- 2011⁄08⁄21(Sun)
- 02:50
土蔵の中 アロエ
とある静かな山村。豊かな山森と清らかな川の流れる一見して牧歌的なその村にも、一歩
集落の中へ入ったならば、堅牢なる村落社会の掟と階級によって支配される世界があった。
この村の一軒に、山中家がある。村内の他の家々とは比較にならない、突出して豪勢な邸宅。
昔からこの村の土地の多くを所有している大地主であった。
維新の世から未だ半世紀足らず。しかし明治以降の山中家の成長は著しいものがあった。以
前の様な単なる農地の地主というだけでなく、この地域における林業、運送、鉄道といった、
様々な事業に参入した事で大いに財をなし、その富は村の権力者として絶対的な裏打ちとなっ
ていたのである。
そんな山中家に生まれた一人の少年。
今年、尋常小学校の五年生に進級した山中実には、生まれてからこの方、自分の住む家の敷
地の中であるというのに、一度として立ち入った事のない場所があった。それは裏庭にある古
びた土蔵。幼い頃から実は、父からその土蔵に入ってはならないと、固く厳命されていた。し
かしそれは実だけではない。母や兄達、そして使用人といったこの家に関わる者一切の立ち入
りを父は拒んでいたのである。
何でもそこは父の仕事場でもあるらしく、誰にも邪魔をされたくないというのが一応の理由
であった。しかし好奇心旺盛な年頃である実には、その秘められた場所というものが何ともい
えず魅力的に感じてならなかった。
そしてついにある日、実は土蔵の中の探索を決意したのである。
ある晴れた休日の昼下がり。実が友人の家から戻ってみると、邸内は静まり返っていた。
どうやら家人達は皆出払っている様子で、容易に帰ってくる気配はない。家に一人という
状況の中で暇を持て余した実は、以前から気になっていた土蔵の探索をするいい機会では
ないかと、何気に思い付いたのだった。
そして実は、裏庭の土蔵へと足を運んだ。
(ん?)
土蔵に近付き、実は思わず足を止めた。誰もいないと思っていたはずが、土蔵の中で人
の気配がするのである。
(父さん、いるのかな?)
もしそうだとすれば、言い付けを守らず土蔵に侵入しようものなら、厳格な父にこっぴ
どく叱られるのは目に見えている。しかし一度決意しここまで来た以上、実はどうしても
沸き起こる好奇心を止める事が出来なかった。
(窓からちょっと中を覗くくらいなら、大丈夫だろ)
忍び足でさらに実は土蔵へと接近していく。そして土蔵の壁際を伝いながら、取り付け
られた窓のそばに身を置き、そっと顔を近付けていきながら、意を決して中を覗き込んだ。
「っ……!?」
その瞬間、実は思わず驚きの声を発してしまいそうになる。
窓越しに飛び込んできた蔵の中の光景。それは幼い実が想像していた以上のあまりに尋常
ならざる一人の人間の姿。
(あれは、ユウ兄ちゃん!)
蔵の中に居るのは父だとばかり思っていた実にとって、それはあまりに意外な人物、同じ
村の少年である間宮雄一郎であった。
実とは二歳違いの少年で、去年小学校を卒業し、その年の級生の中で唯一、狭き門である
中学に進学した村一番の秀才である。そして何より、いつも温和で優しい雄一郎は、実にとっ
て昔から誰よりも尊敬出来る兄のごとき存在であった。
その雄一郎が、父以外誰も入る事を許されない土蔵の中に居るのである。しかし実の衝撃
は、ただ雄一郎が土蔵の中に居るという事ではない。
(どういう事だ……え、何でユウ兄ちゃんがあんな事に……)
窓の向こうに居る雄一郎は、あまりに信じがたい姿となっていた。
衣服を全て脱ぎ去った、一糸纏わぬ雄一郎の光景。
露わとなるその素肌には、太い麻縄が肩から足にかけて複雑な括り方で巻かれている。両手首
は後ろ手に組まされ、脚も左右へと大きく広げられながら、踵が殿溝の辺りへピッタリとくっ付
く程に膝を大きく曲げられた姿位で、しっかりと縛り上げられているのだった。
(………)
愕然としたまま、実は声を失う。
そしてそんな拘束された形の雄一郎は、蔵の天井の梁に取り付けられた滑車によって、床へと向
き合わされる様に身を傾けられながら、宙へと縄で釣り上げられていたのである。
当然ながら、その状況は当の雄一郎にとって不本意極まりない様子であった。縛り上げられなが
ら、今にも泣きそうなばかりに表情を強張らせている。
(何で……一体何が……)
まさに、人としての誇りを一切奪われ、晒し者のごとき姿となる雄一郎。さらに実に衝撃を覚え
させたのは、縛られる雄一郎の肛門には、太さが二寸はあろうかという赤い蝋燭を、半分程も中へ
押し込められていたのである。当然ながら、この状況が雄一郎一人に出来るものではない。
(父さん!)
最初に視界へ飛び込んできたあまりにすさまじい雄一郎の姿に、すっかり注意を奪われてしまった
実であったが、無残な少年の傍らには、父が何食わぬ顔で立っていたのである。
「んぁっ……ううっ……」
雄一郎が洩らす呻きに似た声が、鮮明に実の耳へも伝わってくる。それがいっそう、この少年が
受ける非道なる仕打ちへの痛々しさを実の心に刻んでいく。
しかしそんな雄一郎を傍で眺める父は、少年の苦しむ姿を見て楽しんでいるとしか思えない、あ
まりに冷酷な笑みを浮かべているのだった。
(父さんが、ユウ兄ちゃんにこんな真似を……!?)
少年の思考の範疇をはるかに超えたおぞましい光景。実は茫然自失となったまま固まってしまう。
「ひっ……んぁぁっ……!」
その時、甲高い声が雄一郎から発せられ、実はハッとなる。
理解不能な現実。しかしそれでも実は目を凝らし、窓越しから薄暗い中の様子を改めて注視し
ていく。
雄一郎の肛門へと挿入される蝋燭。それをさらに父は、雄一郎の中深くへと容赦なく押し込ん
でいくのだった。
「だ、旦那様……許して、もう許してください……!」
悲痛な声で、雄一郎は父へと必死に訴えていた。
しかし雄一郎のそんな言葉に、父は鼻で笑う。
「何を言うか、ここはもうすっかり形を変えているではないか」
「あっ……ああっ……」
今度は父の手が、雄一郎の股間へと伸ばされながら、その部分を乱暴に弄っていく。
そんな雄一郎の股間へ視線を移しながら、実は息を呑んだ。
(あれが、ユウ兄ちゃんのチンポ……あんなにカチンコチンに……)
苦痛に悶え続ける雄一郎。しかしその下半身に目を向ければ、はち切れんばかりに怒張した少
年の陰茎が、天井を仰がんばかりに勢いよく反り返っているのだった。わずかな歳の差であると
いうのに、同じ男である自分のものとは比較にならない異質なる形のもの。実は雄一郎のその部
分へといつしかすっかり釘付けとなってしまう。
「フン、本当にお前は淫乱な身体をしておる。どうだ、お前の事だ、この程度ではまだ物足りな
いのであろう?」
そう言いながら、父は雄一郎の肛門へと押し込んでいた蝋燭を再びしっかりと掴み、今度は少
年の体内を掻き回すかのごとく、グイグイと前後左右へ大胆に動かしていくのだった。
「やぁっ……あっ……あぁっ……!」
いよいよ雄一郎の表情が、苦悶に歪んでいく。
「見てみぃ、いやらしい汁がどんどん垂れておるではないか」
父の向ける眼差しを追って、実も再び雄一郎の陰茎へと目を凝らす。
いつの間にか雄一郎の陰茎の先端からは、溢れ出した液体が床へと止めどなく垂れ落ちていく。
(え……ションベン……?)
こんな目に遭っているのである。苦痛に耐え切れず、思わず雄一郎が失禁したとしても何らお
かしくはない。しかし実の目には、その液体が普段排泄する尿とはどうしても違うものに映って
ならない。
それはドロドロと、糸を引きながら垂れる粘性の透明な液体。そんなものが自分の体内から出
た記憶のない実にすれば、状況はますます訳が分からず混乱していく一方であった。
しかしそんな詳細を、いちいち考えていられる余裕は実になかった。
「ああっ!」
土蔵の中に響く雄一郎の悲鳴が、もはや少年の忍耐力を遠に超えている仕打ちである事を十分
に物語っていた。
しかし容赦なく、父は蝋燭で雄一郎の肛門を責め立てながら、さらにもう一方の手でそそり立
つ陰茎を扱いていく。
「やめて、もうやめてぇ!」
なおも父から激しく責められ続ける雄一郎は、泣き叫びながら懇願する。
するとそんな雄一郎に、父は厳しい眼差しを向けるのだった。
「大声を出すなと、何度言えば分かるのだ!」
そう一喝するなり、壁へと立て掛けてあった竹刀を掴み、それを持って雄一郎の吊るし上げら
れた身体を何度も激しく叩き打っていく。
「ひぃっ……あっ……!」
拘束され逃げる事どころか身を防ぐ事すら出来ない雄一郎の肌へ、勢いよく竹刀が振り下ろさ
れる。雄一郎は歯を食い縛り、必死に耐え続ける以外に術はなかった。
(こんなの、拷問だ……)
いつしか実は恐怖に身を震わしていた。単に雄一郎が受ける肉体的な苦痛というだけでなく、
同じ村の少年へこんな真似を平然と繰り広げる父が、実には悪魔を見るかのごとき存在に映って
いく。
やがて存分に雄一郎を傷め付け満足したとばかり、父は持っていた竹刀を床へと置き捨てる。
幸い、雄一郎に目立った外傷はなさそうであった。しかし竹刀によって滅多打ちにされた少年
の艶やかな肌は、あちらこちらが痛々しく発赤していた。
「家人にも、お前のこんなあられもない姿を見られていいのか?わしとてさすがに他人の噂話まで
は止める事は出来んぞ。もしそんな事にでもなれば、お前の顛末は明日にも村中に知れ渡る事にな
るだろうな」
そう言ってくる父の言葉に、沈痛な表情で雄一郎はギュッと下唇を噛み締める。
「分かるか?村の神童として皆の期待を一身に集めているお前が、一夜にして唾棄すべき変態性欲
者となって村中から蔑視の目で見られる事になるのだぞ?」
「うっ……うぐぅっ……」
しかし雄一郎はついに堪えられなくなった様で、ボロボロと涙を流しながら嗚咽を漏らしていく。
そんな雄一郎の哀れな姿を眺めながら、父はむしろ口元に薄らと笑みを浮かべていた。心身共に
苦しみもがく雄一郎に対して向けられる、それはあまりに残酷な眼差し。
「わしに何か文句があるというなら、聞いてやるぞ?」
今や満身創痍となった雄一郎へと問うも、それはあまりにわざとらしい口調であった。
雄一郎はそんな父に対し、潤んだ瞳を逸らす。
「あ、ありません……旦那様の御命令には……何であろうと僕は従い続けます……」
一切の感情を押し殺す様に、雄一郎は引き絞る様な声でそう答えるのだった。
「そうであろう、わしがいなければお前は中学に進学する事など出来なんだ。お前の聡明さを誰よ
りも買っているからこそ、わしは学資を助けてやっているのだ。その事を忘れるな」
涙目で、表情にはこの上ない苦渋の色を雄一郎は浮かばせている。
ここにきて、ようやく実はこの理解の追い付かなかった状況の背景を、断片的ながらも把握した。
(そうだ……ユウ兄ちゃん、父さんから学費を工面してもらってて……)
小学校では優秀な成績を収めていた雄一郎。しかしそんな聡明なる少年も、卒業後の進路という
場面で、理不尽なる現実というものと否応なく向き合わねばならなかった。村一番の秀才と持ては
やされながらも、雄一郎の家は山中家から土地を借りて生計を立てる一介の小作農家。毎日の生活
で精一杯という家計の中、中学へ進学するための学費など、雄一郎の両親に捻出出来る訳がなかっ
たのである。
所詮は貧しい農家の倅という立場の雄一郎には、勉学を諦め、小学校を出た後は他の少年達と同
じく、どこかの街へ奉公に出るという運命が定められていた。しかしその時、雄一郎の希望となっ
たのが他でもない、村の大地主である父であった。父は、村が誇る秀才をこのまま埋めさせてはな
らないと、全面的に雄一郎へ学費の工面を決断したのである。それは村の篤志家の美談として、村
民達を大いに賑わせた。
実もまた、雄一郎が進学出来る事を我が事の様に喜んだものである。
(父さんは恩人だから……ユウ兄ちゃんは何をされても逆らえない……)
貧しさという現実に押し潰されそうになっていた雄一郎、しかし父の援助は何ら少年を救ってな
どいなかった。中学に進学出来た見返り、それは雄一郎へ新たに待ち受けていた過酷なる現実。
「やめて……もうやめて……ユウ兄ちゃんを、苛めないで……」
いつしか自然と、涙ぐむ実の口からはそんな言葉が漏れ出していた。しかしそれはあまりにか細
く、中に居る父や雄一郎に届くものではない。
「んっ……んんっ……!」
しかしそんな実の気持などあまりに虚しく、雄一郎は父によってさらなる忍従を課せられていく。
雄一郎の肛門へ埋められた蝋燭を、父はさらに乱暴に前後方向へ繰り返し動かしてくる。
幼い少年の肉体を、限界にまで父によって追い詰められていく。それでも雄一郎は、さっきのご
とく父の機嫌を損ねまいとしてか、絶叫を発したいであろう口元をしっかりと閉じ、頬へ涙を伝わ
せながらも懸命に声を押し殺していた。
その光景を正視する実もまた、いつしか瞳から止めどなく涙が溢れ出していた。
「美しい……お前のそのよがり狂う姿、なんと淫靡で美しいのだ……」
宙釣りで縛り上げられたまま、身悶え必死に身体を捩らせて喘ぐ少年の姿を、父は魅入る様に眺
めながら呟く。
「だ、だめっ……僕もう、もうっ……!」
その時、雄一郎の強張った身体が激しく震え出す。
(あっ……!)
実はその瞬間を、克明に脳裏へ焼き付けられる事となった。
痙攣する様に全身を震わせ、逞しく直立する雄一郎の陰茎から、勢いよく大量の白濁が噴出する。
その光景を、父は満足そうに眺めていた。
「前を触りもしておらんのに、肛門だけで絶頂を迎えるとはな。フフ、やはりお前はなかなか仕込み
甲斐がある」
異様なる液体を放出させながら、雄一郎はそのまま朦朧とした様子で脱力していく。
全てが限界であった。気が付くと、実は覗き込んでいた土蔵から脱兎のごとく走り出していた。も
う何も考えたくなかった。今はただ、あの異常なる空間から一刻も早く逃げてしまいたい、その一心
で雄一郎は走り続ける。
『ユウ兄ちゃん、学校に行ける事になったんだって?』
『ああ、お前の父さんのお陰でな。旦那様には、本当に感謝してるよ』
『ユウ兄ちゃん?』
『ごめんな……ハハ、男が涙なんか見せちゃだめだよな……だけど俺、こんな幸運に恵まれて……
本当に嬉しくて、幸せなんだ……』
『………』
『俺、もっと勉強して、絶対立身出世してやるんだ。貧乏人とか言って馬鹿にしてた奴らを見返
して……親父達ももう金の心配しなくていいくらい裕福にさせてやって……くそっ、涙が止まん
ねぇよ……情けねぇ……』
『……俺、ユウ兄ちゃんが泣いたなんて、絶対に他の奴には言わないから安心して』
『ありがとな、この事は絶対に内緒だかんな』
中学への進学が決まったあの日、自分だけに見せてくれた雄一郎の涙と最高の笑顔。それは今
もなお、実の心に大切な想い出として残っている。
しかしあの希望に満ち溢れた少年は、その代償として徹底的にその純粋なる心を踏み躙られた。
(もうあの時のユウ兄ちゃんは戻ってこない)
涙を流しなおも走り続ける実は、子供ながらその残酷なる事実を思い知らされるのだった。
集落の中へ入ったならば、堅牢なる村落社会の掟と階級によって支配される世界があった。
この村の一軒に、山中家がある。村内の他の家々とは比較にならない、突出して豪勢な邸宅。
昔からこの村の土地の多くを所有している大地主であった。
維新の世から未だ半世紀足らず。しかし明治以降の山中家の成長は著しいものがあった。以
前の様な単なる農地の地主というだけでなく、この地域における林業、運送、鉄道といった、
様々な事業に参入した事で大いに財をなし、その富は村の権力者として絶対的な裏打ちとなっ
ていたのである。
そんな山中家に生まれた一人の少年。
今年、尋常小学校の五年生に進級した山中実には、生まれてからこの方、自分の住む家の敷
地の中であるというのに、一度として立ち入った事のない場所があった。それは裏庭にある古
びた土蔵。幼い頃から実は、父からその土蔵に入ってはならないと、固く厳命されていた。し
かしそれは実だけではない。母や兄達、そして使用人といったこの家に関わる者一切の立ち入
りを父は拒んでいたのである。
何でもそこは父の仕事場でもあるらしく、誰にも邪魔をされたくないというのが一応の理由
であった。しかし好奇心旺盛な年頃である実には、その秘められた場所というものが何ともい
えず魅力的に感じてならなかった。
そしてついにある日、実は土蔵の中の探索を決意したのである。
ある晴れた休日の昼下がり。実が友人の家から戻ってみると、邸内は静まり返っていた。
どうやら家人達は皆出払っている様子で、容易に帰ってくる気配はない。家に一人という
状況の中で暇を持て余した実は、以前から気になっていた土蔵の探索をするいい機会では
ないかと、何気に思い付いたのだった。
そして実は、裏庭の土蔵へと足を運んだ。
(ん?)
土蔵に近付き、実は思わず足を止めた。誰もいないと思っていたはずが、土蔵の中で人
の気配がするのである。
(父さん、いるのかな?)
もしそうだとすれば、言い付けを守らず土蔵に侵入しようものなら、厳格な父にこっぴ
どく叱られるのは目に見えている。しかし一度決意しここまで来た以上、実はどうしても
沸き起こる好奇心を止める事が出来なかった。
(窓からちょっと中を覗くくらいなら、大丈夫だろ)
忍び足でさらに実は土蔵へと接近していく。そして土蔵の壁際を伝いながら、取り付け
られた窓のそばに身を置き、そっと顔を近付けていきながら、意を決して中を覗き込んだ。
「っ……!?」
その瞬間、実は思わず驚きの声を発してしまいそうになる。
窓越しに飛び込んできた蔵の中の光景。それは幼い実が想像していた以上のあまりに尋常
ならざる一人の人間の姿。
(あれは、ユウ兄ちゃん!)
蔵の中に居るのは父だとばかり思っていた実にとって、それはあまりに意外な人物、同じ
村の少年である間宮雄一郎であった。
実とは二歳違いの少年で、去年小学校を卒業し、その年の級生の中で唯一、狭き門である
中学に進学した村一番の秀才である。そして何より、いつも温和で優しい雄一郎は、実にとっ
て昔から誰よりも尊敬出来る兄のごとき存在であった。
その雄一郎が、父以外誰も入る事を許されない土蔵の中に居るのである。しかし実の衝撃
は、ただ雄一郎が土蔵の中に居るという事ではない。
(どういう事だ……え、何でユウ兄ちゃんがあんな事に……)
窓の向こうに居る雄一郎は、あまりに信じがたい姿となっていた。
衣服を全て脱ぎ去った、一糸纏わぬ雄一郎の光景。
露わとなるその素肌には、太い麻縄が肩から足にかけて複雑な括り方で巻かれている。両手首
は後ろ手に組まされ、脚も左右へと大きく広げられながら、踵が殿溝の辺りへピッタリとくっ付
く程に膝を大きく曲げられた姿位で、しっかりと縛り上げられているのだった。
(………)
愕然としたまま、実は声を失う。
そしてそんな拘束された形の雄一郎は、蔵の天井の梁に取り付けられた滑車によって、床へと向
き合わされる様に身を傾けられながら、宙へと縄で釣り上げられていたのである。
当然ながら、その状況は当の雄一郎にとって不本意極まりない様子であった。縛り上げられなが
ら、今にも泣きそうなばかりに表情を強張らせている。
(何で……一体何が……)
まさに、人としての誇りを一切奪われ、晒し者のごとき姿となる雄一郎。さらに実に衝撃を覚え
させたのは、縛られる雄一郎の肛門には、太さが二寸はあろうかという赤い蝋燭を、半分程も中へ
押し込められていたのである。当然ながら、この状況が雄一郎一人に出来るものではない。
(父さん!)
最初に視界へ飛び込んできたあまりにすさまじい雄一郎の姿に、すっかり注意を奪われてしまった
実であったが、無残な少年の傍らには、父が何食わぬ顔で立っていたのである。
「んぁっ……ううっ……」
雄一郎が洩らす呻きに似た声が、鮮明に実の耳へも伝わってくる。それがいっそう、この少年が
受ける非道なる仕打ちへの痛々しさを実の心に刻んでいく。
しかしそんな雄一郎を傍で眺める父は、少年の苦しむ姿を見て楽しんでいるとしか思えない、あ
まりに冷酷な笑みを浮かべているのだった。
(父さんが、ユウ兄ちゃんにこんな真似を……!?)
少年の思考の範疇をはるかに超えたおぞましい光景。実は茫然自失となったまま固まってしまう。
「ひっ……んぁぁっ……!」
その時、甲高い声が雄一郎から発せられ、実はハッとなる。
理解不能な現実。しかしそれでも実は目を凝らし、窓越しから薄暗い中の様子を改めて注視し
ていく。
雄一郎の肛門へと挿入される蝋燭。それをさらに父は、雄一郎の中深くへと容赦なく押し込ん
でいくのだった。
「だ、旦那様……許して、もう許してください……!」
悲痛な声で、雄一郎は父へと必死に訴えていた。
しかし雄一郎のそんな言葉に、父は鼻で笑う。
「何を言うか、ここはもうすっかり形を変えているではないか」
「あっ……ああっ……」
今度は父の手が、雄一郎の股間へと伸ばされながら、その部分を乱暴に弄っていく。
そんな雄一郎の股間へ視線を移しながら、実は息を呑んだ。
(あれが、ユウ兄ちゃんのチンポ……あんなにカチンコチンに……)
苦痛に悶え続ける雄一郎。しかしその下半身に目を向ければ、はち切れんばかりに怒張した少
年の陰茎が、天井を仰がんばかりに勢いよく反り返っているのだった。わずかな歳の差であると
いうのに、同じ男である自分のものとは比較にならない異質なる形のもの。実は雄一郎のその部
分へといつしかすっかり釘付けとなってしまう。
「フン、本当にお前は淫乱な身体をしておる。どうだ、お前の事だ、この程度ではまだ物足りな
いのであろう?」
そう言いながら、父は雄一郎の肛門へと押し込んでいた蝋燭を再びしっかりと掴み、今度は少
年の体内を掻き回すかのごとく、グイグイと前後左右へ大胆に動かしていくのだった。
「やぁっ……あっ……あぁっ……!」
いよいよ雄一郎の表情が、苦悶に歪んでいく。
「見てみぃ、いやらしい汁がどんどん垂れておるではないか」
父の向ける眼差しを追って、実も再び雄一郎の陰茎へと目を凝らす。
いつの間にか雄一郎の陰茎の先端からは、溢れ出した液体が床へと止めどなく垂れ落ちていく。
(え……ションベン……?)
こんな目に遭っているのである。苦痛に耐え切れず、思わず雄一郎が失禁したとしても何らお
かしくはない。しかし実の目には、その液体が普段排泄する尿とはどうしても違うものに映って
ならない。
それはドロドロと、糸を引きながら垂れる粘性の透明な液体。そんなものが自分の体内から出
た記憶のない実にすれば、状況はますます訳が分からず混乱していく一方であった。
しかしそんな詳細を、いちいち考えていられる余裕は実になかった。
「ああっ!」
土蔵の中に響く雄一郎の悲鳴が、もはや少年の忍耐力を遠に超えている仕打ちである事を十分
に物語っていた。
しかし容赦なく、父は蝋燭で雄一郎の肛門を責め立てながら、さらにもう一方の手でそそり立
つ陰茎を扱いていく。
「やめて、もうやめてぇ!」
なおも父から激しく責められ続ける雄一郎は、泣き叫びながら懇願する。
するとそんな雄一郎に、父は厳しい眼差しを向けるのだった。
「大声を出すなと、何度言えば分かるのだ!」
そう一喝するなり、壁へと立て掛けてあった竹刀を掴み、それを持って雄一郎の吊るし上げら
れた身体を何度も激しく叩き打っていく。
「ひぃっ……あっ……!」
拘束され逃げる事どころか身を防ぐ事すら出来ない雄一郎の肌へ、勢いよく竹刀が振り下ろさ
れる。雄一郎は歯を食い縛り、必死に耐え続ける以外に術はなかった。
(こんなの、拷問だ……)
いつしか実は恐怖に身を震わしていた。単に雄一郎が受ける肉体的な苦痛というだけでなく、
同じ村の少年へこんな真似を平然と繰り広げる父が、実には悪魔を見るかのごとき存在に映って
いく。
やがて存分に雄一郎を傷め付け満足したとばかり、父は持っていた竹刀を床へと置き捨てる。
幸い、雄一郎に目立った外傷はなさそうであった。しかし竹刀によって滅多打ちにされた少年
の艶やかな肌は、あちらこちらが痛々しく発赤していた。
「家人にも、お前のこんなあられもない姿を見られていいのか?わしとてさすがに他人の噂話まで
は止める事は出来んぞ。もしそんな事にでもなれば、お前の顛末は明日にも村中に知れ渡る事にな
るだろうな」
そう言ってくる父の言葉に、沈痛な表情で雄一郎はギュッと下唇を噛み締める。
「分かるか?村の神童として皆の期待を一身に集めているお前が、一夜にして唾棄すべき変態性欲
者となって村中から蔑視の目で見られる事になるのだぞ?」
「うっ……うぐぅっ……」
しかし雄一郎はついに堪えられなくなった様で、ボロボロと涙を流しながら嗚咽を漏らしていく。
そんな雄一郎の哀れな姿を眺めながら、父はむしろ口元に薄らと笑みを浮かべていた。心身共に
苦しみもがく雄一郎に対して向けられる、それはあまりに残酷な眼差し。
「わしに何か文句があるというなら、聞いてやるぞ?」
今や満身創痍となった雄一郎へと問うも、それはあまりにわざとらしい口調であった。
雄一郎はそんな父に対し、潤んだ瞳を逸らす。
「あ、ありません……旦那様の御命令には……何であろうと僕は従い続けます……」
一切の感情を押し殺す様に、雄一郎は引き絞る様な声でそう答えるのだった。
「そうであろう、わしがいなければお前は中学に進学する事など出来なんだ。お前の聡明さを誰よ
りも買っているからこそ、わしは学資を助けてやっているのだ。その事を忘れるな」
涙目で、表情にはこの上ない苦渋の色を雄一郎は浮かばせている。
ここにきて、ようやく実はこの理解の追い付かなかった状況の背景を、断片的ながらも把握した。
(そうだ……ユウ兄ちゃん、父さんから学費を工面してもらってて……)
小学校では優秀な成績を収めていた雄一郎。しかしそんな聡明なる少年も、卒業後の進路という
場面で、理不尽なる現実というものと否応なく向き合わねばならなかった。村一番の秀才と持ては
やされながらも、雄一郎の家は山中家から土地を借りて生計を立てる一介の小作農家。毎日の生活
で精一杯という家計の中、中学へ進学するための学費など、雄一郎の両親に捻出出来る訳がなかっ
たのである。
所詮は貧しい農家の倅という立場の雄一郎には、勉学を諦め、小学校を出た後は他の少年達と同
じく、どこかの街へ奉公に出るという運命が定められていた。しかしその時、雄一郎の希望となっ
たのが他でもない、村の大地主である父であった。父は、村が誇る秀才をこのまま埋めさせてはな
らないと、全面的に雄一郎へ学費の工面を決断したのである。それは村の篤志家の美談として、村
民達を大いに賑わせた。
実もまた、雄一郎が進学出来る事を我が事の様に喜んだものである。
(父さんは恩人だから……ユウ兄ちゃんは何をされても逆らえない……)
貧しさという現実に押し潰されそうになっていた雄一郎、しかし父の援助は何ら少年を救ってな
どいなかった。中学に進学出来た見返り、それは雄一郎へ新たに待ち受けていた過酷なる現実。
「やめて……もうやめて……ユウ兄ちゃんを、苛めないで……」
いつしか自然と、涙ぐむ実の口からはそんな言葉が漏れ出していた。しかしそれはあまりにか細
く、中に居る父や雄一郎に届くものではない。
「んっ……んんっ……!」
しかしそんな実の気持などあまりに虚しく、雄一郎は父によってさらなる忍従を課せられていく。
雄一郎の肛門へ埋められた蝋燭を、父はさらに乱暴に前後方向へ繰り返し動かしてくる。
幼い少年の肉体を、限界にまで父によって追い詰められていく。それでも雄一郎は、さっきのご
とく父の機嫌を損ねまいとしてか、絶叫を発したいであろう口元をしっかりと閉じ、頬へ涙を伝わ
せながらも懸命に声を押し殺していた。
その光景を正視する実もまた、いつしか瞳から止めどなく涙が溢れ出していた。
「美しい……お前のそのよがり狂う姿、なんと淫靡で美しいのだ……」
宙釣りで縛り上げられたまま、身悶え必死に身体を捩らせて喘ぐ少年の姿を、父は魅入る様に眺
めながら呟く。
「だ、だめっ……僕もう、もうっ……!」
その時、雄一郎の強張った身体が激しく震え出す。
(あっ……!)
実はその瞬間を、克明に脳裏へ焼き付けられる事となった。
痙攣する様に全身を震わせ、逞しく直立する雄一郎の陰茎から、勢いよく大量の白濁が噴出する。
その光景を、父は満足そうに眺めていた。
「前を触りもしておらんのに、肛門だけで絶頂を迎えるとはな。フフ、やはりお前はなかなか仕込み
甲斐がある」
異様なる液体を放出させながら、雄一郎はそのまま朦朧とした様子で脱力していく。
全てが限界であった。気が付くと、実は覗き込んでいた土蔵から脱兎のごとく走り出していた。も
う何も考えたくなかった。今はただ、あの異常なる空間から一刻も早く逃げてしまいたい、その一心
で雄一郎は走り続ける。
『ユウ兄ちゃん、学校に行ける事になったんだって?』
『ああ、お前の父さんのお陰でな。旦那様には、本当に感謝してるよ』
『ユウ兄ちゃん?』
『ごめんな……ハハ、男が涙なんか見せちゃだめだよな……だけど俺、こんな幸運に恵まれて……
本当に嬉しくて、幸せなんだ……』
『………』
『俺、もっと勉強して、絶対立身出世してやるんだ。貧乏人とか言って馬鹿にしてた奴らを見返
して……親父達ももう金の心配しなくていいくらい裕福にさせてやって……くそっ、涙が止まん
ねぇよ……情けねぇ……』
『……俺、ユウ兄ちゃんが泣いたなんて、絶対に他の奴には言わないから安心して』
『ありがとな、この事は絶対に内緒だかんな』
中学への進学が決まったあの日、自分だけに見せてくれた雄一郎の涙と最高の笑顔。それは今
もなお、実の心に大切な想い出として残っている。
しかしあの希望に満ち溢れた少年は、その代償として徹底的にその純粋なる心を踏み躙られた。
(もうあの時のユウ兄ちゃんは戻ってこない)
涙を流しなおも走り続ける実は、子供ながらその残酷なる事実を思い知らされるのだった。
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