2ntブログ
  • 2015⁄04⁄29(Wed)
  • 22:17

初めまして、MiZです。
この話はモバゲー内でも連載していますが、こちらにも載せます。

エロ描写は少な目ですが、軽い感じで書いてますので読みやすいと思います。


春が来て、学年が一つ上がった。

桜が満開に咲き乱れ、町中がピンクに染まり、やがて町全体が初々しく輝き出す。

僕は今でも疑問に思うが、春の空はどうしてこんなに青いんだろう?

この眩しい程の空の青さは、どんな絵の具を使っても表現しきれない。

そんな青空空の下、うちの学校にも新入生が120人近く入学してきた。

我が中学校は、1学年に3クラス、全校生徒350人程の小さな学校だ。

バスケ部は総勢20人ちょっとのこじんまりとした部活で、今年は8人の新入部員が入部してきた。

その中に、佐野壮介というのがいた。

こいつはマジでヤバい!色白で華奢な体。一言で言えばエロい体つきだ(笑)。

小さな顔に、目はクリッとしていて、髪はサラサラだ。

しかも、ちょっと同じ匂いがする奴だった。

ゲイというのは、雰囲気で大体それと分かるものだ。

それに、壮介は当時の言葉で言う"乙女系"な所が少しあった。

女っぽいのとは違うが、何というか小池徹平のような、と言うと分かりやすいのだろうか?

そんなこんなで、段々と壮介に惹かれ始めていた。

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壮介は練習もよく頑張るし、愛想が良いことも手伝って、部内ではチヤホヤされていた。

僕は何とか仲良くなろうと、あることを考えついたのだ。

練習が終わった後、壮介を探した。

すると、体育館の隅でバッグの中をゴソゴソしていた。

恐らく着替えを探しているようだ。

タオルを首からかけ、汗ばんだ体が僕を変な気持ちにさせた。

緊張しつつも後ろから近づいて行き、背中を小突いた。

すると、壮介は一瞬驚き、そして笑顔になった。

「あ、えっと…渡辺先輩、お疲れ様です!」
「お疲れさんー」
「どうしたんですか?」
「いや、ほら壮介って家が商店街の近くだよな?だから一緒に帰ろうと思ってさ。」
「本当ですか!?僕同じ方向の人いなかったんで嬉しいです!」
「あ、そうなの?ならちょうど良かった!じゃあ駐輪場で待ってるね。」
「はい!よろしくお願いします。」

きっと私事で話したのは初めてだったと思う。

まだ心臓がバクバク言っている。

だけど一緒に帰れるのが夢みたいだった。

僕は小走りに体育館を後にした。
ほとんど日が暮れて、薄暗い辺りを街灯が照らしてる。

「でも僕びっくりしました。まさか渡辺先輩から誘ってもらえるなんて思ってなかったので…」
「え?どーゆー事?」
「いやー、だって渡辺先輩はバスケ上手いし、カッコいいし、僕なんか眼中に無いだろうなって。それに、あんまり後輩と喋ってるの見たこと無かったんで…」
「いやいや!俺全然そんなんじゃないから!」
「えー、でも1年はみんな言ってますよー。渡辺先輩が2年生で一番上手いって。」
「そっかなー?まぁ壮介も結構良い線行ってんぞ?」
「いや、僕はまだまだですよ。でもいつかは渡辺先輩みたいになります!」

やっぱ可愛いなーとか思いつつ、壮介にそんな風に思われてるのが意外だった。

「先輩ってやっぱり優しいんですね。」
「は?何それ」
「いや、結構恐がってる奴多いですよ(笑)」
「え、マジか(笑)まぁナメられるよかマシかー。」
「そうですね!先輩、僕の家ここ左なんでここで失礼します。あの、明日も一緒に帰って良いですか?」

僕はもちろんOKして、壮介を見送った。

僕は確信した。壮介のことを本気で好きになっている。

こんな気持ちになったのは初めてだったからだ。

相手も満更では無さそうだし、これは絶対に恋人同士になりたいと思った。
今日は市内の中学校で練習試合があった。

そして今、帰りのバスの最後列で先輩と同級生、それに壮介を含んだ5人ではしゃいでいる。

あれから僕と壮介は毎日一緒に帰るようになり、気が付くと僕らは師匠と弟子のような関係になり、いつも2人でいるようになった。

そして壮介も僕に思いを寄せているのではないかということを何となく悟った。

壮介の言動、行動にそういったニュアンスが含まれるものが多いのだ。

「おい、渡辺!お前何ボーっとしてんだよ。次お前の番だぞ。」

先輩の一言で我に返った。

どうやら僕が考えごとしているうちに、話がお決まりの色恋沙汰に変わっていて、好きな人を暴露していっているらしい。

ようやく状況が飲み込めた僕は、回答に困った。

僕が好きなのは目の前にいる壮介だが、勿論そんなこと言える筈もない。

しかし、ここでその場しのぎの女の子の名前を出すと、周りがお節介を焼いて、くっつけさせられる可能性も否めない。

そんな恵まれないカップルができてしまってはかなわないのだ。

僕はどうしようもなく追い込まれた。
「いやぁ、俺いないっすよ!そんじょそこらの女じゃ立たないっすもん!」
「お前どんだけ理想たけーんだよ!」
「いやいや、じゃあお前誰で抜いてんだよ?」
「安達祐実っすね!」
「マジかよ!それはないわぁ(笑)」
「てかぜってー安達祐実より可愛いのいるから!」

ボロクソ言われたが、僕の昔のアイドルに助けられた。

中学時代は違う意味で安達祐実にお世話になることになる。

「おい、佐野!次はお前だよ。」

遂に壮介の番が来た。僕は壮介がどう答えるのか、聞きたいような聞きたくないような、複雑な気持ちだった。

「俺はですね、今日はちょっと言えないんですよ。」
「は?何でだよ?」
「いや、ちょっと…」
「はー?つまんねーよ!」
「すみません。でも次の機会には絶対に言いますので!」
「言ったからな?そいつ可愛いの?」
「はい!マジやばいっすよ。付き合うことになったら報告しますね!」

僕はその瞬間に、下腹の辺りが冷えたのがわかった。

付き合うことになったら報告すると言うことは、壮介の片思いの相手は女の子ってことになる。

やっぱり俺のことは憧れで止まってるのかな…。

聞きたくないことを耳にしてしまった。

その日は、壮介の笑顔を見るのが辛かった。
1学期が終わり、夏休みが始まった。

夏休みには中体連があり、ここで3年生は引退となる。

今日から、その試合の為に、近くの宿泊施設で合宿が始まる。

中庭に停まっているマイクロバスに、部員が乗り込んでいる。

僕は軽く気合いを入れ、バスに乗り込もうとした。

入り口の段差に足を乗せた瞬間、何者かの2本の腕が僕の腰に回された。

そして、ほぼ同じタイミングで何者かの体温を背中に感じた。

「翔太先輩!おはようございます。今日から頑張りましょうね!」

振り返るとそこには、満面の笑みを浮かべた壮介がいた。

僕は壮介と触れ合ったのはこれが初めてで、めちゃくちゃドキドキした。

「おい、ちょっと離れろって!」
「だって先輩の背中、カッコいいんですもーん♪」

僕は壮介にまとわりつかれたまま、隣同士の席に座った。

ハーフパンツから壮介の白く、細い脚が見えている。

わざとなのか何なのか、脚をくっつけてくる。

壮介のナマ脚が、僕のナマ脚に密着して、壮介の脚の温度を感じる。

壮介が太ももをかいた時に、可愛いトランクスがチラッと見えた。

それだけで僕の血液は、下半身に集まって来てしまう。

僕は太ももの上にバッグを置いて、固くなったモノを隠した。
あのバスの一件から、壮介のことは後輩と見るようにしていた。

壮介にいきなり彼女ができたりした場合、そのショックは計り知れないからだ。

壮介とは、一生仲の良い後輩として向き合っていこう。僕の中でそう決めていた。

だが、壮介は僕のことを兄くらいに思っているのだろうか?

僕のその決断を揺るがせる程にじゃれて来る。

だが、ここで理性を失ってしまっては駄目だ。

一度犯した過ちは、未来永劫を意味する。

初日の練習が終わり、僕は部屋に戻った。

この部屋は8人部屋で、4つの二段ベッドがある。その部屋には壮介もいた。

僕は、練習が終わってぐったりしていたが、壮介を誘って風呂に行くことにした。

大浴場に着くと、既に何人かの部員が入浴しているようで、騒がしかった。

僕は、さっさと服を脱ぎ大浴場へ入った。

体を洗っていると、壮介が横に座ってきた。

「先輩、今日疲れましたね。僕、あと2日も持つか心配ですよ…。」
「そうだなー。今年は顧問が変わって力入ってんもんなー。」
「去年はこんなんじゃなかったんですか?」
「そうだな。でも3年生の為にも今が踏ん張り時だな。」

フッと壮介に目をやると、信じられない程キレイな体がそこにあった。

どこまでも白くキレイな肌。薄っすらと割れた腹筋。しなやかに伸びる腕。小鹿のような脚。そして見たこともないようなピンク色の乳首…。

そんな体に大量のお湯が滴っている。

そんな体を僕が征服する。考えただけでも、僕はその場で卒倒しそうだった。

だがしかし、こんな場所で勃起するわけにはいかない。

僕はなるべく心を無にし、体の汚れを落とすことに専念した。
「翔太先輩ってカッコイイ体してますよね。」
「そっかぁ?」
「はい!僕も先輩みたいになれるように筋トレ頑張ります!」
「あんまりやりすぎっと身長止まんぞー。」
「うぅ。それはマズいっす…。」

お前の体の方がキレイだっつーの。

今日は新たなトリビアが生まれた。

春の青空に加えて、壮介の乳首のピンクはどんな絵の具を使っても出せない。

すると突然、下半身に変な刺激が走った。

壮介がシャワーを使って、椅子の下から湯を放出し、椅子の中心に開けられた穴から、ピンポイントで蟻の戸渡り辺りを刺激していた。

「ちょ、おま!そこはダメだって(笑)」

くすぐったいというか、何というか新しい感覚だった。

僕は同じことを壮介にやり返した。

「サー!!先輩だぁめですってー!」
「サーって何だよ(笑)てか元々お前がやったんだからね?」
「すみません、もうしませんからぁ…」

あぁ、もう駄目だ。

そんな甘えた声で言われたら何だって許せてしまう…。

僕はこの夏、とんでもなく愛しい人を見つけてしまった。
湯上がりに、部屋のバルコニーに出てみた。

夏の綺麗な星空。本当に綺麗だった。

こんな綺麗な星空を、いつの日か壮介と見上げる日は来るのだろうか?

僕と壮介の雰囲気が、男女だったら、それは何の迷いもなく気持ちを伝えているだろう。

しかし、これが同性同士になると、ただ単に特別仲が良いだけで止まっているだけの場合が多い。

ましてや、中学に上がったばかりの壮介だから、男同士でじゃれたりすることにも抵抗はないと思う。

13歳の友情表現なんて単純なものだからだ。

僕は悩んだ。

これから先、壮介とどういう関係を築いていけばいいのか…。

どうしたら誰も傷つかずに幸せになれるのだろうか。

考えても考えても、答えなんか出るはずも無いのに…。

夏の虫がうるさかった。
練習の反省会をした後、就寝の時間になった。

練習で疲れていたので、僕は真っ先に2段ベッドの上段に入った。

周りではまだ話し声がしていたが、よっぽど疲れていたのだろうか、すぐにでも眠れそうだった。

現実世界と夢の世界の境界線をフラフラとしていると、急に誰かが僕を呼ぶ声がした。

「翔太先輩!」

壮介の声だ。

その声を聞いた途端、急に僕の中に現実世界が戻ってきた。

「ん?どうした?」
「いや、全然眠くなくて…。眠たくなるまで一緒に寝て良いですか?」
「おいおい、小学校じゃないんだから…」

僕は自信が無かった。

今朝のバスでのことや、浴場でのことがあったから。

今までは周りに人がいたから何とかブレーキをかけることができたが、今は2段ベッドの上段。

周りからは死角となってしまう為、歯止めが効かなくなる。

「え~。だってぇ…」

あぁ…反則だ。

そんな声で言われたら何でもOKするなに決まってるじゃないか。

「眠たくなるまでだからな?寝る時はちゃんと自分の所に戻れよ?」
「はい。ありがとうございます!」

はぁ。結局俺はこうやってズルズルと…。

間違いがあっては絶対にいけないのだ。

僕は、かつて無い程に気を引き締めた。
嬉しそうな顔をして壮介が階段を1段1段よじ登ってくる。

いつもながらその純粋な笑顔を見ながら後ろめたい気持ちで一杯になる。

ごめんな、壮介。俺はお前としたくてどうしようもないんだ…。

お前が思ってるような尊敬できる先輩じゃないんだよ…。

「お邪魔します!」
「せっかく寝かかってたのにぃ…。お前、明日もあるから早く寝ろよ?」
「はい、勿論ですよ。先輩の横だったら2秒で寝れますよ!」
「わっ、やっぱりここで寝る気、満々だな?」
「えへへ。」

僕は安全の為に、壮介に背を向けるようにして横になっていた。

「先輩?どうしたんですか!?もう寝るんですか!?」
「う~ん。もう疲れたし、眠いからねぇ…。」
「えー、詰まんないですよぉ。もう少しお話しましょうよぉ。」

そりゃ、話したいよ?でも今そっちを向いたら、俺はもう自制できる自信は無かった。

「先輩~先輩~!!」

後ろで壮介がギャーギャー騒ぎ出した。

すると、次の瞬間壮介が僕の脇腹をくすぐってきた。

その時、頭の中が真っ白になった。

その瞬間のことは覚えていない。

気がつくと、僕は壮介のことを抱きしめていた。

シャンプーの香りで目まいを起こしそうになっていたことだけ、辛うじて覚えている。

壮介の体は、細くて温かくて僕の体にすっぽりと収まっていた。

壮介はというと、その場に固まっていた。

僕は何もかも終わったと思った。体中を冷や汗が流れた。

一瞬の内に、転校するところまで考えた。

すると、壮介の腕が僕の腰に回された。

ゆっくりと、だがしっかりと僕のことを抱き返してきた。

僕は一瞬何が起きたのか理解できなかった。

でも、僕たちはこうして抱き合っているのだ。

こうなることを望んで、僕はいくつの孤独な夜を過ごしてきたのだろう?

壮介の風呂上りのすべすべの肌と、シャンプーの香りで僕はどこか違う世界に飲み込まれていくような感覚がした。

深く、深く。どこまでも深く…。
れから僕たちは、むせるくらい強く抱き締め合った。

壮介の小さい耳を軽く甘噛みした。壮介の息遣いが荒くなっていく。

その壮介の熱い吐息を聞いて、僕はどんどん加速していく。

壮介の首筋に舌を這わせて、もう一方からは壮介のシャツをめくり、あのピンク色の乳首を愛撫した。

そして、舌を首筋から乳首へ移す。

壮介が大きく体を仰け反らせた。

壮介の乳首はとても柔らかかった。

僕があの憧れのピンクの乳首を舐めているのかと思うと、夢のようだった。

すると、壮介の手が僕の爆発寸前の陰茎に伸びてきた。

壮介の手に弄ばれて、カウパー腺液が出ているのがわかった。

僕の興奮は最高潮まで達して、壮介のペニスにも手を伸ばした。

しかし、その瞬間に壮介の手によって制止された。

そして壮介は、僕の腕の中から逃げていった。

僕は、その瞬間に冷静さを取り戻した。

僕はここまで来て、しまったと思った。

「先輩…、僕自分のベッドに戻ります…。」
「おう…。おやすみ。」
「おやすみなさい。」

取り返しのつかないことをしてしまったことから激しい自己嫌悪に陥り、いっそのこと皆の前から姿を消そうと思った。

皆の寝息が耳についてなかなか寝付けなかった。
1999年7月。ノストラダムスの予言では地球が消滅するという予言だった。

予言は外れたが、7月で世界が終わっていたほうが、良い思い出を残したまま人生を終えることができただろう。

僕は、21歳になった今でも時々そう思うことがある。


翌朝目を覚ますと、僕はどうしてこんなに気分が晴れないのかと疑問に思った。

だが、壮介が他の奴らと騒いでいる声を聞いて、その疑問もすぐに解決した。

僕は、分厚い鉄製のドアのついた部屋に閉じ込められたような錯覚に陥った。

これからのことを思うと、なかなかベッドから起き上がれない。

できればこのまま布団ごと、どこかへ沈んでいけばどれだけ救われるかだろうか。

すると、ベッドの脇から声がした。

「翔太先輩、そろそろ起きないと!朝礼が始まりますよ。」

その声の主が壮介だと一瞬でわかった。

空耳だろうかと一瞬我が耳を疑ったが、それは間違いなく壮介の声だった。

予想外の展開だった。

僕は、このまま壮介とは永遠に口を利くことができないと思ってた。

「うん、わかった…。」
「もう、先輩は以外とだらしないなー。」

だが、僕は何かがおかしいと思った。

普通あんなことがあったら、少しは気まずくなるものではないのだろうか?

まるで、昨夜の記憶だけが抜き取られたかのように普通に振舞っている壮介…。

僕はハッとなった。

そうか、昨日のことは無かったことになっているんだ。

きっとそうだ。

あんなことがあっても、壮介は僕に気を使ってくれてるのか…。

そう思うと少し切なくなってきた。

だったら、昨日の壮介はどうして抱き返してきたりしたんだ?

僕は、僕なりにこう解釈した。

壮介くらいの年齢だと、友情も愛情も憧れもどれもごっちゃになって区別がつきにくい。

だから、最初はじゃれ合いの延長としてやっていたが、段々エスカレートしていって、そして壮介は我に返ったのだ。

男同士で何をやっているんだろうって。

そして、僕の腕から逃れた後に決意したのだ。

無かったことにすれば、また元の先輩後輩の関係に戻れるって。

きっとそうに違いない…。

すると怪訝そうな目で僕の顔を覗き込んだ壮介は、小声で僕にこう言った。

「あれ、先輩どうしたんですか?まさか、昨日の晩のこと気にしてるんですか?」
「ん、んー?いや、別にちょっと寝不足なだけだよ…。」
「昨日の先輩すごかったですよ。男の僕にまでさかってくるなんて、相当溜まってるんですねぇ。早く彼女の1人でも作ったほうが良いですよ!じゃ、僕先に行きますので!」

え?あれ?もう訳がわからない…。

何だ、結局僕は壮介にからかわれていただけなのだろうか…。

もうどうしようもなくて、その後の練習も身が入らず怒られまくった。

人生でこんなに追い詰められたのは、初めてだった。

ここから逃げ出したい…。

僕は、そのまま体調不良を理由に合宿をギブアップした。
1999年8月。

ノストラダムスの予言は外れてしまったが、僕の人生はそこで終わったも同然だった。

あれから僕はずるずると部活を1週間も休んでしまった。

小規模の部活だし、3年生の引退試合も控えていたこともあってそのまま退部というのはさすがに気が引けた。

せめて3年生との最後の試合を一生懸命やり遂げてから辞めようと思い、今日から部活に復帰することにした。

1週間ぶりの部活。

きっと練習も今が山場だろう。

そんなピリピリとした雰囲気の中に、病み上がりの部員が割って入っていくことがどんなに迷惑なことかは痛いほど承知していた。

だがしかし、自分で蒔いた種だ。自分で刈り取らなくてはいけない。

それに、1年からずっと面倒を見てもらった3年生にも一生顔向けできなくなってしまう。

のどかな田園風景とは対照的に、僕はすごく切羽詰っていた。

何と言っても壮介にどんな面下げて会えばいいんだ?

大量の蝉が奏でる不協和音も相まって、僕はイライラしていた。

気が付くと、体育館の前まで来てしまっていた。

もう後戻りはできない。

僕は一旦大きく深呼吸をして、足を踏み出した。
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