが静かに階段を降りる音が聞こえる。
もうすぐシゲルがここへ来るんだ。
俺は急いでベッドから飛び降り、窓に写る自分を見て身なりを整えた。
泣き痕はついていない。よし!!これならばれないぞ。
シゲルには、いつものように元気に振舞おう。
きっとあいつも俺がこれくらいで落ち込んでいるとは思っていないだろうから。
だからきっと今日、来たんだよな・・。
自分の部屋へ篭るなり、布団を被る。目につくもの全てが、あの旅立ちの日
の期待感を蘇らせ、苦しくさせるからだ。
泣かない・・・そう決めたのに・・寂しくて、苦しい。
今まで涙を流せば、仲間が・・・相棒のピカチュウがいつも近くへ来て
俺を一人ではないと、励ましてくれた。
だけど、その仲間も今は、もういない。
思い出、景色、匂い・・・全てが苦しい。
俺は枕に顔を埋めて心の中で大声を上げて泣いた・・・。
・・・・。
「サトシ・・・今、何やっているの?」
ママの声だ。ママらしくもない。俺に気を使って、中には入ってこない。
扉の向こうから遠慮がちな小声で問いかけてきた。
俺は眠い目を擦ってビリリダマの時計を見た。
夜・・八時か・・。
どうやら眠ってしまったようだ。
「なに?」
なるべく元気に・・大きな声で・・・。
だけど、どこか寂しげでいつものような声が出ない。 苦しい。
「シゲル君が・・来たけど、どうする?今日は帰ってもらう?」
シゲル・・・。心が一瞬ドキッとした。
その感情が何なのか俺には分からない。
ただ、シゲルに会いたい・・と俺は思った。
そういえば、あいつもトレーナー志望だったんだよな。初めは。
同じ境遇だ。会えば、何か変わるかな?
「会うよ。部屋にいるから来てって伝えて。」
ドアの向こうでママが少しほっとしている顔が思い浮かんだ。
それを証明するかのように少し明るい声で「分かったわ。」とママは言った。
ママが静かに階段を降りる音が聞こえる。
もうすぐシゲルがここへ来るんだ。
俺は急いでベッドから飛び降り、窓に写る自分を見て身なりを整えた。
泣き痕はついていない。よし!!これならばれないぞ。
シゲルには、いつものように元気に振舞おう。
きっとあいつも俺がこれくらいで落ち込んでいるとは思っていないだろうから。
だからきっと今日、来たんだよな・・。
窓の外の景色にはオーキド研究所が見える。
オーキド博士。今までは、それほど意識していなかったけど、
やっぱり俺にとっては雲よりも上の存在だ。凄すぎるぜ。
微かに聞こえるママの声。
窓から外の真下を見る。シゲルがいた。ママと話しをしている。
恐らくママが余計なことを言っているんだ。勝手なことして・・。
だけど、シゲルなんだか少し息が切れてないか・・。
急いで来たのだろうか。
俺に急ぎの用事でもあるのかな??
窓の境界線を挟んでシゲルを見ていると、何故だか胸が締め付けられた。
さっきまでの胸の痛みとは違う苦しさ。
なんだろう・・これ。
でも、何故かシゲルの顔を見ていると、今すぐに会いたい。
シゲル・・・。心の中で呼んでみる。
しかしシゲルはママと楽しそうに会話しているようだ。
笑顔・・。それすらも色々な痛みが俺の胸を締め付けた。
会いたい・・・
今すぐに会いたい・・・
待ってれば五分も経たずにここへ来る。
だけど、それすらも長く感じられてしまう。
どうしよう・・胸が苦しいよ・・・
目からは涙がポロポロと溢れた。
「あれ?なんでだ?俺、どうして泣いてるんだ?」
シゲル・・・苦しいよ・・・・・シゲル・・・助けて・・・
俺は心の中で必死に叫んだ。窓の障害物を食い破るようにシゲルの名を呼ぶ。
だけど、シゲルは俺の存在を忘れてしまったかのように
ママと笑って話している。
そして俺の前から姿を消した・・・。
もうすぐ会える。
それなのに、シゲルとの関係を切断されてしまったように感じた。
このままもう一生会えなくなるなんてことないよな?
そんなの絶対に嫌だ。
俺は決断するよりも早く部屋を飛び出した。
階段を荒々しく下りる。
シゲル・・・。シゲルに会いたい。
階段を下まで下りると、正面にシゲルの姿を見つけた。
シゲルとママは俺の顔をマジマジと見つめる。それも仕方が無い。
きっと涙とか鼻水とかたくさん出ている酷い顔になっているだろうから。
だけどシゲルと視線が交わっているのが、とても嬉しくて、苦しい。
「シゲル!!!」
大声で叫び、シゲルへと抱きつく。
「ど・・・どうしたんだ?サトシ・・・。」
シゲルの匂い、感触、温もりと共に俺の耳に入ってくるシゲルの声。
今、俺にとって一番居心地が良い場所だ。
胸の高鳴りが更に増した。
「サトシ・・どうしたんだ?」
シゲルは一瞬で俺の異変に感づき、優しく問いかけた。
俺は何も答えずにシゲルの胸の中でただ泣きじゃくる。
シゲルなら、分かってくれるよな・・・?
俺はシゲルから離れないと必死で抱きついた。
きつく、縛るように腕をギュッと
シゲルの身体へ絡ませる。
「大丈夫か?サトシ?」
シゲルの頼もしい声が吐息と共に俺の耳をくすぐる。
「シゲル・・・俺・・俺・・」
どうしてもその続きが言えない。
なんて言えば良いのかも解らない。
泣きながらただ、「俺・・・俺・・・」とずっと言い続けた。
そして背中に感じるシゲルの温もり。
「分かった。俺が悪かった。もう何も言うな。俺がいるから、もう泣かなくて良いんだぞ」
直接耳へと伝えられた温もり。
吐息が心を溶かしていった。
「シゲル・・・」
「サトシ。安心しろ。俺はいつだってお前のことを・・・」
俺の胸に落雷が走った。
一瞬で全ての感情を抑え、俺は耳をすませてしまった。
しかし、シゲルはその先を行ってくれない。
ただ、俺の身体を優しく包み、背中をトントンと叩く。
「シゲル・・・」
俺の涙もようやく収まりだし、冷静さを取り戻す。
「サトシ・・。」
シゲルが俺の名を呼んでいる。
俺の存在は今シゲルの腕の中にあるんだ。
そんな事実がただ、今は一番嬉しかった。「お前がいきなり抱きつくからママさんが驚いていただろう」
シゲルのそんな言葉にも今日はトゲがない
「ごめん。」
俺が謝ると、シゲルは顔を赤くして言った。
「別に・・誤解されるくらい構わないよ。俺も少しは嬉しかったし」
「嬉しかった?」
シゲルの口から予期せぬ言葉が飛び出して俺の胸の鼓動が少しだけ早くなった
「あぁ・・それは別にそういう意味じゃないからな。ただ・・
お前旅している間は俺のこと忘れちまったかのように夢中だっただろう?
しかもタケシやほかの奴らと一緒に旅ばかりして・・」
シゲルが恥ずかしそうに、だけど俺の顔を真剣に見た。
「俺、あれが結構寂しかったんだぜ。お前の親友は俺だけだって思ってたのに」
「シゲル・・・。でもお前俺に意地悪ばかりしてたじゃないか」
シゲルは頭を抱えた。
「お前は本当にそっち方面には疎いな。
まぁ、そのお陰で、今もフリーでいてくれるんだけどよな・・」
語尾に近づくにつれ独り言のように小声になっていった。
「どういうことだ?」
「お前には教えてやらねーよ」
シゲルはそう言って俺のベッドに座った。
「何年ぶりだろうな。こうやってお前の部屋で二人だけ。話しするのって」
「そうだな。旅立ちの前以来だろう・・俺ってあれから成長してるのかな?」
「してるよ。俺が認めてやる。だからそんな落ち込むな。」
シゲルの表情はとても優しい笑みだった。
その顔を見て俺の鼓動がまた揺れた。
「俺・・・なんだろう。この気持ち。」
胸に手を当てると、自分の鼓動がドクンドクンと振動していた。
「なぁ、サトシ?俺、今日来て迷惑だったか?正直に答えてくれ」
シゲルが窓を眺めて言った。
「いや・・。むしろ嬉しかったよ。」
「その・・嬉しいっていうのは・・・どういう意味だ?」
「どういう意味ってどういうこと?」
シゲルの表情はまたしても赤面した。
「どういうことって・・普通分かるだろう?」
「分からないよ。俺・・そんな頭よくねーもん。お前だって知ってるだろう?」
俺がシゲルの横へ行くとシゲルはベッドから降りて、窓へ向かった。
まるで逃げるように
「どうして逃げるんだよ・・・」
「悪い。そんな悲しい顔すんなよ。こっちにも・・心の準備ってあるんだ。」
心なしかシゲルの吐息が荒々しくなっているように思える。
「どうしたんだ?シゲル?今日、何かあったのか?」
「いや・・何も。ってか、お前とたぶん一緒だよ。」
「一緒って?」
「俺もポケモンマスターをあきらめたからな。そんな俺がオーキド研究所
で暮らすって、そんなに居心地悪いことってないだろう?」
「でも、シゲルは凄かったよ。」
「お前も凄かったぞ。ただ、ポケモンマスターってのが・・更に上の存在
だったってだけだ。レッド・・だったっけ?ふざけた名前した奴だよな。
カントー地方を制覇したポケモントレーナーって。」
「あぁ。あいつって今どこにいるんだ?どんなポケモン使ってたのかな?
一度見てみたいぜ。あいつのポケモン。」
「噂では・・・どこかの山の奥に篭っているらしいぜ。」(すまん。。名前忘れたww)
「どこかの・・山。」
シゲルが俺の顔を見て言った。
「お前、まだ情熱は残っているんだな。」
「そんなの残ってても意味ないよ。俺はもうあきらめたんだ。ピカチュウだって
オーキド研究所に返したんだ。」
「そっか。ごめん。変なこと聞いて。」
「うんん・・。ってか、俺ら謝ってばかりじゃね?」
「そうだな。しかも二人とも暗いし・・」
「元気・・・取り戻そうぜ。二人で。」
俺は心の底に少しだけ残っている元気を集め大声で言った。
「サトシらしくなったな。お前はその方が・・らしいぜ。」「なぁ、シゲル?今日家に泊まっていかないか?」
俺が顔を近づけると、シゲルはまたしても顔を真っ赤にした。
「ダメだ。それは絶対にだめ」
そして俺から離れていった。
「なぁ、シゲル絶対おかしいぜ。どうしたんだ?」
「なんでもないよ。」
シゲルは窓に映る自分を見て髪の毛や服を整えだした。
「え?もう帰るのか?」
身だしなみに人一倍気を使うシゲルは帰る前には、昔からこうしていた。
「だって、お前元気そうだったし。」
「ひょっとして、俺が心配できてくれたのか?」
「まぁ、そうだよ。」
シゲルが小さい声で答えた。
「ありがとう。俺、嬉しいよ。なぁ、明日遊ばね?あの時みたいに」
「良いぜ。じゃあ、九時に公園集合にしようぜ。あの時みたいに・・」
「うん。」
なぜだかとても嬉しかった。昔も、明日もまた遊べる時って嬉しかったけど
それとは少し違う嬉しさだ。なんだか胸の奥がぐっと歯がゆい感じ。
本当、なんだろう。この感じ。苦しいけど、気持ちよい。
「なぁ、サトシ。上半身だけ脱いでくれないか?」
「なんで?」
「いや・・俺、明日まで我慢できないからさ、おかずにしたいんだ。」
「我慢できない?おかず?・・そういえばシゲルの家って母親いなかったな。
まさか夕飯ないのか?だったら家で食べてけば良いじゃん?」
俺はドアを開けて言った。
「待ってて。俺、ママに頼んでくるから。」
「いや・・違うんだ。そういう意味じゃない・・。」俺は足を止めて振り返った。
「どういう意味?」
シゲルの顔はまたしても赤くなっていった。
「シゲル・・お前ひょっとして風邪なのか?」
「違うよ。良いから脱げよ。」
シゲルが近づいて、俺の服を脱がしてくる。
「お・・・おい。やめろよ。・・分かった。分かった・・俺、脱ぐから・・
自分で脱ぐ・・・あぁ・・ちょ・・そんな場所触るなよ・・くすぐ・・たい」
シゲルに直接肌を触られると、何故か気持ちよく感じた。
「じゃあ、脱げよ」
俺から少し離れてシゲルが言った。
「分かったよ。本当、今日ってシゲル変だよな・・」
俺は愚痴を零しながら、渋々服を脱ぎ始める。
「なぁ、上半身だけで良いのか?」
「え?」
シゲルが予期せぬことを言われたように目を丸くした。
赤面が更に真っ赤になっていく。まるでリンゴみたいだ。
「なんでそんな驚くんだよ・・。」
「おおおおお・・だってお前自分で何を言ってるのか分かっているのか?」
「うん。だからズボンは脱がなくて良いのか?って」
「脱いでくれるのか?」
「良いぜ。別に。」
「本当か?」
「うん。なんでだよ?昔はよく風呂とか一緒に入ってたじゃん。今更隠す
ことはないだろう?」
「じゃ・・・じゃあ・・脱いでくれ。」
「分かった。」
俺は言われ、ズボンも脱ぎ始める。だけどシゲルの視線がなんだか痛い。
それに妙に恥ずかしく感じた。
どうしてだろう。あの時は全くそんなこと感じなかったのに。
すると俺のあそこがゆっくりと大きくなっていった。
やばい・・シゲルに見られる。俺はとっさにズボンを上げた。
「どうしたんだよ?」
「アハハ・・ごめん。今日は、これで良いだろう?」
危ない。危ない。あんな所シゲルに見られたら病気だってバレちゃう。
だけど、何の病気だろう。なんでたまにあそこが大きく固まっちゃうんだ?
「まぁ、いっか。」
シゲルはそう言って、まるで美術館の展示物を眺めるように俺の身体を
見渡した。
そしてポケットからカメラを取り出す。
「写真とるの?」
「うん。ダメか?」
「別に良いけど・・ちょっと恥ずかしいかな。」
「ふーん」
シゲルはシャッターを切っていった。
俺が服を着終えると、シゲルは言った。
「じゃあ、俺帰る。」
「なんだよ?急に、そんなに急いで。おしっこでもしたいの?」
「そんなわけないだろう・・。」
「ふーん。送っていこうか?」
「いや・・良い。急いで帰るから。じゃあ。明日な。」
そう言ってシゲルは俺の部屋から出て行った。
窓からシゲルが見えなくなるまでずっと目で追ったけど、
一度も振り返らなかった。
それが少し寂しかったけど、明日会えるし・・・良いや。
俺はそのままベッドに倒れた。
ベッドには少しだけシゲルの匂いが残っていて、
眠るのに時間はかからなかった。ドードリオの泣き声が耳に響いた。
「うるさいなぁ~。」
眠い目を擦って窓を見る。そして一瞬で驚いた。
「おおおお・・・御天等さん」
時計を見た。
「あれ~これなんか止まってないか?」
8歳の誕生日プレゼントに貰ったビリリダマ型時計が止まっている。
「あ・・そういえば、旅立ちの日・・寝ぼけて壊したんだっけ?」
「ママ!!」
俺は大声で叫んだ。
「何よ?サトシ?今日は元気そうね。」
「時計。治すなら・・しっかり治しておいてよ。見た目だけじゃダメなんだからね」
キッチンの時計を見るとすでに九時半を回っている。
「あら?この時計懐かしいわね。」
俺はママの言葉を最後まで聞く前に外へ飛び出した。
「サトシ。パジャマでどこ行くの?」
パジャマ。そんなのあの時から慣れっこさ。
シゲル。シゲル。シゲル。なんでも良いから・・・いや
シゲルじゃないとダメ。シゲル待っててくれよ。
マネ。
「ん?」
どこかでポケモンの泣き声が聞こえた。俺の足を反射的に止める。
マネ。
まるでピカチュウみたいな声だ。
「マネ・・ネかな?確かロケット団のコジロウが持ってたよな。」
土手の方から聞こえ、中を覗き込むとマネネがいた。
「マネネ。」
マネネ。
どうやら土手に落ちたようだ。しかも腕を怪我しているようだ。
俺は土手に降り、マネネを抱えて歩道へあがった。
マネネは歩道に上がると、喜ぶように飛び跳ねた。
そして俺の頭に乗る。
マネネ。
「おいおい・・怪我してるんだからそんなハシャグなよ。」
「サートシ君じゃないか。こんなところで何してるんだ?」
その声は・・・俺は反射的に振り返った。
「シゲル・・・」
「僕を散々待たせて、マネネとお遊戯でもしてたのかい?」
「あ・・ごめん。待った?」
「あぁ、待ったよ。今、君の家へ行くところだった。」
「ごめんよ・・。ねむ・・」
「皆まで言わなくて良い。分かるよ。君の服装を見れば。」
「ところでそのマネネは怪我しているのか?」
「うん。そうなんだ。」
俺はマネネを抱えた。
「ちょっと見せてみろ。」
シゲルはマネネの怪我を見ると、ポケットから「いいきずぐすり」を取り出した。
「ちょっと沁みるけど我慢するんだぞ」
そして薬をかけるとマネネは痛がるように声を上げ俺にしがみ付いた。
「よし。これで怪我も治っただろう?」
マーネネ。
「うわぁ・・マネネ・・元気になったな」
マネネは俺の身体を登って、頭の上に立ち上がった。
するとシゲルはマネネを掴んだ。
「さぁ、もう怪我治っただろう。お帰り。」
マネーネ。
しかしマネネは俺の胸へ飛び込んでくる。
「アハ。マネネ、俺に懐いてくれたのか?」
シゲルはマネネをにらみつけ言った。
「おい、マネネ。こいつは僕のものなんだぞ。」
マーネネ。
しかしマネネは俺から離れようとしない。
おい、マネネ離れろ。
シゲルはマネネの手を引っ張った。
マーネネ。
するとマネネは俺のTシャツの中へ飛び込んだ。
「あ・・おい、マネネ。痛いって・・。」
俺の服の中で暴れだす。俺はなんとかマネネを引きずりだした。
「マネネ!!お前・・・」
シゲルがするどい目を向ける。
「シゲル。そんな怒るなよ。きっとこいつ子供なんだよ。」
「まぁ、そうだろうな。この近くにはバリヤードが住んでいるらしいから
マネネがいてもおかしくない。」「なぁ?それよりどこへ遊びに行くんだ?」
「ん・・そうだな。まずマネネをバリヤードがいると言われている草むら
へ送りに行かないか?」
マネネ。
それは嫌だと言っているようだ。俺の服をぎゅっと掴む。
「別にそんなに早く逃がす必要はないんじゃないのか?」
「でも・・お前がいると遊びたくても・・・」
「良いじゃん。こいつは子供なんだろう?俺らが親代わりってことで
今日一日はマネネも加えて遊ぼうぜ」
「親代わり・・・」
シゲルの表情に少しだけ笑みが毀れた。
「それも良いな。分かった。じゃあ、マネネも連れて行くか。」
「それでどこ行くんだ?」
「植物園・・山・・・川・・・トキワシティ・・色々あるけど・・
海なんてどうだ?」
「海か。そういえば旅してた時行ったっけ?」
「あぁ・・そういえばサトシそんなこと言ってたな。」
「良いね。海行こうぜ。ポケモントレーナーになるのは諦めたけど
何か水系ポケモンゲットしようかな。マネネはどうだ?」
マネーネ。
了解と言っているようだ。俺の頭に移って、俺の髪の毛を掴む。
「痛い・・痛いよ。マネネ。分かった・・早く行こうな」
俺たちは走って海へ向かった。
「うわぁ~海だ。広いな。しかも人あまりいないし」
「まぁ、そりゃあそうだよ。まだ六月だし。少し寒いもんな」
「何をするんだ?もちろん海入るだろう?」
「そりゃあ、そうさ。でもその前に水着に着替えないといけないよな」
「あ・・やべ。俺水着忘れた。」
するとシゲルは得意げに笑って見せた。
「ちゃんと僕が用意しといた。」
さっきのきずぐすりと言い、まるで機会ロボットの
ポケットを持っているかのようにどこからともなく水着を二枚出した。
俺が水着を受け取ろうとするとシゲルは意地悪するように引いて取らせてくれない
「どうしたんだよ?」
「水着貸してやるけど、条件がある」
「なに?」
「サトシを埋めさせて・・・」
「埋める・・・埋める・・埋める・・あぁ・・砂に。良いよ。
やっぱり海に来たら定番だよね。」
俺は水着を取り、着替え始めた。
マーネネ。
「マネネはそのままで良いんだよ。」
しかし水着が少しきつい。
「シゲル。この水着少しきついんだけど」
「あぁ。悪い。俺が一昔前に使ってた奴だから。でも、別に着れないわけじゃ
ないだろう?」
「そうだけど・・・」
俺は恥ずかしくて股間あたりを隠した。
シゲルはそんな俺を見て笑った。
「隠すなよ。別に俺ら以外見てないから良いじゃないか」
「でも・・・」
するとシゲルが近づいてきて耳元で小さく囁いた。
「そんなに恥ずかしい?」
「うん。」
俺が頷くとシゲルは俺を押し倒した。「シゲル・・。痛いよ。どうしたの?」
シゲルの顔は全く笑っていなかった。
「いちいち僕の胸をかき乱すな!!!」
「どうしたの?シゲルらしくないよ。」
するとシゲルは笑って答えた。
「な~んてね。さて、サートシを埋めよう。マネネ。お前も手伝ってくれるか?」
マネーネ。
マネネは了解とポーズを取ると俺に砂をかけ始めた。
なんだか俺だけ寝転がっていることが恥ずかしかった。
「アハハ。なんだか恥ずかしいな」
「そうか?」
俺の顔真上にシゲルの顔が来ているからか、胸がドキドキした。
シゲルもなんだか顔を真っ赤に染めている。昨日と同じだ。
だけど、シゲルが動く度にシゲルの匂いが伝わって居心地良かった。
「サトシの肌は綺麗だな。」
「あぁ・・そう?ありがとう。」
「まるでこの砂と一緒だ。サラサラしていて綺麗すぎる。」
「シゲルの肌も綺麗だよ。」
「じゃあ、俺の肌に触れ合いたいって思える?」
シゲルは俺の目をじっと見つめた。
恥ずかしくて視線を逸らしたかったけど、動くことができない。
どうしてだろう。砂がかかったにしてもここまで動かなくなるはずはない。
「ん?」
マネネを見てみると技を使っているようだ。
「かなしばり?」
シゲルは吐息のような静かな声で言った。
「マネネ。ありがとう」
そしてシゲルの顔がゆっくり俺の方へ降りてくる。
シゲルの顔が近い。近い。近すぎる。
そして俺の唇にシゲルの唇が重なった。
胸がドクンドクンと揺れた。まるで爆弾だ。破裂しそう。
「シ・・シゲ・・」
唇を奪われているからうまく話せない。
シゲルは少しだけ唇を離し、言った。
「いや?」
俺は何故か首を横にふった。
「だったら・・もう少しだけ。シゲルはもう一度俺の唇と重ねた。
そしてシゲルの舌が俺の口の中へ入ってくる。
シゲルの舌が甘い。
甘い・・・甘い・・・
シゲルの髪の毛が俺の肌をくすぐった。
シゲルの匂いが俺の鼻を包んだ。
シゲルが俺の視界全てを占領した。
真剣なシゲルの眼差し。
苦しい・・・苦しいよ・・・シゲル・・・・。
この気持ち一体なんなの?
苦しいのに、どうして一分一秒でも長く続いて欲しいって思えるのかな?シゲルはいつの間にか俺を抱きしめていた。
砂は崩れている。
「ごめん。本当は夕日の浮かぶ海を見ながらこういうことしたかった。
でも、我慢できなかった。」
俺はシゲルの胸に顔を埋めた。
汗ばんだ肌が愛おしく感じてしまう。
「だったらさ・・・夕方、もう一度やろうぜ」
「本当にか?良いのか?」
「うん。だって今までで一番楽しい遊びだったから。」
シゲルは思いっきり俺を抱きしめて耳元で囁いた。
「もっと楽しい知ってるぜ」
「どんなの?」
「夜にしかできない遊び。今日家来れない?」
シゲルが言葉を発する度に出る吐息がいちいち胸の奥をかき乱した。
「うん・・・。行ける。いつでも。俺、シゲルのためならいつでも・・」
すると苦しい程にシゲルは俺を抱きしめた。
「サトシ。僕は・・お前のこと好き・・なんだ」
「俺もシゲルのこと好きだよ」
「たぶん、サトシの言う好きと俺の言う好きは意味が違う」
「どういうこと?」
「夜になったら教えてやる。せっかく海に来たんだ。海で遊ぶか?」
「うん。でも、もう少しだけ・・こうしていて欲しい。」
「分かった」
シゲルは優しく囁いた。
「ひゃ・・冷たい。」
海に足をつけた瞬間声が飛び上がった。
「まぁ、まだ寒いからな。海には入れそうもないか。」
シゲルは砂浜の上から冷静に言った。
「シゲル~。ひょっとして俺で試したな?」
俺は頬を膨らませた。
するとシゲルは笑って答えた。
「ごめん。ごめん。別に試したわけではないよ。」
俺はシゲルに近づく。
「な、なんだよ。」
俺はシゲルの手を掴んで海の方へ押し入れる。
「うわぁぁぁぁ!!」
シゲルは大声を上げ、海の水の中へ倒れていった。
ブクブクの泡だけが浮かんでくる。
そしてゆっくりと水面から顔を出すシゲル。
俺を睨みつけている。
「サートーシ!!」
「ご、ごめん。」
何となく嫌な予感がした。
そして次の瞬間!!
シゲルはいきなり飛び上がり、俺を海の中へ引きずり込んだ。
俺の頭の上に乗っていたマネネがシゲルの方へ飛び移る。
しかし俺は真っ逆さまにダイブした。
海の冷たい水が身体中にへばり付く。
「つ、、冷たいよ。シゲル・・。」
シゲルの冷え切った手がまるで氷のように冷たい。
「お前のせいだぞ。サートシ君!!」
「ごめん。ごめん。本当に寒いね。でも、水の中に入っていれば温かいや。」
浅瀬でシゲルと向き合う。
「なんかこうしていると、お風呂に入っているみたいじゃない?」
「そうだな。昔を思い出すよ。」
そしてシゲルは俺の顔をじーっと見た。
「どうしたんだ?シゲル?」
「やっぱりサトシは髪の毛ストレートの方がかっこいいよ。」
そう言って俺の濡れた髪の毛を優しく治す。
「うん。僕はこのサトシも好きだな。」
シゲルは満足そうに微笑んだ。
マネネ!!
マネネもそれが良いと言っているようだ。
「じゃあ、シゲルも。マネネ、こっちにおいで。」
俺は、シゲルの髪の毛をぐちゃぐちゃにする。
「おい、こら。止めろ。サトシ!!」
「良いじゃん。シゲルも俺が似合う髪形考えてやるよ。」俺はシゲルの髪の毛を玩具にして遊んだ。
するといきなり誰かが俺の海パンを下げる。
「うわ!!なんだよ!!」
俺は瞬時にパンツを上げる。しかし何かが俺のパンツを引っ張っている。
「どうしたんだ?サトシ?」
「誰かが海パンを引っ張っているんだ。」
そいつは俺の真後ろにいるらしく俺からは見えない。
するとシゲルが背後に回った。
「ニョロモじゃないか。」
「ニョロモ?」
「あぁ。ニョロモのシッポがサトシのパンツと絡まっている・・?
自分で絡めたのか?」
シゲルは独り言のように呟き、ニョロモを俺から離した。
するとニョロモは少し離れて何やら話している。
「なんて言っているのか分からないぜ。」
「あぁ。でも、どこかへ連れて行こうとしたんじゃないのか?
あの、ニョロモの慌てっぷりからしても何か事件が起きたとか?」
「そうだ!!絶対そうだよ。」
俺はニョロモに近づいた。
「俺をどこかへ連れて行きたかったんだろう?」
ニョロモは何度も頷いた。
「サトシ!!行ってみようぜ。」
「おう。」
俺とシゲルはニョロモの後をついて泳いだ。
「ってか・・沖の方へ向かっているじゃないか。ギャラドスとか出たら
どうしよう~!!」
「安心しろ。サトシ。この海にギャラドスは生息していない。」
「本当か?」
「あぁ。ポケモン図鑑の分布には表記されていなかったから。
十年以上前は・・だけど。」
「なんだよ。それ。最近リメイクしたじゃないか。ギャラドスが野生で
出るのなんて最近じゃあ、普通だぜ。」
「知るか。僕はもうトレーナーじゃない。」
「まぁ、出ないことを祈るしかないか。マネネとニョロモじゃあ・・
あぁ、ピカチュウがいてくれればなぁ・・。」「こっちって、グレン島の方じゃないのか?」
シゲルは海のその先を見て行った。
「え?本当に?」
「あぁ。間違いないよ。それにしてもグレン島で何か起きてるようだな。」
俺はあたりを見渡した。
「なんでそんなこと分かるんだよ?何か見えるのか?」
「どっちを見てるんだよ?下だよ。下。」
「下?」
俺は海の中を見た。水中の中を急いで泳ぐ水ポケモン達。
しかもグレン島から離れているようだ。
「どうしたんだろう?」
「水ポケモンだけじゃないよ。空を見てみろ。」
「うわあああ!!」
空を飛ぶ、鳥ポケモン達。
「一体・・何が・・」
振り向くと、シゲルは張り詰めた顔をしている。
「どうしたんだよ?」
「い、いや。先日、オーキド博士とウチキド博士が電話している会話を聞いたんだ。」
「どんな?」
「グレン島が・・消滅するって。近いうちに火山が起きるって行ってた。」
「じゃ・・じゃあ?」
「いや。もし噴火するなら、凄まじい音が聞こえるはずだ。マサラタウンにも
響いてくる程の音が。」
「じゃあ、まだ島は無事なんだな?」
「でも、ポケモン達は人間より敏感だからな。この慌て用。
恐らくもうすぐ」
シゲルの額からは汗が流れた。
「シゲル・・・」
俺達はやっとのことでグレン島にたどり着いた。
「ここは温かいな。」
海の外に出ても寒くない。それどころか、海水浴をしている人もいる。
「火山が近いからな。」
「それにしても本当に人間って鈍いんだな。全然気づいてないのか。」
「仕方が無いよ。ここは観光地だ。皆、遊ぶのに夢中なんだよ。」
ニョロ、ニョロ~!!
ニョロモが大声で叫び、どこかへ走って行く。
「おい、どこ行くんだよ?」
俺達はニョロモの後を追おうとした・・。
「けど、ちょっと待って。俺達水着だぞ。このままじゃあ、街に行けないよ」
「そういえば、そうだな。ニョロモ!!待ってくれ。」
シゲルが大声で叫ぶと、ニョロモは止まりこちらを振り返った。
「どうしよう?シゲル?」
シゲルは頭をフルに働かせ、考えているようだ。
「そうだ。マネネ。お前のねんりきであそこの家の窓から服を取ってくれ。」
「え?それって泥坊じゃないか!!」
「今は緊急事態だ。どうせこのままだと火山でこの島全てが溶かされてしまう」
マネネは目を瞑って、技を使った。
すると窓の隙間から服が二着こちらへ向かって飛んでくる。俺は飛んでくる服を掴んだ。
「サンキュ!マネネ。」
そして家の方を見て、「すみません。一応、後で返しますので」。
シゲルは既に着替えに入っている。
俺も着替えよう・・とした・・・が、
「えぇえええ!!!!」
「どうしたんだ?サトシ?」
「だって、これ、スカート、女ものの服じゃないか。」
「仕方が無い。それを着ろ。幸い、ここは観光地。カップルなんて
たくさんいる。」
「だけど~」
「サトシ、緊急事態だ。」
シゲルは真面目な顔をして言った。
俺は渋々、それに着替える。
足の隙間からスースー風が入ってきて、気持ち悪い。
シゲルの顔は少し笑っていた。
「シゲル!!お前、少し楽しんでるだろ!!緊急事態なのに!!」
「そんなことない。かわいいよ。サトコ!!」
そう言って、シゲルは走っていった。
「俺は、サトシだぁ~!!」
大声を上げ、シゲルを追いかけた。「ニョロモは、どうやら火山の方へ向かっているようだ。」
「一体、そこに何があるんだよ?」
「サトシ、もう少し早く走れないのか?」
「仕方が無いだろう。スカートなんて初めてだし、なんだか気持ち悪い。」
「かわいいよ。サトシ。」
「かわいくない!!」
ニョロモは、一軒の小屋の前で止まった。
「どうしたんだ?」
「ここって、グレンジム。」
「え?ここが?」
グレンジムはまるで学校の廃校のようだ。
「そういえば、グレンジムは最近閉めたって言ってたな。」
「そうなのか?」
すると、グレンジムのドアが開き、男の人が出てきた。
「カツラさん!!」
俺とシゲルの声が重なった。カツラは俺達の声に気づき、寄ってきた。
「君は、オーキド博士の息子さん。そして・・君は・・?」
「俺、サトシです。覚えてますか?」
「リザードンを使ってたサトシ君なら知っているが」
「そのサトシです。」
「な!!!なにィ~~~。君は女の子だったのか?」
「違います。俺は男です。今は理由あって、こんな格好していますが。」
するとシゲルが割って入った。
「そんなことより、カツラさん。」
「分かっておる。火山がもう時期噴火する。もうすぐ避難勧告が出る。
君達も早く避難しなさい。」
「はい。カツラさんはどこに?」
「双子島だ。火山を止める。」
「双子島で火山が止められるんですか?」
「フリーザーがいるからな。本来、フリーザーの凍らせる力でここの火山
は噴火せずにいた。しかしフリーザーを最近ゲットしたトレーナーがいるらしい。」
「じゃあ、どうやって?」
「フリーザーは一匹しかいないわけじゃないからな。とある地方のフロンティアブレーン
がフリーザーを操るトレーナーらしく、彼がフリーザーをつれて、双子島に
着てくれることになっている。」「分かりました。それではお気をつけて。」
シゲルは丁寧にお辞儀した。
「あぁ。君達も早く避難すると良い。」
カツラはそう言って、走って行った。
俺はシゲルの顔を見る。
「それで俺達はどうするんだ?」
「ニョロモが俺達をここへ連れてきたのには、他に理由があるはずだ。」
「そうか。そういえば・・。」
ニョロ!!
ニョロモは鳴くとジムの中へ入っていく。
俺達は後に続いた。
「どこへ行くんだ?」
どうやら地下へ向かおうとしているようだ。
そして大きな扉を開くと闘技場へたどり着いた。
「ここって。」
「あぁ、ジム戦をやっていた場所だ。」
ニョロ!!
ニョロモは岩の底を見ている。
俺達は岩の崖ギリギリまで近づいて、下を見た。
すると、ニョロモの赤ん坊が、マグマ近くで泣いている。
赤ちゃんニョロモの下にはニョロモが丁度一匹納まる程度の氷がはられている。
「一体、どういうことだ?」
すると、眩しい光が光った。
「れいとうビームだ。」
発射された先を見ると、ニョロモが二匹いる。
そしてもう一匹が赤ちゃんニョロモ目掛けて、水てっぽうをする。
シゲルはそれらを見て言った。
「そうか、分かったぞ。あの赤ちゃんニョロモは、この崖から落ちたんだ。
そこを間一髪のところ、あのニョロモがれいとうビームで氷を作り、
マグマに落ちずにいる。だけど、マグマが近くて、すぐに溶けるから
れいとうビームを放ち続けなくちゃいけないんだ。」
「そうか。それで、このニョロモが俺達を呼びに来たってわけか。
でも、なんでわざわざマサラタウンまで?」
「ここは、観光地だからな。ポケモンに興味ない人ばかりなんだろう。
だからここから一番近い、マサラタウンまで来て、僕達を見つけたんだ。」
「それにサトシ君の頭に乗っているこいつが役に立つと思ったんだろう。」
「そうか。ねんりき」
「あぁ。ただ、マネネもまだ子供だ。果たして、ニョロモの重さに耐えられるか。」
「落としたら、アウトだもんな。そうだ鳥ポケモンは?」
「それもダメだ。さっき見ただろう。鳥ポケモン達も他のポケモンも皆、
逃げるのに精一杯だ。ニョロモに構っている暇はないんだろう。」
「ダメか・・。」
俺はれいとうビームを放つニョロモ二匹を見た。
もう既に疲れきっている。
「でも、ダメだよ。あいつらも疲れきっている。」
俺はマネネを抱えた。
「なぁ、頼む。マネネ。あのニョロモをここまで引き上げてくれ。」
しかしマネネは不安そうな顔をした。
「頼む。お前しかできる奴はいないんだ。」
マネネ。
マネネは赤ん坊のように俺の胸に飛び込んでくる。
俺はマネネを抱きしめ言った。
「頼むよ。マネネ。あのニョロモを助けたい。」
オーキド博士。今までは、それほど意識していなかったけど、
やっぱり俺にとっては雲よりも上の存在だ。凄すぎるぜ。
微かに聞こえるママの声。
窓から外の真下を見る。シゲルがいた。ママと話しをしている。
恐らくママが余計なことを言っているんだ。勝手なことして・・。
だけど、シゲルなんだか少し息が切れてないか・・。
急いで来たのだろうか。
俺に急ぎの用事でもあるのかな??
窓の境界線を挟んでシゲルを見ていると、何故だか胸が締め付けられた。
さっきまでの胸の痛みとは違う苦しさ。
なんだろう・・これ。
でも、何故かシゲルの顔を見ていると、今すぐに会いたい。
シゲル・・・。心の中で呼んでみる。
しかしシゲルはママと楽しそうに会話しているようだ。
笑顔・・。それすらも色々な痛みが俺の胸を締め付けた。
会いたい・・・
今すぐに会いたい・・・
待ってれば五分も経たずにここへ来る。
だけど、それすらも長く感じられてしまう。
どうしよう・・胸が苦しいよ・・・
目からは涙がポロポロと溢れた。
「あれ?なんでだ?俺、どうして泣いてるんだ?」
シゲル・・・苦しいよ・・・・・シゲル・・・助けて・・・
俺は心の中で必死に叫んだ。窓の障害物を食い破るようにシゲルの名を呼ぶ。
だけど、シゲルは俺の存在を忘れてしまったかのように
ママと笑って話している。
そして俺の前から姿を消した・・・。
もうすぐ会える。
それなのに、シゲルとの関係を切断されてしまったように感じた。
このままもう一生会えなくなるなんてことないよな?
そんなの絶対に嫌だ。
俺は決断するよりも早く部屋を飛び出した。
階段を荒々しく下りる。
シゲル・・・。シゲルに会いたい。
階段を下まで下りると、正面にシゲルの姿を見つけた。
シゲルとママは俺の顔をマジマジと見つめる。それも仕方が無い。
きっと涙とか鼻水とかたくさん出ている酷い顔になっているだろうから。
だけどシゲルと視線が交わっているのが、とても嬉しくて、苦しい。
「シゲル!!!」
大声で叫び、シゲルへと抱きつく。
「ど・・・どうしたんだ?サトシ・・・。」
シゲルの匂い、感触、温もりと共に俺の耳に入ってくるシゲルの声。
今、俺にとって一番居心地が良い場所だ。
胸の高鳴りが更に増した。
「サトシ・・どうしたんだ?」
シゲルは一瞬で俺の異変に感づき、優しく問いかけた。
俺は何も答えずにシゲルの胸の中でただ泣きじゃくる。
シゲルなら、分かってくれるよな・・・?
俺はシゲルから離れないと必死で抱きついた。
きつく、縛るように腕をギュッと
シゲルの身体へ絡ませる。
「大丈夫か?サトシ?」
シゲルの頼もしい声が吐息と共に俺の耳をくすぐる。
「シゲル・・・俺・・俺・・」
どうしてもその続きが言えない。
なんて言えば良いのかも解らない。
泣きながらただ、「俺・・・俺・・・」とずっと言い続けた。
そして背中に感じるシゲルの温もり。
「分かった。俺が悪かった。もう何も言うな。俺がいるから、もう泣かなくて良いんだぞ」
直接耳へと伝えられた温もり。
吐息が心を溶かしていった。
「シゲル・・・」
「サトシ。安心しろ。俺はいつだってお前のことを・・・」
俺の胸に落雷が走った。
一瞬で全ての感情を抑え、俺は耳をすませてしまった。
しかし、シゲルはその先を行ってくれない。
ただ、俺の身体を優しく包み、背中をトントンと叩く。
「シゲル・・・」
俺の涙もようやく収まりだし、冷静さを取り戻す。
「サトシ・・。」
シゲルが俺の名を呼んでいる。
俺の存在は今シゲルの腕の中にあるんだ。
そんな事実がただ、今は一番嬉しかった。「お前がいきなり抱きつくからママさんが驚いていただろう」
シゲルのそんな言葉にも今日はトゲがない
「ごめん。」
俺が謝ると、シゲルは顔を赤くして言った。
「別に・・誤解されるくらい構わないよ。俺も少しは嬉しかったし」
「嬉しかった?」
シゲルの口から予期せぬ言葉が飛び出して俺の胸の鼓動が少しだけ早くなった
「あぁ・・それは別にそういう意味じゃないからな。ただ・・
お前旅している間は俺のこと忘れちまったかのように夢中だっただろう?
しかもタケシやほかの奴らと一緒に旅ばかりして・・」
シゲルが恥ずかしそうに、だけど俺の顔を真剣に見た。
「俺、あれが結構寂しかったんだぜ。お前の親友は俺だけだって思ってたのに」
「シゲル・・・。でもお前俺に意地悪ばかりしてたじゃないか」
シゲルは頭を抱えた。
「お前は本当にそっち方面には疎いな。
まぁ、そのお陰で、今もフリーでいてくれるんだけどよな・・」
語尾に近づくにつれ独り言のように小声になっていった。
「どういうことだ?」
「お前には教えてやらねーよ」
シゲルはそう言って俺のベッドに座った。
「何年ぶりだろうな。こうやってお前の部屋で二人だけ。話しするのって」
「そうだな。旅立ちの前以来だろう・・俺ってあれから成長してるのかな?」
「してるよ。俺が認めてやる。だからそんな落ち込むな。」
シゲルの表情はとても優しい笑みだった。
その顔を見て俺の鼓動がまた揺れた。
「俺・・・なんだろう。この気持ち。」
胸に手を当てると、自分の鼓動がドクンドクンと振動していた。
「なぁ、サトシ?俺、今日来て迷惑だったか?正直に答えてくれ」
シゲルが窓を眺めて言った。
「いや・・。むしろ嬉しかったよ。」
「その・・嬉しいっていうのは・・・どういう意味だ?」
「どういう意味ってどういうこと?」
シゲルの表情はまたしても赤面した。
「どういうことって・・普通分かるだろう?」
「分からないよ。俺・・そんな頭よくねーもん。お前だって知ってるだろう?」
俺がシゲルの横へ行くとシゲルはベッドから降りて、窓へ向かった。
まるで逃げるように
「どうして逃げるんだよ・・・」
「悪い。そんな悲しい顔すんなよ。こっちにも・・心の準備ってあるんだ。」
心なしかシゲルの吐息が荒々しくなっているように思える。
「どうしたんだ?シゲル?今日、何かあったのか?」
「いや・・何も。ってか、お前とたぶん一緒だよ。」
「一緒って?」
「俺もポケモンマスターをあきらめたからな。そんな俺がオーキド研究所
で暮らすって、そんなに居心地悪いことってないだろう?」
「でも、シゲルは凄かったよ。」
「お前も凄かったぞ。ただ、ポケモンマスターってのが・・更に上の存在
だったってだけだ。レッド・・だったっけ?ふざけた名前した奴だよな。
カントー地方を制覇したポケモントレーナーって。」
「あぁ。あいつって今どこにいるんだ?どんなポケモン使ってたのかな?
一度見てみたいぜ。あいつのポケモン。」
「噂では・・・どこかの山の奥に篭っているらしいぜ。」(すまん。。名前忘れたww)
「どこかの・・山。」
シゲルが俺の顔を見て言った。
「お前、まだ情熱は残っているんだな。」
「そんなの残ってても意味ないよ。俺はもうあきらめたんだ。ピカチュウだって
オーキド研究所に返したんだ。」
「そっか。ごめん。変なこと聞いて。」
「うんん・・。ってか、俺ら謝ってばかりじゃね?」
「そうだな。しかも二人とも暗いし・・」
「元気・・・取り戻そうぜ。二人で。」
俺は心の底に少しだけ残っている元気を集め大声で言った。
「サトシらしくなったな。お前はその方が・・らしいぜ。」「なぁ、シゲル?今日家に泊まっていかないか?」
俺が顔を近づけると、シゲルはまたしても顔を真っ赤にした。
「ダメだ。それは絶対にだめ」
そして俺から離れていった。
「なぁ、シゲル絶対おかしいぜ。どうしたんだ?」
「なんでもないよ。」
シゲルは窓に映る自分を見て髪の毛や服を整えだした。
「え?もう帰るのか?」
身だしなみに人一倍気を使うシゲルは帰る前には、昔からこうしていた。
「だって、お前元気そうだったし。」
「ひょっとして、俺が心配できてくれたのか?」
「まぁ、そうだよ。」
シゲルが小さい声で答えた。
「ありがとう。俺、嬉しいよ。なぁ、明日遊ばね?あの時みたいに」
「良いぜ。じゃあ、九時に公園集合にしようぜ。あの時みたいに・・」
「うん。」
なぜだかとても嬉しかった。昔も、明日もまた遊べる時って嬉しかったけど
それとは少し違う嬉しさだ。なんだか胸の奥がぐっと歯がゆい感じ。
本当、なんだろう。この感じ。苦しいけど、気持ちよい。
「なぁ、サトシ。上半身だけ脱いでくれないか?」
「なんで?」
「いや・・俺、明日まで我慢できないからさ、おかずにしたいんだ。」
「我慢できない?おかず?・・そういえばシゲルの家って母親いなかったな。
まさか夕飯ないのか?だったら家で食べてけば良いじゃん?」
俺はドアを開けて言った。
「待ってて。俺、ママに頼んでくるから。」
「いや・・違うんだ。そういう意味じゃない・・。」俺は足を止めて振り返った。
「どういう意味?」
シゲルの顔はまたしても赤くなっていった。
「シゲル・・お前ひょっとして風邪なのか?」
「違うよ。良いから脱げよ。」
シゲルが近づいて、俺の服を脱がしてくる。
「お・・・おい。やめろよ。・・分かった。分かった・・俺、脱ぐから・・
自分で脱ぐ・・・あぁ・・ちょ・・そんな場所触るなよ・・くすぐ・・たい」
シゲルに直接肌を触られると、何故か気持ちよく感じた。
「じゃあ、脱げよ」
俺から少し離れてシゲルが言った。
「分かったよ。本当、今日ってシゲル変だよな・・」
俺は愚痴を零しながら、渋々服を脱ぎ始める。
「なぁ、上半身だけで良いのか?」
「え?」
シゲルが予期せぬことを言われたように目を丸くした。
赤面が更に真っ赤になっていく。まるでリンゴみたいだ。
「なんでそんな驚くんだよ・・。」
「おおおおお・・だってお前自分で何を言ってるのか分かっているのか?」
「うん。だからズボンは脱がなくて良いのか?って」
「脱いでくれるのか?」
「良いぜ。別に。」
「本当か?」
「うん。なんでだよ?昔はよく風呂とか一緒に入ってたじゃん。今更隠す
ことはないだろう?」
「じゃ・・・じゃあ・・脱いでくれ。」
「分かった。」
俺は言われ、ズボンも脱ぎ始める。だけどシゲルの視線がなんだか痛い。
それに妙に恥ずかしく感じた。
どうしてだろう。あの時は全くそんなこと感じなかったのに。
すると俺のあそこがゆっくりと大きくなっていった。
やばい・・シゲルに見られる。俺はとっさにズボンを上げた。
「どうしたんだよ?」
「アハハ・・ごめん。今日は、これで良いだろう?」
危ない。危ない。あんな所シゲルに見られたら病気だってバレちゃう。
だけど、何の病気だろう。なんでたまにあそこが大きく固まっちゃうんだ?
「まぁ、いっか。」
シゲルはそう言って、まるで美術館の展示物を眺めるように俺の身体を
見渡した。
そしてポケットからカメラを取り出す。
「写真とるの?」
「うん。ダメか?」
「別に良いけど・・ちょっと恥ずかしいかな。」
「ふーん」
シゲルはシャッターを切っていった。
俺が服を着終えると、シゲルは言った。
「じゃあ、俺帰る。」
「なんだよ?急に、そんなに急いで。おしっこでもしたいの?」
「そんなわけないだろう・・。」
「ふーん。送っていこうか?」
「いや・・良い。急いで帰るから。じゃあ。明日な。」
そう言ってシゲルは俺の部屋から出て行った。
窓からシゲルが見えなくなるまでずっと目で追ったけど、
一度も振り返らなかった。
それが少し寂しかったけど、明日会えるし・・・良いや。
俺はそのままベッドに倒れた。
ベッドには少しだけシゲルの匂いが残っていて、
眠るのに時間はかからなかった。ドードリオの泣き声が耳に響いた。
「うるさいなぁ~。」
眠い目を擦って窓を見る。そして一瞬で驚いた。
「おおおお・・・御天等さん」
時計を見た。
「あれ~これなんか止まってないか?」
8歳の誕生日プレゼントに貰ったビリリダマ型時計が止まっている。
「あ・・そういえば、旅立ちの日・・寝ぼけて壊したんだっけ?」
「ママ!!」
俺は大声で叫んだ。
「何よ?サトシ?今日は元気そうね。」
「時計。治すなら・・しっかり治しておいてよ。見た目だけじゃダメなんだからね」
キッチンの時計を見るとすでに九時半を回っている。
「あら?この時計懐かしいわね。」
俺はママの言葉を最後まで聞く前に外へ飛び出した。
「サトシ。パジャマでどこ行くの?」
パジャマ。そんなのあの時から慣れっこさ。
シゲル。シゲル。シゲル。なんでも良いから・・・いや
シゲルじゃないとダメ。シゲル待っててくれよ。
マネ。
「ん?」
どこかでポケモンの泣き声が聞こえた。俺の足を反射的に止める。
マネ。
まるでピカチュウみたいな声だ。
「マネ・・ネかな?確かロケット団のコジロウが持ってたよな。」
土手の方から聞こえ、中を覗き込むとマネネがいた。
「マネネ。」
マネネ。
どうやら土手に落ちたようだ。しかも腕を怪我しているようだ。
俺は土手に降り、マネネを抱えて歩道へあがった。
マネネは歩道に上がると、喜ぶように飛び跳ねた。
そして俺の頭に乗る。
マネネ。
「おいおい・・怪我してるんだからそんなハシャグなよ。」
「サートシ君じゃないか。こんなところで何してるんだ?」
その声は・・・俺は反射的に振り返った。
「シゲル・・・」
「僕を散々待たせて、マネネとお遊戯でもしてたのかい?」
「あ・・ごめん。待った?」
「あぁ、待ったよ。今、君の家へ行くところだった。」
「ごめんよ・・。ねむ・・」
「皆まで言わなくて良い。分かるよ。君の服装を見れば。」
「ところでそのマネネは怪我しているのか?」
「うん。そうなんだ。」
俺はマネネを抱えた。
「ちょっと見せてみろ。」
シゲルはマネネの怪我を見ると、ポケットから「いいきずぐすり」を取り出した。
「ちょっと沁みるけど我慢するんだぞ」
そして薬をかけるとマネネは痛がるように声を上げ俺にしがみ付いた。
「よし。これで怪我も治っただろう?」
マーネネ。
「うわぁ・・マネネ・・元気になったな」
マネネは俺の身体を登って、頭の上に立ち上がった。
するとシゲルはマネネを掴んだ。
「さぁ、もう怪我治っただろう。お帰り。」
マネーネ。
しかしマネネは俺の胸へ飛び込んでくる。
「アハ。マネネ、俺に懐いてくれたのか?」
シゲルはマネネをにらみつけ言った。
「おい、マネネ。こいつは僕のものなんだぞ。」
マーネネ。
しかしマネネは俺から離れようとしない。
おい、マネネ離れろ。
シゲルはマネネの手を引っ張った。
マーネネ。
するとマネネは俺のTシャツの中へ飛び込んだ。
「あ・・おい、マネネ。痛いって・・。」
俺の服の中で暴れだす。俺はなんとかマネネを引きずりだした。
「マネネ!!お前・・・」
シゲルがするどい目を向ける。
「シゲル。そんな怒るなよ。きっとこいつ子供なんだよ。」
「まぁ、そうだろうな。この近くにはバリヤードが住んでいるらしいから
マネネがいてもおかしくない。」「なぁ?それよりどこへ遊びに行くんだ?」
「ん・・そうだな。まずマネネをバリヤードがいると言われている草むら
へ送りに行かないか?」
マネネ。
それは嫌だと言っているようだ。俺の服をぎゅっと掴む。
「別にそんなに早く逃がす必要はないんじゃないのか?」
「でも・・お前がいると遊びたくても・・・」
「良いじゃん。こいつは子供なんだろう?俺らが親代わりってことで
今日一日はマネネも加えて遊ぼうぜ」
「親代わり・・・」
シゲルの表情に少しだけ笑みが毀れた。
「それも良いな。分かった。じゃあ、マネネも連れて行くか。」
「それでどこ行くんだ?」
「植物園・・山・・・川・・・トキワシティ・・色々あるけど・・
海なんてどうだ?」
「海か。そういえば旅してた時行ったっけ?」
「あぁ・・そういえばサトシそんなこと言ってたな。」
「良いね。海行こうぜ。ポケモントレーナーになるのは諦めたけど
何か水系ポケモンゲットしようかな。マネネはどうだ?」
マネーネ。
了解と言っているようだ。俺の頭に移って、俺の髪の毛を掴む。
「痛い・・痛いよ。マネネ。分かった・・早く行こうな」
俺たちは走って海へ向かった。
「うわぁ~海だ。広いな。しかも人あまりいないし」
「まぁ、そりゃあそうだよ。まだ六月だし。少し寒いもんな」
「何をするんだ?もちろん海入るだろう?」
「そりゃあ、そうさ。でもその前に水着に着替えないといけないよな」
「あ・・やべ。俺水着忘れた。」
するとシゲルは得意げに笑って見せた。
「ちゃんと僕が用意しといた。」
さっきのきずぐすりと言い、まるで機会ロボットの
ポケットを持っているかのようにどこからともなく水着を二枚出した。
俺が水着を受け取ろうとするとシゲルは意地悪するように引いて取らせてくれない
「どうしたんだよ?」
「水着貸してやるけど、条件がある」
「なに?」
「サトシを埋めさせて・・・」
「埋める・・・埋める・・埋める・・あぁ・・砂に。良いよ。
やっぱり海に来たら定番だよね。」
俺は水着を取り、着替え始めた。
マーネネ。
「マネネはそのままで良いんだよ。」
しかし水着が少しきつい。
「シゲル。この水着少しきついんだけど」
「あぁ。悪い。俺が一昔前に使ってた奴だから。でも、別に着れないわけじゃ
ないだろう?」
「そうだけど・・・」
俺は恥ずかしくて股間あたりを隠した。
シゲルはそんな俺を見て笑った。
「隠すなよ。別に俺ら以外見てないから良いじゃないか」
「でも・・・」
するとシゲルが近づいてきて耳元で小さく囁いた。
「そんなに恥ずかしい?」
「うん。」
俺が頷くとシゲルは俺を押し倒した。「シゲル・・。痛いよ。どうしたの?」
シゲルの顔は全く笑っていなかった。
「いちいち僕の胸をかき乱すな!!!」
「どうしたの?シゲルらしくないよ。」
するとシゲルは笑って答えた。
「な~んてね。さて、サートシを埋めよう。マネネ。お前も手伝ってくれるか?」
マネーネ。
マネネは了解とポーズを取ると俺に砂をかけ始めた。
なんだか俺だけ寝転がっていることが恥ずかしかった。
「アハハ。なんだか恥ずかしいな」
「そうか?」
俺の顔真上にシゲルの顔が来ているからか、胸がドキドキした。
シゲルもなんだか顔を真っ赤に染めている。昨日と同じだ。
だけど、シゲルが動く度にシゲルの匂いが伝わって居心地良かった。
「サトシの肌は綺麗だな。」
「あぁ・・そう?ありがとう。」
「まるでこの砂と一緒だ。サラサラしていて綺麗すぎる。」
「シゲルの肌も綺麗だよ。」
「じゃあ、俺の肌に触れ合いたいって思える?」
シゲルは俺の目をじっと見つめた。
恥ずかしくて視線を逸らしたかったけど、動くことができない。
どうしてだろう。砂がかかったにしてもここまで動かなくなるはずはない。
「ん?」
マネネを見てみると技を使っているようだ。
「かなしばり?」
シゲルは吐息のような静かな声で言った。
「マネネ。ありがとう」
そしてシゲルの顔がゆっくり俺の方へ降りてくる。
シゲルの顔が近い。近い。近すぎる。
そして俺の唇にシゲルの唇が重なった。
胸がドクンドクンと揺れた。まるで爆弾だ。破裂しそう。
「シ・・シゲ・・」
唇を奪われているからうまく話せない。
シゲルは少しだけ唇を離し、言った。
「いや?」
俺は何故か首を横にふった。
「だったら・・もう少しだけ。シゲルはもう一度俺の唇と重ねた。
そしてシゲルの舌が俺の口の中へ入ってくる。
シゲルの舌が甘い。
甘い・・・甘い・・・
シゲルの髪の毛が俺の肌をくすぐった。
シゲルの匂いが俺の鼻を包んだ。
シゲルが俺の視界全てを占領した。
真剣なシゲルの眼差し。
苦しい・・・苦しいよ・・・シゲル・・・・。
この気持ち一体なんなの?
苦しいのに、どうして一分一秒でも長く続いて欲しいって思えるのかな?シゲルはいつの間にか俺を抱きしめていた。
砂は崩れている。
「ごめん。本当は夕日の浮かぶ海を見ながらこういうことしたかった。
でも、我慢できなかった。」
俺はシゲルの胸に顔を埋めた。
汗ばんだ肌が愛おしく感じてしまう。
「だったらさ・・・夕方、もう一度やろうぜ」
「本当にか?良いのか?」
「うん。だって今までで一番楽しい遊びだったから。」
シゲルは思いっきり俺を抱きしめて耳元で囁いた。
「もっと楽しい知ってるぜ」
「どんなの?」
「夜にしかできない遊び。今日家来れない?」
シゲルが言葉を発する度に出る吐息がいちいち胸の奥をかき乱した。
「うん・・・。行ける。いつでも。俺、シゲルのためならいつでも・・」
すると苦しい程にシゲルは俺を抱きしめた。
「サトシ。僕は・・お前のこと好き・・なんだ」
「俺もシゲルのこと好きだよ」
「たぶん、サトシの言う好きと俺の言う好きは意味が違う」
「どういうこと?」
「夜になったら教えてやる。せっかく海に来たんだ。海で遊ぶか?」
「うん。でも、もう少しだけ・・こうしていて欲しい。」
「分かった」
シゲルは優しく囁いた。
「ひゃ・・冷たい。」
海に足をつけた瞬間声が飛び上がった。
「まぁ、まだ寒いからな。海には入れそうもないか。」
シゲルは砂浜の上から冷静に言った。
「シゲル~。ひょっとして俺で試したな?」
俺は頬を膨らませた。
するとシゲルは笑って答えた。
「ごめん。ごめん。別に試したわけではないよ。」
俺はシゲルに近づく。
「な、なんだよ。」
俺はシゲルの手を掴んで海の方へ押し入れる。
「うわぁぁぁぁ!!」
シゲルは大声を上げ、海の水の中へ倒れていった。
ブクブクの泡だけが浮かんでくる。
そしてゆっくりと水面から顔を出すシゲル。
俺を睨みつけている。
「サートーシ!!」
「ご、ごめん。」
何となく嫌な予感がした。
そして次の瞬間!!
シゲルはいきなり飛び上がり、俺を海の中へ引きずり込んだ。
俺の頭の上に乗っていたマネネがシゲルの方へ飛び移る。
しかし俺は真っ逆さまにダイブした。
海の冷たい水が身体中にへばり付く。
「つ、、冷たいよ。シゲル・・。」
シゲルの冷え切った手がまるで氷のように冷たい。
「お前のせいだぞ。サートシ君!!」
「ごめん。ごめん。本当に寒いね。でも、水の中に入っていれば温かいや。」
浅瀬でシゲルと向き合う。
「なんかこうしていると、お風呂に入っているみたいじゃない?」
「そうだな。昔を思い出すよ。」
そしてシゲルは俺の顔をじーっと見た。
「どうしたんだ?シゲル?」
「やっぱりサトシは髪の毛ストレートの方がかっこいいよ。」
そう言って俺の濡れた髪の毛を優しく治す。
「うん。僕はこのサトシも好きだな。」
シゲルは満足そうに微笑んだ。
マネネ!!
マネネもそれが良いと言っているようだ。
「じゃあ、シゲルも。マネネ、こっちにおいで。」
俺は、シゲルの髪の毛をぐちゃぐちゃにする。
「おい、こら。止めろ。サトシ!!」
「良いじゃん。シゲルも俺が似合う髪形考えてやるよ。」俺はシゲルの髪の毛を玩具にして遊んだ。
するといきなり誰かが俺の海パンを下げる。
「うわ!!なんだよ!!」
俺は瞬時にパンツを上げる。しかし何かが俺のパンツを引っ張っている。
「どうしたんだ?サトシ?」
「誰かが海パンを引っ張っているんだ。」
そいつは俺の真後ろにいるらしく俺からは見えない。
するとシゲルが背後に回った。
「ニョロモじゃないか。」
「ニョロモ?」
「あぁ。ニョロモのシッポがサトシのパンツと絡まっている・・?
自分で絡めたのか?」
シゲルは独り言のように呟き、ニョロモを俺から離した。
するとニョロモは少し離れて何やら話している。
「なんて言っているのか分からないぜ。」
「あぁ。でも、どこかへ連れて行こうとしたんじゃないのか?
あの、ニョロモの慌てっぷりからしても何か事件が起きたとか?」
「そうだ!!絶対そうだよ。」
俺はニョロモに近づいた。
「俺をどこかへ連れて行きたかったんだろう?」
ニョロモは何度も頷いた。
「サトシ!!行ってみようぜ。」
「おう。」
俺とシゲルはニョロモの後をついて泳いだ。
「ってか・・沖の方へ向かっているじゃないか。ギャラドスとか出たら
どうしよう~!!」
「安心しろ。サトシ。この海にギャラドスは生息していない。」
「本当か?」
「あぁ。ポケモン図鑑の分布には表記されていなかったから。
十年以上前は・・だけど。」
「なんだよ。それ。最近リメイクしたじゃないか。ギャラドスが野生で
出るのなんて最近じゃあ、普通だぜ。」
「知るか。僕はもうトレーナーじゃない。」
「まぁ、出ないことを祈るしかないか。マネネとニョロモじゃあ・・
あぁ、ピカチュウがいてくれればなぁ・・。」「こっちって、グレン島の方じゃないのか?」
シゲルは海のその先を見て行った。
「え?本当に?」
「あぁ。間違いないよ。それにしてもグレン島で何か起きてるようだな。」
俺はあたりを見渡した。
「なんでそんなこと分かるんだよ?何か見えるのか?」
「どっちを見てるんだよ?下だよ。下。」
「下?」
俺は海の中を見た。水中の中を急いで泳ぐ水ポケモン達。
しかもグレン島から離れているようだ。
「どうしたんだろう?」
「水ポケモンだけじゃないよ。空を見てみろ。」
「うわあああ!!」
空を飛ぶ、鳥ポケモン達。
「一体・・何が・・」
振り向くと、シゲルは張り詰めた顔をしている。
「どうしたんだよ?」
「い、いや。先日、オーキド博士とウチキド博士が電話している会話を聞いたんだ。」
「どんな?」
「グレン島が・・消滅するって。近いうちに火山が起きるって行ってた。」
「じゃ・・じゃあ?」
「いや。もし噴火するなら、凄まじい音が聞こえるはずだ。マサラタウンにも
響いてくる程の音が。」
「じゃあ、まだ島は無事なんだな?」
「でも、ポケモン達は人間より敏感だからな。この慌て用。
恐らくもうすぐ」
シゲルの額からは汗が流れた。
「シゲル・・・」
俺達はやっとのことでグレン島にたどり着いた。
「ここは温かいな。」
海の外に出ても寒くない。それどころか、海水浴をしている人もいる。
「火山が近いからな。」
「それにしても本当に人間って鈍いんだな。全然気づいてないのか。」
「仕方が無いよ。ここは観光地だ。皆、遊ぶのに夢中なんだよ。」
ニョロ、ニョロ~!!
ニョロモが大声で叫び、どこかへ走って行く。
「おい、どこ行くんだよ?」
俺達はニョロモの後を追おうとした・・。
「けど、ちょっと待って。俺達水着だぞ。このままじゃあ、街に行けないよ」
「そういえば、そうだな。ニョロモ!!待ってくれ。」
シゲルが大声で叫ぶと、ニョロモは止まりこちらを振り返った。
「どうしよう?シゲル?」
シゲルは頭をフルに働かせ、考えているようだ。
「そうだ。マネネ。お前のねんりきであそこの家の窓から服を取ってくれ。」
「え?それって泥坊じゃないか!!」
「今は緊急事態だ。どうせこのままだと火山でこの島全てが溶かされてしまう」
マネネは目を瞑って、技を使った。
すると窓の隙間から服が二着こちらへ向かって飛んでくる。俺は飛んでくる服を掴んだ。
「サンキュ!マネネ。」
そして家の方を見て、「すみません。一応、後で返しますので」。
シゲルは既に着替えに入っている。
俺も着替えよう・・とした・・・が、
「えぇえええ!!!!」
「どうしたんだ?サトシ?」
「だって、これ、スカート、女ものの服じゃないか。」
「仕方が無い。それを着ろ。幸い、ここは観光地。カップルなんて
たくさんいる。」
「だけど~」
「サトシ、緊急事態だ。」
シゲルは真面目な顔をして言った。
俺は渋々、それに着替える。
足の隙間からスースー風が入ってきて、気持ち悪い。
シゲルの顔は少し笑っていた。
「シゲル!!お前、少し楽しんでるだろ!!緊急事態なのに!!」
「そんなことない。かわいいよ。サトコ!!」
そう言って、シゲルは走っていった。
「俺は、サトシだぁ~!!」
大声を上げ、シゲルを追いかけた。「ニョロモは、どうやら火山の方へ向かっているようだ。」
「一体、そこに何があるんだよ?」
「サトシ、もう少し早く走れないのか?」
「仕方が無いだろう。スカートなんて初めてだし、なんだか気持ち悪い。」
「かわいいよ。サトシ。」
「かわいくない!!」
ニョロモは、一軒の小屋の前で止まった。
「どうしたんだ?」
「ここって、グレンジム。」
「え?ここが?」
グレンジムはまるで学校の廃校のようだ。
「そういえば、グレンジムは最近閉めたって言ってたな。」
「そうなのか?」
すると、グレンジムのドアが開き、男の人が出てきた。
「カツラさん!!」
俺とシゲルの声が重なった。カツラは俺達の声に気づき、寄ってきた。
「君は、オーキド博士の息子さん。そして・・君は・・?」
「俺、サトシです。覚えてますか?」
「リザードンを使ってたサトシ君なら知っているが」
「そのサトシです。」
「な!!!なにィ~~~。君は女の子だったのか?」
「違います。俺は男です。今は理由あって、こんな格好していますが。」
するとシゲルが割って入った。
「そんなことより、カツラさん。」
「分かっておる。火山がもう時期噴火する。もうすぐ避難勧告が出る。
君達も早く避難しなさい。」
「はい。カツラさんはどこに?」
「双子島だ。火山を止める。」
「双子島で火山が止められるんですか?」
「フリーザーがいるからな。本来、フリーザーの凍らせる力でここの火山
は噴火せずにいた。しかしフリーザーを最近ゲットしたトレーナーがいるらしい。」
「じゃあ、どうやって?」
「フリーザーは一匹しかいないわけじゃないからな。とある地方のフロンティアブレーン
がフリーザーを操るトレーナーらしく、彼がフリーザーをつれて、双子島に
着てくれることになっている。」「分かりました。それではお気をつけて。」
シゲルは丁寧にお辞儀した。
「あぁ。君達も早く避難すると良い。」
カツラはそう言って、走って行った。
俺はシゲルの顔を見る。
「それで俺達はどうするんだ?」
「ニョロモが俺達をここへ連れてきたのには、他に理由があるはずだ。」
「そうか。そういえば・・。」
ニョロ!!
ニョロモは鳴くとジムの中へ入っていく。
俺達は後に続いた。
「どこへ行くんだ?」
どうやら地下へ向かおうとしているようだ。
そして大きな扉を開くと闘技場へたどり着いた。
「ここって。」
「あぁ、ジム戦をやっていた場所だ。」
ニョロ!!
ニョロモは岩の底を見ている。
俺達は岩の崖ギリギリまで近づいて、下を見た。
すると、ニョロモの赤ん坊が、マグマ近くで泣いている。
赤ちゃんニョロモの下にはニョロモが丁度一匹納まる程度の氷がはられている。
「一体、どういうことだ?」
すると、眩しい光が光った。
「れいとうビームだ。」
発射された先を見ると、ニョロモが二匹いる。
そしてもう一匹が赤ちゃんニョロモ目掛けて、水てっぽうをする。
シゲルはそれらを見て言った。
「そうか、分かったぞ。あの赤ちゃんニョロモは、この崖から落ちたんだ。
そこを間一髪のところ、あのニョロモがれいとうビームで氷を作り、
マグマに落ちずにいる。だけど、マグマが近くて、すぐに溶けるから
れいとうビームを放ち続けなくちゃいけないんだ。」
「そうか。それで、このニョロモが俺達を呼びに来たってわけか。
でも、なんでわざわざマサラタウンまで?」
「ここは、観光地だからな。ポケモンに興味ない人ばかりなんだろう。
だからここから一番近い、マサラタウンまで来て、僕達を見つけたんだ。」
「それにサトシ君の頭に乗っているこいつが役に立つと思ったんだろう。」
「そうか。ねんりき」
「あぁ。ただ、マネネもまだ子供だ。果たして、ニョロモの重さに耐えられるか。」
「落としたら、アウトだもんな。そうだ鳥ポケモンは?」
「それもダメだ。さっき見ただろう。鳥ポケモン達も他のポケモンも皆、
逃げるのに精一杯だ。ニョロモに構っている暇はないんだろう。」
「ダメか・・。」
俺はれいとうビームを放つニョロモ二匹を見た。
もう既に疲れきっている。
「でも、ダメだよ。あいつらも疲れきっている。」
俺はマネネを抱えた。
「なぁ、頼む。マネネ。あのニョロモをここまで引き上げてくれ。」
しかしマネネは不安そうな顔をした。
「頼む。お前しかできる奴はいないんだ。」
マネネ。
マネネは赤ん坊のように俺の胸に飛び込んでくる。
俺はマネネを抱きしめ言った。
「頼むよ。マネネ。あのニョロモを助けたい。」
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