- 2014⁄01⁄12(Sun)
- 01:08
蜘蛛
「蜘蛛の話を知っているか、少年?」
この人は時々こうやって唐突に話を切りだすときがある。
「蜘蛛、ですか?」
盛夏に包まれる人気のない校舎。
理科準備室にいるのは、僕と先生の2人。
「そうだ、だが普通の蜘蛛じゃない。当時でも1000年近くは生きてきたという蜘蛛の話だ」
「当時?それじゃ昔の話なんですね」
「話の中では何百年も前のこととなっている」
「その蜘蛛、1000年も生きているって事は普通じゃないですね。化け蜘蛛とかですか?」
「正解。その蜘蛛は男の精気を食らって生きてきた、ま、妖怪だな」
「ふーん」
と、僕はは先生の方を見る。
「・・・今、その蜘蛛と私を重ねて見たな」
話を止めて、先生。
「だって先生はいつも僕を襲ってるじゃないですか」
「それは合意の上だ」
「いつも先生が責めてばかりです・・」
「それは私の好みだからな」
先生はちっとも悪びれずに言いきる。
そんな先生に、僕は少しだけ意地悪に言ってみた。
「もしかして、先生がその蜘蛛だったりして・・・」
「いや、残念ながら違う」
先生は一度僕から目線を外し、
そしてまた僕を見ると声を落として言った。
「その蜘蛛はこの話の最後に死ぬんだ・・・・」
この人は時々こうやって唐突に話を切りだすときがある。
「蜘蛛、ですか?」
盛夏に包まれる人気のない校舎。
理科準備室にいるのは、僕と先生の2人。
「そうだ、だが普通の蜘蛛じゃない。当時でも1000年近くは生きてきたという蜘蛛の話だ」
「当時?それじゃ昔の話なんですね」
「話の中では何百年も前のこととなっている」
「その蜘蛛、1000年も生きているって事は普通じゃないですね。化け蜘蛛とかですか?」
「正解。その蜘蛛は男の精気を食らって生きてきた、ま、妖怪だな」
「ふーん」
と、僕はは先生の方を見る。
「・・・今、その蜘蛛と私を重ねて見たな」
話を止めて、先生。
「だって先生はいつも僕を襲ってるじゃないですか」
「それは合意の上だ」
「いつも先生が責めてばかりです・・」
「それは私の好みだからな」
先生はちっとも悪びれずに言いきる。
そんな先生に、僕は少しだけ意地悪に言ってみた。
「もしかして、先生がその蜘蛛だったりして・・・」
「いや、残念ながら違う」
先生は一度僕から目線を外し、
そしてまた僕を見ると声を落として言った。
「その蜘蛛はこの話の最後に死ぬんだ・・・・」
その村には年に一度、山の森に贄を送り出すしきたりがあった。
古くから続く、しきたり。
贄は成人前の若い男が一人。
山車に乗せられて森の深くに送られる。
贄は、
村の中から出したことも、
人買に銭を出したことも、
他所の土地の者をかどわかしたこともあった。
とにかく若い男であれば良かった。
森の中の『蜘蛛』は女だというのだから。
「ここいらで、ええじゃろ」
「ああ、堪忍しろや」
村人達が慌てて立ち去って行く声が山車の中に聞こえる。
「んんっ・・・ぐっ」
山車の中には手足を縛られた少年。
口も縄を噛まされて言葉が出ない。
数日前、銭でこの村に売られた。
最初の日に村中でもてなされ、
次の日になにやら身を清められて、今日はこうだった。
「んおっ・・・ぐ・・うおっ」
少年は山車の中で必死に暴れて自由になろうとする。
贄のことは何も聞かされていなかったが、危険なところに放り込まれたのは肌で感じていた。
山車の柱に括られた身体をゆすり、足を伸ばして戸を蹴飛ばす。
ばきっ、ばきっ。
もともと粗末な作りであった山車の戸である。
足があたると容易に外れて開いた。
その勢いで柱も引く。
つがいの部分が音をたてて傾き、もう一度勢いをつけると抜けた柱ごと身体が外へ転げ出た。
「んぶっ」
したたか頭を地面にうちつけ、声をあげる少年。
噛まされた縄を外して思いっきり叫びたかったが、
両手が柱に結び着けられたままである為、立ちあがることすら難しい。
が、ふいにその縄が解け、柱も身体から離れた。
同時にゾクっとする悪寒。
「・・・・・・・・」
おそるおそる顔をあげると、
そこには女が立っていて、
「ほほ、今年の贄も若い男だねえ・・・」
妖しく笑うと、少年の身体を抱えて木々の中へ連れこんだ。
森の深くに連れこまれた少年の身体が宙に絡め取られた。
両手と両足に何かが結び付き、四方へと引張る。
「ああっ」
くっと、吊るされる少年の身体。
少年はじたばたと動かない手足をばたつかせながら、自分に結びつく半透明のものを見る。
「糸?」
「そう、蜘蛛の糸よ」
少年をさらった女が笑みを浮かべてまとわりつく。
「お前のような贄を捕らえるための私の糸」
女が少年に頬に口づけし、衣の間を割って白い手を挿しこんだ。
「ふあっ」
女の手のひらと指のひとつひとつが素肌をなでると、堪らず少年の口から吐息が漏れた。
「もうそんなに熱い息を出すのかえ?」
女は身体を滑らせ少年にさらに絡む。
口から赤い舌を出して首筋をなめ、耳の中まで這わせていく。
肌を嬲る手は衣の中を蠢き、指の腹の先で少年の細い身体をこすった。
胸をまさぐり小さくとがった先を見つけて、指のひとつひとつ、爪の一枚一枚で弾き通っていく。
「ふわ・・あ・・・ああ・・・」
幾度もそれを繰り返され、少年は抱かれた身体を身震いさせて声を上げた。
「良い声だこと」
女の声が耳の中で響き、胸先にキッと爪が尖らされた。
「ひいいっ」
少年の喉が反りかえり喘ぎが悲鳴に変る。
女の舌がその震える喉を舐める。
「ほほほ、痛いかえ」
キリキリキリ。
「あ、ぎっ、ああっ・・・・」
爪が小刻みに震え敏感な胸先の粒に食い込んでいく。
締めつけたまま、ゆるりと手首を傾けて根元から捻りあげた。
「ひああっ、痛いっ」
「そうか、痛いかえ」
少年の悲鳴を舌に感じ、満足げに女が言う。
「ひあっ、ああ、助けてっ、あがっ」
「ふふ、では助けてやろう、ほほ、こうすると・・・」
胸先の戒めが僅かづつ緩んでいき、爪先の尖りが肉を撫でさするものに変わっていく。
きつい痛みに襲われていた部分にじわっと愛撫による甘えが交じりこみ、
少年の身体には再び快楽の痺れが流れる。
「ああ・・ああ・・・あん・・・」
「ほほ、今度は嬉しそうな声だこと」
「はあ・・ああ・・・・・」
「ほほ、気を抜くでない」
ギッ。
「ぎあああああああっ」
女の爪がまた食い込む。
女は先程よりも深く長い時間、胸先を潰して捻り上げ、少年の苦鳴を森の木々に響かせた。
「あがっ、ぎいっ、はあ、はあ、あああっ」
「可愛いねえ、また悦ばせてあげる」
また責めが緩み、愛撫が始まる。
「あん・・・ああ・・・んっ・・・・」
そして、
ギシッ。
「あっ、がああああああああっ」
「今度はもっと痛くしするよ、その方が次に嬉しくなるからねえ」
少年の震える喉に唇をあてて、女の爪はさらにきつく少年を鳴かせる。
「あ、ああ、ひいっ、許して、あがっ、ああああ」
「まだまだ、知っているかい?蜘蛛の手は8本もあるんだよ」
「え?あ、ひいいいいいいっ」
「・・・蜘蛛の手は8本もあるんだよ」
女の笑みが少年の視界を覆う。
同時に、何かが少年の全身を掴んだ。
「!!」
身振るいする少年。
視界は女の顔に塞がれて、何が自分を掴んでいるのか見えない。
首を傾けてそれを見ようとする前に、両方の胸先をぞっとする程滑らかに撫でられた。
「ひああっ」
女の見つめる前で声をあげる。
先ほどまで痛め付けられ、じんじんと痺れる胸先が見えない愛撫を受けて全身に身震いを発信する。
「ほほ」
「あんっ」
もう一度、胸先を擦られて少年ははっきりと喘ぎの声を出した。
手。
だがさっきまでの女の手とはまるで違う、感触。
固く、それでいて滑らかで細かい感触。
触れられた胸先は、つつかれる様に、包み込まれる様に感じ取り。
快感が皮膚の下の性感に直に降りてくる。
胸先への柔らかな愛撫は幾度と続き、少年は快感を隠せず鳴き声をあげて悦ばされた。
「あっ・・あ・・くう・・はあ・・ひんっ」
「まこと、幼い男の肌は素直よ。感じるままに鳴く」
ほくそ笑む、女。
「はうっ」
その下で少年の身が大きく震える。
胸先を撫で責められるまま、それと同じ手が少年の首筋を左右から振れる。
つーーーーーっ。
「はああああぁううううう」
「ここも・・」
さらに別の手が脇を抜けて背筋にあたる。
つつつーーーーーっ。
くねらせてもがく、背筋の真中を2つの手が快楽を植え付けて上下する。
「あうっ、はああああああああっ」
「そして、ここも・・・」
また別の手が脚の内側に割り込む。
ずっ。
閉じかける少年の脚が内側から開かされ、
過敏な腿と脚の付け根を淫猥な速度で摩りあげていく。
「狂い、踊ってくれる・・・」
「はあっ、だめ、ああ、ああ、あああ、あああああああっ」
少年を包み込む快楽の波。
自分が何をされているのかまったく見えぬまま、身体中を女の8つの手が這いまわる。
どの方向に逃れようとしても手足は糸に縛られ、責めの手は全部の方向から嬲ってくる。
「ひいー、ああー、はあああー」
「そう、その顔、お主は妾に犯されるのじゃ、狂うまで、狂うてもその悦び与えてやろう」
「た・・す・・けて・・・・」
「ほほ、助けを呼ぶのかえ?妾の腕の中から逃げたいのかえ?」
女が笑い、見えぬ腕をいっそうねっとりと動かし肌を這わせた。
「ああああああっ」
少年の身体が硬直し、ひときわ大きな鳴き声があたりに響く。
「では逃げられぬように、主の穴を塞いでやるわ。ほほ、どの手で挿し込んでやろう?」」
がっ。
大きく広げられる少年の脚。
脚の間の小さな窄まりまで広げられ、熱を帯びた空気が流れ込む。
そして、そこに近づく『手』の気配。
「ひ、ひ、いやあ、たすけ・・・」
再び、助けを求める少年を女の唇が塞ぐ。
「お鳴きっ」
ずぶっ。
「うぐっ、んん、んああああ・・・・・」
穴を挿しぬいた手は、少年の塞がれた口からくぐもった悲鳴を女の口の中へ贈りこんでいた。
・・・ぬるり。
「・・はあ・・・・・・」
少年の口から吐息が漏れる。
・・・ぬるり、ぬるり、ぬるり。
「ああ・・・はあ・・・あん・・・・」
少年の肛門を犯す見えない手はぬめねめとした液を滲ませて、
固く、深く、太く、棒となって少年を快楽の淵で狂わせていた。
「ほほ、もうひとつ太くしてやろう」
ずず・・・。
女の声と共に、それが太さを増し少年の穴を広げた。
「ひっ・・」
悲鳴を上げかける、少年。
それも体内を擦られると快感に流される喘ぎに変る。
「ふああ・・・あう・・ああ・・・」
「気持ち良いかえ?」
そして、また太くなる棒。
「ひああああああっ」
身を反らせて跳ねがる身体を、見えない糸と無数の手が押さえつけた。
目を開ければ、自分を犯す美しい女の顔。
目を閉じれば、自分を犯す女の身体。
もう一度、目を開けると同時に最奥まで挿れられた。
そのまま身体ごと揺すられて、穿られる。
「ああっ、ああっ、ああう、あああああっ」
「ほほほ、そろそろ戴くかえ」
揺れる視界の中で、笑う女の顔。
唇がさらに固く塞がれ、下半身で少年のものが引き起こされる。
「坊やは、まだ女を知らないね」
舌に巻き付く、舌がそう問いかける。
「ああ・・はい・・・・ああっ・・・」
逆らいようもなく答えると女は嬉々と笑み、一気に少年のものを自分の内に招き入れた。
まさに咥えこまれる、少年の性器。
根元から先まで無数の肉のヒダが締め上げ、じわっと液が包み込んだ。
そして、呼吸する間もなくその全ての肉ヒダが少年の経験のない秘部を撫で擦りあげる。
「あ、あうん、ひあああっ」
抵抗する間もなく、絶頂に達する少年の身体。
女の膣に精液を絞られながら、歓喜の悲鳴をあげる。
「・・ああ・・・」
そして女もまた、目を細めて悦ぶ。
「よいぞ・・外の世界を知らぬ精は最高の味・・・千年生き続けるこの蜘蛛にまた命と悦びを与えてくれる・・」
「ああ・・・あああ・・・あああっ」
少年は高みに昇ったまま、喘ぎ続ける。
女が、
蜘蛛と名乗った女が、
膣を狭めるたびに少年は精を放った。
それが幾度も続き、
終には・・・、
「ひああああああ、出るう、まだ出てるうう、止まらないよお」
射精が途切れることなく、無限に続けさせられる。
膣と少年のペニスがこれ以上なく密着し、
触れ合う全ての部位から絶えることない快楽が送り込まれてくる。
びゅーーーーーーーーーーーーっ。
本当にいつまでも止まず続く射精。
「ああああああああ、だめえ、狂う、ああ、ああ、ああ、しぬうううううう」
「ほほほ、そうさ、止まらないね。さあ、最初で最後の快楽の全てを妾に・・・・」
やがて、
少年の視界も身体も世界もすべてが包みこまれ、
少年はこの世から姿を消した。
翌朝。
村の真中に、
少年を山まで乗せた山車が大量の蜘蛛の糸が巻かれて返されていた。
中には、村の者達が一冬は超せそうな獣の肉と山の実が詰められていたという。
女は小高い丘の切出した頂きに立っていた。
歳は若く、顔立ちは美しい。
が、その顔は凛と張り詰め、
開けた視界で見える全てのものをひとつも残さぬように観察している。
女に風が吹きつけ、右肩にかかる衿が小さくばたばたと浮かせた。
衣の下に見えたのは深い傷痕。
けして消えぬ矢傷。
風がやみ、衣が傷を隠すと、女は遠くを行く一団を見つけて舌打ちした。
武装した5人ほどの集団。
馬には乗っておらず装具はまちまちのもので、薄汚れたなり。
5人ともギョロギョロとあたりを見まわしながら、道から外れた野草の中を進んでいる。
先日、西で行なわれた戦の敗残兵達。
戦に慣れた女の眼は、自ら仕入れていた情報とあわせて答えをだす。
この距離なら問題ないだろうが、
戦に負け野をさすらう者達は他にもいるであろう。
それを狙う残党狩りもしかり。
どちらにしても戦からこぼれた兵には注意が必要だ。
無防備な状態で出会えば夜盗以下の下衆となって襲われる。
旅するものにとってはやっかいな状況だ。
と、草を掻き分ける音が背後で聞こえ、無邪気な子供の声がした。
「おねーちゃん、見ーつけっ」
振りかえる、女。
背後の茂みから、その声の持ち主に似つかわしい少年が姿を現す。
少年は小さな身体でぱたぱたと走りより、女の足元から楽しそうに顔を上げる。
「何してるの?琴音おねーちゃん」
女の名前を呼ぶ、少年。
少年を見下ろす琴音の顔からは、厳しさが消え、代わりに優しい笑みが浮かんでいた。
「お父様達と瞑想していたのではないのすか、明靖さま?」
琴音は膝をおって屈み、明靖と同じ高さに目を合わせる。
「だって退屈だもん」
むーっと、明靖が子供らしくむくれる。
「それに、目をつぶってるとお姉ちゃんが何処かへ行っちゃうし」
「私がいては修行の邪魔です」
「そんなことないよー」
両手を振り、全身で琴音の言葉を否定する明靖。
その身を包むのは純白の神官服。
子供の明靖用に仕立てられた特別のものであるが、
これからの成長分をみこして作られたのか、全体にだぶだぶとしていて、
手などは指先がどうにか袖の端から出ている感じだ。
「それに私は行き倒れたところを拾われた身、こうして明靖さまとお話していい者ではないのです」
「だから、そんなことないよー」
また明靖の両手が振られ、余った袖がバタバタ音をたてる。
「明靖さまーっ、何処ですかーっ、返事をしてくださーい!」
「明靖さまーっ!!」
と、そこに明靖を探して呼ぶ男達の声。
「明靖さま、また黙って抜け出したのですね」
琴音は明靖の目を見て、たしなめる。
「だって、みんな、僕が出て行っても全然気がつかないんだもん」
「それは、」
・・・明靖さまの力が特別だからです。
琴音はそう言いかけて、代わりに立ち上がると明靖の手をとった。
「まずは皆のところに戻りましょう。。心配しています」
「うん」
明靖は嬉しそうに琴音の手を握り返す。
並んで歩き出す二人。
「それで、お姉ちゃんは何をしてたの?」
「道を、皆が無事に歩ける道を探していたのです」
「怖いことがあるの?」
「ないように探していたのですよ」
「じゃあ、大丈夫だね」
「ええ」
「父様も、皆もとっても強いしね」
「そうですね」
笑顔を見せて答える、琴音。
答えながら戦とは別に耳にした気になる話のことを思いだしていた。
千年を生きる化け蜘蛛がこの先の山に棲むという。
5人の敗残兵。
琴音が見たのと同じ者達を、蜘蛛も見ていた。
山の森の、木の上。
緑の葉の中。
人の女の形で枝に腰を降ろし、膝に全裸の少年を乗せて。
「あふ・・あ・・・あ・・・・・」
女は視線を森の外に向けたまま、
その手で少年の胸と股間を嬲りまわしている。
「く・・んっ・・・」
爪が少年の胸先を引っ掛けて左右に往復し、掴んだ股間を上下に振ると、
少年は女の肩に頭を乗せて喘ぎ鳴いた。
女は、同じ調子で同じ場所を弄り続ける。
「あ・・・あ・・・ひ・・ひん・・・・」
繰返される少年の鳴き声。
同じ責めを続けられているうちに、
徐々に喘ぎの間隔が縮まっていき、甲高いものに変っていく。
「あうっ、ああっ、ふううっ・・」
変化のない単調な責めは、
ゆっくり、ゆっくりと少年の身体を高ぶらせていき、尚且つ絶対に一線を超えさせない。
少年は無機質ともいえる終わりのない愛撫の連続に支配され、
色を失った瞳を潤ませて、女のされるがままに身をくねらせる。
「よい声だね・・」
少年に囁く、女。
胸にだいて奏でる喘ぎを愉しみながら、
薄汚れた兵士達の姿を薄く開けた目で観察し続ていく。
傷ついた身体を引きずり、
身を隠すように道を外れて血に汚れた粗末な武具で草を掻き分けながら進んでいる。
どの顔も憔悴し、怯えた目であたりを見まわし、
逆に追い詰められた者特有の殺気をぎらつかせている。
そして、その中に若い男が一人混じるのを見て女は笑みを浮かべる。
「ふふ、坊や、新しい精が来てくれるようだよ」
「ひんんんっ」
股間を女の手がくっと捻り、その瞬間、少年が達して仰け反る。
先から出た精液は宙には飛ばす、
性器そってしたたり落ちて、女の手を濡らしていった。
淫靡に歪む女の唇。
「坊やみたいに、美味しいといいのだけどねえ」
兵士達の足は、蜘蛛の棲む村へと落ちつつあった・・・。
清野は男達とともに夜を待った。
まだ青年というにも早い歳で参加した戦に破れ、
追っ手に怯えながら仲間と逃げ落ちる途中。
飢えと渇きで濁った目に理性は薄く、
今は生きる為に目の前の村から強奪することしか頭の中にはない。
村を凝視し、陽が落ちると狙いをつけた村の外れの家に近づいた。
泥にまみれた手を戸にかける。
引いて戸が開かず、内から棒がつかえてあると知ると仲間の男が乱暴に蹴り破った。
「ひっ」
「さわぐなっ」
中にいたのは4人の親子。
突如踏み込んできた兵に悲鳴をあげようとするところに刀を付きつけて黙らせる。
二人、三人、続けて刀を抜き怯える親子を隅へ追いやる。
「飯だ・・」
男の一人が竃から食料を見つけ出すと、
他の男達も村人を牽制しつつ、我先にと手をのばし卑しく素手で飯を頬張る。
清野も野の獣のごとく口のまわりを汚し、
口の中が空かないうちに次の飯をかき込み、
喉につまるものは水を浴びせ飲んで無理やり通した。
「・・・・・・・ふ」
互いに肩をすりよせてガタガタと震えている親子を横目に、
食えるだけ食う清野。
幾日分の飢えからようやく解かれると、気が落ち付きを取り戻してきた。
あらためて刀の先に縮こまる村人を見やる。
やや年老いた二親に年頃の娘、その弟。
瞳のひとつひとつが自分の醜い顔と付きつけた凶器を映し返してくる。
「・・・もういい、出よう」
不意に罪悪感に捕らわれ、仲間達に呼びかける。
「長くいるのは良くない」
もっともらしい理由をつけると、その言葉に男達の何人が頷いてくれた。
飢えを癒せばあとは逃げるだけ。
なるべく遠く、自分らがやりなおせるところまで。
男達は、親子に背を見せ蹴り外したままの戸から立ち去ろうとした。
が、中の一人だけが刃を光らせて親子を見下ろし続け、
やがて娘の腕を掴むと無理やり引き立たせた。
「いやあああっ」
娘が悲鳴をあげる。
「やめろおっ」
弟が跳びかかってくるのを足蹴りで跳ね飛ばす。
「うるせえっ」
「ぐあっ」
「へへ、こいつは連れていこう」
男は汚れた笑みを仲間に送る。
「やめろ、邪魔になるだけだ」
清野はその男を押しとどめ、肩を掴む。
だが娘の腕を掴んだ男は耳を貸さず、笑ったまま肩の手を振り払った。
「なあに、用が済んだら放り出すだけだ。だろ?」
清野以外の男達にむけるにやけた笑い。
男達は顔を見合わせ、
清野と娘を掴まれた男を見比べて、何も言わずに外へ出て行く。
「と、いうわけだ。おら、さっさと行くぞ。長くいるのは不味いんだろ」
「・・・・・・」
それ以上何も言い返せない清野を見返し、
男は逆に清野の肩をぱんと叩いた。
「お前にもいい思いさせてやるからよ」
「待て・・」
「ん?なんだ小僧?」
蹴り飛ばした弟に呼びとめられ、男が余裕を浮かべて笑みを送る。
弟は蹴られた胸を押さえ、両親に抱えられながら怒りに満ちた目を男と清野に向けた。
「許さない、蜘蛛様が、蜘蛛様がお前達を許さないぞ・・」
「蜘蛛お?なんだそりゃ?」
男は馬鹿にして笑う。
笑いながら弟に見せつけるよう姉を抱き抱えて言う。
「安心しな、こっちは大人しく楽しませてくれたら殺さねえよ。なんたって俺は人間だからな」
男は声に出してあざ笑い、そのまま娘を引きずって外へ出ていった。
残された親子を見る、清野。
どれもが恨みを込めた目で清野を睨んでいる。
「・・・・すまん」
清野は耐えきれなく、男を追って外に出た。
外はさらに闇に沈み、逆に月やたらに明るかった。
そして、見た。
月の下に立った、美しい女を。
聞いた。
闇にとける、静かな笑い声を。
「ふふふふふふふ・・・・」
女は白い着物に身を包み、
それよりももっと白い肌と黒い髪を混じらせて、笑っている。
「なんだ、てめえはっ?」
仲間達は既に刀を抜きその女を囲んでいる。
女の笑みがやみ、女の声が闇にとける。
「妾は、殺す」
そのまま女の手が上がり、
宙に浮かぶ月の横に、男達の首が舞い上がった。
「妾は、殺すよ」
女の手があがり、仲間の首が宙に飛んだ。
その数は3つ。
胴から離れた首が遠く土に落ち、
首を失った胴が与えられた死に追い付くように抜いた刀を手にしたまま、鮮血を噴出して倒れていく。
血煙。
残ったのは清野と娘を抱いた男。
女は涼しげに二人に視線を向け、変らぬ微笑をたたえて囁いた。
「妾は、人ではない」
「蜘蛛様、助けてっ」
絶望に震えていた娘が女に向かって叫ぶ。
「く・・も・・?」
お前達は蜘蛛様が許さない。
娘の弟が清野達に吐きかけた言葉。
それが現実となって襲いかかってくる?
目の前で起きている事を理解できず、呆ける清野。
恐怖というには、女は美し過ぎた。
現実と認めるには、何もかもが一瞬すぎた。
「うるせいや、死ねえっ」
仲間が娘を突き放し、最後の仲間が女に切りかかっていくのが見えた。
女は笑ったまま静かに白い手を横に払い、
刀が振り落ちるより疾く、そして遥かに美しく仲間の首を凪ぐのが見えた。
「ふふふふ・・」
ああ、
女が笑っている。
崩れ落ちる死体など気にもとめず、自分を見ている。
ゆっくりと歩を進め、
仲間を殺した綺麗な手を自分に伸ばしてくる。
「お前は、生きて妾のものにおなり」
女に抱かれて、
清野は闇の中にとける自分を感じていた・・・・。
「琴音、宮靖さまがお呼びだ」
食事を終えて、
ころころとじゃれつく明靖の相手をしていた琴音に、巨漢の男が声をかける。
背丈も、肩幅も並の男より二回りは大きい。
表情もそれにあわせて常に厳つく、
大蝉などというそれらしい名前と身に纏う白い方術服を合わせて、
かなりの威圧感を漂わせている。
「直ぐにまいります」
大蝉に答える、琴音。
「ええ、いっちゃうの〜?」
明靖がまだまだ遊び足りないといった様子で琴音を見上げると、
琴音に代って大蝉が明靖に言う。
「明靖様は、これから私どもと修練の時間です」
「うう〜」
大蝉の慇懃な大人口調に頬を膨らませる、明靖。
大蝉は変らぬ口調で明靖に言い含める。
「明靖様は次期当主となられる身。修練を嫌っては皆に示しがつきませぬ」
「ううう〜」
厳つい顔に見下ろされ、さらに唸る明靖。
訴えるように大蝉を見上げるが、大蝉は大人の顔を崩さない。
と、そこに新たに二人の方術服を纏った男女が姿を見せる。
「こら大蝉、そんな怖い顔で睨んだら明靖様でなくても怖がるでしょ」
「同感です。大蝉どのは方術の他に人との和み方を学ぶ必要がありますね」
「・・・・・・」
ぎろっと、大蝉の目がその男女を睨む。
だが二人は意に介さず、それぞれに笑みを作って明靖に進みよる。
「明靖様、残念ですが今日の遊びはここまです。どうか瑞波と修練にお付き合いください」
女、瑞波が柔らかく語りかけ、
「紀逗からもお願いです。この怖い大蝉は遠くにやりますゆえ」
男、紀逗がさらに睨み付けてくる大蝉の視線を無視して、頭を下げる。
「うう〜〜〜」
が、結局、明靖の目が向くのは琴音の顔。
目に厳しさを増す大蝉、
やれやれといった瑞波、
状況を面白がるような紀逗、
三者三様の視線も合わせて琴音に向けられる。
琴音は、まず明靖だけを見つめてにっこりと笑う。
「明靖様、私もこれから仕事です。明靖様も明靖様のお仕事に励んでください」
「・・むう」
「私は良い子の明靖の方が好きですよ」
笑ったまま、琴音は明靖の目を真直ぐ見つめる。
明靖の丸い瞳の中で子供の思考が流れ、
明靖は欲しいものをおねだりする仕草で琴音に答えた。
「・・終ったら、一緒に寝てもいい?」
くくっと、笑ったのは紀逗。
睨み付けてくる大蝉の横で、瑞波は仕方なさそうに琴音に頷いて見せる。
「はい」
琴音が一つ頷くと、
「約束だよ!」
明靖は小さな小指を差し出して、琴音の小指と絡ませた。
修練へと向かう、明靖達の背中。
琴音はそれを見送って、この方術士達の主の元へと向かい始めた。
「・・・いい話、にはなりそうにないわね」
清野が連れ込まれたのは、夜の深い山林の中であった。
樹木が生い茂り、風に揺すられる枝葉の音が深々と響く世界。
中でもひときわ地に深く根ざし、
太く揺るぎない幹を天に突き立てる巨木に清野は括られる。
両手と両足に貼り付く、目に見えぬ糸。
身動きの出来ぬ清野に、
蜘蛛と呼ばれた女が闇の色に白い肌を重ねて近づく。
「く、来るな」
清野は怯えて首を振る。
だが女はゆっくりと近づき、清野の眼前にまで顔をよせて吐息を漂わせる。
「ここは妾と同じ命を宿す場所・・」
囁く、女の唇。
「故に人の精を求める・・」
「ひっ」
唇が清野に重ねられ、
着物を裂いて胸に手が添えられる。
「ふふふ、おまえからは血の匂いがするぞ。どうやら人どもの戦が近づいているらしい」
清野の胸先にかかる指。
楽器の玄を弾くように爪にかけて、艶かしく引き掻く。
同時にもう一つの手が脚の間に落ち、男根を弄り出して捏ね上げた。
「お・・あっ・・・」
清野の身がよじり、男根が弄られるのと合わせて喘ぐ清野。
恐怖と、わずかにあった抵抗する意志が剥ぎ取られ、
女の手から与えられる痺れに支配されて行く。
ざざざっ、ざざざざっ。
清野が声を高めるのにあわせ周りを風が巻き、木々達が大きく音を鳴らしていく。
女の唇が笑いの形につり上がる。
「木々達がお前をよこせと騒いでおる。ふふ、分かるか?飢えておるぞ。
おお、今にも噛み付いて来そうじゃ」
言いながら、唇から外れた女の舌が清野の首筋を這い、
指が男根をくびき嬲る。
「あ・・ああ・・・」
清野が喉を鳴らし、完全に快楽に溺れた喘ぎを発した。
ざざざざっ、ざざざざっ・・・。
森全体が唸りをあげた、
周囲の影が揺らめくや、木々と地面から無数のツタが清野と女に飛びかかった。
「ほほほ・・」
響き渡る女の笑い。
ツタは清野と女に触れる寸前、女の手の一払いで幾つもの破片に寸断されて宙に散らされた。
なおも取り囲み蠢く影に、女は言う。
「ほほほ、お前達は妾と同じもの。久しく人肌に触れておらねば飢えもしよう。
この男が欲しいか?人を嫌う山にあって、人を食らう命を受けるものどもよ」
口に手をあてて、女が高笑う。
そして清野から身を離し、さっと後ろ向きに巨木から飛び去った。
「その男は好きにするがよい。ほほ、壊すでないぞ。人の精は生きておるから美味いのだ」
闇へ消えていく、女。
残った清野へ、無数のツタが触手となって這い上がった。
森の触手は清野の男根に巻きついた。
それは一本ではなく複数のツタ。
竿の根元から中ほどまでを絞りあげ、皮をいっぱいまで引き下げると、
じゅわりと透明な樹液を滲み出した。
ぬるり。
強力な絞りを保ったまま樹液が男根の周りを滑らかにすべった。
「あひい」
その思いもかけない快感に清野は思わず声をあげた。
触手はさらに数を増し、男根の表面を螺旋回りしながらしごき始める。
それは全く隙のないしごきで、一瞬の間をあけることのない快楽責めとなっていく。
「ひああ・・ああ・・あああっ」
人の手を遥かにまさる動き。
清野の膝が震え、男根が反って瞬く間に射精させられた。
そこにまた別の触手達寄って来る。
剥き出しになった先の部分に集まると、今度はうすい緑色の液を吐き付けた。
液は尿道から頭全体、そしてかり首の裏側にかけてじゅわっと音をたてて吸収された。
「ひいいい、熱いいいいっ」
焼けるような感触。
液を吸い込んだ部分が熱い熱をもち、空気に触れているだけでヒリヒリとするほど鋭敏になる。
そして、そこをぴったり覆う触手。
ツタから生える細かな葉先が一斉に液に浸された男根を嬲った。
「あああああああっ、やめろ、やめて、ふあああああああああっ!!」
絶叫。
ひとつひとつで狂ってしまいそうな刺激が、いくつも一度に襲ってくる。
清野は絶叫し、逃げ場を求めて身悶えた。
だが手足を固定する触手はビクともしない。
それどころか逆にその手足を巻く部分からも樹液を滲ませ始めた。
「ひいいっ、ひいいっ、助けて、気が、ああああっ」
ざわざわ。
ざわざわ。
清野の喘ぎにあわせて蠢く森の空気。
清野の周りを何百という触手が取り囲こみ、徐々に全身を覆って這いまわる。
身の隅々まで液が刷り込まれ、愛撫の責めが広がっていく。
「あふっ、ふああっ、ああ、ああ、あぐううう」
悶え、快楽に溶かされていく清野。
やがて清野の姿は完全に飲み込まれて見えなくなり、
「あっ、ひいいっ、ひいいいいいいいいいいいいいっ」
無限の快楽に浸される絶叫だけがいつまでも森の闇に響いていた。
「山に入る」
宮靖は琴音にまずそれだけを言った。
方術士たちの長。
大蝉が全身で大岩のイメージを纏わせているならば、
宮靖はそれよりも硬く強靭な鋼。
そしてその上に人としての風格、強さとしなやかさを感じさせてくる。
「御山ですか?」
琴音が訊く。
ただの山でも、
この方術士の長がわざわざ宣言して踏み入れるとなればただでなくなる。
「ああ、山だ」
それでも宮靖は山だと答えた。
山は山、宮靖はまたこういう人物でもあった。
「この辺りの戦は長く続いている、そうだな」
そして今度は宮靖が琴音に訪ねる。
頷き、答える琴音。
「争っているのは大きく分けて2つですが、
どちらも決め手がなく戦だけが繰返し続いているようです」
琴音が集める情報は簡単で大まかなものであったが、
常に後から送れて届いて来る中央からの伝聞よりは、宮靖達にとってずっと役立つ。
「うむ、その一方から入って欲しい山があると請われた。兵を置くと帰って来ない山らしい。
その話によると山の主の仕業ということだ」
それは化け蜘蛛が住むという山。
琴音も噂で聞いた話。
「琴音、お前はどう考える?」
「山でなくとも戦はできましょう」
問う宮靖に琴音は即答した。
宮靖は顔だけで面白そうに笑う。
「放っておけということか?」
「これは明靖様のご成長を見守るのが目的の旅。進んで戦に関わることはありません」
「戦嫌い、変わらずだな」
「・・・・・・・・・」
琴音は目を伏せる。
身に刻まれた傷痕が痛んだ気がした。
「たしかにお前の言う通り、陣もひけず、検分すらもできずに手付かずだった土地があって、
通りかかったはぐれの方術一派に声をかけたという話だ」
「宮靖様達がはぐれなど・・・」
「息子ともども体よく本宮から追い出された身、はぐれと言わず何と言う?
まあ、このあたりことはお前は知らぬことであるがな」
宮靖の物言いに威張も卑屈もない。
その声のままで宮靖は続けた。
「その本宮からも伝聞が来た。その者の依頼に応え山を治めよ、とな」
「それはっ」
「この辺は中央の力がまだ及ばぬ所、山自体はともかく互いに繋がっておきたいのだろうな。
中央、本宮、ここで争う者、順序は知らんが筋はあったのだろう
我々がここにいるのも幾らかの筋のうちだ」
宮靖はあらためて琴音を見る。
「故に我々は山に入る。何もなければ楽だが、そうでないときは苦労することになる。
山の主はともかく、私は人間相手のやり方が上手くない。そのあたりをお前に頼む」
「はい」
深く、礼をする琴音。
「本当に上手くない、明靖には行に逃げられてばかりだしな」
そんな琴音に宮靖はそう言って、軽く笑った。
・・・こうして一行は蜘蛛の森へ入る。
古くから続く、しきたり。
贄は成人前の若い男が一人。
山車に乗せられて森の深くに送られる。
贄は、
村の中から出したことも、
人買に銭を出したことも、
他所の土地の者をかどわかしたこともあった。
とにかく若い男であれば良かった。
森の中の『蜘蛛』は女だというのだから。
「ここいらで、ええじゃろ」
「ああ、堪忍しろや」
村人達が慌てて立ち去って行く声が山車の中に聞こえる。
「んんっ・・・ぐっ」
山車の中には手足を縛られた少年。
口も縄を噛まされて言葉が出ない。
数日前、銭でこの村に売られた。
最初の日に村中でもてなされ、
次の日になにやら身を清められて、今日はこうだった。
「んおっ・・・ぐ・・うおっ」
少年は山車の中で必死に暴れて自由になろうとする。
贄のことは何も聞かされていなかったが、危険なところに放り込まれたのは肌で感じていた。
山車の柱に括られた身体をゆすり、足を伸ばして戸を蹴飛ばす。
ばきっ、ばきっ。
もともと粗末な作りであった山車の戸である。
足があたると容易に外れて開いた。
その勢いで柱も引く。
つがいの部分が音をたてて傾き、もう一度勢いをつけると抜けた柱ごと身体が外へ転げ出た。
「んぶっ」
したたか頭を地面にうちつけ、声をあげる少年。
噛まされた縄を外して思いっきり叫びたかったが、
両手が柱に結び着けられたままである為、立ちあがることすら難しい。
が、ふいにその縄が解け、柱も身体から離れた。
同時にゾクっとする悪寒。
「・・・・・・・・」
おそるおそる顔をあげると、
そこには女が立っていて、
「ほほ、今年の贄も若い男だねえ・・・」
妖しく笑うと、少年の身体を抱えて木々の中へ連れこんだ。
森の深くに連れこまれた少年の身体が宙に絡め取られた。
両手と両足に何かが結び付き、四方へと引張る。
「ああっ」
くっと、吊るされる少年の身体。
少年はじたばたと動かない手足をばたつかせながら、自分に結びつく半透明のものを見る。
「糸?」
「そう、蜘蛛の糸よ」
少年をさらった女が笑みを浮かべてまとわりつく。
「お前のような贄を捕らえるための私の糸」
女が少年に頬に口づけし、衣の間を割って白い手を挿しこんだ。
「ふあっ」
女の手のひらと指のひとつひとつが素肌をなでると、堪らず少年の口から吐息が漏れた。
「もうそんなに熱い息を出すのかえ?」
女は身体を滑らせ少年にさらに絡む。
口から赤い舌を出して首筋をなめ、耳の中まで這わせていく。
肌を嬲る手は衣の中を蠢き、指の腹の先で少年の細い身体をこすった。
胸をまさぐり小さくとがった先を見つけて、指のひとつひとつ、爪の一枚一枚で弾き通っていく。
「ふわ・・あ・・・ああ・・・」
幾度もそれを繰り返され、少年は抱かれた身体を身震いさせて声を上げた。
「良い声だこと」
女の声が耳の中で響き、胸先にキッと爪が尖らされた。
「ひいいっ」
少年の喉が反りかえり喘ぎが悲鳴に変る。
女の舌がその震える喉を舐める。
「ほほほ、痛いかえ」
キリキリキリ。
「あ、ぎっ、ああっ・・・・」
爪が小刻みに震え敏感な胸先の粒に食い込んでいく。
締めつけたまま、ゆるりと手首を傾けて根元から捻りあげた。
「ひああっ、痛いっ」
「そうか、痛いかえ」
少年の悲鳴を舌に感じ、満足げに女が言う。
「ひあっ、ああ、助けてっ、あがっ」
「ふふ、では助けてやろう、ほほ、こうすると・・・」
胸先の戒めが僅かづつ緩んでいき、爪先の尖りが肉を撫でさするものに変わっていく。
きつい痛みに襲われていた部分にじわっと愛撫による甘えが交じりこみ、
少年の身体には再び快楽の痺れが流れる。
「ああ・・ああ・・・あん・・・」
「ほほ、今度は嬉しそうな声だこと」
「はあ・・ああ・・・・・」
「ほほ、気を抜くでない」
ギッ。
「ぎあああああああっ」
女の爪がまた食い込む。
女は先程よりも深く長い時間、胸先を潰して捻り上げ、少年の苦鳴を森の木々に響かせた。
「あがっ、ぎいっ、はあ、はあ、あああっ」
「可愛いねえ、また悦ばせてあげる」
また責めが緩み、愛撫が始まる。
「あん・・・ああ・・・んっ・・・・」
そして、
ギシッ。
「あっ、がああああああああっ」
「今度はもっと痛くしするよ、その方が次に嬉しくなるからねえ」
少年の震える喉に唇をあてて、女の爪はさらにきつく少年を鳴かせる。
「あ、ああ、ひいっ、許して、あがっ、ああああ」
「まだまだ、知っているかい?蜘蛛の手は8本もあるんだよ」
「え?あ、ひいいいいいいっ」
「・・・蜘蛛の手は8本もあるんだよ」
女の笑みが少年の視界を覆う。
同時に、何かが少年の全身を掴んだ。
「!!」
身振るいする少年。
視界は女の顔に塞がれて、何が自分を掴んでいるのか見えない。
首を傾けてそれを見ようとする前に、両方の胸先をぞっとする程滑らかに撫でられた。
「ひああっ」
女の見つめる前で声をあげる。
先ほどまで痛め付けられ、じんじんと痺れる胸先が見えない愛撫を受けて全身に身震いを発信する。
「ほほ」
「あんっ」
もう一度、胸先を擦られて少年ははっきりと喘ぎの声を出した。
手。
だがさっきまでの女の手とはまるで違う、感触。
固く、それでいて滑らかで細かい感触。
触れられた胸先は、つつかれる様に、包み込まれる様に感じ取り。
快感が皮膚の下の性感に直に降りてくる。
胸先への柔らかな愛撫は幾度と続き、少年は快感を隠せず鳴き声をあげて悦ばされた。
「あっ・・あ・・くう・・はあ・・ひんっ」
「まこと、幼い男の肌は素直よ。感じるままに鳴く」
ほくそ笑む、女。
「はうっ」
その下で少年の身が大きく震える。
胸先を撫で責められるまま、それと同じ手が少年の首筋を左右から振れる。
つーーーーーっ。
「はああああぁううううう」
「ここも・・」
さらに別の手が脇を抜けて背筋にあたる。
つつつーーーーーっ。
くねらせてもがく、背筋の真中を2つの手が快楽を植え付けて上下する。
「あうっ、はああああああああっ」
「そして、ここも・・・」
また別の手が脚の内側に割り込む。
ずっ。
閉じかける少年の脚が内側から開かされ、
過敏な腿と脚の付け根を淫猥な速度で摩りあげていく。
「狂い、踊ってくれる・・・」
「はあっ、だめ、ああ、ああ、あああ、あああああああっ」
少年を包み込む快楽の波。
自分が何をされているのかまったく見えぬまま、身体中を女の8つの手が這いまわる。
どの方向に逃れようとしても手足は糸に縛られ、責めの手は全部の方向から嬲ってくる。
「ひいー、ああー、はあああー」
「そう、その顔、お主は妾に犯されるのじゃ、狂うまで、狂うてもその悦び与えてやろう」
「た・・す・・けて・・・・」
「ほほ、助けを呼ぶのかえ?妾の腕の中から逃げたいのかえ?」
女が笑い、見えぬ腕をいっそうねっとりと動かし肌を這わせた。
「ああああああっ」
少年の身体が硬直し、ひときわ大きな鳴き声があたりに響く。
「では逃げられぬように、主の穴を塞いでやるわ。ほほ、どの手で挿し込んでやろう?」」
がっ。
大きく広げられる少年の脚。
脚の間の小さな窄まりまで広げられ、熱を帯びた空気が流れ込む。
そして、そこに近づく『手』の気配。
「ひ、ひ、いやあ、たすけ・・・」
再び、助けを求める少年を女の唇が塞ぐ。
「お鳴きっ」
ずぶっ。
「うぐっ、んん、んああああ・・・・・」
穴を挿しぬいた手は、少年の塞がれた口からくぐもった悲鳴を女の口の中へ贈りこんでいた。
・・・ぬるり。
「・・はあ・・・・・・」
少年の口から吐息が漏れる。
・・・ぬるり、ぬるり、ぬるり。
「ああ・・・はあ・・・あん・・・・」
少年の肛門を犯す見えない手はぬめねめとした液を滲ませて、
固く、深く、太く、棒となって少年を快楽の淵で狂わせていた。
「ほほ、もうひとつ太くしてやろう」
ずず・・・。
女の声と共に、それが太さを増し少年の穴を広げた。
「ひっ・・」
悲鳴を上げかける、少年。
それも体内を擦られると快感に流される喘ぎに変る。
「ふああ・・・あう・・ああ・・・」
「気持ち良いかえ?」
そして、また太くなる棒。
「ひああああああっ」
身を反らせて跳ねがる身体を、見えない糸と無数の手が押さえつけた。
目を開ければ、自分を犯す美しい女の顔。
目を閉じれば、自分を犯す女の身体。
もう一度、目を開けると同時に最奥まで挿れられた。
そのまま身体ごと揺すられて、穿られる。
「ああっ、ああっ、ああう、あああああっ」
「ほほほ、そろそろ戴くかえ」
揺れる視界の中で、笑う女の顔。
唇がさらに固く塞がれ、下半身で少年のものが引き起こされる。
「坊やは、まだ女を知らないね」
舌に巻き付く、舌がそう問いかける。
「ああ・・はい・・・・ああっ・・・」
逆らいようもなく答えると女は嬉々と笑み、一気に少年のものを自分の内に招き入れた。
まさに咥えこまれる、少年の性器。
根元から先まで無数の肉のヒダが締め上げ、じわっと液が包み込んだ。
そして、呼吸する間もなくその全ての肉ヒダが少年の経験のない秘部を撫で擦りあげる。
「あ、あうん、ひあああっ」
抵抗する間もなく、絶頂に達する少年の身体。
女の膣に精液を絞られながら、歓喜の悲鳴をあげる。
「・・ああ・・・」
そして女もまた、目を細めて悦ぶ。
「よいぞ・・外の世界を知らぬ精は最高の味・・・千年生き続けるこの蜘蛛にまた命と悦びを与えてくれる・・」
「ああ・・・あああ・・・あああっ」
少年は高みに昇ったまま、喘ぎ続ける。
女が、
蜘蛛と名乗った女が、
膣を狭めるたびに少年は精を放った。
それが幾度も続き、
終には・・・、
「ひああああああ、出るう、まだ出てるうう、止まらないよお」
射精が途切れることなく、無限に続けさせられる。
膣と少年のペニスがこれ以上なく密着し、
触れ合う全ての部位から絶えることない快楽が送り込まれてくる。
びゅーーーーーーーーーーーーっ。
本当にいつまでも止まず続く射精。
「ああああああああ、だめえ、狂う、ああ、ああ、ああ、しぬうううううう」
「ほほほ、そうさ、止まらないね。さあ、最初で最後の快楽の全てを妾に・・・・」
やがて、
少年の視界も身体も世界もすべてが包みこまれ、
少年はこの世から姿を消した。
翌朝。
村の真中に、
少年を山まで乗せた山車が大量の蜘蛛の糸が巻かれて返されていた。
中には、村の者達が一冬は超せそうな獣の肉と山の実が詰められていたという。
女は小高い丘の切出した頂きに立っていた。
歳は若く、顔立ちは美しい。
が、その顔は凛と張り詰め、
開けた視界で見える全てのものをひとつも残さぬように観察している。
女に風が吹きつけ、右肩にかかる衿が小さくばたばたと浮かせた。
衣の下に見えたのは深い傷痕。
けして消えぬ矢傷。
風がやみ、衣が傷を隠すと、女は遠くを行く一団を見つけて舌打ちした。
武装した5人ほどの集団。
馬には乗っておらず装具はまちまちのもので、薄汚れたなり。
5人ともギョロギョロとあたりを見まわしながら、道から外れた野草の中を進んでいる。
先日、西で行なわれた戦の敗残兵達。
戦に慣れた女の眼は、自ら仕入れていた情報とあわせて答えをだす。
この距離なら問題ないだろうが、
戦に負け野をさすらう者達は他にもいるであろう。
それを狙う残党狩りもしかり。
どちらにしても戦からこぼれた兵には注意が必要だ。
無防備な状態で出会えば夜盗以下の下衆となって襲われる。
旅するものにとってはやっかいな状況だ。
と、草を掻き分ける音が背後で聞こえ、無邪気な子供の声がした。
「おねーちゃん、見ーつけっ」
振りかえる、女。
背後の茂みから、その声の持ち主に似つかわしい少年が姿を現す。
少年は小さな身体でぱたぱたと走りより、女の足元から楽しそうに顔を上げる。
「何してるの?琴音おねーちゃん」
女の名前を呼ぶ、少年。
少年を見下ろす琴音の顔からは、厳しさが消え、代わりに優しい笑みが浮かんでいた。
「お父様達と瞑想していたのではないのすか、明靖さま?」
琴音は膝をおって屈み、明靖と同じ高さに目を合わせる。
「だって退屈だもん」
むーっと、明靖が子供らしくむくれる。
「それに、目をつぶってるとお姉ちゃんが何処かへ行っちゃうし」
「私がいては修行の邪魔です」
「そんなことないよー」
両手を振り、全身で琴音の言葉を否定する明靖。
その身を包むのは純白の神官服。
子供の明靖用に仕立てられた特別のものであるが、
これからの成長分をみこして作られたのか、全体にだぶだぶとしていて、
手などは指先がどうにか袖の端から出ている感じだ。
「それに私は行き倒れたところを拾われた身、こうして明靖さまとお話していい者ではないのです」
「だから、そんなことないよー」
また明靖の両手が振られ、余った袖がバタバタ音をたてる。
「明靖さまーっ、何処ですかーっ、返事をしてくださーい!」
「明靖さまーっ!!」
と、そこに明靖を探して呼ぶ男達の声。
「明靖さま、また黙って抜け出したのですね」
琴音は明靖の目を見て、たしなめる。
「だって、みんな、僕が出て行っても全然気がつかないんだもん」
「それは、」
・・・明靖さまの力が特別だからです。
琴音はそう言いかけて、代わりに立ち上がると明靖の手をとった。
「まずは皆のところに戻りましょう。。心配しています」
「うん」
明靖は嬉しそうに琴音の手を握り返す。
並んで歩き出す二人。
「それで、お姉ちゃんは何をしてたの?」
「道を、皆が無事に歩ける道を探していたのです」
「怖いことがあるの?」
「ないように探していたのですよ」
「じゃあ、大丈夫だね」
「ええ」
「父様も、皆もとっても強いしね」
「そうですね」
笑顔を見せて答える、琴音。
答えながら戦とは別に耳にした気になる話のことを思いだしていた。
千年を生きる化け蜘蛛がこの先の山に棲むという。
5人の敗残兵。
琴音が見たのと同じ者達を、蜘蛛も見ていた。
山の森の、木の上。
緑の葉の中。
人の女の形で枝に腰を降ろし、膝に全裸の少年を乗せて。
「あふ・・あ・・・あ・・・・・」
女は視線を森の外に向けたまま、
その手で少年の胸と股間を嬲りまわしている。
「く・・んっ・・・」
爪が少年の胸先を引っ掛けて左右に往復し、掴んだ股間を上下に振ると、
少年は女の肩に頭を乗せて喘ぎ鳴いた。
女は、同じ調子で同じ場所を弄り続ける。
「あ・・・あ・・・ひ・・ひん・・・・」
繰返される少年の鳴き声。
同じ責めを続けられているうちに、
徐々に喘ぎの間隔が縮まっていき、甲高いものに変っていく。
「あうっ、ああっ、ふううっ・・」
変化のない単調な責めは、
ゆっくり、ゆっくりと少年の身体を高ぶらせていき、尚且つ絶対に一線を超えさせない。
少年は無機質ともいえる終わりのない愛撫の連続に支配され、
色を失った瞳を潤ませて、女のされるがままに身をくねらせる。
「よい声だね・・」
少年に囁く、女。
胸にだいて奏でる喘ぎを愉しみながら、
薄汚れた兵士達の姿を薄く開けた目で観察し続ていく。
傷ついた身体を引きずり、
身を隠すように道を外れて血に汚れた粗末な武具で草を掻き分けながら進んでいる。
どの顔も憔悴し、怯えた目であたりを見まわし、
逆に追い詰められた者特有の殺気をぎらつかせている。
そして、その中に若い男が一人混じるのを見て女は笑みを浮かべる。
「ふふ、坊や、新しい精が来てくれるようだよ」
「ひんんんっ」
股間を女の手がくっと捻り、その瞬間、少年が達して仰け反る。
先から出た精液は宙には飛ばす、
性器そってしたたり落ちて、女の手を濡らしていった。
淫靡に歪む女の唇。
「坊やみたいに、美味しいといいのだけどねえ」
兵士達の足は、蜘蛛の棲む村へと落ちつつあった・・・。
清野は男達とともに夜を待った。
まだ青年というにも早い歳で参加した戦に破れ、
追っ手に怯えながら仲間と逃げ落ちる途中。
飢えと渇きで濁った目に理性は薄く、
今は生きる為に目の前の村から強奪することしか頭の中にはない。
村を凝視し、陽が落ちると狙いをつけた村の外れの家に近づいた。
泥にまみれた手を戸にかける。
引いて戸が開かず、内から棒がつかえてあると知ると仲間の男が乱暴に蹴り破った。
「ひっ」
「さわぐなっ」
中にいたのは4人の親子。
突如踏み込んできた兵に悲鳴をあげようとするところに刀を付きつけて黙らせる。
二人、三人、続けて刀を抜き怯える親子を隅へ追いやる。
「飯だ・・」
男の一人が竃から食料を見つけ出すと、
他の男達も村人を牽制しつつ、我先にと手をのばし卑しく素手で飯を頬張る。
清野も野の獣のごとく口のまわりを汚し、
口の中が空かないうちに次の飯をかき込み、
喉につまるものは水を浴びせ飲んで無理やり通した。
「・・・・・・・ふ」
互いに肩をすりよせてガタガタと震えている親子を横目に、
食えるだけ食う清野。
幾日分の飢えからようやく解かれると、気が落ち付きを取り戻してきた。
あらためて刀の先に縮こまる村人を見やる。
やや年老いた二親に年頃の娘、その弟。
瞳のひとつひとつが自分の醜い顔と付きつけた凶器を映し返してくる。
「・・・もういい、出よう」
不意に罪悪感に捕らわれ、仲間達に呼びかける。
「長くいるのは良くない」
もっともらしい理由をつけると、その言葉に男達の何人が頷いてくれた。
飢えを癒せばあとは逃げるだけ。
なるべく遠く、自分らがやりなおせるところまで。
男達は、親子に背を見せ蹴り外したままの戸から立ち去ろうとした。
が、中の一人だけが刃を光らせて親子を見下ろし続け、
やがて娘の腕を掴むと無理やり引き立たせた。
「いやあああっ」
娘が悲鳴をあげる。
「やめろおっ」
弟が跳びかかってくるのを足蹴りで跳ね飛ばす。
「うるせえっ」
「ぐあっ」
「へへ、こいつは連れていこう」
男は汚れた笑みを仲間に送る。
「やめろ、邪魔になるだけだ」
清野はその男を押しとどめ、肩を掴む。
だが娘の腕を掴んだ男は耳を貸さず、笑ったまま肩の手を振り払った。
「なあに、用が済んだら放り出すだけだ。だろ?」
清野以外の男達にむけるにやけた笑い。
男達は顔を見合わせ、
清野と娘を掴まれた男を見比べて、何も言わずに外へ出て行く。
「と、いうわけだ。おら、さっさと行くぞ。長くいるのは不味いんだろ」
「・・・・・・」
それ以上何も言い返せない清野を見返し、
男は逆に清野の肩をぱんと叩いた。
「お前にもいい思いさせてやるからよ」
「待て・・」
「ん?なんだ小僧?」
蹴り飛ばした弟に呼びとめられ、男が余裕を浮かべて笑みを送る。
弟は蹴られた胸を押さえ、両親に抱えられながら怒りに満ちた目を男と清野に向けた。
「許さない、蜘蛛様が、蜘蛛様がお前達を許さないぞ・・」
「蜘蛛お?なんだそりゃ?」
男は馬鹿にして笑う。
笑いながら弟に見せつけるよう姉を抱き抱えて言う。
「安心しな、こっちは大人しく楽しませてくれたら殺さねえよ。なんたって俺は人間だからな」
男は声に出してあざ笑い、そのまま娘を引きずって外へ出ていった。
残された親子を見る、清野。
どれもが恨みを込めた目で清野を睨んでいる。
「・・・・すまん」
清野は耐えきれなく、男を追って外に出た。
外はさらに闇に沈み、逆に月やたらに明るかった。
そして、見た。
月の下に立った、美しい女を。
聞いた。
闇にとける、静かな笑い声を。
「ふふふふふふふ・・・・」
女は白い着物に身を包み、
それよりももっと白い肌と黒い髪を混じらせて、笑っている。
「なんだ、てめえはっ?」
仲間達は既に刀を抜きその女を囲んでいる。
女の笑みがやみ、女の声が闇にとける。
「妾は、殺す」
そのまま女の手が上がり、
宙に浮かぶ月の横に、男達の首が舞い上がった。
「妾は、殺すよ」
女の手があがり、仲間の首が宙に飛んだ。
その数は3つ。
胴から離れた首が遠く土に落ち、
首を失った胴が与えられた死に追い付くように抜いた刀を手にしたまま、鮮血を噴出して倒れていく。
血煙。
残ったのは清野と娘を抱いた男。
女は涼しげに二人に視線を向け、変らぬ微笑をたたえて囁いた。
「妾は、人ではない」
「蜘蛛様、助けてっ」
絶望に震えていた娘が女に向かって叫ぶ。
「く・・も・・?」
お前達は蜘蛛様が許さない。
娘の弟が清野達に吐きかけた言葉。
それが現実となって襲いかかってくる?
目の前で起きている事を理解できず、呆ける清野。
恐怖というには、女は美し過ぎた。
現実と認めるには、何もかもが一瞬すぎた。
「うるせいや、死ねえっ」
仲間が娘を突き放し、最後の仲間が女に切りかかっていくのが見えた。
女は笑ったまま静かに白い手を横に払い、
刀が振り落ちるより疾く、そして遥かに美しく仲間の首を凪ぐのが見えた。
「ふふふふ・・」
ああ、
女が笑っている。
崩れ落ちる死体など気にもとめず、自分を見ている。
ゆっくりと歩を進め、
仲間を殺した綺麗な手を自分に伸ばしてくる。
「お前は、生きて妾のものにおなり」
女に抱かれて、
清野は闇の中にとける自分を感じていた・・・・。
「琴音、宮靖さまがお呼びだ」
食事を終えて、
ころころとじゃれつく明靖の相手をしていた琴音に、巨漢の男が声をかける。
背丈も、肩幅も並の男より二回りは大きい。
表情もそれにあわせて常に厳つく、
大蝉などというそれらしい名前と身に纏う白い方術服を合わせて、
かなりの威圧感を漂わせている。
「直ぐにまいります」
大蝉に答える、琴音。
「ええ、いっちゃうの〜?」
明靖がまだまだ遊び足りないといった様子で琴音を見上げると、
琴音に代って大蝉が明靖に言う。
「明靖様は、これから私どもと修練の時間です」
「うう〜」
大蝉の慇懃な大人口調に頬を膨らませる、明靖。
大蝉は変らぬ口調で明靖に言い含める。
「明靖様は次期当主となられる身。修練を嫌っては皆に示しがつきませぬ」
「ううう〜」
厳つい顔に見下ろされ、さらに唸る明靖。
訴えるように大蝉を見上げるが、大蝉は大人の顔を崩さない。
と、そこに新たに二人の方術服を纏った男女が姿を見せる。
「こら大蝉、そんな怖い顔で睨んだら明靖様でなくても怖がるでしょ」
「同感です。大蝉どのは方術の他に人との和み方を学ぶ必要がありますね」
「・・・・・・」
ぎろっと、大蝉の目がその男女を睨む。
だが二人は意に介さず、それぞれに笑みを作って明靖に進みよる。
「明靖様、残念ですが今日の遊びはここまです。どうか瑞波と修練にお付き合いください」
女、瑞波が柔らかく語りかけ、
「紀逗からもお願いです。この怖い大蝉は遠くにやりますゆえ」
男、紀逗がさらに睨み付けてくる大蝉の視線を無視して、頭を下げる。
「うう〜〜〜」
が、結局、明靖の目が向くのは琴音の顔。
目に厳しさを増す大蝉、
やれやれといった瑞波、
状況を面白がるような紀逗、
三者三様の視線も合わせて琴音に向けられる。
琴音は、まず明靖だけを見つめてにっこりと笑う。
「明靖様、私もこれから仕事です。明靖様も明靖様のお仕事に励んでください」
「・・むう」
「私は良い子の明靖の方が好きですよ」
笑ったまま、琴音は明靖の目を真直ぐ見つめる。
明靖の丸い瞳の中で子供の思考が流れ、
明靖は欲しいものをおねだりする仕草で琴音に答えた。
「・・終ったら、一緒に寝てもいい?」
くくっと、笑ったのは紀逗。
睨み付けてくる大蝉の横で、瑞波は仕方なさそうに琴音に頷いて見せる。
「はい」
琴音が一つ頷くと、
「約束だよ!」
明靖は小さな小指を差し出して、琴音の小指と絡ませた。
修練へと向かう、明靖達の背中。
琴音はそれを見送って、この方術士達の主の元へと向かい始めた。
「・・・いい話、にはなりそうにないわね」
清野が連れ込まれたのは、夜の深い山林の中であった。
樹木が生い茂り、風に揺すられる枝葉の音が深々と響く世界。
中でもひときわ地に深く根ざし、
太く揺るぎない幹を天に突き立てる巨木に清野は括られる。
両手と両足に貼り付く、目に見えぬ糸。
身動きの出来ぬ清野に、
蜘蛛と呼ばれた女が闇の色に白い肌を重ねて近づく。
「く、来るな」
清野は怯えて首を振る。
だが女はゆっくりと近づき、清野の眼前にまで顔をよせて吐息を漂わせる。
「ここは妾と同じ命を宿す場所・・」
囁く、女の唇。
「故に人の精を求める・・」
「ひっ」
唇が清野に重ねられ、
着物を裂いて胸に手が添えられる。
「ふふふ、おまえからは血の匂いがするぞ。どうやら人どもの戦が近づいているらしい」
清野の胸先にかかる指。
楽器の玄を弾くように爪にかけて、艶かしく引き掻く。
同時にもう一つの手が脚の間に落ち、男根を弄り出して捏ね上げた。
「お・・あっ・・・」
清野の身がよじり、男根が弄られるのと合わせて喘ぐ清野。
恐怖と、わずかにあった抵抗する意志が剥ぎ取られ、
女の手から与えられる痺れに支配されて行く。
ざざざっ、ざざざざっ。
清野が声を高めるのにあわせ周りを風が巻き、木々達が大きく音を鳴らしていく。
女の唇が笑いの形につり上がる。
「木々達がお前をよこせと騒いでおる。ふふ、分かるか?飢えておるぞ。
おお、今にも噛み付いて来そうじゃ」
言いながら、唇から外れた女の舌が清野の首筋を這い、
指が男根をくびき嬲る。
「あ・・ああ・・・」
清野が喉を鳴らし、完全に快楽に溺れた喘ぎを発した。
ざざざざっ、ざざざざっ・・・。
森全体が唸りをあげた、
周囲の影が揺らめくや、木々と地面から無数のツタが清野と女に飛びかかった。
「ほほほ・・」
響き渡る女の笑い。
ツタは清野と女に触れる寸前、女の手の一払いで幾つもの破片に寸断されて宙に散らされた。
なおも取り囲み蠢く影に、女は言う。
「ほほほ、お前達は妾と同じもの。久しく人肌に触れておらねば飢えもしよう。
この男が欲しいか?人を嫌う山にあって、人を食らう命を受けるものどもよ」
口に手をあてて、女が高笑う。
そして清野から身を離し、さっと後ろ向きに巨木から飛び去った。
「その男は好きにするがよい。ほほ、壊すでないぞ。人の精は生きておるから美味いのだ」
闇へ消えていく、女。
残った清野へ、無数のツタが触手となって這い上がった。
森の触手は清野の男根に巻きついた。
それは一本ではなく複数のツタ。
竿の根元から中ほどまでを絞りあげ、皮をいっぱいまで引き下げると、
じゅわりと透明な樹液を滲み出した。
ぬるり。
強力な絞りを保ったまま樹液が男根の周りを滑らかにすべった。
「あひい」
その思いもかけない快感に清野は思わず声をあげた。
触手はさらに数を増し、男根の表面を螺旋回りしながらしごき始める。
それは全く隙のないしごきで、一瞬の間をあけることのない快楽責めとなっていく。
「ひああ・・ああ・・あああっ」
人の手を遥かにまさる動き。
清野の膝が震え、男根が反って瞬く間に射精させられた。
そこにまた別の触手達寄って来る。
剥き出しになった先の部分に集まると、今度はうすい緑色の液を吐き付けた。
液は尿道から頭全体、そしてかり首の裏側にかけてじゅわっと音をたてて吸収された。
「ひいいい、熱いいいいっ」
焼けるような感触。
液を吸い込んだ部分が熱い熱をもち、空気に触れているだけでヒリヒリとするほど鋭敏になる。
そして、そこをぴったり覆う触手。
ツタから生える細かな葉先が一斉に液に浸された男根を嬲った。
「あああああああっ、やめろ、やめて、ふあああああああああっ!!」
絶叫。
ひとつひとつで狂ってしまいそうな刺激が、いくつも一度に襲ってくる。
清野は絶叫し、逃げ場を求めて身悶えた。
だが手足を固定する触手はビクともしない。
それどころか逆にその手足を巻く部分からも樹液を滲ませ始めた。
「ひいいっ、ひいいっ、助けて、気が、ああああっ」
ざわざわ。
ざわざわ。
清野の喘ぎにあわせて蠢く森の空気。
清野の周りを何百という触手が取り囲こみ、徐々に全身を覆って這いまわる。
身の隅々まで液が刷り込まれ、愛撫の責めが広がっていく。
「あふっ、ふああっ、ああ、ああ、あぐううう」
悶え、快楽に溶かされていく清野。
やがて清野の姿は完全に飲み込まれて見えなくなり、
「あっ、ひいいっ、ひいいいいいいいいいいいいいっ」
無限の快楽に浸される絶叫だけがいつまでも森の闇に響いていた。
「山に入る」
宮靖は琴音にまずそれだけを言った。
方術士たちの長。
大蝉が全身で大岩のイメージを纏わせているならば、
宮靖はそれよりも硬く強靭な鋼。
そしてその上に人としての風格、強さとしなやかさを感じさせてくる。
「御山ですか?」
琴音が訊く。
ただの山でも、
この方術士の長がわざわざ宣言して踏み入れるとなればただでなくなる。
「ああ、山だ」
それでも宮靖は山だと答えた。
山は山、宮靖はまたこういう人物でもあった。
「この辺りの戦は長く続いている、そうだな」
そして今度は宮靖が琴音に訪ねる。
頷き、答える琴音。
「争っているのは大きく分けて2つですが、
どちらも決め手がなく戦だけが繰返し続いているようです」
琴音が集める情報は簡単で大まかなものであったが、
常に後から送れて届いて来る中央からの伝聞よりは、宮靖達にとってずっと役立つ。
「うむ、その一方から入って欲しい山があると請われた。兵を置くと帰って来ない山らしい。
その話によると山の主の仕業ということだ」
それは化け蜘蛛が住むという山。
琴音も噂で聞いた話。
「琴音、お前はどう考える?」
「山でなくとも戦はできましょう」
問う宮靖に琴音は即答した。
宮靖は顔だけで面白そうに笑う。
「放っておけということか?」
「これは明靖様のご成長を見守るのが目的の旅。進んで戦に関わることはありません」
「戦嫌い、変わらずだな」
「・・・・・・・・・」
琴音は目を伏せる。
身に刻まれた傷痕が痛んだ気がした。
「たしかにお前の言う通り、陣もひけず、検分すらもできずに手付かずだった土地があって、
通りかかったはぐれの方術一派に声をかけたという話だ」
「宮靖様達がはぐれなど・・・」
「息子ともども体よく本宮から追い出された身、はぐれと言わず何と言う?
まあ、このあたりことはお前は知らぬことであるがな」
宮靖の物言いに威張も卑屈もない。
その声のままで宮靖は続けた。
「その本宮からも伝聞が来た。その者の依頼に応え山を治めよ、とな」
「それはっ」
「この辺は中央の力がまだ及ばぬ所、山自体はともかく互いに繋がっておきたいのだろうな。
中央、本宮、ここで争う者、順序は知らんが筋はあったのだろう
我々がここにいるのも幾らかの筋のうちだ」
宮靖はあらためて琴音を見る。
「故に我々は山に入る。何もなければ楽だが、そうでないときは苦労することになる。
山の主はともかく、私は人間相手のやり方が上手くない。そのあたりをお前に頼む」
「はい」
深く、礼をする琴音。
「本当に上手くない、明靖には行に逃げられてばかりだしな」
そんな琴音に宮靖はそう言って、軽く笑った。
・・・こうして一行は蜘蛛の森へ入る。
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